地方銀行の今後はどうなる?
地方銀行について、私は今後3~5年を「やや強気」と見ています。
銀行業全体には金利上昇という大きな追い風がありますが、地方銀行の場合は人口減少という長期的な逆風もあります。そのため、メガバンク以上に「どの銀行を選ぶか」が重要になると考えています。
日本銀行は2026年6月に政策金利を1.0%程度へ引き上げ、9月3日時点でも無担保コール翌日物金利を1.0%程度で推移させる方針を維持しています。超低金利時代から「金利のある世界」へ移ったことで、地方銀行の収益環境は数年前とは大きく変わりました。
金融庁も2026年7月のレポートで、金利上昇下における預金動向、不動産融資、有価証券運用などを重点的に分析しています。今後は地方銀行同士でも、預金をどれだけ維持・獲得できるかが重要になります。
私は地方銀行を「衰退産業」と見る時代はいったん終わったと考えています。
ただし、すべての地方銀行が復活するわけではありません。
金利上昇は地方銀行に大きな追い風
地方銀行の基本的な収益源は、地域から集めた預金を企業や個人へ貸し出して得る利ざやです。
超低金利時代には、この利ざやが極端に薄くなっていました。大量の預金を持っていても利益につながりにくかったわけです。
ところが政策金利が上昇すると、企業融資や住宅ローンなどの貸出金利も上昇します。預金金利も上昇しますが、貸出金利との間に適切な差を確保できれば資金利益は増加します。
実際、2027年3月期第1四半期では多くの地方銀行で貸出金利息や資金運用収益が大きく増加しています。
つまり地方銀行にとって、これまで負担だった「大量の預金」が再び収益を生む資産になってきました。
これから重要なのは「預金を持っている銀行」
今後私が地方銀行で特に重視したいのが預金基盤です。
地方銀行はこれまで「どれだけ貸せるか」が注目されてきましたが、金利が上昇すると「どれだけ低コストで資金を調達できるか」も重要になります。
個人や企業から安定した預金を集められる銀行ほど有利です。
ただし預金者も金利を意識するようになれば、「金利の低い銀行から高い銀行へ預金を移す」という行動も増えてきます。
今後は地方銀行同士で、
預金金利
アプリの使いやすさ
店舗・ATM
給与振込
住宅ローン
資産運用サービス
などを組み合わせた預金獲得競争が強くなるでしょう。
地域経済の強さが株価にも影響する
地方銀行にはメガバンクにはない特徴があります。
それが「地域経済への依存度」です。
人口が減少し、企業も減少している地域だけに依存する銀行は、長期的には貸出先そのものが減ってしまいます。
反対に、
半導体工場が増えている地域
人口流入が続く都市圏
観光需要が強い地域
再開発が進む地域
企業誘致が活発な地域
などを地盤とする銀行には成長機会があります。
そのため私は地方銀行株を分析するとき、銀行の決算だけを見るのではなく「その銀行がある地域に今後お金が流れ込むか」を重要視します。
今後の地銀投資では、銀行選びと同時に「地域選び」をする必要があると思います。
地銀再編はこれからも続く
もう一つの重要テーマが再編です。
地方銀行はシステム、店舗、人員など固定費が大きいため、経営統合によって規模を拡大すると効率化しやすくなります。
一つの県に複数の銀行が存在して競争するより、統合してシステムや店舗を共通化した方が利益を残しやすくなります。
今後は「単独で生き残る地銀」と「他行と統合する地銀」の二極化が進むでしょう。
投資という観点では、再編を仕掛ける側、あるいは再編によって地域シェアを高められる銀行を優先したいと考えています。
一方で地方銀行には長期的な逆風もある
地方銀行を強気で見ているとはいえ、構造的な問題がなくなったわけではありません。
最大の問題は人口減少です。
地域人口が減れば、住宅ローン、預金口座、法人融資などの顧客基盤も徐々に縮小します。
さらに金利が上昇しすぎると、取引先企業の利払い負担が増え、倒産や貸倒れが増える可能性があります。保有している国債などの価格下落も注意が必要です。
そのため「地方銀行なら何でも金利上昇銘柄」という考え方は避けたいと思います。
私が慎重に見るのは、
・人口減少が特に激しい地域に依存している
・預金や貸出が長期間減少している
・ROEが低い
・有価証券運用のリスクが大きい
・再編余地が少ない
・株主還元に積極的ではない
といった地方銀行です。
地方銀行を見るための投資判断軸
地方銀行については、通常の企業とは少し評価方法を変えます。
私が重視するのは「収益成長力」「金利上昇恩恵」「預金・地域基盤」「株価水準」「株主還元」の5項目です。
特にPBRだけで「1倍割れだから安い」と判断するのではなく、ROEを引き上げられる銀行かどうかを重視します。
有望銘柄① ふくおかフィナンシャルグループ(8354)
地方銀行の第一候補は、ふくおかフィナンシャルグループです。
福岡銀行、熊本銀行、十八親和銀行、福岡中央銀行などを傘下に持つ国内最大級の地域金融グループです。
2027年3月期第1四半期は経常収益1,519億円で前年同期比20.1%増、経常利益415億円で27.5%増、純利益287億円で25.7%増となりました。
九州は半導体関連をはじめ大型設備投資が続く地域であり、企業融資を取り込める可能性があります。
さらにFFGは複数県にまたがって銀行を統合してきた実績があり、「地方銀行再編で勝つ側」という点も評価しています。
投資判断軸
成長性:★★★★★
金利上昇恩恵:★★★★★
預金・地域基盤:★★★★★
株価水準:★★★☆☆
株主還元:★★★★☆
総合投資判断:やや強気
2026年9月2日の株価は7,828円、予想PER約14.8倍、PBR約1.31倍、予想配当利回り約2.7%です。
企業としては地方銀行の中でも本命級ですが、株価は9月1日に年初来高値7,962円を付けた直後です。
したがって「良い銀行だから今すぐ買う」というより、押し目を待って拾いたい銘柄と考えています。
有望銘柄② 七十七銀行(8341)
七十七銀行も有力候補です。
2027年3月期第1四半期は経常収益639億円で前年同期比40.8%増、経常利益317億円で80.1%増、純利益222億円で80.6%増と大幅な増益になりました。貸出金利息や有価証券利息配当金の増加に加え、株式等売却益の増加も利益を押し上げています。
ただし、この80%増益をそのまま将来の成長率と考えるのは適切ではありません。政策保有株式などの売却益が含まれているため、本業の資金利益がどれだけ継続的に増えるかを見る必要があります。
一方、2027年3月期の会社予想でも経常利益895億円、純利益615億円と増益を見込んでいます。
投資判断軸
成長性:★★★★☆
金利上昇恩恵:★★★★★
預金・地域基盤:★★★★★
株価水準:★★★★☆
株主還元:★★★★☆
総合投資判断:やや強気
2026年9月2日の株価は3,974円、予想PER14.42倍、PBR1.17倍、予想配当利回り2.62%です。ROE実績も8.53%まで上昇しています。
地方銀行株としてPBR1倍をすでに超えていますが、ふくおかFGや千葉銀行と比較するとバリュエーションにはまだ余地があります。
ただし9月2日に年初来高値4,025円を付けているため、こちらも高値追いより調整局面を狙いたい銘柄です。
有望銘柄③ 横浜フィナンシャルグループ(7186)
横浜銀行を中心とする横浜フィナンシャルグループも注目しています。
旧コンコルディア・フィナンシャルグループで、首都圏という人口・企業集積の大きい地域を地盤としていることが最大の強みです。
地方銀行にとって最大のリスクは地域人口減少なので、首都圏を主要マーケットとしていること自体が大きな優位性になります。
2027年3月期第1四半期は経常収益1,309億円で前年同期比15.9%増、経常利益454億円で18.6%増、純利益320億円で18.4%増となりました。通期でも経常利益23.5%増、純利益21.1%増を見込んでいます。
投資判断軸
成長性:★★★★☆
金利上昇恩恵:★★★★★
預金・地域基盤:★★★★★
株価水準:★★★☆☆
株主還元:★★★★☆
総合投資判断:やや強気
株価は約1,900円台、予想PER約16.6倍、PBR約1.47倍、予想配当利回り約2.4%です。
地方銀行株としては決して割安ではありません。
しかし首都圏の地域基盤を考えると、人口減少リスクが比較的小さく、「長く持てる地銀」という意味では魅力があります。
有望銘柄④ 千葉銀行(8331)
千葉銀行も地方銀行の代表的な優良行です。
首都圏に位置する千葉県を地盤とし、預金・貸出規模とも地方銀行ではトップクラスです。
2027年3月期第1四半期は経常収益1,453億円で前年同期比41.4%増、経常利益418億円で34.5%増、純利益299億円で37.2%増となりました。資金運用収益の増加が業績を押し上げています。
地方銀行の中では収益力、地域基盤、経営力のいずれも高く、企業そのものについては高く評価しています。
問題は株価です。
投資判断軸
成長性:★★★★★
金利上昇恩恵:★★★★★
預金・地域基盤:★★★★★
株価水準:★★☆☆☆
株主還元:★★★☆☆
総合投資判断:中立~やや強気
2026年9月2日の株価は2,800円、予想PER約18.1倍、PBR約1.50倍、予想配当利回り約2.3%です。
地方銀行としてはかなり高い評価を受けています。
つまり「良い銀行か?」と聞かれれば非常に良い銀行ですが、「今の株価から投資妙味が大きいか?」については少し慎重です。
これからの記事では、このように企業評価と株価評価を分けて考えることが重要だと思います。
地方銀行の有望銘柄ランキング
現時点で私が注目する順番は、1位 ふくおかフィナンシャルグループ(8354)、2位 七十七銀行(8341)、3位 横浜フィナンシャルグループ(7186)、4位 千葉銀行(8331)です。
1位のふくおかFGは「九州経済+地銀再編+規模」、2位の七十七銀行は「金利上昇恩恵+収益改善+株価水準」、3位の横浜FGは「首都圏+巨大預金基盤」、4位の千葉銀行は「高収益+首都圏」という強みがあります。
ただし企業としての質だけなら千葉銀行はもっと上位でもおかしくありません。
今回は「これから株を買う」という投資判断を含めているため、すでにPBR1.5倍、PER18倍程度まで評価されている千葉銀行を4位としました。
地方銀行では、良い銀行を探すだけでなく、良い銀行がまだ十分評価されていないところを探すことがキャピタルゲインにつながると考えています。
まとめ
地方銀行は、今後低迷する業界とは考えていません。
超低金利時代から「金利のある世界」へ移ったことで、本業である預金と融資から再び利益を出しやすくなっています。
一方で人口減少という長期的な逆風は残ります。
そのため今後の地方銀行株では、「預金基盤が大きい」「貸出金利上昇の恩恵を受けやすい」「地域経済に成長余地がある」「ROEを引き上げられる」「株主還元に積極的」「再編で勝つ側にいる」という6点を重視したいと思います。
地方銀行の将来性を5段階で評価するなら「4」。
銀行業全体ほど単純に強気ではありませんが、地方銀行株は長い低迷期を抜けて、収益力そのものが変わり始めています。
ただし今後は「PBR1倍割れの地銀を何でも買う」という投資ではなく、金利上昇によってROEが上がり、そのROE上昇によってPBRも切り上がる銀行を探すことが重要だと考えています。
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