アストロスケールホールディングス(186A)2026年4月期決算を分析|売上141.8%増、営業赤字は大幅縮小も次期も赤字継続、今後の業績と売買判断

アストロスケールホールディングス(186A)が2026年6月12日に発表した2026年4月期決算を分析します。今回の決算は売上収益59億4000万円で前年同期比141.8%増、営業損失99億7500万円、税引前損失66億9500万円、親会社の所有者に帰属する当期損失66億9700万円となりました。前年の営業損失187億5500万円、最終損失215億5100万円から赤字額は大幅に縮小しています。

売上が約2.4倍になり、営業赤字も約88億円縮小しているため、表面的にはかなり改善した決算です。しかし今回のアストロスケールは、単純に「赤字が半減したから良い」と評価するだけでは不十分です。

一つ目のポイントは、売上総利益が前年の約38億8100万円の赤字から、今期は約1900万円の黒字へ改善したことです。プロジェクトそのものの採算性は明確に改善しています。

二つ目は、2026年4月期から一部の開発費用の資産化を開始したことで、前年と比べ研究開発費として費用計上される金額が大幅に減ったことです。したがって営業赤字縮小のすべてを事業そのものの収益力改善と考えるべきではありません。

三つ目は、最終赤字縮小には約36億5100万円の為替差益が大きく寄与していることです。営業損失は99億7500万円ですが、金融収益によって税引前損失は66億9500万円まで縮小しています。

そして最も重要なのが次期予想です。2027年4月期は売上収益70億~90億円まで成長する一方、営業損失は90億~99億円を見込んでおり、営業黒字化はまだ先です。むしろ最終損失は96億~106億円と、2026年4月期より拡大する予想になっています。

キャピタルゲインを意識して見るなら、今回の決算は「黒字化直前の宇宙成長株」ではなく、売上と受注を拡大させながら、巨額の開発投資を続ける商業化前半の企業として評価する必要があります。

目次

今回の決算を5段階で評価

評価項目評価コメント
売上収益★★★★★59.40億円、前年同期比141.8%増
プロジェクト収益★★★★★115.07億円、89.0%増
営業利益★★☆☆☆99.75億円の営業赤字。ただし前年187.55億円から大幅改善
売上総利益率★★★☆☆前年の大幅赤字からほぼ損益均衡まで改善
主要事業★★★★☆RPO、デブリ除去、燃料補給、防衛関連案件が着実に進展
受注★★★☆☆受注高84.45億円で72.5%減、受注残274.35億円で7.6%減
広義の受注残★★★★☆選定済み・想定案件を含め379.38億円
次期予想★★★☆☆売上17.8~51.5%増だが営業赤字は継続
特殊要因★★☆☆☆為替差益36.51億円、開発費資産化の影響あり
財務★★★☆☆自己資本比率25.1%へ改善したが、現金は約113億円減少
CF★☆☆☆☆営業CFマイナス124.86億円、FCFも大幅赤字
資金調達★★★★☆決算後に増資・転換社債で大型資金調達を実施
株主還元★☆☆☆☆2027年4月期も無配予想
成長性★★★★★世界的な宇宙防衛需要と軌道上サービス市場拡大が追い風
キャピタルゲイン期待★★★★☆受注材料は大きいが、赤字・CF・希薄化リスクも大きい

売買判断

保有 ★★★☆☆

新規買い ★★☆☆☆

売却 ★★☆☆☆

今回の決算だけであれば、私がすでに保有している場合はすぐに全部売却するとは考えません。

売上収益は2倍以上に拡大し、売上総利益も赤字からほぼ損益均衡まで改善しています。さらに世界各国で防衛・宇宙安全保障関連の案件が広がり、2026年4月末時点では契約済みだけで274億円超、選定済みや想定案件まで含めると379億円規模の案件があります。

一方、新規買いは★★☆☆☆とします。

最大の理由は、2027年4月期も営業損失90億~99億円を見込んでいることです。

売上高は大きく伸びていますが、まだ「売上が増えれば利益が急増する段階」には入っていません。さらに営業CFは年間124億円を超える赤字で、決算後にも大型増資と転換社債による資金調達を実施しています。

キャピタルゲインの材料は非常に大きい一方で、利益とキャッシュ・フローの裏付けがまだ弱いため、私は新規で大量に買うより、受注発表や次回決算を確認しながら少額・分割で考えます。

売上収益は141.8%増

2026年4月期の売上収益は59億4061万円となり、前年の24億5695万円から141.8%増加しました。

主力である受託収益は前年24億3763万円から59億1074万円へ増加しており、売上収益のほぼすべてを占めています。その他売上収益は2986万円です。

売上成長率だけを見れば非常に強いです。

アストロスケールはまだ成熟した商用サービスを大量販売している会社ではなく、各国政府、宇宙機関、民間企業との研究開発・実証プロジェクトを受注しながら、将来の反復可能な軌道上サービス事業を作っている段階です。

その企業が年間売上約25億円から約59億円まで拡大したこと自体は大きな前進です。

プロジェクト収益は115億円まで拡大

アストロスケールが独自KPIとして重視しているのが「プロジェクト収益」です。

これはIFRS上の売上収益に政府補助金収入を加えた会社独自の指標です。

2026年4月期のプロジェクト収益は115億670万円で前年同期比89.0%増となりました。このうち政府補助金収入は55億6609万円で前年同期比53.3%増です。

つまりプロジェクト収益115億円のうち、約半分は政府補助金です。

ここは投資判断上かなり重要です。

プロジェクト収益115億円という数字を、そのまま一般企業の「売上高115億円」と同じように見ることはできません。

IFRS上の正式な売上収益は59億4000万円です。

政府補助金が軌道上サービス技術の開発を進めるうえで重要な収入源であることは間違いありませんが、私は企業の商業化を見る場合には、プロジェクト収益だけでなく正式な売上収益も必ず確認します。

売上総利益は赤字からほぼゼロへ

今回の決算で非常に大きく改善したのが売上総利益です。

前年は売上収益24億5700万円に対して売上原価63億3800万円となり、売上総損失は38億8100万円でした。

今回は売上収益59億4100万円に対して売上原価59億2100万円となり、売上総利益は約1900万円の黒字まで改善しています。

前年の売上総利益率は大幅なマイナスでした。

今回は単純計算で約0.3%です。

まだ利益率としてはほぼゼロですが、

「プロジェクトを進めるほど粗損失が発生する状態」から「売上原価をほぼ回収できる状態」へ改善した

ことは評価できます。

アストロスケールの将来を考えるうえでは、営業利益より先に、この売上総利益率がどこまで上がるかを見る必要があります。

長期目標は売上総利益率30%台半ば

会社は長期的な財務目標として、売上総利益率30%台半ば、営業利益率20%台半ばを掲げています。

現在の売上総利益率は約0.3%です。

したがって目標との差は非常に大きいです。

これは逆に言えば改善余地も非常に大きいということですが、現時点で「高収益宇宙企業」と評価するには早すぎます。

今後、開発済みの技術やプラットフォームを別案件へ再利用できる「継続受注案件」が増えれば、新規開発コストが減り、利益率改善につながります。

会社自身も、防衛案件や民間向け寿命延長サービスをこの継続受注につながる領域として期待しています。

私はアストロスケールについて、売上100億円達成よりも、粗利益率が10%、20%と上がっていくかの方を長期的には重視します。

営業赤字は約88億円縮小

営業損失は前年の187億5500万円から99億7500万円へ縮小しました。

赤字縮小額は約87億8000万円です。

約47%の改善です。

非常に大きな変化ですが、この88億円すべてを「本業が良くなった結果」と考えるのは注意が必要です。

売上総損失が約39億円改善したことに加え、販管費も前年191億500万円から161億9700万円へ減少しています。

さらに「その他の収益」は42億3000万円から62億200万円へ増加しています。

したがって複数の要因によって営業赤字が縮小しています。

開発費の資産化は重要な特殊要因

今回の決算で必ず触れておきたいのが開発費用の資産化です。

会社は2026年4月期から開発費用の資産化を開始し、その結果として前年と比較して研究開発費として費用計上される金額を大幅に削減したと説明しています。

これは非常に重要です。

例えば従来100の開発費をその年度にすべて費用として処理していたものが、一定の条件を満たして資産化されれば、その年度の損益計算書に計上される費用は小さくなります。

その代わり、資産として貸借対照表に計上され、将来にわたって償却などの形で費用化されます。

したがって今回の営業赤字縮小の一部には、

「開発そのものに使ったお金が減った」のではなく、「当期費用から資産へ移った」影響

があります。

これは不正でも特殊な処理でもなく会計基準に沿った処理ですが、前年との営業利益比較をする際には必ず考慮する必要があります。

無形資産が約15.5億円増加

貸借対照表を見ると、無形資産は前期末2億7400万円から18億2300万円へ増加しています。

約15億4900万円の増加です。

また投資CFでも無形資産取得に15億3900万円を支出しています。

この動きも開発費資産化の影響を考えるうえで重要です。

今後は資産化した開発費からどれだけ実際の売上・利益を生み出せるかを見る必要があります。

開発費を資産化して短期的な損益を改善しても、その技術が受注につながらなければ意味がありません。

逆に同じプラットフォームを複数案件へ展開して利益を生めるのであれば、資産化された開発費は将来の収益源となります。

最終赤字縮小には為替差益が大きく寄与

営業損失99億7500万円に対して、税引前損失は66億9600万円まで縮小しています。

この差の最大要因が金融収益です。

会社は主に為替差益36億5087万円を計上しました。

一方、支払利息は5億6276万円です。

したがって今回の最終損失66億9700万円をそのまま本業実力として見るべきではありません。

本業を見るなら営業損失99億7500万円を重視します。

円安などによる為替差益が次期も同じように出るとは限りません。

むしろ2027年4月期会社予想では最終損失が96億~106億円へ再び拡大する見込みです。

今回の最終赤字縮小には為替という一時的な追い風もかなり入っていたと考えるべきです。

それでも前年より事業そのものは改善している

特殊要因を除くと悪い決算なのかというと、私はそうは見ません。

売上収益は141.8%増えています。

売上総利益は大幅赤字からほぼ損益均衡まで改善しました。

販管費も減少しています。

さらに受注案件そのものも防衛、燃料補給、寿命延長、軌道離脱など複数領域へ広がっています。

したがって、

赤字縮小のすべてが実力ではないが、事業そのものも確実に前進している

という評価が適切です。

アストロスケールは単一セグメント

アストロスケールは「軌道上サービス事業」の単一セグメントです。

そのため、デブリ除去、寿命延長、燃料補給、防衛関連などのサービス別営業利益は開示されていません。

製品・サービス別の売上を見ると、受託収益が59億1100万円、その他売上が約3000万円となっています。

現段階では売上のほぼすべてが研究開発・実証プロジェクトなどの受託収益です。

つまり、成熟した定額サービスを大量販売する収益構造ではありません。

この状態から「同じ技術を何度も販売する」継続受注型へ変われるかが最大のポイントです。

防衛関連案件が今後の大きな成長軸

今回の資料では、防衛関連案件がかなり増えています。

2025年6月には詳細非開示の新規防衛案件、7月には米空軍研究所から自律的なランデブ・近傍運用・ドッキングに関する調査案件、12月には防衛省から軌道上での自国衛星の監視・防御技術に関する研究案件を受注しています。

2026年1月には米国ミサイル防衛局のSHIELDの契約候補にも選定されています。

宇宙防衛では、単なる人工衛星製造だけではなく、

衛星への接近、

監視、

点検、

燃料補給、

軌道変更、

寿命延長、

必要に応じた除去、

といった軌道上サービスそのものが重要になります。

ここはアストロスケールのRPO技術と非常に相性の良い市場です。

今期の主要受注案件を見る

2026年4月期の主な受注には、

米空軍研究所の防衛調査案件8.7百万米ドル、

REFLEX-Jの初年度・2年度契約41.3億円、

防衛省の衛星監視・防御技術案件9.9億円、

JAXAの燃料補給技術案件12.5億円、

などがあります。

これを見ると、アストロスケールは単なる「宇宙ごみ除去会社」からかなり事業領域を広げています。

特に燃料補給と防衛は、同じプラットフォームやRPO技術を何度も使える可能性があります。

これが会社の言う「継続受注案件」へ変われば、収益構造は大きく変わります。

受注高72.5%減をどう見るか

2026年4月期の受注総額は84億4500万円で前年同期比72.5%減となりました。

受注残総額は274億3500万円で7.6%減です。

受注高72.5%減という数字だけを見るとかなり悪く見えます。

ただしアストロスケールの案件は非常に大型で、受注タイミングによる年度差が大きいです。

そのため一般的な継続受注型IT企業などと同じ感覚で「受注72%減=来期売上急減」と考えるのは適切ではありません。

一方で、私はこの数字を完全に無視もしません。

今後、継続受注企業へ移行するなら、毎年大型案件を安定して積み上げる必要があります。

第1四半期以降の新規受注は必ず確認したいです。

広義の受注残は約379億円

契約済みの受注残総額は274億3500万円です。

これにISSA-J1フェーズ3の想定38億800万円、REFLEX-Jの未契約分66億9300万円などを単純に加えた参考値が379億3812万円です。

会社は2027年4月期の見通しでも、受注済残高と受注内定済み案件を合算した受注残高を379億3800万円としています。

これは今期売上59億円と比較すると非常に大きな案件規模です。

ただし重要な注意があります。

会社自身も、技術開発の進捗や契約条件を満たさなければ、受注残のすべてが収益認識されるとは限らないと明記しています。

したがって379億円をそのまま「将来必ず売上になる金額」として見るべきではありません。

ELSA-M、ISSA-J1、APS-Rなどは着実に進展

既存プロジェクトも進んでいます。

ELSA-Mは詳細設計審査を完了し、地上試験を進めています。

ISSA-J1ではインドのNewSpace India LimitedとPSLVロケットを使用する打ち上げ契約を締結しました。

APS-Rは2027年4月期中の打ち上げへ向け地上試験を進めています。

REFLEX-Jは初年度契約金額を増額し、2年度契約も締結しました。

Orpheusも詳細設計審査を完了しています。

宇宙ビジネスでは受注しただけでは売上になりません。

設計、製造、試験、打ち上げ、実証と長い工程があります。

今後は「受注額」だけでなく、プロジェクトのマイルストーンが計画通り進んでいるかを見る必要があります。

2027年4月期は売上17.8~51.5%増予想

次期2027年4月期の会社予想はレンジ方式です。

プロジェクト収益125億~170億円。

その内訳として売上収益70億~90億円、政府補助金収入55億~80億円を見込んでいます。

売上収益は前年同期比17.8%~51.5%増です。

下限と上限の差がかなり大きいです。

これは案件進捗の不確実性が高いことを示しています。

会社によると、上限は契約済み・選定済み案件が遅延なく進展した場合、下限は過去のスケジュール遅延や外部要因を考慮した場合です。

宇宙案件では数カ月の遅延が年度をまたいで売上計上時期を変えることがあるため、レンジ予想は合理的だと思います。

まだ受注していない案件は予想に入っていない

ここはキャピタルゲインを狙う場合に面白いポイントです。

会社は2027年4月期の業績予想について、受注済みの案件だけで構成しており、新規受注が発生した場合には適宜上方修正する方針としています。

つまり現時点で未受注の大型防衛案件などが決まれば、業績予想に上乗せされる可能性があります。

これは株価材料としては強いです。

アストロスケールの場合、四半期決算の利益以上に、

大型受注の発表そのものがキャピタルゲイン材料になる

銘柄だと考えます。

ただし、受注発表と実際の売上計上には時間差があることも忘れてはいけません。

次期も営業赤字90~99億円

ここが今回最も慎重に見たい部分です。

2027年4月期の営業損失予想は90億~99億円です。

2026年4月期の営業損失99億7500万円と比較すると、改善額はわずか7500万円~9億7500万円程度です。

売上収益は最大51.5%増える可能性があります。

それでも営業赤字はほとんど残ります。

つまりアストロスケールは、まだ売上成長がそのまま大幅な営業利益改善へつながるフェーズではありません。

研究開発や組織、人員、ミッション費用を継続的に負担する必要があるためです。

私は今回の決算で、この部分を最も重く見ています。

次期最終損失はむしろ拡大予想

2026年4月期の最終損失は66億9700万円でした。

2027年4月期は96億~106億円の最終損失を見込んでいます。

約29億~39億円の赤字拡大です。

今回36億円を超える為替差益があった反動を考えれば、理解できる数字です。

したがって「2026年4月期に最終赤字が大きく縮小したから、2027年4月期もさらに縮小する」と考えるのは危険です。

キャピタルゲイン目的であっても、少なくとも2027年4月期は利益成長株として見る銘柄ではありません。

見るべきは受注と売上成長、粗利益率改善です。

本決算なので進捗率評価は対象外

今回は2026年4月期の本決算ですので、通常の第1四半期決算のような通期進捗率はありません。

さらに会社は年次で業績管理を行っているため、2027年4月期について第2四半期累計予想も開示していません。

したがって次回以降も単純な25%進捗基準だけで評価しにくい会社です。

私は四半期ごとに、

売上収益、

プロジェクト収益、

受注残、

粗利益、

営業損失、

プロジェクト進捗、

を見る方法が適していると考えます。

財務は自己資本比率25.1%へ改善

2026年4月末の総資産は321億2200万円、資本合計は80億7500万円、自己資本比率は25.1%です。

前年末の自己資本比率18.2%から改善しました。

自己資本比率だけを見ると財務は改善しています。

ただしその理由の一つは株式発行です。

2026年4月期中にも新株発行によって資本金と資本剰余金がそれぞれ約54億9300万円増えています。

つまり利益蓄積によって自己資本が増えた会社とは意味が違います。

赤字を出しながら外部資金を入れることで財務基盤を維持している段階です。

現金は213億円から100億円へ減少

現金及び現金同等物は前年末213億円から100億2200万円へ減少しました。

約112億7900万円の減少です。

一年で現金残高が半分以下になっています。

これはかなり大きいです。

宇宙企業として成長投資フェーズにあるためキャッシュを使うこと自体は当然ですが、現在の現金消費速度が続けば継続的な資金調達が必要になります。

この点はQPSホールディングスとの大きな違いでもあり、アストロスケールを評価するときには売上以上にCFを見る必要があります。

営業CFは124.86億円の赤字

営業活動によるキャッシュ・フローは124億8600万円のマイナスです。

前年の122億5100万円のマイナスから、むしろわずかに悪化しています。

これは今回の決算で最大級の懸念材料です。

損益計算書上では営業赤字が約188億円から約100億円へ大幅に改善しています。

しかし営業CFはほぼ改善していません。

つまり、

会計上の赤字縮小ほど、実際のキャッシュ消費は減っていない

ということです。

開発費資産化の影響も考えると、私は営業利益改善よりキャッシュ・フローを重く見ます。

投資CFも69.27億円の赤字

投資活動によるキャッシュ・フローは69億2700万円のマイナスです。

前年は10億4400万円のマイナスでしたので、大幅に投資支出が増えています。

主な内訳は有形固定資産取得53億5900万円、無形資産取得15億3900万円です。

営業CFと投資CFを単純合計すると、フリーCFは約194億1300万円のマイナスとなります。

かなり大きなキャッシュアウトです。

もちろん現在は設備、衛星、技術開発などへの投資フェーズですので、FCF赤字そのものが即座に悪いとは言いません。

しかしキャピタルゲイン目的では、

この巨額投資がいつ受注・粗利益・営業CFへ転換するのか

が最大の確認ポイントです。

財務CF72億円では現金消費を補い切れなかった

財務活動によるキャッシュ・フローは72億3600万円のプラスでした。

主に株式発行による106億2100万円の収入があった一方、借入金の返済などがありました。

それでも営業CFと投資CFによる資金流出が大きく、現金残高は112億円以上減少しました。

つまり現在は、

株式市場などから資金を調達し、それを事業開発へ投入する

モデルです。

この状態がいつまで続くのかが、既存株主にとって非常に重要です。

決算後に大型資金調達を実施

そのため会社は決算期末後にも大規模な資金調達を実施しています。

まずヒューリックに対して普通株式202万4200株を1株1729円で発行し、約35億円を調達しました。

さらにヒューリック向けに発行総額163億円の無担保転換社債型新株予約権付社債を発行しています。資金は生産設備拡大、既存設備の維持・拡充、衛星製造投資、運転資金などに充当する予定です。

加えてスカパーJSATへ46万2600株を1株1729円で割り当て、約8億円を調達しました。両社は軌道上サービス分野での事業強化・新規事業創出について協業を進める方針です。

さらに海外市場で総額100億円のユーロ円建転換社債型新株予約権付社債も発行しています。

資金面ではかなり強化されました。

資金調達は安心材料である一方、希薄化リスク

この資金調達は二つの面があります。

一つは安心材料です。

営業CF・FCFが大幅赤字の企業だけに、約35億円のヒューリック増資、約8億円のスカパーJSAT増資、163億円の転換社債、100億円の海外転換社債によって、今後の成長投資資金を確保できた意味は大きいです。

一方で既存株主にとっては希薄化リスクがあります。

ヒューリック向け転換社債は当初転換価額2208円で、すべて転換された場合の最大交付株式数は738万2246株です。

海外転換社債も転換価額2208円で、最大452万8985株の交付可能性があります。

つまり資金調達によって事業継続・成長力は高まりますが、株価が上昇して転換が進めば発行株式数も増えます。

キャピタルゲイン目的なら、この「成長資金確保」と「1株当たり価値の希薄化」の両方を見る必要があります。

配当は引き続き0円

2026年4月期の配当は0円です。

2027年4月期も年間0円を予定しています。

現在の事業フェーズを考えれば当然です。

年間100億円を超える営業CF赤字を抱えながら、衛星や開発設備へ積極投資している会社ですので、配当より成長投資を優先すべき段階です。

したがってアストロスケールは完全にキャピタルゲイン目的で見る銘柄です。

配当目的で長期保有する会社ではありません。

今回の決算で最も評価したいポイント

一番評価したいのは売上成長です。

59億4000万円まで伸び、141.8%増となりました。

二つ目は売上総利益です。

前年38億円を超える粗損失から、ほぼ損益均衡まで改善しました。

三つ目は営業赤字縮小です。

開発費資産化の影響は考慮する必要がありますが、それでも約88億円縮小しています。

四つ目は防衛案件です。

日本、米国、欧州で宇宙防衛の政策・予算が強化され、アストロスケールのRPO技術と合致する案件が増えています。

五つ目は受注残です。

契約済みだけでも274億円超、選定・想定分を含め約379億円あります。

六つ目は決算後の資金調達です。

希薄化の問題はあるものの、当面の成長投資資金を大きく強化しました。

一方で最も気になるポイント

最大の懸念はキャッシュ・フローです。

営業CFが124億8600万円の赤字で、前年より改善していません。

二つ目は次期営業赤字です。

売上が最大51.5%増えても、90億~99億円の営業赤字が続く見込みです。

三つ目は開発費資産化です。

営業赤字縮小の一部には会計処理の変化があります。

四つ目は最終利益です。

今回の赤字縮小には約36億5100万円の為替差益があり、次期は最終赤字が再び拡大する予想です。

五つ目は受注高です。

今期受注総額は72.5%減っています。

六つ目は資金調達と希薄化です。

現在の成長は資本市場からの資金供給に大きく依存しており、追加の株式・転換社債発行が1株当たり価値を薄める可能性があります。

キャピタルゲインという視点ではどう見るか

アストロスケールは非常に典型的な「業績より受注と市場拡大で株価が動きやすい成長企業」です。

現在の営業利益やPERだけで判断する銘柄ではありません。

キャピタルゲインを大きく狙える材料としては、

大型防衛案件の受注

継続受注案件の獲得

APS-Rなどの打ち上げ成功

粗利益率改善

大型民間寿命延長案件の獲得

などがあります。

特に会社は2027年4月期予想に未受注案件を含めていません。

新規大型受注が入れば、上方修正の可能性があります。

これは株価には非常に大きな材料です。

ただし現在の最大の問題は、売上規模ではありません。

売上59億円を稼ぐために、営業CFで125億円近い現金が出ていく構造

です。

ここを変えなければ、受注と売上が増えても何度も資金調達が必要になります。

私がアストロスケールをキャピタルゲイン目的で見るなら、受注発表だけではなく「赤字企業から自走できる企業へ変わる兆候」を最も重視します。

私ならどう売買するか

すでにアストロスケールを保有しているなら、私は今回の決算だけで全部売却はしません。

売上141.8%増、粗利益黒字化、営業赤字大幅縮小、防衛関連案件の増加、379億円規模の広義の受注残という成長材料があります。

また決算後の大型資金調達によって、短期的な資金不足リスクも低下しました。

一方で私は積極的な買い増しも急ぎません。

営業CFが年間125億円近い赤字であり、次期も営業赤字90億円以上を会社自身が予想しているからです。

私なら保有分は残し、第1四半期で売上総利益率がさらに改善しているか、営業赤字が縮小しているか、新規防衛案件が受注できているかを確認します。

新規買いなら少額で入ります。

大型受注が発表された直後に一気に買うより、その案件が本当にプロジェクト収益や売上へつながることを確認しながら段階的に増やします。

そして最も強く買いたくなるのは、単に「100億円を受注した」ときではありません。

営業CF赤字が明確に縮小し、粗利益率が上昇し始めたときです。

そこまで進めば、企業のステージが変わったと判断できます。

次の決算で見るポイント

最優先は売上総利益率です。

今回約0.3%まで改善しました。

これが5%、10%方向へ上昇するなら、案件採算性が本当に改善している可能性があります。

二つ目は営業損失です。

次期会社予想は年間90億~99億円の営業赤字です。

四半期ベースで赤字縮小が進んでいるかを見ます。

三つ目は営業CFです。

今回年間124億8600万円の赤字でした。

ここが改善しない限り外部資金調達依存は続きます。

四つ目は新規受注です。

今期受注高は72.5%減でした。

防衛、燃料補給、寿命延長関連などで大型受注が入るかを確認します。

五つ目は受注残高です。

契約済み274億円、広義では379億円という案件が計画通り収益へ転換しているかを見ます。

六つ目はAPS-R、ELSA-M、ISSA-J1、Orpheusなど主要案件のスケジュールです。

遅延が発生すると売上計上時期も後ろへずれます。

七つ目は開発費資産化です。

無形資産が増える一方で、それに見合う収益が生まれているかを確認します。

八つ目は追加資金調達です。

今回の大型調達後も短期間で再び増資が必要になるなら、キャッシュ消費の大きさを再評価します。

売却を考える条件

私が売却を強く考える一つ目の条件は、売上総利益が再び赤字へ転落する場合です。

現在の投資ストーリーでは、粗利益率改善が将来の黒字化に不可欠です。

二つ目は、売上収益が増えているにもかかわらず営業CF赤字がさらに拡大する場合です。

売上だけ増えてキャッシュ消費も増えるのであれば、ビジネスモデルの自立性に疑問が出ます。

三つ目は大型案件の遅延です。

特に複数の主要ミッションでスケジュール遅延が重なり、2027年4月期の売上70億~90億円達成が難しくなる場合は警戒します。

四つ目は受注残の継続的な減少です。

今回受注高72.5%減、受注残7.6%減となっていますので、次年度も減少する場合は将来の成長期待が弱くなります。

五つ目は資金調達です。

大型増資や転換社債が短期間に何度も続き、営業CF改善が見えない場合は、キャピタルゲイン目的では保有比率を落とします。

逆に粗利益率上昇、営業赤字縮小、大型受注、キャッシュ消費改善が同時に確認できるなら、私は簡単には売却しません。

今回の私の結論

今回のアストロスケールホールディングスの2026年4月期決算は、事業は大きく前進していますが、まだ「良い決算」と単純には言い切れない内容です。

売上収益は24億5700万円から59億4100万円へ141.8%増加しました。

営業損失も187億5500万円から99億7500万円へ大幅に縮小しました。

さらに前年38億8100万円の赤字だった売上総利益が、今期は約1900万円ながら黒字へ転換しています。

この部分はかなり評価できます。

一方、営業赤字縮小には開発費用の資産化によって研究開発費が大幅に減った影響があります。

最終赤字が215億円から67億円まで縮小した背景には、36億5100万円の為替差益もあります。

したがって表面的な赤字縮小率ほど本業の収益構造が改善したわけではありません。

そして2027年4月期も営業損失90億~99億円を予想しています。

最終損失は96億~106億円へ再び拡大する見込みです。

営業CFも年間124億8600万円の赤字で、投資CFと合わせた単純なフリーCFは約194億円のマイナスです。

ここはかなり重いです。

一方、成長材料も非常に大きいです。

防衛案件、燃料補給、寿命延長、デブリ除去など受注領域は広がり、契約済み受注残は274億円超、選定・想定分を含めると379億円規模です。

さらに2027年4月期予想には未受注の新規案件を含めていないため、大型案件が決まれば上方修正余地があります。

決算後にはヒューリック、スカパーJSATとの資本提携に加え、転換社債などを活用した大型資金調達も実施しており、当面の成長投資資金は強化されました。

したがって私は今回を、

「技術実証企業から商業化企業へ進み始めているが、まだ自力でキャッシュを生む段階には達していない決算」

と評価します。

私なら、

保有は継続。ただし買い増しは急がない。

新規買いは少額・分割。

大型受注だけでなく粗利益率と営業CFの改善を確認してから追加買い。

という判断です。

今回の総合評価は**★★★☆☆**です。

成長性と受注ポテンシャルだけなら★★★★★を付けられます。

しかしキャピタルゲイン目的で最終的に重要なのは、受注額が何百億円あるかではありません。

その受注を利益とキャッシュへ変換できるのか。

現在の粗利益率はほぼゼロです。

営業CFは年間125億円近い赤字です。

長期目標は売上総利益率30%台半ば、営業利益率20%台半ばです。

この非常に大きな差を埋め始めたことが次の決算で確認できれば、私はアストロスケールに対する評価を一段、二段と引き上げたいと思います。

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