データセンター業界の今後はどうなる?
データセンターについて、私は今後5~10年を「強気」と見ています。
生成AIの普及によって必要な計算量が急増し、従来型のクラウド向けデータセンターとは異なる、GPUを大量に搭載したAIデータセンターへの投資が世界で拡大しています。
さらに重要なのは、一度AIデータセンターを建設すれば終わりではないことです。AIモデルの高度化、企業でのAI利用、推論処理の増加によって、計算能力を継続的に増強する必要があります。
日本政府もデータセンターを重要な産業インフラとして位置付けています。2026年4月にはデータセンター集積型「GX戦略地域」の有望地域として北海道、秋田県、宮城県、栃木県、茨城県、富山県、香川県、福岡県、鹿児島県の9地域を選定しました。選定要件には将来的にGW級まで電力供給を拡張できることなども含まれています。
私はデータセンターを、AIブームが一巡すれば終了するテーマではなく、AI社会を支える「電力・通信と並ぶ新しい社会インフラ」として見ています。
データセンターは「建物」より電力が重要になる
今後最大の問題になるのが電力です。
通常のサーバーと比較して、GPUを大量に搭載したAIサーバーは非常に大きな電力を消費します。IIJも最新GPUを搭載したAIサーバーは従来型汎用サーバーと比較して5倍以上の電力を消費すると説明しています。
そのためデータセンターは、土地さえあれば建設できる施設ではなくなります。
大量の電力
高速通信回線
冷却設備
水
災害耐性
光ファイバー
などを同時に確保する必要があります。
政府が「ワット・ビット連携」、つまり電力と通信インフラを一体で整備しようとしている理由もここにあります。
今後は東京や大阪だけにデータセンターを集中させるのではなく、電力供給力のある地方へ分散していく可能性が高いと考えています。
AIデータセンターでは冷却方式も変わる
もう一つ大きな変化が冷却です。
GPUの消費電力が増えるほど発熱量も増えます。従来の空調による空冷だけでは対応が難しくなり、水冷や液浸冷却などが必要になります。
IIJは白井データセンターキャンパスで直接水冷方式の高密度AIサーバーを使ったモジュール型データセンターを2026年4月から本格稼働させています。また白井データセンター3期棟も、水冷設備を将来導入できる「水冷Ready」設計となっています。
つまり今後のデータセンター投資では、建設会社だけでなく、電力設備、冷却設備、光通信機器など周辺企業にも巨大な市場が生まれます。
光ファイバー需要も急増する
AIデータセンターではGPU同士を高速で接続する必要があるため、通信容量も急増します。
そこで注目したいのが光ファイバーです。
フジクラは2026年3月、国内データセンター向けとして最多心数となる4000心の光ファイバーケーブルを製品化しました。生成AIやクラウドの拡大によってデータセンター周辺の通信量が急増していることを背景としています。
フジクラ自身も今後、日米で最大3,000億円の戦略投資を行い、データセンター向けSWR/WTC光ファイバーケーブルの生産能力を増強する方針です。
私はデータセンター関連株では、「データセンターを建てる会社」以上に「どこのデータセンターが建っても必要になる部品を売る会社」を高く評価しています。
日本独自の追い風は「ソブリンAI」
日本ではもう一つ重要なテーマがあります。
それがソブリンAIです。
政府機関や企業が重要なデータを海外クラウドだけに依存せず、日本国内で安全に管理・処理したいという需要です。
この分野で特に注目されるのが、さくらインターネットです。
さくらインターネットは2026年2月、石狩データセンターでNVIDIA Blackwell GPU約1,100基を搭載したAIインフラの稼働を開始しました。
さらにガバメントクラウドにも採択されており、単なるデータセンター運営会社から「国産クラウド・AIインフラ会社」へ変わりつつあります。
一方でデータセンター投資にもリスクはある
データセンター業界を強気で見ていますが、すべての投資が成功するとは考えていません。
最大のリスクは設備投資額です。
データセンターは建物を作るだけでなく、GPU、電源設備、冷却設備、通信設備などへ巨額の資金が必要になります。
さらに、
・AI投資が予想より早く減速する
・GPU性能向上で必要台数が減る
・電力を確保できない
・建設費が上昇する
・GPU更新による減価償却負担が大きい
・競争激化によって利用料金が低下する
といったリスクがあります。
そのため私は、「データセンター事業をやっている」というだけでは高評価にしません。
巨額投資を行った後に、その設備を高稼働率で使い続けられる企業を選ぶ必要があります。
データセンター関連株を見るための投資判断軸
データセンター関連株では「成長性」「データセンター恩恵」「収益化力」「株価水準」「財務・投資負担」の5項目で評価します。
特に重要なのが収益化力です。
AI関連設備投資額が大きい企業より、設備投資によって実際に売上高・営業利益が増えている企業を高く評価します。
有望銘柄① フジクラ(5803)
データセンター関連株で現在第一候補にするのはフジクラです。
フジクラ自身がデータセンターを運営しているわけではありません。
しかし、私はむしろそこを評価しています。
AIデータセンターがどの会社によって建設されても、高速・大容量の光通信設備が必要になります。
フジクラは独自の細径高密度型光ファイバーケーブルSWR/WTCを持ち、生成AIによるデータセンター需要拡大を直接取り込んでいます。会社自身も情報通信事業を、生成AI普及によって急成長するデータセンター需要を取り込む中核事業と位置付けています。
そして業績への反映が非常に大きくなっています。
2027年3月期第1四半期は売上高4,020億円で前年同期比50.1%増、営業利益1,048億円で155.1%増、純利益804億円で156.8%増となりました。データセンター向け光コンポーネント需要の急拡大が大きく寄与しています。
投資判断軸
成長性:★★★★★
データセンター恩恵:★★★★★
収益化力:★★★★★
株価水準:★★★★☆
財務・投資負担:★★★★☆
総合投資判断:強気
2026年9月3日の終値は4,951円、予想PER25.1倍、PBR13.47倍です。ROEは32.48%と非常に高い水準です。
PBR13倍台だけを見るとかなり高く見えます。
しかし第1四半期営業利益が前年同期比2.5倍以上に増えており、会社予想の経常利益も大幅増益となっています。
株価も5月の年初来高値7,933円から大きく調整しました。
AIデータセンター投資が続くという前提なら、現在のデータセンター関連株では最も利益成長と株価水準のバランスが面白いと考えています。
有望銘柄② インターネットイニシアティブ(3774)
2位はインターネットイニシアティブ、IIJです。
IIJはネットワーク、クラウド、セキュリティ、データセンターを一体で提供できる企業です。
AI時代には単純にデータセンターのスペースを貸すだけではなく、
データセンター
高速ネットワーク
クラウド
GPU
セキュリティ
まで一括して提供できる企業が有利になると考えています。
IIJは白井データセンターキャンパスでAI向け直接水冷設備を開発しているほか、今後は「AIバックボーン事業者」として、GPUクラウド、低遅延ネットワーク、液冷データセンター、エッジデータセンターを組み合わせていく方針です。
2027年3月期第1四半期は売上収益976億円で前年同期比27.1%増、営業利益65.9億円で9.2%増となりました。
投資判断軸
成長性:★★★★★
データセンター恩恵:★★★★★
収益化力:★★★★☆
株価水準:★★★★☆
財務・投資負担:★★★★☆
総合投資判断:強気
2026年9月3日の終値は3,250円、予想PER23.05倍、PBR3.58倍です。
売上高27%増に対して営業利益の伸びが9%程度にとどまっている点は注意したいところです。
一方、ネットワークやクラウドなど月額課金型の収益が積み上がるため、データセンター専業企業より収益基盤が安定しています。
フジクラを「AIデータセンター建設ラッシュを狙う銘柄」とするなら、IIJは「AIデータセンターを長期間運営・利用する需要を狙う銘柄」と考えています。
有望銘柄③ NTT(9432)
3位はNTTです。
NTTは世界有数のデータセンター事業者です。
2026年3月末時点で、世界で稼働中のデータセンター電力容量は約1,630MWに達しています。NTTはデータセンターをAI時代のコアインフラと位置付け、重点成長領域として投資を拡大しています。2026年度のデータセンター投資額は33億ドルを計画しています。
さらにNTTは2025年9月にNTTデータグループを完全子会社化しました。2026年5月の中期経営戦略見直しでも「データセンターを核とした海外事業の成長」をグループ成長戦略の一つとして明確に掲げています。
投資判断軸
成長性:★★★★☆
データセンター恩恵:★★★★★
収益化力:★★★★★
株価水準:★★★★★
財務・投資負担:★★★★☆
総合投資判断:やや強気~強気
2026年9月3日の終値は173.2円、予想PER14.39倍、PBR1.43倍、予想配当利回り3.12%です。
今回の4社では株価水準に最も安心感があります。
問題はNTT全体が非常に巨大なため、データセンター事業が20%成長しても会社全体の利益が急激に増えるわけではないことです。
そのため値幅ではフジクラやIIJに劣る可能性があります。
一方、「AIデータセンターが成長しなかったら何も残らない」という企業ではないため、安定性とバリュエーションを含めると非常に魅力的です。
有望銘柄④ さくらインターネット(3778)
4位はさくらインターネットです。
今回の銘柄の中では、データセンター・国産クラウド・GPUというテーマへの純度が最も高い企業です。
石狩データセンターではNVIDIA Blackwell GPU約1,100基を搭載したAIインフラが稼働し、生成AI向けクラウド「高火力」などを展開しています。
2027年3月期第1四半期は売上高111億34百万円で前年同期比48.6%増、営業利益12億30百万円となり、前年同期の4億57百万円の営業赤字から黒字転換しました。通期営業利益予想25億円に対して第1四半期だけで約49%まで進捗しています。
業績変化としては非常に面白い局面です。
投資判断軸
成長性:★★★★★
データセンター恩恵:★★★★★
収益化力:★★★★☆
株価水準:★☆☆☆☆
財務・投資負担:★★☆☆☆
総合投資判断:中立~やや強気
2026年9月3日の終値は3,510円、会社予想PERは約93.7倍、PBRは約4.6倍です。
企業の成長率は非常に魅力的ですが、現在の利益水準に対する株価評価は高いです。
さらにGPUやデータセンターへの大型投資が必要になるため、有利子負債や減価償却費も増えやすくなります。
そのため「データセンター業界が伸びるから、さくらインターネットを無条件で買う」という判断にはしません。
利益成長が現在の株価評価へ追いついてくるかを確認しながら狙いたい銘柄です。
参考銘柄 KDDI(9433)
KDDIもデータセンター関連として有力です。
KDDIは「Telehouse」ブランドで世界的にデータセンターを展開しています。2026年6月にはフランクフルトで6棟目となるデータセンターを開業し、AI需要に対応するため電力容量を5.4MW拡張しました。既存5棟も高い稼働率で運用されています。
2027年3月期第1四半期も売上高5.1%増、調整後営業利益21.1%増と好調です。
ただしKDDI全体に対するデータセンター事業の影響はNTT以上に限定的なので、今回はランキング外としました。
通信株としての安定性を重視するなら十分有力です。
データセンター関連の有望銘柄ランキング
1位 フジクラ(5803)
AIデータセンター向け光ファイバー需要が利益へ直結。第1四半期営業利益155%増を評価。
2位 インターネットイニシアティブ(3774)
データセンター+ネットワーク+クラウド+AI基盤。AIインフラを総合的に提供できる。
3位 NTT(9432)
世界最大級のデータセンター基盤+PER14倍台。安定性と割安性では最上位。
4位 さくらインターネット(3778)
国産GPUクラウドの本命。成長率は高いがPER90倍超と投資負担を考慮。
データセンター事業への純度だけなら、さくらインターネットをもっと上位にできます。
しかし株式投資では、「テーマへの純度が高い企業」が必ずしも最も儲かる株とは限りません。
今回1位をフジクラにした理由もそこにあります。
データセンターを自ら建設する企業は巨額の設備投資を負担します。
一方フジクラは、Microsoft、Amazon、Google、NTTなど、誰がデータセンターを建設しても増える光通信需要を取り込めます。
私は現在のデータセンター投資では、こうした**「データセンター版のつるはし銘柄」**を優先したいと思います。
まとめ
データセンターについては、今後低迷する業界とは考えていません。
むしろAIが実験段階から企業の日常業務へ広がるほど、データセンター需要はさらに増える可能性があります。
政府もデータセンター集積型GX戦略地域を設け、将来的なGW級電力供給を前提とした新たなデータセンター集積地形成を進めています。
今後私が特に重視したいのは、「GPU需要を取れる」「大量の電力を確保できる」「液冷・省電力技術を持つ」「高速光通信を供給できる」「データセンター投資がすでに利益へ表れている」という企業です。
データセンター業界の将来性を5段階で評価するなら「5」。
ただし、今後最も利益を上げる会社が「一番大きなデータセンターを持つ会社」とは限りません。
AI時代にデータセンターが増え続けるなら、私は「データセンターを建てる企業」より「データセンターを建てるたびに必ず売れるものを持つ企業」を優先したいと考えています。
現時点ではキャピタルゲインを狙う本命をフジクラ(5803)、データセンター運営・AIインフラの成長を狙う対抗をインターネットイニシアティブ(3774)とします。
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