IHI(7013)が2026年8月5日に発表した2027年3月期第1四半期決算を分析します。
売上収益は3745億4800万円で前年同期比10.9%増、営業利益732億1800万円で250.5%増、税引前利益819億6200万円で305.3%増、親会社の所有者に帰属する四半期利益は535億1800万円で361.3%増となりました。
数字だけなら文句なしの好決算ですが、今回の営業利益には不動産譲渡益約400億円が含まれています。
ただし、この400億円を単純に除いても営業利益は約332億円となり、前年同期208億8900万円に対して約59%増です。
つまり、不動産売却で利益が膨らんだ面は大きいものの、それを除いても本業はかなり強い決算です。
今回の決算を5段階で評価
| 評価項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| 売上収益 | ★★★★☆ | 3745億円、10.9%増 |
| 営業利益 | ★★★★★ | 732億円、250.5%増 |
| 実質的な本業利益 | ★★★★★ | 不動産譲渡益400億円を除いても約59%増 |
| 航空・宇宙・防衛 | ★★★★★ | 売上21.0%増、営業利益4.4%増 |
| 資源・エネルギー・環境 | ★★★★★ | 33億円赤字から28億円黒字へ |
| 産業システム・汎用機械 | ★★★★★ | 営業利益3億円から55億円へ大幅改善 |
| 社会基盤 | ★★☆☆☆ | 30%減収、18億円の赤字 |
| 受注高 | ★★☆☆☆ | 全体では15.0%減 |
| 通期予想 | ★★★★★ | 営業利益2500億円へ上方修正 |
| 進捗率 | ★★★★★ | 営業利益29.3%、純利益31.1% |
| 特殊要因 | ★★★☆☆ | 不動産譲渡益400億円が大きい |
| CF | ★★☆☆☆ | 営業CF432億円のマイナス |
| 財務 | ★★★★☆ | 自己資本比率28.3%へ改善 |
| 株主還元 | ★★★★★ | 分割調整後20円から23円へ増配 |
| キャピタルゲイン期待 | ★★★★★ | 航空・防衛・原子力の成長と上方修正を評価 |
売買判断
保有 ★★★★★
追加買い ★★★★☆
売却 ★☆☆☆☆
私はIHIの保有を継続します。
営業利益250%増という表面的な数字だけなら特殊要因が大きすぎますが、不動産売却益400億円を除いても本業利益は大幅に伸びています。
さらに会社は第1四半期の段階で通期営業利益予想を2500億円へ上方修正しました。
キャピタルゲインという面でもかなり評価できる内容です。
ただし株価が決算を受けて大きく上昇したところを追いかけるより、私は押し目で追加する考えです。
不動産売却益を除いても本業は約59%増益
今回の営業利益は732億1800万円ですが、東京都江東区の不動産譲渡によって約400億円の利益を計上しています。
これを単純に除くと約332億円です。
前年同期の営業利益は208億8900万円ですので、それでも約59%増益となります。
さらに売上総利益は749億7500万円から893億9000万円へ約19%増えた一方、販管費は553億7100万円から576億9300万円への増加に抑えられています。
そのため今回のIHIは、
「不動産売却で利益が急増しただけ」ではありません。
民間航空エンジン、原子力、車両過給機など本業側の採算改善もしっかり進んでいます。
航空・宇宙・防衛は引き続き成長の中心
航空・宇宙・防衛は売上収益1547億円で21.0%増、営業利益291億円で4.4%増となりました。
民間向け航空エンジンではスペアパーツ販売が伸びており、防衛も防衛予算拡大を背景に需要増加が期待されています。
IHIは今後、民間航空エンジン、防衛、原子力を成長事業として位置付け、生産能力拡充へ先行投資する方針です。
売上成長に対して利益の伸びはまだ小さいですが、今後キャパシティ拡大が利益につながれば、さらに伸びる余地があります。
資源・エネルギーと産業機械も改善
資源・エネルギー・環境は前年33億円の営業赤字から28億円の黒字へ転換しました。
原子力の需要拡大や、国内カーボンソリューション・原動機事業などのライフサイクルビジネス拡大が寄与しています。
産業システム・汎用機械も営業利益3億円から55億円へ大幅増益です。車両過給機事業の採算改善が効いています。
航空・防衛だけではなく、これまで利益面で弱かった事業まで改善していることを私は高く評価します。
一方、社会基盤は売上30%減、18億円の営業赤字となっており、ここは今回の弱点です。
受注高15%減は少し気になる
全体の受注高は4243億円から3607億円へ15.0%減少しました。
特に資源・エネルギー・環境は44.2%減、社会基盤は28.1%減です。
一方で航空・宇宙・防衛は1380億円で0.8%増、産業システム・汎用機械も4.8%増となっています。
現在の利益は非常に強いですが、将来の売上につながる受注が全体では減っています。
そのため次の決算では、利益以上に受注高が回復するかも確認したいです。
通期予想を上方修正
会社は第1四半期実績を踏まえ、通期予想を修正しました。
売上収益 1兆8400億円
営業利益 2500億円
税引前利益 2400億円
親会社帰属利益 1720億円
を見込んでいます。
第1四半期の進捗率は、
売上収益 約20.4%
営業利益 約29.3%
税引前利益 約34.2%
純利益 約31.1%
です。
不動産譲渡益400億円を含むため、29%という営業利益進捗をそのまま強気には見ません。
それでも会社自身が通期営業利益を2500億円へ上方修正していることは重要です。
第2四半期以降の為替前提は1ドル145円です。
営業CFは赤字、ここは注意
営業活動によるキャッシュ・フローは432億4800万円のマイナスです。
主な理由は棚卸資産の増加と法人税支払いです。棚卸資産は前期末5042億円から5545億円へ約502億円増えています。
一方、投資CFは236億4300万円のプラスですが、不動産売却による484億7000万円の収入が大きく寄与しています。
したがって今回のCFは、利益ほど強くありません。
成長事業への増産準備によって在庫が増える面はありますが、次回以降に営業CFが改善するかは必ず確認したいです。
財務は改善
総資産は2兆4613億円、資本は7238億円です。
親会社所有者帰属持分比率は26.9%から28.3%へ改善しました。
有利子負債もリース負債を含め4871億円で、前期末から27億円減少しています。
一方、現金及び現金同等物は1551億円から1170億円へ減少しました。
成長投資を本格化させる段階ですので、今後は利益だけでなく財務とCFのバランスも重要になります。
配当は実質増配
IHIは2025年10月に1株を7株へ株式分割しています。
分割調整後の前期年間配当は20円相当です。
今期は中間11.50円、期末11.50円の年間23円を予定しており、実質3円増配となります。
利益成長に合わせて株主還元も増えている点は評価できます。
JAXA案件の資格停止は注意
今回、IHIエアロスペースがJAXAとの契約で事実と異なる報告に基づく費用請求が確認されたとして、5か月間の競争参加資格停止処分を受けています。
会社は現時点で業績影響が発生する場合には速やかに予想へ反映するとしています。
今のところ通期予想には大きな影響を織り込んでいませんが、防衛・宇宙を成長事業としているだけに、私は今後の受注への影響を確認します。
私ならどう売買するか
私はIHIを保有継続します。
今回の営業利益250%増だけを見ると特殊要因が大きいですが、不動産売却益を除いても本業利益は約59%増です。
民間航空エンジン、防衛、原子力に加えて、資源・エネルギーや産業機械まで改善しています。
さらに通期予想も上方修正されました。
私は現在の保有分を維持し、株価が大きく調整する場面では追加買いを検討します。
次の決算で見るポイント
最重要は、不動産譲渡益がなくても営業利益が高水準を維持できるかです。
次に航空・宇宙・防衛の売上・利益、受注高3607億円の回復、営業CF、棚卸資産を確認します。
特に民間航空エンジンのスペアパーツ、防衛、原子力が引き続き利益成長を牽引できるかを見ます。
売却を考える条件
私が売却を考えるのは、不動産売却益を除いた本業利益が再び減少へ転じる場合です。
また、航空・防衛の受注が減少する、JAXA問題が他案件の受注へ波及する、棚卸資産増加と営業CF悪化が長期化する場合も評価を見直します。
通期営業利益2500億円が下方修正される場合も警戒します。
今回の私の結論
今回のIHIの第1四半期決算は、特殊要因を差し引いてもかなり強い決算です。
売上収益10.9%増、営業利益250.5%増、純利益361.3%増という数字には、不動産譲渡益約400億円が含まれています。
しかし、その400億円を除いても単純調整後営業利益は約332億円となり、前年同期比で約59%増です。
航空・宇宙・防衛、原子力、産業機械など本業の改善も確認できます。
一方で受注高は15%減少し、営業CFも432億円の赤字です。この2点は次回確認が必要です。
そのため今回の総合評価は★★★★★です。
私は保有を継続し、押し目では追加買いを検討します。
キャピタルゲインという視点で次に重要なのは、今回の732億円という営業利益をそのまま比較することではありません。
不動産売却益がなくなった第2四半期以降でも、航空エンジン・防衛・原子力を中心に高い本業利益を維持できるか。
ここが確認できれば、IHIの利益水準そのものが一段上がったと判断できると考えます。
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