ポイント経済圏の今後はどうなる?
ポイント経済圏について、私は今後3~5年を「強気」と見ています。
ただし、ポイントそのものの市場が爆発的に成長するという意味ではありません。
ポイントは現在、単純な販促手段から「顧客を自社グループのサービスへ囲い込むための共通通貨」に変わっています。
例えば楽天ポイントなら、楽天市場で買い物をして楽天カードで支払い、楽天銀行を使い、楽天証券で投資をし、楽天モバイルを契約することで、利用者が楽天グループ内を循環します。
Vポイントなら三井住友銀行、三井住友カード、Oliveなど、PayPayポイントならPayPay、PayPayカード、PayPay銀行、Yahoo! JAPANなど、Pontaならau、au PAY、ローソンなどへ広がっています。
今後のポイント競争は、「どのポイントが一番多くもらえるか」ではなく、「そのポイントを使うことで生活のどれだけ多くを一つの企業グループへ集約できるか」という競争になると考えています。
ポイント経済圏は5大陣営の競争へ
現在の日本では、大きく見ると次の5つのポイント経済圏が競争しています。
楽天ポイント
PayPayポイント
Pontaポイント
Vポイント
dポイント
それぞれ強みが違います。
楽天はEC・カード・銀行・証券・通信。
PayPayはスマホ決済・LINE・Yahoo!・金融。
Pontaはau・ローソン・金融・リアル店舗。
Vポイントは銀行・カード・Oliveを中心とした金融。
dポイントはドコモの通信基盤を中心に、d払い、dカード、銀行、証券へ展開しています。
特にdポイントクラブは2026年時点で1億会員規模まで拡大しており、Pontaも2026年3月末時点で1億2,615万ID、提携店舗数は2026年8月時点で36万店舗に達しています。
ポイント経済圏はすでに一部の利用者だけが使うサービスではなく、日本人の消費行動を動かす巨大インフラになっています。
これから重要なのは「ポイントを金融へつなげること」
私は今後のポイント経済圏で最も重要になるのが金融だと考えています。
例えば買い物でポイントを付与するだけなら、そのポイントは企業にとって販促費です。
しかしポイントをきっかけに、
クレジットカード
銀行口座
証券口座
住宅ローン
保険
資産運用
まで利用してもらえれば、一人の顧客から長期間にわたって利益を得ることができます。
楽天が強い理由もここにあります。
2026年第2四半期の楽天カードのショッピング取扱高は7.1兆円、楽天銀行は1,846万口座、楽天証券は1,439万口座まで拡大しています。楽天のFinTech事業は第2四半期に売上収益2,954億円で前年同期比27.0%増、Non-GAAP営業利益は692億円で60.1%増となりました。
ポイントを配ることで顧客を集め、その顧客からカード、銀行、証券で利益を得る。
これがポイント経済圏の理想的なビジネスモデルです。
リアル店舗を持つ経済圏が再び強くなる
もう一つ注目しているのがリアル店舗です。
ネットショッピングだけでは顧客との接点は毎日ありません。
しかしコンビニ、スーパー、飲食店、ドラッグストアなどは日常的に利用されます。
この意味で非常に面白いのがKDDIとローソンです。
KDDIは三菱商事とともにローソンを50%ずつ保有しており、Ponta経済圏の拡大を重要戦略にしています。
Pontaは1億2,615万ID、36万店舗という巨大なリアルネットワークを持っています。KDDIは中期戦略でも「Pontaパス・ローソン」を成長領域として明確に位置付け、Pontaパス2,000万会員を目標としています。
今後は「スマホの中の経済圏」と「リアル店舗」をつなげられる会社が強くなると考えています。
ポイントはAI時代にも価値が上がる
ポイント経済圏のもう一つの価値がデータです。
誰が、
何を買ったか
どこで買ったか
いくら使ったか
どのサービスを使っているか
という情報が蓄積されます。
AIを使えば、そのデータから一人ひとりに合った商品、クーポン、金融商品などを提案できます。
つまりポイント経済圏は「ポイントを配る事業」であると同時に、巨大なマーケティングデータ事業でもあります。
今後AIが進化するほど、会員数が多く、さまざまな購買データを持っている経済圏ほど価値が高まる可能性があります。
一方でポイント還元競争には注意
ポイント経済圏を強気で見ていますが、問題もあります。
ポイントは企業側から見るとコストです。
他社より利用者を集めようとして、
10%還元
20%還元
大量キャンペーン
などを繰り返せば、売上が増えても利益が残りません。
そのため「ポイントをたくさん配っている企業」を高く評価するのではなく、「ポイントを入口として金融・広告・通信などで利益を回収できている企業」を評価したいと思います。
私は今後、単純なポイント還元競争は徐々に減り、
「ポイントを貯めるとお得」
から、
「経済圏全体を使うとお得」
へ変わっていくと考えています。
ポイント経済圏関連株を見るための投資判断軸
ポイント経済圏関連株では「経済圏の強さ」「収益化力」「成長性」「財務・安定性」「株価水準」の5項目で評価します。
特に重要なのが収益化力です。
会員数が1億人いても利益につながらなければ、株主にとって意味はありません。
ポイントを使ってカード、銀行、証券、通信、ECなどへ利用者を送客し、グループ全体の利益を増やせる企業を高く評価します。
有望銘柄① 楽天グループ(4755)
ポイント経済圏の第一候補は楽天グループです。
楽天経済圏の最大の強みは、楽天市場だけでなく、
楽天カード
楽天銀行
楽天証券
楽天ペイ
楽天トラベル
楽天モバイル
まで巨大サービスを自社グループ内に持っていることです。
さらに2026年7月からはファミリーマートが楽天市場のSPUに参加しました。楽天グループ外の企業がSPUへ参加するのは初めてで、楽天経済圏を自社サービスだけでなく外部店舗へ広げる動きとして注目しています。
業績にも大きな変化が出ています。
2026年第2四半期は売上収益6,655億円で前年同期比11.6%増、Non-GAAP営業利益420億円で109.6%増となりました。さらに親会社帰属利益は77億円となり、四半期ベースで6年ぶりの黒字を達成しています。
FinTech事業が大きく稼ぎ、楽天モバイルの赤字も縮小しているため、楽天経済圏全体が利益を生む段階へ近づいています。
投資判断軸
経済圏の強さ:★★★★★
収益化力:★★★★★
成長性:★★★★★
財務・安定性:★★☆☆☆
株価水準:★★★★☆
総合投資判断:強気(値幅重視)
2026年9月2日の終値は726.7円、PBRは1.66倍前後です。2026年1月の1,026円から大きく調整しています。
最大の問題は依然として財務と楽天モバイルです。
ただし、それだけにモバイルの赤字縮小と連結黒字定着が確認できれば、株価評価が大きく変わる可能性があります。
安定性ではKDDIやSMFGに劣りますが、キャピタルゲインを狙うポイント経済圏株としては最も面白いと考え、1位にします。
有望銘柄② KDDI(9433)
2位はKDDIです。
KDDIのポイント経済圏はPontaを中心としています。
Pontaは2026年3月末時点で1億2,615万ID、2026年8月時点で提携36万店舗、155社・228ブランドという巨大ネットワークを持っています。
そしてKDDI最大の武器になったのがローソンです。
通信、au PAY、au PAYカード、auじぶん銀行などのデジタルサービスに、全国のローソンというリアル店舗が加わりました。
KDDIは2027年3月期から、金融、エネルギー、Pontaパス・ローソンなどを「パーソナルグロース」の成長事業として明確に位置付けています。
2027年3月期第1四半期も売上高1兆4,873億円で前年同期比5.1%増、調整後営業利益3,143億円で21.1%増と好調です。
投資判断軸
経済圏の強さ:★★★★★
収益化力:★★★★★
成長性:★★★★☆
財務・安定性:★★★★★
株価水準:★★★★☆
総合投資判断:強気
2026年9月2日の終値は2,986円、予想PER16.26倍、PBR2.35倍でした。
楽天ほど大きな株価変化を狙うタイプではありませんが、通信収益という安定した土台を持ちながらPonta・ローソン・金融を成長させられる点は非常に魅力的です。
楽天を攻めのポイント経済圏株とするなら、KDDIは安定性を持った本命です。
有望銘柄③ 三井住友フィナンシャルグループ(8316)
3位は三井住友フィナンシャルグループです。
Vポイント経済圏で最も注目したい企業です。
特に重要なのがOliveです。
三井住友銀行口座、クレジット、デビット、ポイントなどを一つのアプリへ統合し、Vポイントを中心として利用者を金融サービスへ囲い込んでいます。
Oliveは開始から約3年で763万アカウントまで増加し、次の3年間では1,500万件超を目指しています。
ポイント経済圏として非常に面白いのは、Vポイントを配ることで単純に買い物を増やすのではなく、「メイン銀行口座」を取りにいっていることです。
メイン口座になれば、
給与振込
預金
クレジットカード
住宅ローン
投資
資産運用
へ広げることができます。
2027年3月期第1四半期も経常利益6,931億円で前年同期比43.4%増、純利益5,014億円で33.0%増と非常に好調です。
投資判断軸
経済圏の強さ:★★★★☆
収益化力:★★★★★
成長性:★★★★★
財務・安定性:★★★★★
株価水準:★★★☆☆
総合投資判断:やや強気~強気
2026年9月2日の終値は6,971円、予想PER16.92倍、PBR1.67倍でした。
さらにSMFGはVポイントを使った株主優待制度も導入し、Olive利用と株式保有そのものを結び付けようとしています。
ポイント経済圏が銀行の預金獲得力まで高め始めているという意味で、今後かなり注目したい存在です。
有望銘柄④ ソフトバンク(9434)
4位はソフトバンクです。
PayPay経済圏を評価します。
ソフトバンクには、
SoftBank・Y!mobile
PayPay
PayPayカード
PayPay銀行
PayPay証券
Yahoo! JAPAN
LINE
ZOZOTOWN
など巨大なサービス群があります。
2026年3月末時点のPayPay登録ユーザー数は約7,300万人、2026年5月には7,400万人を突破しています。さらにソフトバンクは2026年度に8,000万人を目標としています。
注目したいのは、PayPayが決済サービスから総合金融会社へ変わり始めていることです。
銀行、カード、証券に加え、2026年にはT&Dフィナンシャル生命の子会社化を発表しました。決済から資産形成、保険、資産承継まで金融サービスを広げる戦略です。
2027年3月期第1四半期のソフトバンク全体では売上高1兆8,147億円で前年同期比9%増、営業利益3,023億円で4%増。ファイナンス事業は売上高27%増、利益76%増と高成長しています。
投資判断軸
経済圏の強さ:★★★★★
収益化力:★★★★★
成長性:★★★★☆
財務・安定性:★★★★☆
株価水準:★★☆☆☆
総合投資判断:やや強気
2026年9月2日の終値は241.3円、予想PER21.25倍、PBR3.91倍、配当利回りは3.5%台でした。
PayPay経済圏そのものは今回の4社でもトップクラスですが、株価は年初来高値圏まで上昇しています。
そのため企業評価は高いものの、現在の投資妙味を考えて4位としました。
参考銘柄 NTT(9432)
dポイント経済圏を持つNTTも外せません。
dポイントクラブは1億会員規模となり、2025年度の年間ポイント消費数は4,052億ポイントまで拡大しました。
dカード、d払いに加えて銀行やマネックス証券との金融連携も進んでいます。
2026年9月2日の株価は175.2円、予想PER14.55倍、PBR1.45倍、予想配当利回り3.08%で、株価水準にも割高感は強くありません。
ただしNTT全体が巨大で、ポイント経済圏の成長が会社全体の利益を急激に変える割合は他の候補より小さいため、今回はランキング外としました。
安定株として見るなら十分有力です。
ポイント経済圏の有望銘柄ランキング
1位 楽天グループ(4755)
楽天ポイント+EC+カード+銀行+証券+通信。黒字化が定着すれば株価再評価余地が大きい。
2位 KDDI(9433)
Ponta+ローソン+au金融。デジタルとリアルを結び付けられる安定成長型。
3位 三井住友フィナンシャルグループ(8316)
Vポイント+Olive。ポイントをメイン銀行口座獲得につなげる金融型経済圏。
4位 ソフトバンク(9434)
PayPay+LINE+Yahoo!+金融。経済圏は非常に強いが株価評価も高くなっている。
経済圏そのものの完成度だけなら楽天とPayPayが非常に強いと考えています。
しかし投資では、ポイント会員数だけではなく、「ポイント経済圏の成長が会社の利益をどれだけ増やすか」と「現在の株価」を同時に見る必要があります。
値幅を狙うなら楽天グループ、安定性とのバランスならKDDI、金融収益まで含めた成長ならSMFGが面白いと考えています。
まとめ
ポイント経済圏については、今後低迷するテーマとは考えていません。
ただしポイント還元率を競うだけの時代は徐々に終わると思います。
これから重要なのは、「ポイントを入口として顧客に何を使ってもらえるか」です。
今後私が重視したいのは、「巨大な会員基盤がある」「クレジットカードを持つ」「銀行・証券へつなげられる」「通信やECなど日常サービスを持つ」「リアル店舗との接点がある」「ポイントデータをAIや広告へ利用できる」という企業です。
ポイント経済圏の将来性を5段階で評価するなら「5」。
ポイント自体で大きく儲けるのではなく、ポイントを使って顧客の銀行口座、カード決済、通信契約、買い物、投資まで自社グループへ集約することが本当の狙いです。
今後のポイント経済圏は、「誰が一番ポイントを配るか」ではなく、「誰が一人の顧客から最も長く、多くのサービスを利用してもらえるか」を競う市場になると考えています。
現時点ではキャピタルゲインを狙う本命を楽天グループ(4755)、安定性を含めた対抗をKDDI(9433)とします。
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