イオン(8267)2027年2月期第1四半期決算を分析|営業利益33.6%増で過去最高、ツルハ統合効果と小売苦戦、今後の業績と売買判断

イオン(8267)が2026年7月10日に発表した2027年2月期第1四半期決算を分析します。今回の決算は営業収益2兆9419億8100万円、営業利益752億300万円、経常利益635億8200万円となり、営業収益、営業利益、経常利益はいずれも第1四半期として過去最高を更新しました。前年同期に65億7000万円の赤字だった親会社株主に帰属する四半期純利益も、138億900万円の黒字へ転換しています。

数字だけなら文句なしの好決算に見えます。しかし今回のイオンは、営業利益33.6%増という数字だけで判断すると少し危険です。

最大のポイントは、ヘルス&ウエルネス事業の営業利益が前年同期から182億4700万円増えたことです。これは連結営業利益全体の増加額189億2100万円とほぼ同じ規模であり、今回の増益の大部分がヘルス&ウエルネス事業から生まれています。一方、GMS、スーパーマーケット、ディスカウントストアはそろって減益です。

したがって今回の決算は、単純に「イオンの小売事業全体が絶好調になった」と評価するものではありません。

一方で、ツルハとウエルシアの統合、金融、イオンモールを中心とするディベロッパー・エンターテイメント、ベトナムなど、新しい利益成長の柱がはっきりしてきた点は非常に重要です。

目次

今回の決算を5段階で評価

評価項目評価コメント
営業収益★★★★★2兆9419億円、前年同期比14.6%増で第1四半期過去最高
営業利益★★★★★752億円、33.6%増で第1四半期過去最高
利益率★★★★☆営業利益率は約2.56%へ改善
主要事業★★★★☆ヘルス&ウエルネス、金融、モールが好調。一方で食品小売は弱い
通期予想★★★★☆営業利益25.7%増を計画。上方修正はまだなし
進捗率★★★☆☆営業利益約22.1%。第1四半期としては今後の確認が必要
財務★★★☆☆金融事業を含むため単純比較できないが、借入金増加と現金減少には注意
CF★★★☆☆第1四半期CF計算書は作成されておらず詳細評価できない
株主還元★★★★☆年間15円予想。株式分割調整後では実質増配
成長性★★★★☆ツルハ統合、モール、金融、ベトナムが成長ドライバー
本業の質★★★★☆営業利益はしっかり増加。ただし増益源が一部事業に集中

売買判断

保有 ★★★★☆

新規買い ★★★☆☆

売却 ★★☆☆☆

今回の決算なら、保有している場合は基本的に継続でよいと考えます。

営業利益が33.6%増え、第1四半期の過去最高を更新している以上、業績面から急いで売る理由はありません。さらにヘルス&ウエルネス、総合金融、ディベロッパー・エンターテイメント、国際事業と複数の成長源が見えてきました。

ただし新規買いを★★★★★にはしません。

今回の大幅増益にはツルハ連結による影響が大きく、既存のGMSやスーパーマーケットでは利益が悪化しています。キャピタルゲインを狙うなら、今後「連結効果による増益」から「既存事業を含む利益率改善」へ移行できるかを確認したいところです。

第1四半期は営業収益・営業利益・経常利益が過去最高

第1四半期の営業収益は2兆9419億8100万円で、前年同期の2兆5668億9700万円から14.6%増加しました。

営業利益は562億8200万円から752億300万円へ33.6%増、経常利益は480億5600万円から635億8200万円へ32.3%増となっています。

親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同期の65億7000万円の赤字から138億900万円の黒字へ転換しました。

会社自身も、営業収益、営業利益、経常利益が第1四半期として過去最高になったと説明しています。

まず数字そのものは強いです。

特に営業利益が売上に相当する営業収益の伸び率を大きく上回っている点は評価できます。

営業利益率も改善

営業利益率を単純計算すると、前年同期は約2.19%でした。

今回は約2.56%です。

小売業を中心とする巨大グループですので利益率そのものは高くありませんが、約0.36ポイント改善しています。

営業収益が14.6%伸びただけでなく、営業利益が33.6%伸びているため、連結全体で見れば収益性は改善方向です。

損益計算書を見ると、営業総利益は前年同期の9350億8500万円から1兆522億4500万円へ増加しました。

販売費及び一般管理費も8788億300万円から9770億4200万円へ増加していますが、営業総利益の伸びがこれを上回った結果、営業利益が752億300万円まで増えています。

したがって、営業利益33.6%増は特別利益などによって作られた数字ではありません。

本業の営業段階で利益が増えています。

ここは今回の決算で高く評価できます。

ただし「33.6%増」の中身を見ることが重要

今回の決算で最も重要なのはここです。

連結営業利益は前年同期562億8200万円から752億300万円へ増えました。

増加額は189億2100万円です。

一方、ヘルス&ウエルネス事業の営業利益は前年同期84億4800万円から266億9600万円となっており、増加額は182億4800万円です。

つまり単純比較すると、ヘルス&ウエルネスだけで連結営業利益増加額の約96%に相当する利益増加が発生しています。

もちろん他事業にも増益・減益がありますので、「連結増益の96%がそのままツルハ」という意味ではありません。

ただ今回の増益構造がヘルス&ウエルネスにかなり依存していることは間違いありません。

この点を理解せず、「イオン全体の既存事業が33%成長した」と考えるのは適切ではないと思います。

ツルハ・ウエルシア統合が最大の成長エンジン

ヘルス&ウエルネス事業の営業収益は6380億300万円で前年同期比89.9%増、営業利益は266億9600万円となり、前年同期から182億4700万円増加しました。

ツルハでは売上高6368億8600万円、営業利益242億2900万円となっています。

2025年12月にツルハとウエルシアが経営統合し、商品、PB、システム、店舗開発などで統合シナジーを進めています。

ここは非常に重要です。

今回の増益は単なる資産売却益のような一時利益ではありません。

ツルハの連結と統合によって、イオンの事業ポートフォリオそのものが変化した影響です。

ただし前年同期には現在と同じ形でツルハが寄与していなかったため、前年同期比89.9%増という数字をそのまま既存店ベースの成長率と見ることもできません。

つまり、

一時的な特別利益ではないが、前年との比較には大きな連結効果が含まれている

と考えるのが適切です。

今後重要になるのは、ツルハを連結したこと自体ではなく、調達やPB、物流、システム統合によって利益率をさらに上げられるかどうかです。

ここまで進めば、単なる規模拡大ではなく企業価値の向上につながります。

GMSは増収でも赤字拡大

一方、イオン本体をイメージするときに最も近いGMS事業は厳しい内容です。

GMS事業の営業収益は9232億5100万円で前年同期比3.9%増となりました。

しかし営業損失は34億5500万円で、前年同期から16億6800万円悪化しています。

イオンリテールでは既存店売上高が102.4%、客数も101.1%まで改善しています。

衣料は106.0%、住居余暇は107.6%、H&BCは106.5%と非食品も伸びています。

ここまではかなり良いです。

問題は利益です。

原材料価格の上昇、食品の価格訴求、前年の米相場高の反動、人件費、物流費増加などによって、イオンリテールの営業損失は37億3000万円まで拡大しました。

つまり「客は戻っているが、利益がまだついてきていない」という状態です。

キャピタルゲインを考えるうえで、ここは今後の大きな改善余地でもあります。

トップバリュやリテールメディアには面白い動き

GMSの利益は弱いものの、中身には将来につながりそうな数字もあります。

トップバリュの売上高は1033億円まで拡大し、売上構成比は20.4%となりました。

さらにリテールメディアでは、アプリ広告収入が前年同期比254.6%、サイネージ収入が285.0%と大幅に伸びています。ネットスーパーなどを含むEC営業収益も2桁近い伸びとなりました。

これは私は注目しておきたいと思います。

単純にスーパーで商品を売るだけでは利益率を大きく上げにくいですが、自社の巨大な顧客基盤を広告、データ、アプリ、ECなどで収益化できれば、収益構造が変わる可能性があります。

まだグループ全体の利益を大きく変える規模だとは資料から判断できませんが、今後の成長材料として追いかける価値があります。

スーパーマーケット事業は今回の大きな弱点

スーパーマーケット事業は営業収益7572億1900万円で前年同期比0.4%減、営業損失8億円となりました。

前年同期は69億5800万円の営業利益でしたので、実に77億5900万円の悪化です。

これはかなり大きいです。

U.S.M.Hはイオンフードスタイルの連結効果などによって営業収益が16.8%増加しましたが、価格競争、資材価格上昇、人件費、販促費、改装費などが重く、営業損失となっています。

フジも前年の米相場高や商品不足による一過性需要の反動を受け、営業収益98.3%、営業利益は前年同期比20.6%まで低下しています。

マックスバリュ東海も営業利益は前年同期比88.2%となっています。

つまり食品スーパーについては、現在のイオンの増益を支える事業ではありません。

むしろ改善すべき領域です。

食品小売が回復すれば利益の伸びしろは大きい

逆に考えると、ここは将来の利益余地でもあります。

現在、ヘルス&ウエルネス、モール、金融が利益を大きく伸ばしているにもかかわらず、スーパーマーケットでは約78億円の前年同期比減益となっています。

もし食品小売の収益構造改革が進み、この減益部分が正常化するだけでも全社利益への効果は小さくありません。

イオンは中期経営計画で、トップバリュ、共同調達、店舗DX、新しいSMモデルなどを通じ、食品小売の収益構造改革を進めています。

第1四半期ではトップバリュ売上高が前年同期比105.2%、ナショナルブランド共同調達高が107%となっています。また、スーパーマーケット事業の既存店労働時間は前年同期比96.7%まで低下しており、生産性改善も進めています。

この改革が「売上改善」から「営業利益改善」へつながるかが今後の重要ポイントです。

ディスカウントストアも減益

ディスカウントストア事業は営業収益1092億円で1.1%増でしたが、営業利益は2億5700万円となり、前年同期から15億5800万円減少しました。

売上は維持していますが、利益率はかなり低くなっています。

GMS、スーパーマーケット、ディスカウントストアを並べると、

食品を中心とする低価格競争の厳しさが現在のイオンの弱点

であることが分かります。

これをPB、共同調達、物流改革、DXでどこまで改善できるかが、今後の利益率を左右します。

総合金融事業は好調

総合金融事業は営業収益1515億9600万円で前年同期比8.8%増、営業利益181億8500万円で前年同期から47億7800万円増加しました。

これは非常に良い内容です。

ショッピングリボ手数料率の引き上げや、金利上昇による銀行の運用益増加などが利益に貢献しています。

ショッピングリボ・分割債権残高は4033億8700万円、キャッシング債権残高は4389億8700万円、住宅ローン残高は2兆9325億200万円まで増加しています。

AEON PayのID登録会員数も1368万人、AEON Payを含む国内有効ID数は4030万人まで拡大しました。

小売店舗、カード、銀行、決済を横につなげられることはイオングループの大きな強みです。

イオンモールを中心とする事業もかなり強い

ディベロッパー・エンターテイメント事業は営業収益1740億7200万円で9.2%増、営業利益278億4700万円となり、前年同期から84億2100万円増加しました。

この事業も今回の好決算を支えています。

イオンモール単体では営業収益1237億7900万円で7.0%増、営業利益233億6700万円で39.9%増となりました。

国内既存モールの専門店売上は107.8%、来店客数は104.0%です。

さらにベトナムの既存モール専門店売上高は128.8%とかなり強く、インバウンドによる専門店免税売上も約1.3倍となっています。

これはイオンの今後を考えるうえで重要です。

小売だけを見ると利益率の低い会社ですが、モール、不動産、エンターテイメントを組み合わせることで利益率を高められる余地があります。

イオンエンターテイメントも好調

イオンエンターテイメントでは映画だけでなくライブビューイングなどのODSを拡大し、動員数は前年同期比120.8%となりました。

営業利益は前年同期比240.9%となり、第1四半期として過去最高を記録しています。

これは単なる小売企業とは違うイオンの強みです。

モールへ来てもらい、買い物、飲食、映画、アミューズメントなど複数の収益機会につなげるモデルが強化されています。

国際事業も増収増益

国際事業は営業収益1696億5300万円で前年同期比11.9%増、営業利益57億2200万円となり、前年同期から14億8400万円増加しました。

特に注目したいのはベトナムです。

会社は中期戦略でもベトナムを重点成長領域としています。

ベトナムではモールだけではなくGMS、スーパーマーケット、金融、エンターテイメントを組み合わせて展開しています。

国内人口が減少していく中で、成長市場へイオンの複数事業をまとめて展開できることは、中長期の成長材料として評価できます。

特別利益で作った好決算ではない

今回の純利益黒字転換について、特殊要因も確認しておきます。

特別利益は19億2500万円で、前年同期の47億5300万円からむしろ減少しています。

一方、特別損失は前年同期135億7700万円から42億8100万円へ大きく減少しました。

内訳では減損損失が81億3100万円から14億7700万円、店舗閉鎖損失引当金繰入額が36億4900万円から12億400万円へ減少しています。

したがって最終利益の改善には、前年より特別損失が少なかったことも寄与しています。

特別利益と特別損失をネットすると、前年同期は約88億円のマイナスでしたが、今期は約24億円のマイナスです。

この差は約65億円あります。

つまり純利益の黒字転換については、前年の特殊損失が大きかった反動も考慮する必要があります。

しかし営業利益そのものが189億円増えていることから、

今回の好決算が特殊利益だけによって作られたわけではありません。

ここは重要です。

本業をどう評価するか

一時要因を除いた本業については、私は「良いが、かなり濃淡がある」と評価します。

良い事業は非常に良いです。

ヘルス&ウエルネス、総合金融、ディベロッパー・エンターテイメント、国際が伸びています。

一方で、

GMSは赤字拡大、スーパーマーケットは黒字から赤字、ディスカウントストアは大幅減益です。

つまり今回の決算は、

従来型の小売で稼ぐイオンから、ドラッグストア、金融、モール、エンターテイメント、海外で稼ぐイオンへ利益構造が変わり始めている

と見ると非常に興味深い決算です。

ここが今後も続くのであれば、株式市場からの評価も変わる可能性があります。

通期予想は営業利益25.7%増

2027年2月期通期予想は変更されていません。

営業収益12兆円で前期比12.0%増、営業利益3400億円で25.7%増、経常利益2900億円で19.3%増、親会社株主に帰属する当期純利益730億円で0.4%増を見込んでいます。

注目すべきは営業利益です。

会社は今期、営業利益を約26%増やす計画です。

第1四半期ですでに33.6%増となっているため、伸び率だけを見れば計画を上回っています。

ただし会社は今回、通期予想を上方修正していません。

したがって今後の焦点は、第2四半期以降もこの利益成長を維持できるかです。

通期予想に対する進捗率

第1四半期終了時点の単純な進捗率を計算すると、

営業収益は約24.5%、営業利益は約22.1%、経常利益は約21.9%、親会社株主に帰属する純利益は約18.9%です。

営業収益はほぼ4分の1まで進んでいます。

一方、利益は20%前後です。

これだけを見ると特別高い進捗ではありません。

ただし今回の決算資料だけでは各四半期の利益季節性を十分に判断できないため、「25%に届いていないから未達」と判断することはできません。

会社自身も通期予想を据え置いています。

現時点では進捗率を★★★☆☆とし、第2四半期で確認したいと思います。

財務は単純な自己資本比率だけでは判断しにくい

第1四半期末の総資産は15兆5935億円、純資産は2兆1865億7100万円、自己資本比率は7.8%です。

総合金融事業を除くと総資産は7兆8238億3700万円、純資産1兆6937億7400万円、自己資本比率13.8%となっています。

自己資本比率だけを見ると低く見えます。

ただしイオンは銀行やカードなどの総合金融事業を持っていますので、一般的な小売企業と同じ基準で単純比較することは適切ではありません。

それでも、私は財務を★★★★★にはしません。

現金及び預金は前期末の1兆3500億3700万円から1兆2135億1600万円へ1365億円減少しています。

一方、短期借入金は3708億5700万円から4201億6000万円、長期借入金は1兆8451億9400万円から1兆8843億3000万円へ増加しています。

会社の説明でも、負債は前期末から2415億3700万円増えています。

成長投資を進める局面とはいえ、今後は有利子負債とキャッシュ創出力のバランスを見る必要があります。

CFは今回の資料では判断できない

今回の第1四半期について、四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成されていません。

したがって営業CF、投資CF、財務CF、フリーCFを今回の資料だけから評価することはできません。

このためCF評価は★★★☆☆としています。

なお、減価償却費は前年同期885億2800万円から961億4800万円へ増加し、のれん償却額も44億1500万円から58億円へ増加しています。

本決算やCFが開示されるタイミングでは、営業利益の大幅増加が実際の営業キャッシュ・フローに結び付いているかを確認したいところです。

配当は株式分割後ベースで年間15円

2027年2月期の配当予想は中間7.5円、期末7.5円、年間15円です。

それぞれ50銭の記念配当を含みます。

イオンは2025年9月1日に1株を3株とする株式分割を実施しています。

前期の年間配当は株式分割を考慮しない場合41円でした。

これを単純に3分割後へ換算すると約13.67円です。

したがって今期15円予想は、分割調整後で考えると実質的には増配となります。

キャピタルゲイン目的であっても、増配傾向が維持されている点はプラスです。

中期計画は「規模」から「利益率・資本効率」へ

今回の決算で私がもう一つ注目したいのが、中期経営計画です。

イオンは従来の規模拡大に加え、キャッシュ創出力と資本効率を重視する経営への転換を掲げています。

高収益ポートフォリオの構築、食品小売の収益構造改革、事業構造改革、財務構造の刷新を進め、2030年度にはEBITDA1.1兆円規模、営業利益5300億円、ROE8.5%以上を目標としています。

これは現在のイオンを見るうえで重要です。

これまでイオンは「売上規模は巨大だが利益率が低い」という評価を受けやすい会社でした。

今後本当に株価評価が変わるとすれば、12兆円の売上をさらに増やすこと以上に、

その巨大な売上からどれだけ利益とキャッシュを残せる会社になるか

が重要だと思います。

今回の決算で最も評価したい3点

一つ目は、営業利益33.6%増で第1四半期過去最高を更新したことです。

特殊利益ではなく営業段階で増益しているため、決算の質は悪くありません。

二つ目は、ヘルス&ウエルネス、総合金融、ディベロッパー・エンターテイメントという高収益事業が大きく伸びたことです。

これはイオンの事業ポートフォリオが変わり始めていることを示しています。

三つ目は、ベトナムを中心とした海外事業の成長です。

国内小売市場だけに依存せず、モール、小売、金融、エンターテイメントをセットで海外展開できることは、中長期の成長材料です。

一方で今回の決算で最も気になる点

最大の懸念は国内食品小売です。

GMSは営業赤字が拡大し、スーパーマーケットは前年同期69億5800万円の営業利益から8億円の営業赤字へ転落しました。

ディスカウントストアも大幅減益です。

これは無視できません。

現在はヘルス&ウエルネスなどの利益増がカバーしていますが、食品小売の低収益状態が続けば、グループ全体の利益率向上には限界が出てきます。

もう一つ注意したいのは、今回のヘルス&ウエルネスの急成長をそのまま来期以降も89.9%増で続く成長と考えないことです。

ツルハ連結による比較上の効果が大きいため、今後は増収率よりも営業利益率や統合シナジーを見るべきです。

キャピタルゲインという視点ではどう見るか

キャピタルゲイン狙いで見ると、今回のイオンは以前より面白くなっていると感じます。

ポイントは売上高14.6%増そのものではありません。

私は、

利益を稼ぐ事業の構成が変わり始めていること

を評価します。

ドラッグストア、金融、モール、エンターテイメント、海外の利益が増えています。

逆に従来型食品小売は苦戦しています。

この高収益事業へのポートフォリオ転換が継続し、さらに食品小売の赤字・減益を改善できれば、連結営業利益率はもう一段上がる可能性があります。

それが確認されれば、「巨大だが低収益な小売企業」という評価から変わる余地があります。

株価の大きな上昇を狙うなら、その評価変化が重要です。

ただし今回アップロードされた決算資料には現在株価やPER、PBRなどの株価指標は含まれていません。

そのため今回の記事では、現在値が割安か割高かまでは判断せず、あくまで決算内容から売買方向を評価しています。

私ならどう売買するか

私がすでにイオンを保有しているなら、今回の決算では売りません。

営業利益33.6%増、第1四半期過去最高という数字に加え、ヘルス&ウエルネス、金融、モール、海外という成長軸がはっきりしています。

したがって基本は保有継続です。

一方、新規買いなら私は一気に買いません。

今回の好決算を受けて株価が大きく上昇するようなら、追いかけずに押し目を待ちます。

理由は、営業利益増加のかなりの部分がヘルス&ウエルネスに集中しており、GMS、スーパー、ディスカウントでは利益が弱いからです。

私ならまず一部を買い、第2四半期で食品小売の改善とツルハ統合効果の継続を確認できれば追加するという買い方を考えます。

今回の決算は「売る決算」ではありません。

ただし「数字が33%増だから無条件に飛びつく決算」でもないという評価です。

次の決算で見るポイント

最優先で見るのはヘルス&ウエルネス事業です。

今後は営業収益の大幅増より、営業利益率と統合シナジーを確認します。

ツルハとウエルシアの商品統合、PB、調達、システム統合によって利益率が上がれば、本当の意味でM&A・統合の成功と評価できます。

二つ目はスーパーマーケット事業です。

今回の営業損失8億円から黒字へ戻れるかが重要です。

三つ目はGMSです。

既存店売上と客数は改善していますので、これを利益へ転換できるかを見ます。

四つ目はディベロッパー・エンターテイメントです。

営業利益278億円という高水準を維持できれば、全社利益を支える大きな柱になります。

五つ目は金融です。

金利環境の変化を利益拡大につなげ続けられるかを確認します。

六つ目はベトナムです。

モール、小売、金融、エンターテイメントを横断した成長が続くかを見ます。

そして全社では、営業利益3400億円に対する進捗率が第2四半期でどこまで高まるかが重要です。

売却を考える条件

私が売却を検討するのは、まずヘルス&ウエルネス事業の利益が急速に鈍化した場合です。

今回の増益を最も大きく支えている事業だけに、ここが崩れると全社利益への影響も大きくなります。

次に、スーパーマーケットとGMSの赤字・減益状態が長期化する場合です。

特に売上や客数が増えているのに利益が改善しない状態が続けば、収益構造改革の実効性を疑う必要があります。

また、借入金増加が続く一方で営業CFが伴わず、財務構造改善という中期計画と逆方向に進む場合も注意します。

さらに、第2四半期以降で通期営業利益3400億円の達成可能性が低下し、下方修正が視野に入る場合はキャピタルゲイン目的では保有比率を落とします。

逆に、食品小売が改善し、ヘルス&ウエルネス、モール、金融、海外が現在の成長を維持するなら、私は簡単には売却しません。

今回の私の結論

今回のイオンの第1四半期決算は、かなり良い決算です。ただし、表面的な33.6%増より中身を見ることが重要です。

営業収益14.6%増、営業利益33.6%増、経常利益32.3%増で、3項目とも第1四半期として過去最高を更新しました。

前年赤字だった親会社株主に帰属する純利益も黒字へ転換しています。

しかも営業利益そのものが大幅に増えているため、特別利益で作った好決算ではありません。

一方、営業利益増加の大部分はヘルス&ウエルネス事業の増益で説明できます。

ツルハ・ウエルシア統合を中心としたヘルス&ウエルネスの利益増加、金融、イオンモール、エンターテイメント、ベトナムは非常に良いです。

しかしGMSは赤字拡大、スーパーマーケットは赤字転落、ディスカウントストアも大幅減益です。

したがって私は今回を、

「既存小売が全面的に復活した決算」ではなく、「イオンの利益構造が高収益事業へ変化し始めた決算」

と評価します。

ここが今回の最大のポイントです。

このまま高収益事業が成長し、さらに食品小売の収益改善まで実現すれば、今後の利益成長余地はかなり大きくなります。

逆に食品小売の低収益をドラッグストアやモールの利益だけで補う状態が続けば、株価評価の大幅な切り上がりには限界があると思います。

私なら保有は継続します。新規買いは★★★☆☆とし、決算後の株価を追いかけるより押し目を待ちます。第2四半期で食品小売の改善とツルハ統合シナジーが確認できれば、買い評価を一段引き上げます。

今回の総合評価は**★★★★☆**です。

過去最高益という数字は強く、成長事業も明確です。ただしキャピタルゲインを狙うなら、次のステップは「ツルハ連結で増益」から「グループ全体の利益率が上がる」ことです。

そこまで確認できれば、今回の決算はイオンの利益構造転換の始まりだったと評価できると思います。

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