産業機械業界の今後はどうなる?
産業機械業界について、私は今後3~5年を「強気」と見ています。
日本産業機械工業会は2026年度の産業機械受注額を前年度比3.8%増の7兆8,022億円と予想しています。これは過去最高水準です。内需は4.4%増の4兆8,203億円、外需も2.9%増の2兆9,819億円を見込んでいます。
特に重要なのは、単純な景気回復だけで機械需要が増えているわけではないことです。
AI・半導体工場
産業用ロボット
物流自動化
人手不足対策
省エネルギー
インフラ更新
GX・脱炭素
など、複数の構造的な設備投資が同時に発生しています。
私は産業機械を、今後の日本株で比較的長く追えるテーマの一つだと考えています。
最大の追い風は「人を機械に置き換える」需要
産業機械業界で最も大きなテーマは省人化です。
日本では工場、物流倉庫、建設、食品製造など幅広い分野で人手不足が進んでいます。
これまでは景気が良くなれば人を採用して生産量を増やすことができました。
しかし今後は、注文があっても人が集まらない企業が増えます。
そこで必要になるのが、
産業用ロボット
自動搬送設備
FA機器
自動倉庫
精密位置決め部品
自動制御装置
です。
2026年4~6月期の産業用ロボット受注額は前年同期比40.0%増、生産額も24.3%増となり、どちらも3四半期連続で過去最高を更新しました。
一時的な設備投資ブームだけでは説明しにくい強さです。
人件費が上がれば上がるほど、ロボット導入によって得られる経済効果も大きくなります。
AIブームで「AIを作る工場」も増える
産業機械にとってAIも重要なテーマです。
AI向け半導体を増産するには、半導体製造装置だけでなく、搬送設備、空圧機器、位置決め部品、真空設備など大量の周辺機器が必要になります。
半導体工場の内部は非常に高度に自動化されており、人が製品を持って移動するのではなく、機械が自動的に搬送します。
そのためAI半導体需要が増えるほど、半導体メーカーだけではなく産業機械メーカーにも利益が流れます。
特にダイフクは2026年上期に半導体生産ライン向けシステムを中心として受注が増加し、受注高は前年同期比31.6%増となりました。会社側も生成AI需要を背景とする先端半導体の生産能力増強を追い風として挙げています。
産業用ロボットはさらに用途が広がる
これまで産業用ロボットの代表的な用途は自動車工場でした。
しかし今後は、
半導体
食品
医薬品
物流
電池
電子機器
などへ用途が広がります。
さらに協働ロボットやヒューマノイドロボットが普及すれば、これまでロボットを導入できなかった場所にも市場が広がります。
そこで重要になるのが、ロボット本体だけではありません。
ロボットを正確に動かすための減速機、直動部品、空圧制御機器などを供給する企業があります。
私はむしろ、複数のロボットメーカーへ部品を供給できる「ロボットの部品メーカー」を高く評価しています。
どのロボットメーカーが勝っても需要を取り込める可能性があるからです。
物流自動化も長期成長テーマ
物流倉庫も大きく変わります。
ECの拡大に加え、物流業界ではドライバーや倉庫作業員不足が続いています。
そのため自動倉庫、自動搬送機、仕分けシステム、無人フォークリフトなどへの投資が増えていくでしょう。
ダイフクは一般製造業・流通業で、労働力不足や人件費上昇を背景とした省人化・自動化投資が引き続き堅調だと説明しています。
産業機械の中でも物流自動化は、半導体以上に長期間続く可能性があるテーマだと考えています。
一方で中国依存には注意
産業機械を強気で見ていますが、最大のリスクの一つが中国です。
日本のFA・ロボットメーカーにとって中国は巨大市場です。
2026年4~6月のロボット需要も中国やタイ、ベトナムなどアジア向け輸出が大きく伸びました。
一方、中国景気が悪化すれば設備投資も減少します。
また中国メーカー自身の技術力も上がっており、中長期的には価格競争が激しくなる可能性があります。
したがって、
・中国売上比率が極端に高い
・価格競争になりやすい
・特定の自動車メーカーだけに依存する
・汎用品しか持っていない
といった企業には慎重です。
私は世界シェアの高い製品を持ち、中国以外の地域でも成長できる企業を優先したいと思います。
産業機械株を見るための投資判断軸
産業機械株では「成長性」「自動化・AI恩恵」「競争力・世界シェア」「株価水準」「財務・株主還元」の5項目で評価します。
特に今回はキャピタルゲインを意識しているため、企業の質が非常に高くてもPER30倍近くまで評価されていれば順位を下げます。
逆に業績が回復局面に入りながらPERがまだ低い企業は高く評価します。
有望銘柄① THK(6481)
産業機械で現在最も投資妙味を感じるのがTHKです。
THKの代表製品が「LMガイド」です。
機械の直線運動部分を高精度かつ滑らかに動かす部品で、工作機械、産業用ロボット、半導体製造装置、搬送装置など非常に多くの産業設備に使用されています。
つまり特定のロボットメーカーへ投資するのではなく、「世界の工場自動化そのもの」に投資するイメージに近い企業です。
2026年12月期上期は売上高1,510億円で前年同期比32.4%増、営業利益224億円で268.9%増となりました。営業利益率も前年同期の5.3%から14.9%まで大きく改善しています。
会社は通期予想も売上高3,100億円、営業利益480億円へ引き上げました。
純利益には事業売却などの一時的要因が含まれているため、その数字だけを見るべきではありませんが、本業の営業利益が急回復している点を評価しています。
投資判断軸
成長性:★★★★★
自動化・AI恩恵:★★★★★
競争力・世界シェア:★★★★★
株価水準:★★★★★
財務・株主還元:★★★★☆
総合投資判断:強気
2026年9月2日の終値は6,255円。会社予想ベースのPERは約12.8倍、PBR約2.5倍、予想配当利回りは約3.1%です。
業績回復の勢いに対してPER12倍台という点を高く評価しています。
中国需要への依存や設備投資サイクルの影響は受けますが、今後のロボット・半導体・FA需要を考えると、今回の本命とします。
有望銘柄② ナブテスコ(6268)
2位はナブテスコです。
産業用ロボットの関節部分で使われる精密減速機を手掛けています。
中大型産業用ロボットの関節用途では世界シェア約60%を持つと会社は説明しています。
つまりファナック、安川電機、ABBなどロボットメーカー同士が競争していても、ロボット市場全体が拡大すればナブテスコには需要が入りやすい構造です。
さらに協働ロボットやヒューマノイド向けの小型精密減速機にも製品領域を拡大しています。
2026年12月期上期は売上高1,674億円で前年同期比16.8%増、営業利益157億円で69.4%増となりました。
精密減速機の2026年第1四半期受注も前年同期比21%増となっており、ロボット需要回復が業績へ反映され始めています。
投資判断軸
成長性:★★★★★
自動化・AI恩恵:★★★★★
競争力・世界シェア:★★★★★
株価水準:★★★★☆
財務・株主還元:★★★★☆
総合投資判断:強気
2026年9月2日の終値は4,325円、会社予想PER約21倍、PBR約1.78倍、予想配当利回り約1.9%です。
5月の年初来高値6,113円からかなり調整しています。
ロボット市場の回復が続けば利益の伸びが大きくなる可能性があり、現在の株価ならキャピタルゲイン候補として面白いと考えています。
THKと同じく「ロボットメーカーを選ぶ」のではなく「ロボット市場全体の成長を取る」銘柄として注目しています。
有望銘柄③ SMC(6273)
3位はSMCです。
空気圧制御機器で世界トップクラスの企業であり、工場自動化には欠かせない存在です。
2027年3月期第1四半期は売上高2,709億円で前年同期比35.4%増、営業利益739億円で66.4%増となりました。営業利益率は27.3%という非常に高い水準です。
売上数量も22.3%増加し、特に中華圏が37%増と需要回復を牽引しています。
投資判断軸
成長性:★★★★★
自動化・AI恩恵:★★★★★
競争力・世界シェア:★★★★★
株価水準:★★★☆☆
財務・株主還元:★★★★★
総合投資判断:やや強気~強気
2026年9月2日の終値は66,500円、PER約25.2倍、PBR約2.0倍でした。
企業としての質だけなら今回の4社で1位でもおかしくありません。
しかしPERはTHKやナブテスコより高く、100株購入には約665万円必要です。
そのため「企業評価」は最高ですが、「現在の株価からキャピタルゲインを狙う」という判断では3位にしました。
大きく調整した場合には、最優先で再評価したい銘柄です。
有望銘柄④ ダイフク(6383)
4位はダイフクです。
自動倉庫、搬送設備、半導体工場向け搬送システムなどを世界で展開する物流・マテリアルハンドリング大手です。
人手不足、EC、半導体、空港、自動車という複数の市場から自動化需要を取り込めます。
2026年上期は受注高4,401億円で前年同期比31.6%増、売上高3,555億円で8.9%増、営業利益566億円で10.9%増となり、いずれも上期として過去最高でした。
会社は好調な受注を受け、2026年12月期の売上高予想を7,350億円、営業利益を1,130億円へ上方修正しています。
投資判断軸
成長性:★★★★★
自動化・AI恩恵:★★★★★
競争力・世界シェア:★★★★★
株価水準:★★☆☆☆
財務・株主還元:★★★★☆
総合投資判断:やや強気
2026年9月2日の終値は5,557円、PER約26.2倍、PBR約4.67倍でした。
企業としては非常に魅力的です。
特に半導体工場と物流倉庫の自動化という二つの大型テーマを同時に取れる点は高く評価しています。
一方、成長期待はすでに株価へかなり織り込まれています。
そのため現在は高値を追うより、世界景気懸念などでPERが下がったところを狙いたいと考えています。
参考銘柄 ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)
ロボット関連として将来性が非常に高いのがハーモニック・ドライブ・システムズです。
精密減速機を手掛け、産業用ロボットに加えて協働ロボットやヒューマノイドなどの成長も期待できます。
ただし将来期待が株価へ反映されやすく、PERが非常に高くなる傾向があります。
ヒューマノイドロボット市場が本格的に立ち上がれば大きな成長余地がありますが、現時点では「有望企業」と「買いやすい株価」の差が大きいためランキング外とします。
株価が大きく調整した際には改めて検討したい銘柄です。
産業機械業界の有望銘柄ランキング
1位 THK(6481)
LMガイド+FA+半導体。利益急回復に対してPER12倍台という株価水準を評価。
2位 ナブテスコ(6268)
産業用ロボット精密減速機で世界シェア約60%。ロボット市場回復の恩恵が大きい。
3位 SMC(6273)
世界的FA大手。企業の質は最上位だがPERと購入金額を考慮。
4位 ダイフク(6383)
物流+半導体搬送の世界的自動化企業。受注は非常に強いが株価評価も高い。
今回の順位で特に重要なのは、企業の規模や知名度だけで決めていないことです。
企業の質だけならSMCやダイフクを1位にしてもおかしくありません。
しかしキャピタルゲインを狙うなら、「すでに高く評価されている優良企業」より「利益が急回復しているのに株価評価がまだ追いついていない企業」の方が面白い場合があります。
その意味で今回はTHKを1位、ナブテスコを2位としました。
まとめ
産業機械業界については、今後低迷する業界とは考えていません。
日本産業機械工業会は2026年度の受注額を過去最高の7兆8,022億円と予想しています。産業用ロボット受注も2026年4~6月期に前年同期比40%増となっています。
今後私が重視したいのは、「工場の自動化に不可欠」「複数のロボットメーカーへ部品を供給できる」「半導体設備投資を取り込める」「物流自動化需要を取れる」「世界シェアの高い製品を持つ」という企業です。
産業機械業界の将来性を5段階で評価するなら「5」。
機械業界には景気循環がありますが、人手不足だけは景気が多少悪化しても簡単には解消しません。
これからの産業機械は、単純な設備投資商品ではなく、「人が足りない企業が事業を続けるために必要な設備」へ変わっていくと考えています。
現時点ではキャピタルゲインを狙う本命をTHK(6481)、ロボット市場拡大を狙う対抗をナブテスコ(6268)とします。
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