重電業界の今後はどうなる?
重電業界について、私は今後5~10年を「強気」と見ています。
重電というと、変圧器、発電機、モーター、開閉装置などを作る「古い産業」というイメージを持つ人もいるかもしれません。
しかし現在は状況が大きく変わっています。
AI・データセンター、再生可能エネルギー、EV、半導体工場、蓄電池、送電網更新など、ほぼすべての成長産業が大量の電気を必要とします。
IEAは世界の電力需要について2026~2030年に年平均3.6%で増加すると予測しています。さらにデータセンターの電力消費量は2025年の約485TWhから2030年には約950TWhへ、ほぼ2倍になる見通しです。AI向けデータセンターだけなら、それ以上の速度で増加します。
つまりAIが伸びれば伸びるほど、
発電する
送電する
変圧する
蓄電する
安定して供給する
ための設備が必要になります。
私は重電を、「AIブームの裏側で最も確実に設備需要が増える業界の一つ」と考えています。
AIの本当のボトルネックは「電気」になる
AI関連株ではGPUや半導体が注目されますが、GPUだけを大量に設置しても動きません。
AIデータセンターでは大量の電力を安定して供給するため、
変圧器
開閉装置
受配電盤
UPS
蓄電池
パワーエレクトロニクス
が必要になります。
IEAによると、高性能AIサーバーの電力密度は急速に上昇しており、2027年には1ラックのピーク電力需要が一般家庭約65世帯分に相当する可能性があります。IEAはこの急増が変圧器やパワーエレクトロニクスなどの供給能力にも大きな負荷をかけると指摘しています。
これが非常に重要です。
AI半導体は技術進歩によって性能が上がりますが、その半導体を動かす電気は物理的に届けなければなりません。
そのためAI投資が続く限り、重電メーカーの設備も必要になります。
世界では変圧器不足が起きている
重電の中で特に注目したいのが変圧器です。
日立エナジーは世界的な変圧器需要の急増を受け、製造能力、研究開発、エンジニアリングなどへ90億ドル規模のグローバル投資を進めています。
2026年8月にも中国で3億ドルを追加投資し、電力用変圧器などの生産能力を拡張すると発表しました。背景にはAI、データセンター、電動化、産業用電力需要の急増があります。
米国でも日立エナジーは10億ドル超を投じ、4億5,700万ドルをかけて大型電力用変圧器工場を新設しています。
これは単なる景気循環ではありません。
世界で電力需要が増える一方、変圧器など大型重電設備は短期間で増産できません。
工場、人材、材料、設計技術が必要だからです。
そのため今後数年間は、重電メーカー側が比較的強い価格決定力を持てる可能性があります。
再生可能エネルギーも送電網投資を増やす
重電の追い風はAIだけではありません。
太陽光や風力発電が増えれば、発電場所と電力消費地を結ぶ送電網が必要になります。
さらに再生可能エネルギーは発電量が変動するため、
蓄電池
系統安定化設備
電力変換装置
監視制御システム
なども必要です。
日本でも電力広域的運営推進機関が、再エネ導入や電力安定供給を前提として基幹送電網の増強を進めています。
つまり重電メーカーは、AIだけでなくGX・脱炭素からも恩恵を受けます。
重電は「設備+ソフトウェア」の産業へ変わる
もう一つ注目したいのがデジタル化です。
昔の重電メーカーは設備を納入すれば終わりでした。
しかし今後は、
設備監視
故障予知
電力需給制御
AIによる最適運転
保守サービス
まで提供します。
例えば日立は電力設備とデジタルを組み合わせ、三菱電機や富士電機もエネルギーマネジメントシステムを強化しています。
設備を売った後もサービス収益を得られれば、重電メーカーの利益率や収益安定性は以前より高くなる可能性があります。
私はここが「昔の重電株」と「これからの重電株」の大きな違いだと考えています。
一方で重電株にも注意点はある
業界そのものは強気ですが、すべての重電株を高値で買ってよいとは考えていません。
重電設備は大型案件が多いため、原材料価格の上昇や工期遅延によって採算が悪化することがあります。
また現在はAI・電力インフラ関連株への期待が非常に高く、一部銘柄ではすでに株価が大きく上昇しています。
したがって今後は、
「受注が増えている」
だけではなく、
「利益率も上がっているか」
を見ることが重要です。
特に私は、売上高以上の速度で営業利益が伸びている企業を高く評価します。
重電株を見るための投資判断軸
今回は「成長性」「電力・データセンター恩恵」「技術競争力」「株価水準」「収益力・財務」の5項目で評価します。
重電関連企業はどこも事業環境が良いため、今回は特に現在のPERと業績成長率のバランスを重視しました。
有望銘柄① 富士電機(6504)
重電関連で現在の第一候補は富士電機です。
富士電機は重電テーマへの純度が非常に高く、
変圧器
開閉装置
受配電設備
UPS
蓄電システム
パワー半導体
など、今後需要が増える製品を幅広く持っています。
特にデータセンターとの相性が非常に良い会社です。
富士電機はデータセンターや半導体工場向け需要に対応するため、2026年度までに変圧器と開閉装置の生産能力を従来比150%へ引き上げます。電機盤・電源盤についても同じく150%へ増強しています。
海外でもデータセンター向け配電盤の生産能力を増強しており、マレーシアに新しい生産棟を建設しています。
業績にもすでに表れています。
2027年3月期第1四半期は売上高2,733億円で前年同期比10%増、営業利益250億円で約38%増となりました。
特にエネルギー部門は売上高825億円で約11%増、営業利益121億円で約44%増となっています。会社は通期営業利益予想も1,565億円へ上方修正しています。
投資判断軸
成長性:★★★★★
電力・データセンター恩恵:★★★★★
技術競争力:★★★★★
株価水準:★★★★★
収益力・財務:★★★★★
総合投資判断:強気
2026年9月4日の終値は13,110円、予想PER17.25倍、PBR2.42倍です。5月の年初来高値17,800円からは約26%下にあります。
営業利益が二桁成長し、データセンター・送配電・UPS・パワー半導体という複数の成長テーマを持ちながらPER17倍台です。
現在の重電関連株では、業績成長と株価水準のバランスが最も良いと判断して1位にします。
有望銘柄② 明電舎(6508)
2位は明電舎です。
今回の4社では、富士電機と並んで重電への純度が非常に高い企業です。
変圧器、開閉器、避雷器など電力インフラ機器を主力としています。
明電舎は世界的な電力設備需要の増加に対応するため、変圧器や開閉器などの生産能力増強を進めています。
さらにSF6ガスを使用しない環境対応型開閉装置を北米・欧州へ拡販する方針です。電力インフラ事業について2027年度に売上高1,110億円、営業利益105億円を目標としています。
そして現在、業績が急速に変化しています。
2027年3月期第1四半期は売上高734億円で前年同期比25.7%増、営業利益46.6億円となりました。前年同期の営業利益は3.5億円だったため、利益率が大きく改善しています。
好調を受け、会社は通期営業利益予想を290億円から330億円へ、経常利益を290億円から335億円へ上方修正しました。
投資判断軸
成長性:★★★★★
電力・データセンター恩恵:★★★★★
技術競争力:★★★★★
株価水準:★★★★☆
収益力・財務:★★★★☆
総合投資判断:強気
2026年9月4日の終値は10,800円、予想PER19.60倍、PBR2.76倍です。8月18日の年初来高値12,760円からは約15%調整しています。
数年前までの明電舎とは利益成長のステージがかなり変わってきたと考えています。
時価総額も約4,900億円と、日立や三菱電機よりはるかに小さいため、業績成長が続いた場合の株価インパクトも大きくなりやすい点が魅力です。
値幅狙いなら富士電機以上に面白くなる可能性があります。
有望銘柄③ 三菱電機(6503)
3位は三菱電機です。
前回の「電気機器」でも1位にしましたが、重電という切り口でも有力です。
電力システム、受配電設備、UPS、パワーエレクトロニクスなどに加えて、防衛、FA、パワー半導体まで持っています。
特に注目しているのがAIデータセンター向け電源です。
三菱電機はUPSなどを含む電源システム売上高を、2025年度の865億円から2030年度に1,800億円以上、2035年度には2,700億円以上へ拡大する目標を掲げています。
NVIDIAなどが進める次世代800V直流給電への対応も進めています。
2027年3月期第1四半期は売上高1兆4,971億円で前年同期比14.0%増、営業利益1,395億円で24.6%増、純利益1,098億円で20.8%増でした。
投資判断軸
成長性:★★★★★
電力・データセンター恩恵:★★★★★
技術競争力:★★★★★
株価水準:★★★★☆
収益力・財務:★★★★★
総合投資判断:強気
2026年9月4日の終値は5,248円、予想PER21.70倍、PBR2.35倍です。年初来高値6,686円からは約21%下にあります。
富士電機や明電舎ほど重電事業への純度は高くありません。
しかし逆に、
電力
データセンター
FA
防衛
パワー半導体
と複数の成長テーマを持っていることが強みです。
重電需要が一時的に鈍化しても他事業が支えられるため、今回の4社ではかなり安定した選択肢だと考えています。
有望銘柄④ 日立製作所(6501)
4位は日立製作所です。
重電企業としての競争力だけを見るなら、今回1位でもおかしくありません。
最大の武器が日立エナジーです。
日立エナジーは変圧器、高電圧機器、HVDC、送配電システムなどを世界140カ国以上で展開しており、世界的な電力網投資の中心企業です。
2027年3月期第1四半期の日立のエナジー部門は、売上収益9,119億円。前年同期の6,676億円から約37%増えました。
セグメント利益も785億円から1,291億円へ約64%増加しています。
日立全体でも第1四半期売上収益は2兆7,096億円で前年同期比20%増、調整後営業利益は2,943億円で39%増となっています。
さらに日立エナジーは変圧器などへの需要急増に対応するため90億ドル規模の世界投資を進めています。 (日立)
投資判断軸
成長性:★★★★★
電力・データセンター恩恵:★★★★★
技術競争力:★★★★★
株価水準:★★★☆☆
収益力・財務:★★★★★
総合投資判断:やや強気~強気
2026年9月4日の終値は5,377円、予想PER26.79倍、PBR3.66倍です。
企業の内容だけなら今回の4社でも最上位です。
問題は株価評価です。
富士電機17倍、明電舎20倍前後、三菱電機22倍前後に対して、日立はPER約27倍です。
日立エナジーの成長力は市場からかなり評価されています。
そのため「最高の重電企業」と「現在最も買いたい重電株」を分け、今回は4位とします。
大きな株価調整があれば順位を一気に上げたい銘柄です。
重電業界の有望銘柄ランキング
1位 富士電機(6504)
変圧器+受配電+UPS+データセンター。営業利益成長に対してPER17倍台で、現在の投資バランスを最も評価。
2位 明電舎(6508)
電力インフラ+変圧器+開閉装置。1Qで営業利益が急増し、通期予想も上方修正。値幅期待では本命級。
3位 三菱電機(6503)
電力+データセンター電源+パワエレ。重電以外にも防衛・FAなど複数の成長軸を持つ。
4位 日立製作所(6501)
日立エナジーは世界トップクラス。エナジー利益約64%増は圧倒的だが、PER約27倍を考慮。
今回、企業そのものの競争力だけで順位を付けるなら、日立を1位にすることもできます。
しかしキャピタルゲインを狙うなら、私は現在の利益成長に対して株価評価がまだ低い企業を優先します。
その意味で特に注目しているのが富士電機と明電舎です。
どちらも「AI関連株」として派手に扱われることは少ないですが、AIデータセンターが建設されるたびに必要になる電力設備を供給しています。
私はこうした企業の方が、AIテーマを長期で取るには面白いと考えています。
まとめ
重電業界については、今後低迷する業界とは考えていません。
むしろ今後数年間は、過去数十年でもかなり恵まれた事業環境になる可能性があります。
AI・データセンターによる電力需要増加に加えて、
再生可能エネルギー
蓄電池
EV
半導体工場
送電網更新
老朽設備更新
という複数の需要が同時に発生しています。
IEAは世界のデータセンター電力消費が2030年までにほぼ倍増すると予想するとともに、変圧器やパワーエレクトロニクスの供給能力そのものが課題になると指摘しています。
私が今後の重電株で特に重視したいのは、「変圧器・受配電設備を持つ」「データセンター向け製品を持つ」「生産能力を増強している」「受注増が利益率上昇につながっている」「成長率に対してPERが高すぎない」という企業です。
重電業界の将来性を5段階で評価するなら「5」。
AI時代に大量に必要になるのは半導体だけではありません。
どれだけ高性能なAIサーバーを作っても、電力網から安定して電気を届けなければ動きません。
私はこれからの重電メーカーを、昔ながらのインフラ企業ではなく、「AI・電動化社会へ電気を届けるための基盤企業」として見たいと思います。
現時点ではキャピタルゲインを狙う本命を富士電機(6504)、より値幅を狙う対抗を明電舎(6508)とします。安定性まで含めるなら三菱電機(6503)も有力です。
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