その他金融業の今後はどうなる?
その他金融業について、私は今後3~5年を「やや強気」と見ています。
東証の「その他金融業」には、リース、クレジットカード、消費者金融、総合金融、取引所など性格の異なる企業が含まれています。そのため銀行業のように「金利上昇=業界全体に追い風」と単純には判断できません。
むしろ今後は、金利上昇による資金調達コストを吸収しながら、設備投資、キャッシュレス、海外金融、アセットマネジメントなど成長市場へ資金を振り向けられる企業が強くなると考えています。
現在の日銀の金融政策は、無担保コール翌日物金利を1.0%程度で推移させる方針となっています。超低金利時代とは明らかに環境が変わりました。
リース会社は「物を貸す会社」から投資会社へ
その他金融業で大きな割合を占めるのがリース会社です。
以前は企業へ機械や自動車を貸し出してリース料を得るビジネスが中心でした。しかし現在の大手リース会社はかなり姿を変えています。
航空機、船舶、不動産、再生可能エネルギー、データセンター、物流設備、海外企業、PE投資などへ事業を広げています。
今後AI・半導体工場、データセンター、脱炭素、物流自動化などで巨額の設備投資が必要になれば、「企業が設備を購入する代わりに金融会社が資金を提供する」という需要も増えます。
そのため私は、大手リース会社を単なる金融株ではなく「世界の設備投資に資金を提供する企業」として見ています。
金利上昇はリース会社には両刃の剣
ただし金利上昇は注意が必要です。
銀行は預金という低コスト資金を大量に持っていますが、リース会社は社債や借入金などによって資金を調達する割合が高いため、金利が上がると調達費用も増えます。
重要なのは、
「調達金利が上がった以上に顧客へ金利を転嫁できるか」
です。
また、航空機、不動産、再エネ設備など高い収益を生む資産へ資金を振り向けられれば、多少調達金利が上昇しても利益を確保できます。
今後は単純に資産規模が大きい会社ではなく、「資産からどれだけ高い利益を生み出せるか」が重要になると考えています。
キャッシュレス市場はまだ成長余地がある
クレジット・決済分野も有望です。
2025年の国内キャッシュレス決済額は162.7兆円、キャッシュレス決済比率は58.0%まで上昇しました。そのうちクレジットカードは134.6兆円と、キャッシュレス決済額の82.7%を占めています。政府は2030年までにキャッシュレス比率65%、将来的には80%を目標としています。
クレジットカード会社にとっては決済額の増加そのものが追い風です。
さらにカードローン、住宅関連金融、事業者向け金融、海外金融などへ事業を広げられる企業には追加成長も期待できます。
一方で貸倒れが増えると利益が急減するため、「融資を増やしている会社」ではなく「信用コストを管理しながら融資を増やせる会社」を選びたいと思います。
株式市場の活性化も一つの成長テーマ
その他金融業の中では、日本取引所グループのような取引所運営企業も存在します。
日本取引所グループは2027年3月期第1四半期に、現物株式の売買代金増加などを背景として営業収益が前年同期比50.8%増、営業利益が73.3%増、純利益が73.6%増となりました。
株価が上昇することだけが追い風ではありません。
相場が大きく動けば売買が増え、売買代金やデリバティブ取引が増えることがあります。
日本株市場そのものが世界の投資資金を集められるようになれば、取引所インフラにも長期的な成長余地があると考えています。
今後厳しくなりそうなその他金融企業
その他金融業全体を低迷予想とはしませんが、次のような企業には慎重です。
・調達金利上昇を顧客へ転嫁できない
・低採算のリース資産を大量に持つ
・不動産など特定資産への依存度が高い
・信用コストが急増している
・国内市場だけに依存している
・ROEが低いまま改善していない
・利益成長がないのにPBRだけが上昇している
その他金融株では「低PBRだから割安」という判断だけでは不十分です。
私はPBR以上に、ROEを継続的に引き上げられるかを見る必要があると考えています。
その他金融株を見るための投資判断軸
今回は「成長性」「金利・信用リスク耐性」「収益源の分散」「株価水準」「株主還元」の5項目で評価します。
銀行以上に企業ごとのビジネスモデルが違うため、同じ基準で単純比較するのではなく、「今後利益が伸びる理由」と「現在の株価」を重視します。
有望銘柄① クレディセゾン(8253)
その他金融業で現在最も投資妙味を感じるのがクレディセゾンです。
セゾンカードのイメージが強い会社ですが、現在はペイメントだけではなく、ファイナンス、不動産、リース、海外金融へ事業を広げています。
2027年3月期第1四半期は純収益1,224億円で前年同期比12.4%増、事業利益304億円で32.7%増、親会社帰属利益217億円で35.1%増となりました。ファイナンス事業とグローバル事業が成長を牽引しています。
通期でも親会社帰属利益755億円、前期比20.3%増を計画し、配当は前期の130円から160円へ増配予定です。会社は次期中期経営計画でROE10%超を目指しています。
投資判断軸
成長性:★★★★★
金利・信用リスク耐性:★★★★☆
収益源の分散:★★★★★
株価水準:★★★★★
株主還元:★★★★★
総合投資判断:強気
2026年9月2日の終値は4,614円。予想PERは9倍前後、PBRは1倍を下回る水準、予想配当利回りは約3.5%です。
20%程度の最終増益を計画しながらPER1桁という点を高く評価しています。
信用コスト上昇には注意が必要ですが、キャッシュレス、ファイナンス、海外金融という複数の成長要因を持ちながら株価評価がまだ高くないため、今回の本命としました。
有望銘柄② 東京センチュリー(8439)
2位は東京センチュリーです。
リース会社というより、現在は航空機、船舶、再生可能エネルギー、自動車、IT、不動産、海外金融などへ投資する総合金融企業になっています。
2027年3月期第1四半期は売上高3,884億円で前年同期比11.7%増、経常利益511億円で36.9%増、親会社帰属利益351億円で59.1%増となりました。海外ビジネス、航空機・船舶などのトランスポート事業が大きく伸びています。
通期純利益は1,230億円で前期比10.5%増を計画し、2031年3月期には純利益2,000億円、ROE12.5%以上を目標としています。
投資判断軸
成長性:★★★★★
金利・信用リスク耐性:★★★★☆
収益源の分散:★★★★★
株価水準:★★★★★
株主還元:★★★★☆
総合投資判断:強気
2026年9月2日の終値は2,707円、予想PER10.76倍、PBR1.14倍、予想配当利回り3.32%です。年間配当も80円から90円への増配を予定しています。
企業内容と株価水準のバランスは非常に魅力的です。
ただし9月1日に年初来高値2,771円を付けた直後なので、現在は高値を追いかけるより調整局面を狙いたいと考え、クレディセゾンを1位としました。
有望銘柄③ オリックス(8591)
3位はオリックスです。
その他金融業の中でも事業分散では圧倒的です。
企業投資、不動産、航空機・船舶、再生可能エネルギー、保険、海外金融、アセットマネジメントなど幅広い事業を持っています。
2027年3月期第1四半期は営業収益8,766億円で前年同期比17.4%増、営業利益1,339億円で11.7%増、純利益2,808億円で161.8%増となりました。
ただし、この純利益急増にはキオクシア株式関連の持分法投資損益など大きな特殊要因が含まれています。会社自身も、この損益について現金回収を伴わず株価によって変動するため、配当計算では調整後利益を使用する方針を示しています。
ここは重要です。
「純利益161%増」だけを見て割安と判断するべきではありません。
それでも本業の営業利益も増えており、世界各国の資産へ投資できる事業ポートフォリオは魅力的です。
投資判断軸
成長性:★★★★☆
金利・信用リスク耐性:★★★★★
収益源の分散:★★★★★
株価水準:★★★★☆
株主還元:★★★★★
総合投資判断:やや強気~強気
2026年9月2日の終値は6,286円、予想PER13.0倍、PBR1.46倍、予想配当利回り2.98%です。年間配当予想は187.36円となっています。
優良企業としての評価は高いですが、今回の決算は特殊利益が非常に大きいため、クレディセゾンや東京センチュリーより1段下げました。
逆に本業利益が今後さらに伸びれば、評価を上げたい銘柄です。
有望銘柄④ 日本取引所グループ(8697)
4位は日本取引所グループです。
東京証券取引所、大阪取引所、日本証券クリアリング機構などを持つ、日本の金融市場インフラの中核企業です。
一般的な金融会社とは違い、大量にお金を貸して利ざやを稼ぐ企業ではありません。
株式やデリバティブの売買、上場、清算、指数、情報提供などから手数料を得るため、信用リスクや金利上昇リスクが比較的小さいビジネスです。
2027年3月期第1四半期は営業収益655億円で前年同期比50.8%増、営業利益437億円で73.3%増、純利益296億円で73.6%増となりました。現物株式の売買代金増加により、取引関連収益は60.4%増となっています。通期純利益予想も985億円へ引き上げられました。
投資判断軸
成長性:★★★★★
金利・信用リスク耐性:★★★★★
収益源の分散:★★★★☆
株価水準:★★★☆☆
株主還元:★★★★★
総合投資判断:やや強気
2026年9月2日の終値は2,145.5円、予想PER22.36倍、PBR6.82倍、予想配当利回り3.59%です。年間配当予想も従来から増額され77円となっています。
PBRはかなり高いですが、設備や貸付資産を大量に持たず高い利益率を出せる会社なので、リース会社と単純にPBRを比較することはできません。
日本株の売買活発化が続けば業績はさらに伸びる可能性がありますが、相場が静かになれば売買関連収益が減るため、現在は4位としました。
参考銘柄 三菱HCキャピタル(8593)
安定性と配当を重視するなら三菱HCキャピタルも有力です。
2027年3月期の純利益予想は1,600億円で、2026年3月期の1,622億円から若干の減益予想ですが、前年にあった子会社決算期変更の一過性利益を除けば実質的には増益計画です。
2026年9月2日の株価は1,409円、予想PER12.63倍、PBR1.01倍、予想配当利回り3.62%です。
配当目的では非常に魅力がありますが、今回はキャピタルゲインも重視しているため、利益成長の大きい4社を上位にしました。
その他金融業の有望銘柄ランキング
1位 クレディセゾン(8253)
キャッシュレス+ファイナンス+海外。20%増益予想に対してPER1桁水準を評価。
2位 東京センチュリー(8439)
航空機・海外・再エネ+低PER。企業成長と株価水準のバランスが良い。
3位 オリックス(8591)
圧倒的な事業分散と株主還元。ただし今期利益には大きな特殊要因あり。
4位 日本取引所グループ(8697)
日本株市場活性化の直接的な恩恵。高収益だが株価評価も高め。
今回特に注目しているのはクレディセゾンと東京センチュリーです。
どちらも利益成長が見込まれているにもかかわらず、PERは10倍前後です。
一方、オリックスは企業として非常に魅力的ですが、今期利益に特殊要因が多いため決算数字をそのまま評価しません。
日本取引所グループについては企業の質は非常に高いものの、今後の売買代金次第で利益が変動するため4位としました。
まとめ
その他金融業については、今後低迷する業界とは考えていません。
設備投資の大型化、キャッシュレス拡大、航空機需要、再生可能エネルギー、海外金融、日本株市場の活性化など、複数の成長テーマがあります。
ただし銀行とは違い、金利上昇がすべての企業にプラスになるわけではありません。
今後私が重視したいのは、「調達金利上昇を価格転嫁できる」「ROEを引き上げられる」「金融以外にも高収益資産を持つ」「海外成長がある」「株主還元に積極的」という企業です。
その他金融業の将来性を5段階で評価するなら「4」。
私は今後、単純なリース会社やカード会社としてではなく、「資金をどこへ配分すれば最も高い利益を生み出せるか」を競う業界としてその他金融業を見たいと思います。
現時点では本命をクレディセゾン(8253)、対抗を東京センチュリー(8439)とします。
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