電気機器業界の今後はどうなる?
電気機器業界について、私は今後3~5年を「強気」と見ています。
電気機器というと家電メーカーをイメージしやすいですが、東証の電気機器には、半導体関連、電子部品、FA、パワー半導体、電力機器、計測機器、IT・デジタル関連など幅広い企業が含まれています。
今後特に重要になるのが、AI・データセンター、半導体、電力インフラ、自動化、省エネルギーの5分野です。
2026年4月の国内電子工業生産を見ると、電子部品・デバイスは前年同月比29.9%増、電子デバイスは46.4%増、集積回路は63.3%増となりました。産業用電子機器も26.7%増となっており、電子・電気関連の需要はかなり強くなっています。
世界の半導体市場もAI投資によって急拡大しています。WSTSによると2026年上期の世界半導体市場は7,020億ドルとなり、前年同期比102%増となりました。特にメモリーとロジックがAIインフラ投資を背景に成長を牽引しています。
電気機器業界は今後、単なる景気敏感業種ではなく、「AI社会を動かすために必要な設備を供給する業界」へ変わっていくと考えています。
AIは半導体企業だけのテーマではない
AI関連株というとNVIDIAのような半導体企業が注目されますが、AIデータセンターには半導体以外にも大量の設備が必要です。
サーバー
電源設備
変圧器
配電設備
冷却設備
電子部品
コンデンサ
電源モジュール
半導体検査装置
などです。
つまりAIサーバーが増えれば増えるほど、その周辺にある電気機器メーカーにも利益が流れます。
今後の電気機器株では、「AIそのものを作る企業」だけでなく「AIを動かすために必ず必要になる企業」を探すことが重要だと思います。
次の巨大テーマは「電力不足」
AIデータセンターが増えるほど電力需要も増えます。
ここが今後の電気機器業界で非常に重要です。
日立は2026年5月、北米でAIデータセンター向けにGW級の電力供給拠点「エネルギーパーク」を開発する計画を発表しました。発電・蓄電設備、送配電設備、エネルギーマネジメントシステムを組み合わせる構想です。
日立エナジーも世界的な電力需要拡大に対応するため、送配電設備の製造能力などへ90億ドル規模の投資を進めています。AI、データセンター、電動化による電力需要増加が背景にあります。
AI関連投資が続けば、GPUだけではなく「GPUへ電気を届ける設備」が不足します。
私はこの電力インフラ需要を、今後の電気機器業界で最も長く続くテーマの一つと見ています。
電子部品もAI向けへ変わる
電子部品メーカーにも変化が起きています。
例えば村田製作所はスマートフォン向け部品のイメージが強い企業ですが、現在はAIサーバー向けコンデンサや電源モジュールの需要が急拡大しています。
村田製作所は2027年3月期について、コンピュータ向け売上高を前期比44.5%増と見込んでいます。特にサーバー向けコンデンサや電源モジュールの増加を想定しています。
これまでスマートフォン市場の成長鈍化が電子部品企業の弱点でしたが、AIサーバーという新しい巨大市場が生まれたことは大きな変化です。
パワー半導体も長期成長分野
もう一つ重要なのがパワー半導体です。
パワー半導体は、電気を効率よく変換・制御するために使用されます。
EV、鉄道、工場設備、再生可能エネルギー、データセンターなど、電力を大量に使用する場所で必要になります。
三菱電機はSiCパワー半導体などへ投資しており、2026年10月には福岡地区の新工場棟を稼働する計画です。
AIと脱炭素という一見別のテーマが、実際には「電力を効率よく使う」という部分でつながっています。
その両方を取れる企業は今後強いと考えています。
一方で家電だけでは高成長しにくい
電気機器業界全体を強気としていますが、すべての分野が有望というわけではありません。
私は特に、テレビ、白物家電など成熟した家電市場だけに依存する企業については慎重に見ています。
家電は中国・韓国メーカーとの価格競争も激しく、人口減少が続く日本国内だけでは数量成長も期待しにくいためです。
今後は「家電会社」から、
AI
電力
半導体
FA
デジタル
電子部品
などへ事業を転換できるかが重要になります。
特定の商品だけを見るのではなく、企業全体の事業ポートフォリオがどこへ向かっているかを見る必要があります。
電気機器株を見るための投資判断軸
電気機器株では「成長性」「AI・電力恩恵」「競争力」「株価水準」「財務・株主還元」の5項目で評価します。
特にこの業界では、企業評価と株価評価を分けることが重要です。
AI関連企業はPER30倍、40倍以上でも買われることがあります。業績が素晴らしくても、成長期待がすべて株価へ織り込まれていればキャピタルゲイン余地は小さくなります。
そのため今回は、将来性だけではなく現在の株価からの投資妙味まで含めて順位を付けます。
有望銘柄① 三菱電機(6503)
電気機器業界の第一候補は三菱電機です。
三菱電機の最大の魅力は、成長テーマが一つではないことです。
FA
電力システム
パワー半導体
空調
鉄道
防衛・宇宙
ビルシステム
など幅広い事業を持っています。
特に今後は、FAによる工場自動化、電力インフラ、データセンター、SiCパワー半導体など複数の大型テーマから恩恵を受けられます。
2027年3月期第1四半期は売上高1兆4,971億円で前年同期比14.0%増、営業利益1,395億円で24.6%増、純利益1,098億円で20.8%増となりました。会社は通期純利益予想も4,950億円へ上方修正し、過去最高益を更新する見込みです。
投資判断軸
成長性:★★★★★
AI・電力恩恵:★★★★★
競争力:★★★★★
株価水準:★★★★☆
財務・株主還元:★★★★☆
総合投資判断:強気
2026年9月2日の終値は5,276円、予想PER21.81倍、PBR2.36倍でした。年初来高値6,686円からはある程度調整しています。
今期も20%を超える純利益成長を見込みながらPER20倍台前半という点を評価しています。
AIだけに依存せず、電力、FA、半導体、防衛など複数の成長テーマを持っているため、電気機器業界の本命とします。
有望銘柄② 日立製作所(6501)
2位は日立製作所です。
現在の日立は昔の「総合家電メーカー」とはほとんど別の会社になっています。
Lumadaを中心とするデジタル事業、鉄道、電力インフラ、データセンター、産業システムなど社会インフラ分野へ軸足を移しています。
特に注目したいのが日立エナジーです。
AIデータセンターの急増によって世界的に送配電設備が不足する中、変圧器やHVDCなど電力網関連の需要を取り込めます。さらに電力インフラへAIを組み込む「HMAX Energy」なども展開しています。
2027年3月期第1四半期は売上収益2兆7,096億円で前年同期比20.0%増、調整後営業利益2,943億円で39.5%増となりました。Adjusted EBITAも3,235億円となり、第1四半期として過去最高となっています。
投資判断軸
成長性:★★★★★
AI・電力恩恵:★★★★★
競争力:★★★★★
株価水準:★★★☆☆
財務・株主還元:★★★★★
総合投資判断:やや強気~強気
2026年9月2日の終値は5,335円、予想PER26.58倍、PBR3.63倍でした。年初来高値6,039円からは調整しています。
企業としては今回の4社でもトップクラスです。
一方、三菱電機よりPER・PBRとも高く、日立の事業改革や電力成長はすでに一定程度評価されています。
そのため企業評価なら1位候補ですが、現在の株価水準まで含めて2位とします。
有望銘柄③ 村田製作所(6981)
3位は村田製作所です。
村田製作所は積層セラミックコンデンサなど電子部品で世界的な競争力を持っています。
これまではスマートフォン向け需要の影響を大きく受けていましたが、今後はAIサーバーやデータセンターが新しい成長市場になります。
2027年3月期第1四半期は売上収益5,023億円で前年同期比20.7%増、営業利益985億円で59.8%増、純利益814億円で63.7%増となりました。
好調な第1四半期を受けて会社は通期予想を上方修正し、売上収益2兆1,100億円、営業利益4,300億円を見込んでいます。営業利益は前期比52.6%増となる計画です。
AIサーバー向けではコンデンサ需要が急増しており、電源モジュールも新しい収益源になり始めています。
投資判断軸
成長性:★★★★★
AI・電力恩恵:★★★★★
競争力:★★★★★
株価水準:★★☆☆☆
財務・株主還元:★★★★★
総合投資判断:やや強気
2026年9月2日の終値は6,920円でした。PBRは約5倍で、PERも高い水準まで評価されています。
業績だけなら1位でもおかしくありません。
ただしAIサーバー向け成長が株価へかなり織り込まれており、株価変動も大きくなっています。
そのため現在は高値を追うより、半導体株全体が調整した場面を狙いたい銘柄です。
有望銘柄④ アドバンテスト(6857)
4位はアドバンテストです。
AI半導体関連としては今回の4社で最も直接的な恩恵を受ける企業です。
半導体を製造した後、そのチップが正常に動くかを検査する半導体テストシステムで世界的な競争力を持っています。
AI半導体は高性能化するほどテストも複雑になるため、単純に半導体生産数量が増える以上の恩恵が期待できます。
2027年3月期第1四半期は売上高3,675億円で前年同期比39.3%増、営業利益1,900億円で53.3%増、四半期利益1,748億円で93.8%増となりました。高性能SoC、HBMを含む高性能DRAMなどAI関連半導体が需要を牽引しています。
営業利益率は50%を超える極めて高い収益力です。
投資判断軸
成長性:★★★★★
AI・電力恩恵:★★★★★
競争力:★★★★★
株価水準:★☆☆☆☆
財務・株主還元:★★★★★
総合投資判断:中立~やや強気
2026年9月2日の終値は32,540円、予想PER35.72倍、PBR22.59倍でした。8月14日には38,730円の年初来高値を付けています。
企業の業績だけなら★★★★★です。
しかし時価総額も非常に大きくなり、PBR20倍超という高い成長期待が株価へ織り込まれています。
AI半導体需要がさらに上振れすれば上昇余地はありますが、少しでも成長率が鈍化するとPER・PBRの切り下がりによって株価が大きく下落する可能性があります。
そのため「非常に良い会社だが、今の価格では慎重」という判断で4位とします。
参考銘柄 キーエンス(6861)
企業としての質だけならキーエンスも外せません。
FAセンサーや画像処理機器などで高い競争力を持ち、工場自動化・省人化の長期成長を取り込めます。
利益率、財務、海外成長力は電気機器業界でもトップクラスです。
一方、常に高いPERで評価されやすく、100株購入に必要な資金も非常に大きくなります。
そのため企業評価は★★★★★ですが、今回はキャピタルゲインと購入しやすさまで考えてランキング外とします。
大幅な株価調整が起きた場合には優先して検討したい銘柄です。
電気機器業界の有望銘柄ランキング
1位 三菱電機(6503)
FA+電力+パワー半導体+防衛。利益成長に対してPER20倍台前半で、現在の投資バランスを最も評価。
2位 日立製作所(6501)
AI+デジタル+電力インフラ。企業の質は最上位だが株価評価もやや高い。
3位 村田製作所(6981)
AIサーバー向け電子部品が急成長。業績は非常に強いが期待も株価へ織り込まれている。
4位 アドバンテスト(6857)
AI半導体テスターの本命。利益成長は圧倒的だが高PER・高PBRを考慮。
企業の成長率だけで選ぶならアドバンテストや村田製作所を上位にします。
しかし株式投資では、すでに株価へ織り込まれている成長を再び買っても大きな利益にならないことがあります。
そのため今回は、「利益成長が続きながらバリュエーションが相対的に低い」という理由で三菱電機を1位としました。
まとめ
電気機器業界については、今後低迷する業界とは考えていません。
むしろAI、半導体、データセンター、電力不足、自動化、脱炭素という複数の大型テーマが同時に発生しているため、今後数年間は日本株でも重要なセクターになると考えています。
2026年4月の電子部品・デバイス生産は前年同月比29.9%増、世界半導体市場も2026年上期に前年同期比102%増となっており、AI設備投資の強さが数字にも表れています。
一方、家電など成熟市場だけに依存する企業や、中国市場への依存度が極端に高い企業には注意が必要です。
今後私が重視したいのは、「AI・データセンター需要を取れる」「送配電・電力設備を持つ」「世界シェアの高い電子部品を持つ」「FA・省人化需要を取れる」「成長率に対して株価が高すぎない」という企業です。
電気機器業界の将来性を5段階で評価するなら「5」。
AI時代に最も注目されるのは半導体かもしれませんが、その半導体を検査し、電気を送り、工場を自動化し、サーバーを安定稼働させるのは電気機器メーカーです。
これからの電気機器業界は、「AIを作る業界」ではなく「AI社会そのものを動かす設備を供給する業界」として見たいと思います。
現時点では本命を三菱電機(6503)、企業の長期成長力を重視する対抗を日立製作所(6501)とします。
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