銀行業の今後はどうなる?
銀行業について、私は今後3~5年を「強気」と見ています。長期間続いた超低金利によって収益を伸ばしにくかった銀行業ですが、現在は環境が大きく変わっています。
日本銀行は2026年6月に政策金利を0.75%程度から1.0%程度へ引き上げ、その後も1.0%程度で推移する方針を維持しています。日銀は経済・物価情勢に応じて引き続き政策金利を引き上げていく方向性も示しています。
銀行にとって金利上昇が重要なのは、預金で集めた資金と貸出金の金利差、いわゆる利ざやを改善させやすいからです。ゼロ金利に近かった時代には貸出金利も極端に低く、預金を大量に持っていても大きな利益につながりませんでした。しかし金利が正常化すれば、巨大な預金基盤そのものが収益源になります。
私は銀行業が「低成長・高配当だけの業界」から、利益成長も期待できる業界へ変わりつつあると考えています。
最大の追い風は「金利のある世界」
銀行業を見るうえで最も重要なのは、やはり金利です。
政策金利が上昇すると、住宅ローンや企業向け融資などの貸出金利も徐々に上昇します。一方、普通預金などの金利は貸出金利ほど一気には上昇しないため、銀行の資金利益が増えやすくなります。
特に有利なのが、低コストの個人預金や法人預金を大量に持っている銀行です。今後の銀行株では単純な貸出残高以上に、「安定した預金をどれだけ持っているか」が重要になると思います。
すでに地域銀行でもこの変化は表れており、金融庁は「金利のある世界」における預金動向や金利上昇局面での有価証券運用を重点的に分析しています。預金金利と預金残高の間にも一定の関係が示唆されており、今後は銀行間で「預金獲得競争」が強くなる可能性があります。
つまり今後は、貸出金利を上げれば自動的に儲かるという単純な話ではありません。「預金を逃がさず、貸出金利を適切に引き上げられる銀行」が強くなると考えています。
銀行は「貸すだけの会社」ではなくなる
もう一つ注目したいのが非金利収益です。
大手銀行は現在、融資だけではなく、資産運用、証券、M&A、事業承継、クレジットカード、決済、ウェルスマネジメント、海外金融などへ収益源を広げています。
特に日本では高齢化によって相続・事業承継需要が増え、NISAなどを通じて個人の資産運用も拡大しています。企業側でもM&Aや海外進出など金融以外の相談需要が増えています。
そのため今後の銀行は、「企業にお金を貸して利息を取る会社」というより、「企業や個人のお金に関するサービスをまとめて提供する金融プラットフォーム」に近づいていくでしょう。
この点では、銀行、信託、証券、カードなどをグループ内に持つメガバンクが有利だと考えています。
地方銀行は一括りにして考えない
銀行業全体は強気ですが、地方銀行についてはかなり選別が必要です。
金利上昇は地方銀行にも追い風です。しかし地方では人口減少や企業数減少という長期的な問題があります。また金利が急上昇すると、保有債券の評価損や取引先企業の利払い負担増加による信用コスト上昇という逆風も生まれます。
今後の地銀では、「地元の人口が減っているから駄目」という単純な判断ではなく、地域経済の成長力、預金基盤、貸出シェア、経営統合、手数料ビジネス、店舗効率化などを見る必要があります。
特に経営統合によって規模を拡大できる地方銀行は、システム費用や店舗費用を削減できるため有利になるでしょう。逆に規模が小さく、地域経済も縮小し、再編にも参加できない銀行は徐々に厳しくなると考えています。
銀行業のリスクは「金利が上がりすぎること」
銀行株にとって利上げは基本的にプラスですが、上がれば上がるほど良いわけではありません。
金利が急激に上昇すると、企業の借入負担が増え、倒産や貸倒れが増加する可能性があります。また銀行が保有する国債などの価格が下落し、有価証券評価損が拡大する可能性もあります。
さらに預金者が金利に敏感になれば、銀行側も預金金利を上げざるを得なくなります。金融庁も金利上昇局面における有価証券運用、不動産関連融資、預金獲得競争などを重要なモニタリング項目としています。
したがって銀行株にとって理想なのは「急激な利上げ」ではなく、「景気を壊さない程度に緩やかに金利が上昇する環境」だと考えています。
有望銘柄① 三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)
銀行業で私が第一候補にするのは三菱UFJフィナンシャル・グループです。
最大の強みは国内最大級の預金基盤に加え、海外事業、法人金融、信託、証券、カードなど収益源が非常に分散されていることです。
2027年3月期第1四半期は経常利益が前年同期比57.8%増の1兆1,179億円、親会社株主に帰属する四半期純利益は48.2%増の8,094億円となりました。通期では純利益2兆7,000億円を目標としています。
これまでのMUFGは規模が大きすぎて高成長しにくい印象もありましたが、「金利のある世界」ではその巨大な預金基盤が逆に強力な武器になります。
海外金融も大きいため、日本の金利だけに依存していない点も魅力です。
銀行業の中心銘柄として最も外しにくい存在だと考えています。
有望銘柄② 三井住友フィナンシャルグループ(8316)
2番手は三井住友フィナンシャルグループです。
SMFGは銀行だけでなく、SMBC日興証券、三井住友カードなどを持ち、決済・カード分野にも強いことが特徴です。
2027年3月期第1四半期は経常利益が前年同期比43.4%増の6,931億円、親会社株主に帰属する四半期純利益は33.0%増の5,014億円となりました。連結業務純益も大きく増加しており、ホールセール、リテール、市場部門など幅広い分野が利益成長に貢献しています。
SMFGの面白さは、銀行の金利上昇メリットだけではありません。クレジットカードやキャッシュレスなど、金融のデジタル化でも成長余地があります。
そのため私はMUFGを「総合力」、SMFGを「収益力+成長力」で評価しています。
キャピタルゲインを重視するなら、MUFGと並んで特に注目したい銀行株です。
有望銘柄③ みずほフィナンシャルグループ(8411)
3番手はみずほフィナンシャルグループです。
以前のみずほにはシステム障害などから他のメガバンクより低く評価される時期がありました。しかし現在は業績改善が進み、銀行株として再評価できる段階に入っていると見ています。
2027年3月期第1四半期は経常利益5,990億円、親会社株主に帰属する四半期純利益4,229億円となり、純利益は前年同期比45.5%増となりました。好調な第1四半期を受け、通期純利益予想も従来の1兆3,000億円から1兆4,000億円へ引き上げています。
また、みずほは2026年に楽天銀行との資本・業務提携も発表しています。
みずほについてはMUFGやSMFGに追いつく過程そのものが株価材料になる可能性があります。
「銀行業界そのものの成長」に加えて「企業自身の評価改善」も狙える銘柄として注目しています。
有望銘柄④ ふくおかフィナンシャルグループ(8354)
地方銀行から一社選ぶなら、ふくおかフィナンシャルグループを候補にします。
福岡銀行、熊本銀行、十八親和銀行、福岡中央銀行などを抱える国内最大級の地域金融グループです。
九州では半導体関連投資など大型設備投資が続いており、他の地方圏と比較して企業向け金融需要を取り込みやすい地域に位置していることも魅力だと考えています。
2027年3月期第1四半期は経常収益が前年同期比20.1%増の1,519億円、経常利益が27.5%増の415億円、親会社株主に帰属する四半期純利益が25.7%増の287億円となりました。
地銀株すべてを買うのではなく、「経済圏そのものが比較的強く、再編によって規模を拡大している銀行」を選ぶなら有力候補だと思います。
銀行業の有望銘柄ランキング
現時点で私が注目する順番は、1位 三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)、2位 三井住友フィナンシャルグループ(8316)、3位 みずほフィナンシャルグループ(8411)、4位 ふくおかフィナンシャルグループ(8354)です。
MUFGは「巨大な預金基盤+海外」、SMFGは「高収益+カード・決済」、みずほは「業績改善+再評価」、ふくおかFGは「金利上昇+九州経済+地銀再編」という違いがあります。
3メガバンクはいずれも有望だと考えていますが、現時点では業界本命をMUFG、成長力を重視する場合の対抗をSMFGとします。
まとめ
銀行業については、今後低迷する業界とは考えていません。むしろ日本の金融政策正常化によって、長年続いた収益環境の悪さから抜け出しつつある業界です。
特に注目したいのは、「大きな預金基盤を持つ」「貸出金利上昇の恩恵を受けやすい」「証券・カード・資産運用など非金利収益を持つ」「海外にも収益源がある」「経営統合によって効率化できる」という銀行です。
一方で、人口減少地域だけに依存する小規模地銀や、金利上昇による債券損失・信用コスト増加への耐性が弱い銀行には注意が必要です。
銀行業の将来性を5段階で評価するなら「5」。
ただし、ここから政策金利が大きく上昇するほど銀行株が無条件で上がるとは考えていません。今後の本当の勝ち組は、「金利上昇で稼ぐ銀行」ではなく、「金利上昇を利用してROEと株主還元を継続的に引き上げられる銀行」だと考えています。
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