自動車部品業界の今後はどうなる?
自動車部品業界について、私は今後3~5年を「やや強気」と見ています。
完成車メーカー以上に企業間格差が広がる業界だと思います。
理由は、自動車そのものの構造が大きく変わっているからです。
従来のガソリン車には、
エンジン
燃料噴射装置
点火プラグ
トランスミッション
排気系部品
など大量の機械部品が使用されています。
BEVになると、その一部は不要になります。
一方で、
モーター
インバーター
パワー半導体
バッテリー制御
高電圧配線
カメラ
レーダー
センサー
ECU
などの需要は増えます。
さらに今後はSDV、つまりソフトウェアによって機能を更新できる自動車が増えていきます。
経済産業省はモビリティDX戦略で、2030年・2035年に世界のSDV販売における日系メーカーシェア3割を目標に掲げ、AI自動運転、自動車用SoC、サイバーセキュリティなどへの取り組みを進めています。
自動車部品会社も「鉄を削って部品を作る会社」から、電気・電子・ソフトウェアを組み合わせる会社へ変わる必要があります。
EVだけを見てはいけない
数年前は、
「EVが急速に普及し、エンジン関連企業はすぐ苦しくなる」
という見方が強くありました。
しかし現在は少し状況が変わっています。
BEVの成長は続いているものの、北米などではハイブリッド車の販売が強く、日系メーカーもHV・PHEVを改めて重視しています。
2026年4~6月の国内自動車部品関連でも、北米向けはHVを中心に堅調。一方、中国・東南アジアでは日系完成車メーカーのシェア低下が逆風となっています。
つまり今後数年間は、
ガソリン車
ハイブリッド
PHEV
BEV
が同時に存在する可能性が高いと思います。
この状況では、特定方式にしか対応できない会社より、複数方式へ部品を供給できる会社が有利です。
ハイブリッド回帰は日本の部品メーカーに追い風
これは日本企業にとって重要です。
日本には、
デンソー
アイシン
日本特殊陶業
など、ハイブリッド車でも高い競争力を持つ部品メーカーがあります。
例えばアイシンは2028年中期経営計画で、BEV需要の減速を受けたAT需要を取り込みながら、PHEV・HEVの引き合い増加にも対応する方針です。
BEV向けでもeAxleを拡販するため、
ICEが残っても利益を得る
HVが増えても利益を得る
BEVが増えても利益を得る
という商品構成を目指しています。
私はこれを自動車部品株の理想的な形の一つだと考えています。
SDVで自動車部品の価値が変わる
次に重要なのがSDVです。
自動車の価値がエンジン性能だけではなく、
自動運転
安全運転支援
車内サービス
ソフトウェア更新
エネルギーマネジメント
などへ移ります。
そのため部品メーカーも、
「メーカーから仕様書を渡され、その通り部品を作る」
だけでは成長しにくくなります。
センサー、ECU、ソフトウェア、車両制御までまとめて提案できる会社が強くなります。
ここではデンソーが非常に有利です。
電動化だけでなく、ADAS、車載半導体、熱マネジメント、制御ソフトなどを幅広く持つためです。
自動運転で「見る部品」が増える
ADAS・自動運転も自動車部品市場を変えます。
人間が運転する車ではドライバーの目で周囲を確認します。
自動運転では車そのものが、
カメラ
LiDAR
レーダー
などを使って周囲を認識しなければなりません。
これによって「車の目」に当たる部品の価値が上昇します。
小糸製作所も従来のヘッドランプだけでなく、カメラやセンサーとの連携、高精細ADBなど次世代安全技術を展開しています。
2026年5月には、高精細ADB搭載ヘッドランプを国内で初めて量産し、LEXUS新型ESへ採用されました。
ただしLiDARについては、乗用車向け開発を縮小し、ロボタクシー・バス・トラックなどインフラ用途へ重点を移しています。
私はこのように、「夢だけを追う」のではなく収益性を見ながら投資先を選ぶ企業姿勢も評価したいと思います。
中国市場は最大のリスク
自動車部品業界で最大の懸念は中国です。
中国ではEVメーカーだけでなく部品メーカーも急速に成長しています。
日本の部品メーカーが、
日本メーカー
↓
中国の日系工場
だけへ納入していると、日系完成車メーカーの販売シェア低下と一緒に売上が落ちます。
今後は中国メーカー、欧米メーカー、新興国メーカーなどへ顧客を広げられるかが重要です。
私は「トヨタグループだから安心」という考え方より、
トヨタで培った技術を他メーカーにも売れる会社
を高く評価します。
エンジン専業部品は長期的には慎重
一方、注意したいのが内燃機関だけに依存する企業です。
HVではエンジンが残るため、数年間で需要が消えるとは考えていません。
しかし10年、20年という期間で見れば、純粋なエンジン部品市場が拡大し続ける可能性は低いでしょう。
重要なのは、既存のエンジン部品で稼いでいる間に、
電動化
半導体
センサー
医療
産業機器
など新事業へ資金を移せるかです。
この点で興味深いのが日本特殊陶業です。
スパークプラグという非常に収益性の高い既存事業で稼ぎながら、半導体関連などへ事業ポートフォリオを広げています。
自動車部品株を見るための投資判断軸
今回は「成長性」「電動化・SDV対応」「世界競争力・顧客分散」「株価水準」「財務・株主還元」の5項目で評価します。
特に重視するのは、EV比率ではありません。
どのパワートレインが勝っても利益を残せるかを重視します。
有望銘柄① デンソー(6902)
今回の自動車部品株で第一候補にするのはデンソーです。
世界最大級の自動車部品メーカーで、
電動化
ADAS
車載半導体
熱マネジメント
パワートレイン
ソフトウェア
まで幅広く持っています。
最大の強みは「EV専業」でも「エンジン専業」でもないことです。
2026年8月には新開発の2モーターハイブリッド駆動モジュールがStellantisの新型Jeep Cherokeeに採用されました。トヨタグループ以外へハイブリッド技術を拡販できている点を評価しています。
一方、足元決算は絶好調ではありません。
2027年3月期第1四半期は売上収益1兆9,139億円で前年同期比9.1%増でしたが、営業利益は842億円で21.5%減となりました。
部材価格上昇や将来成長への投資負担などが利益を圧迫しています。
私はむしろ、ここに投資妙味があると見ています。
投資判断軸
成長性:★★★★★
電動化・SDV対応:★★★★★
世界競争力・顧客分散:★★★★★
株価水準:★★★★★
財務・株主還元:★★★★★
総合投資判断:強気
2026年9月4日の終値は1,916.5円。
予想PER13.35倍、PBR0.94倍、予想配当利回り3.86%です。
自己資本比率も62.9%あります。
世界的な自動車部品企業でありながらPBR1倍を下回っています。
現在は利益成長が弱いため評価されていませんが、将来投資が利益へ変わり始めれば、
EPS上昇+PBR1倍超への評価修正
を同時に狙える可能性があります。
今回の本命とします。
有望銘柄② 日本特殊陶業(5334)
2位は日本特殊陶業です。
英文社名はNiterraですが、日本の正式社名は現在も日本特殊陶業株式会社です。
スパークプラグで世界的な競争力を持つため、
「EVになれば厳しい会社ではないか」
と思われやすい企業です。
しかし私は現在の日本特殊陶業を、単純なエンジン部品会社として見ていません。
スパークプラグ・センサーという高収益事業でキャッシュを稼ぎながら、
半導体
セラミックス
医療
環境・エネルギー
などへ投資しています。
2025年には東芝マテリアルを取得し、Niterra Materialsとしてグループ化しました。半導体・電動化関連セラミックスの成長も狙っています。
そして足元の業績が非常に強いです。
2027年3月期第1四半期は、
売上収益2,037億円 19.9%増
営業利益417億円 24.4%増
となりました。営業利益率は約20%です。
税前利益・純利益は保有金融資産関連の一時的な収益で大きく膨らんでいるため、その数字だけで評価しない方がよいですが、本業の営業利益も24%増えている点は評価できます。
投資判断軸
成長性:★★★★★
電動化・SDV対応:★★★★☆
世界競争力・顧客分散:★★★★★
株価水準:★★★★☆
財務・株主還元:★★★★★
総合投資判断:強気
2026年9月4日の終値は7,852円。
予想PER14.61倍、PBR1.81倍、予想配当利回り2.67%、ROEは15.66%です。
7月6日の年初来高値11,265円から約30%調整しています。
業績は強いのに株価は高値から大きく下がっているため、押し目候補として面白いと考えています。
長期的なEV化はリスクですが、そのために現在の高収益事業から新事業へ資金を移している会社でもあります。
有望銘柄③ アイシン(7259)
3位はアイシンです。
現在の株価水準だけなら1位候補です。
AT、ハイブリッドユニット、eAxle、ブレーキなど、「走る・曲がる・止まる」に関わる部品を幅広く持っています。
2028年中期経営計画では、
2028年度売上収益5.3兆円
営業利益3,300億円
営業利益率6.2%
ROE10%
を目標としています。
特に面白いのが現在のパワートレイン環境です。
会社自身もBEV需要の鈍化によるAT需要を取り込みながら、PHEV・HEV需要増へ対応するとしています。
さらにBEV向けeAxleも拡大します。
つまり今後数年間の「EV一辺倒ではない自動車市場」と非常に相性が良い会社です。
一方、足元は減益です。
2027年3月期第1四半期は売上収益1兆3,156億円で7.8%増でしたが、営業利益365億円で23.6%減となりました。
投資判断軸
成長性:★★★★☆
電動化・SDV対応:★★★★★
世界競争力・顧客分散:★★★★☆
株価水準:★★★★★
財務・株主還元:★★★★★
総合投資判断:やや強気~強気
2026年9月4日の終値は2,249.5円。
予想PER10.8倍、PBR0.74倍、予想配当利回り3.33%です。
PBR0.74倍はかなり低いと思います。
さらにアイシンはDOEを導入し、2028年度にはDOE3.5%程度まで段階的に引き上げる方針です。
問題は利益率です。
会社が目標とする営業利益率6%台へ本当に改善できれば、PBR1倍方向への再評価余地はかなりあります。
私はアイシンを、
「成長株」というより「企業改革によるPBR改善株」
として見ています。
有望銘柄④ 小糸製作所(7276)
4位は小糸製作所です。
自動車用ヘッドランプの世界的大手です。
ヘッドランプはEVになってもなくなりません。
むしろ今後は単純に照らすだけでなく、
ADB
センサー連携
路面表示
車両間コミュニケーション
など高機能化します。
2026年5月には高精細ADBの国内初量産を開始しています。
足元の利益成長もかなり強いです。
2027年3月期第1四半期は、
売上高2,408億円 9.6%増
営業利益165億円 39.1%増
経常利益184億円 46.6%増
となりました。
投資判断軸
成長性:★★★★☆
電動化・SDV対応:★★★★☆
世界競争力・顧客分散:★★★★★
株価水準:★★★★☆
財務・株主還元:★★★★★
総合投資判断:やや強気~強気
2026年9月4日の終値は2,696円。
予想PER17.94倍、PBR1.13倍、予想配当利回り2.15%です。
PERはデンソーやアイシンより高いですが、第1四半期営業利益39%増という業績の強さを考えれば極端な割高感はありません。
一方、期待していた車載LiDARでは事業方針を見直しています。
そのため「LiDARの大化け」を期待して買うよりも、
高機能ランプ+収益改善
を評価して保有する銘柄と考えています。
参考銘柄 武蔵精密工業(7220)
値幅狙いで面白いのが武蔵精密工業です。
自動車駆動系部品を主力としながら、電動化やAI・ロボティクスなど新領域への展開を進めています。
ただし2026年9月4日の終値は2,926円で、会社予想ベースPERは約29.5倍まで評価されています。
テーマ性が高いため株価の値動きも大きくなっています。
自動車部品企業としての現在利益だけを基準にすると、デンソー、アイシン、日本特殊陶業の方が買いやすいと考え、今回は参考銘柄にします。
大きく調整した場合には再評価したい銘柄です。
自動車部品業界の有望銘柄ランキング
1位 デンソー(6902)
電動化+ADAS+半導体+HV。世界的部品メーカーでPER13倍台・PBR1倍割れを評価。
2位 日本特殊陶業(5334)
高収益自動車部品+半導体・セラミックス。1Q営業利益24%増、高値から約30%調整。
3位 アイシン(7259)
AT+HV+eAxle+ブレーキ。PER10倍台・PBR0.74倍からROE改善による再評価を狙う。
4位 小糸製作所(7276)
高機能ランプ+ADAS。1Q営業利益39%増、PBR1倍前後で利益回復が鮮明。
企業としての完成度だけならデンソーを1位にする判断は比較的迷いません。
しかしキャピタルゲインだけで見ると、現在は日本特殊陶業とアイシンもかなり面白いと思います。
日本特殊陶業は業績が強いのに株価が年初来高値から約30%調整。
アイシンはPBR0.74倍まで下がっています。
この2社は方向性が違います。
日本特殊陶業は、
「利益成長を買う株」
アイシンは、
「低評価からの変化を買う株」
というイメージです。
まとめ
自動車部品業界の将来性を5段階で評価するなら「4」です。
「5」にしない理由は明確です。
EV化によって需要が減る部品が存在し、中国メーカーとの競争も激しくなるためです。
PwCも2026年の自動車サプライヤー業界について、電動化・ソフトウェア化による大きな構造変化が続く一方、日系完成車メーカーのグローバル生産台数は2019年をピークに減少傾向にあると指摘しています。
つまり自動車部品業界全体をまとめて買うテーマではありません。
しかし勝ち組企業には非常に大きなチャンスがあります。
私が今後重視したいのは、
「HV・PHEV・BEVのどれでも売れる」「ADAS・SDV関連製品を持つ」「トヨタ以外にも販売できる」「既存事業でキャッシュを稼げる」「PER・PBRが成長性に対して高すぎない」
という企業です。
自動車がEVになるかHV中心になるかを完全に当てる必要はありません。
むしろ株式投資では、
「どちらが勝っても部品を売れる企業」を選ぶ方が安全で、利益機会も大きい
と考えています。
現時点では本命をデンソー(6902)。
業績成長と押し目を狙う対抗を日本特殊陶業(5334)。
PBR改善による値幅を狙うならアイシン(7259)に注目します。
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