防衛業界の今後を予想|防衛費拡大は次の段階へ、本当に有望な防衛関連株は?

目次

防衛業界の今後はどうなる?

防衛業界について、私は今後5~10年を「強気」と見ています。

防衛関連株はここ数年ですでに大きく上昇しているため、「もう防衛テーマは終わったのではないか」と考える人もいるかもしれません。しかし私は、防衛産業そのものはまだ成長途中だと考えています。

2026年8月31日に防衛省が公表した2027年度概算要求では、現行の防衛力整備計画に基づく事業だけで歳出ベース約9兆円、契約ベース約8兆円を計上しています。さらに年内に予定される安全保障関連三文書の改定内容に左右される事業については「事項要求」とされており、最終的な予算はさらに積み上がる可能性があります。

重要なのは予算額だけではありません。

2027年度概算要求では、今後重視する分野として「AI」「無人アセット」「スタンド・オフ」「統合防空ミサイル防衛」「宇宙」「サイバー」などが明確に示されています。

つまり日本の防衛投資は、戦闘機や艦艇を単純に増やす段階から、AI・ドローン・ミサイル・衛星・通信を組み合わせた次世代防衛システムへ移り始めています。

ここに今後の防衛関連株を見る重要なポイントがあると考えています。

防衛費増加だけでなく「戦い方そのもの」が変わる

私は今後の防衛関連株を考えるうえで、「防衛費がいくら増えるか」以上に「何へ予算が使われるか」を重視しています。

2027年度概算要求では、AIを利用した意思決定支援、次世代AIプラットフォーム、高機密ソブリンクラウド、防衛情報通信基盤などが主要事業として挙げられています。さらに無人アセットでは情報収集・警戒監視用UAV、攻撃用UAV、UUV、UGVなどへの投資が盛り込まれています。

従来の防衛産業は、

戦闘機
艦艇
潜水艦
ミサイル

など大型装備が中心でした。

今後はそこへ、

AI
ドローン
センサー
レーダー
衛星
通信
クラウド
サイバーセキュリティ

が加わります。

そのため防衛関連株の投資対象も、三菱重工やIHIなどの重工メーカーだけではなく、NECや三菱電機など電機・IT企業へ広がっていくと考えています。

無人機・ドローンは大きな成長分野になる

今後特に市場が大きくなる可能性があるのが無人機です。

防衛省は2027年度概算要求で「世界一無人アセットを駆使する組織」への変革を掲げています。

無人機の利点は、人員への危険を減らせることだけではありません。

高価な有人航空機やミサイルだけを使用するより、比較的低価格な無人機を大量に組み合わせた方がコスト面で有利になる場合があります。

さらにフィジカルAIが発達すれば、複数の無人機が協調して行動する「群制御」なども重要になります。

これは前に取り上げたロボット・フィジカルAIと防衛がつながる分野です。

今後は「防衛株」と「AI株」「ロボット株」「宇宙株」の境界線が徐々になくなっていく可能性があります。

ミサイル・防空関連は長期間需要が続く可能性

もう一つ重要なのがミサイル関連です。

日本ではスタンド・オフ防衛能力や統合防空ミサイル防衛能力の強化が進んでいます。

この分野では三菱重工、三菱電機、IHIなど日本企業が重要な役割を担っています。

ミサイルは一度配備すれば終わりではありません。

生産能力増強
補充
改良
整備
新型開発

が継続します。

防衛設備は開発期間が長い代わりに、一度採用されると長期間にわたって受注が続きやすい特徴があります。

私はこの「受注残が数年先の売上になる」という構造を、防衛株の大きな魅力と考えています。

GCAPは日本の防衛産業を海外市場へ変える可能性

防衛株の長期成長でもう一つ注目したいのがGCAPです。

GCAPは日本・英国・イタリアが共同で進める次期戦闘機開発計画です。

日本企業では三菱重工が機体、IHIがエンジンなど重要分野へ参加しています。

IHIは2035年へ向け、防衛事業の海外展開とGCAPを成長戦略として位置付けています。2024年度1,502億円だった防衛事業売上収益は2025年度2,122億円、2026年度には3,000億円を見込んでいます。

これまで日本の防衛企業は、基本的に国内の防衛省需要へ依存していました。

GCAPや防衛装備品の国際共同開発が進めば、「日本政府に売る防衛産業」から「世界市場でも売れる防衛産業」へ変化する可能性があります。

これが実現すれば、日本の防衛企業に付けられる株価評価そのものが変わるかもしれません。

防衛株で今後重要なのは利益率

ここからは少し投資の視点を強めます。

防衛予算が増えても、企業の利益が増えなければ株価上昇には限界があります。

防衛装備品は高度な技術が必要で、開発期間も長く、設備や人材への先行投資も必要です。

そのため私は今後、

「防衛売上が何%増えたか」

だけでなく、

「防衛事業の利益率が上がっているか」

を見ることが重要だと考えています。

例えば三菱電機は2025年度の防衛・宇宙システム売上高4,214億円、調整後営業利益421億円、利益率10.0%でした。2026年度は売上高5,600億円、利益560億円を見込み、2030年度には売上高8,000億円、利益率12%を目標としています。

防衛予算増加が売上だけではなく利益率改善までつながれば、防衛株の利益成長はかなり長く続く可能性があります。

一方で防衛関連株には「期待の織り込み」がある

防衛業界そのものは強気ですが、防衛関連株すべてを今すぐ買いたいわけではありません。

ここ数年、防衛関連株はかなり大きく上昇しました。

そのため注意したいのは、

・防衛期待でPERが極端に高くなっている
・受注は増えているが利益率が上がっていない
・大型設備投資によってキャッシュフローが悪化している
・増資によって1株価値が希薄化する
・開発遅延やコスト超過が発生する

といった企業です。

防衛業界が10年間成長するとしても、その成長を株価がすでに10年分織り込んでいれば投資妙味は小さくなります。

私は今後の防衛株では「防衛への純度」以上に、「防衛成長に対して現在の株価がまだ高すぎないか」を重視します。

防衛関連株を見るための投資判断軸

防衛関連株では「成長性」「防衛事業への直接性・受注」「技術競争力」「株価水準」「財務・株主還元」の5項目で評価します。

特に今回はキャピタルゲインを重視し、企業として最高評価でもPER30倍を大きく超えている場合は順位を下げます。

有望銘柄① IHI(7013)

防衛関連株で現在第一候補にするのはIHIです。

IHIは戦闘機用エンジン、防衛向け装備品、宇宙関連などを手掛けています。

特に注目したいのが防衛事業そのものの急成長です。

防衛向け航空エンジン・装備品の売上収益は2024年度1,502億円から2025年度2,121億円へ増加し、2026年度には3,000億円を見込んでいます。わずか2年間でほぼ倍になる計画です。

F-35戦闘機エンジン整備、F-15・F-16関連、さらにGCAPの次期戦闘機用エンジンなど長期間の需要が期待できます。IHIは防衛事業について政府と連携した海外展開や生産能力増強も進めています。

航空・宇宙・防衛セグメント全体でも、2026年度は防衛事業の拡大と収益性改善による増益を見込んでいます。

投資判断軸

成長性:★★★★★
防衛事業への直接性・受注:★★★★★
技術競争力:★★★★★
株価水準:★★★★★
財務・株主還元:★★★★☆

総合投資判断:強気

2026年9月3日の終値は2,639.5円、予想PER16.27倍、PBR4.02倍です。2月の年初来高値4,698円からは大きく調整しています。

PBRは高いものの、防衛事業が40%前後のペースで伸び、会社全体でも利益拡大が続く中でPER16倍台という水準を評価しています。

三菱重工ほど防衛株として市場から高い評価を受けていない点も魅力です。

現時点で「防衛株を1銘柄だけ選ぶ」ならIHIを本命とします。

有望銘柄② 三菱電機(6503)

2位は三菱電機です。

防衛株というと三菱重工の方が有名ですが、私は現在の株価を含めると三菱電機をかなり高く評価しています。

三菱電機は、

ミサイルシステム
レーダー
指揮統制システム
電子戦システム
人工衛星
衛星観測

など、これから防衛省が強化する分野を幅広く持っています。

2025年度の防衛・宇宙システム売上高は4,214億円。2026年度は5,600億円と約33%の増加を計画し、2030年度には8,000億円を目指しています。調整後営業利益率についても現在の10%から2030年度12%を目標としています。

これは単なる「防衛関連銘柄」ではなく、防衛が会社全体の成長事業へ変わり始めていることを意味します。

投資判断軸

成長性:★★★★★
防衛事業への直接性・受注:★★★★★
技術競争力:★★★★★
株価水準:★★★★☆
財務・株主還元:★★★★★

総合投資判断:強気

2026年9月3日の終値は5,310円、予想PER21.95倍、PBR2.38倍、自己資本比率60.9%です。2027年3月期第1四半期も会社全体で売上高14.0%増、営業利益24.6%増と好調です。

防衛だけでなく、FA、電力、パワー半導体、データセンターなど別の成長分野も持っています。

防衛テーマが一時的に株式市場で人気を失っても他事業で利益を出せるため、長期保有しやすい防衛関連株として評価しています。

有望銘柄③ NEC(6701)

3位はNECです。

今後の防衛で私がかなり注目している企業です。

理由は、防衛の中心が「機械」だけでなく「情報」へ移り始めているからです。

NECは、

レーダー
防空・ミサイル防衛システム
指揮統制
通信
宇宙状況監視
サイバーセキュリティ
無人アセット

などを手掛けています。

防衛装備庁の中央調達契約額は2022年度944億円から2024年度3,117億円へ約3.3倍に拡大しました。

そして2026年9月2日には三菱重工と防衛分野で戦略的提携に向けた覚書を締結しました。

両社は作戦計画・指揮統制や無人アセットで連携し、「データ・AI主権」の確立を目指します。

これは今後の防衛テーマを象徴する動きだと思います。

三菱重工がミサイル、艦艇、航空機など「身体」を持ち、NECがAI・通信・指揮統制という「頭脳」を持つ形です。

2027年3月期第1四半期のNEC全体も売上収益8,198億円で前年同期比14.5%増、営業利益588億円で66.1%増となっています。

投資判断軸

成長性:★★★★★
防衛事業への直接性・受注:★★★★☆
技術競争力:★★★★★
株価水準:★★★★☆
財務・株主還元:★★★★☆

総合投資判断:やや強気~強気

2026年9月3日の終値は4,729円、PBR2.81倍です。直近のPERは23倍前後の水準で推移しています。

IHIや三菱電機より防衛事業が会社全体に占める割合は小さいものの、AI・サイバー・宇宙・防衛という今後の成長分野が重なっています。

従来型の防衛株ではなく、「次世代防衛システム株」として注目しています。

有望銘柄④ 川崎重工業(7012)

4位は川崎重工業です。

川崎重工は防衛航空機、潜水艦、航空エンジンなど、日本の防衛産業で重要な企業です。

航空宇宙システム事業について、2027年3月期は売上収益7,200億円、事業利益720億円を見込んでいます。前期の売上収益6,136億円、事業利益624億円から増収増益の計画です。

2027年3月期第1四半期も会社全体では売上収益5,436億円で前年同期比11.3%増、営業利益357億円で74.3%増となり、航空宇宙システムなどが利益成長を牽引しました。

防衛だけでなく航空エンジン、ロボット、エネルギーなどにも成長余地があります。

投資判断軸

成長性:★★★★★
防衛事業への直接性・受注:★★★★★
技術競争力:★★★★★
株価水準:★★★★★
財務・株主還元:★★★☆☆

総合投資判断:やや強気

2026年9月3日の終値は2,450.5円、予想PER17.81倍、PBR2.31倍です。3月の年初来高値3,766円からは大きく調整しています。

株価水準だけならかなり魅力があります。

ただし川崎重工は2026年7月に新株発行と転換社債型新株予約権付社債による大型資金調達を実施しています。

成長投資に使われる資金ではありますが、既存株主にとっては希薄化を考慮する必要があります。

この点がなければ今回の順位はさらに上でもよいと思います。

参考銘柄 三菱重工業(7011)

防衛関連企業として最も重要な一社である三菱重工をランキング外にした理由は、「企業が悪いから」ではありません。

むしろ企業評価だけなら★★★★★です。

戦闘機、ミサイル、艦艇、潜水艦、宇宙ロケットなど幅広い防衛・宇宙事業を持ち、2026年度第1四半期の航空・防衛・宇宙セグメントは売上収益2,860億円、事業利益324億円まで拡大しています。

会社全体でも第1四半期の受注高2兆224億円、売上収益1兆1,942億円、事業利益1,596億円と非常に好調です。

さらに2026年9月2日にはNECと、AI・指揮統制・無人アセットなど次世代防衛分野で戦略的提携に向けた覚書を締結しています。

問題は株価です。

2026年9月3日の終値は3,795円、予想PER33.56倍、PBR4.02倍です。

IHIのPER16倍台、川崎重工の17倍台、三菱電機の21倍台と比較すると、防衛・原子力・ガスタービンなど複数の成長期待をかなり織り込んでいます。

企業評価:★★★★★
投資判断:中立~やや強気

防衛関連の代表株であることは間違いありませんが、「今からどの銘柄でキャピタルゲインを狙うか」という基準では、現在はIHIや三菱電機を優先します。

三菱重工が大きく調整してPER20倍台前半まで下がるような局面があれば、ランキング上位へ戻したい銘柄です。

防衛関連の有望銘柄ランキング

1位 IHI(7013)
戦闘機エンジン+GCAP+防衛売上急拡大。防衛事業の成長に対してPER16倍台を最も評価。

2位 三菱電機(6503)
ミサイル+レーダー+電子戦+宇宙。防衛・宇宙売上を4,214億円から5,600億円へ拡大する計画。

3位 NEC(6701)
AI+指揮統制+レーダー+サイバー。これからの「情報中心の防衛」で存在感が高まる可能性。

4位 川崎重工業(7012)
防衛航空機+潜水艦+航空エンジン。PER17倍台は魅力だが、資金調達による希薄化を考慮。

企業規模や防衛売上だけでランキングするなら三菱重工は当然上位です。

しかし今回は「防衛産業で重要な会社ランキング」ではなく、2026年9月現在の株価からキャピタルゲインを狙うランキングです。

そのため、防衛事業が急拡大しているにもかかわらずPER16倍台まで調整したIHIを1位としました。

そしてもう一社注目したいのが三菱電機です。

防衛・宇宙事業が2025年度4,214億円から2030年度8,000億円へ向かう計画で、ミサイル、レーダー、電子戦、衛星という今後の重点分野をほぼすべて持っています。

防衛関連株としては三菱重工より目立ちませんが、その分、今後評価が変わる可能性があると考えています。

まとめ

防衛業界については、今後低迷する業界とは考えていません。

むしろ2027年度概算要求では歳出ベース約9兆円を計上したうえで、三文書改定に関係する事業を事項要求としており、防衛投資は次の段階へ入りつつあります。

さらに今後は単純に防衛装備を増やすだけではなく、

AI
無人機
スタンド・オフミサイル
統合防空
宇宙
サイバー
高機密クラウド

などへ予算の重点が移ります。

私が防衛株で今後特に重視したいのは、「防衛売上が実際に増えている」「数年先まで受注が見える」「他社が簡単に代替できない技術を持つ」「海外市場へ展開できる」「売上だけでなく利益率も上昇する」「成長に対してPERが高すぎない」という企業です。

防衛業界の将来性を5段階で評価するなら「5」

ただし、防衛というテーマだけを理由に高値を追う段階ではなくなってきたと思います。

これから重要なのは、「防衛費が増える会社」を探すことではなく、「増えた防衛費を最終的に利益とEPSへ変えられる会社」を探すことです。

現時点ではキャピタルゲインを狙う本命をIHI(7013)、防衛事業そのものの成長と株価水準のバランスから三菱電機(6503)を対抗とします。次世代防衛という視点ではNEC(6701)にも注目しています。

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