ホームセンター業界は今後どうなる?
ホームセンターでは、日用品から建築資材まで、暮らしと住まいに関する幅広い商品を扱っています。
主な商品は、
- 工具・金物・建築資材
- 園芸・農業用品
- 住宅設備・リフォーム用品
- 防災用品
- ペット用品
- 日用品・収納用品
などです。
ホームセンター市場は成熟しており、国内人口が減少する中、従来と同じ商品を同じ方法で販売するだけでは大幅な売上成長は難しいでしょう。
一方、住宅が古くなれば修繕が必要になり、建築・農業・園芸などの仕事には専用の資材や道具が欠かせません。災害への備えや、高齢者が暮らしやすい住環境づくりにも、ホームセンターが扱う商品やサービスが必要です。
私は、今後5〜10年を見ると、ホームセンター業界は「中立からやや強気」で見ています。
成長のポイントは、店舗数や販売数量だけを増やすことではありません。
住宅の修繕、プロ向け商品、生活サービスを強化し、既存店舗から得られる利益を増やせるかが重要になると考えています。
新築住宅より既存住宅の修繕が重要になる
日本では人口減少や世帯構成の変化によって、新築住宅の需要が長期的に伸び続けるとは考えにくい状況です。
しかし、新しい住宅が建たなくても、すでに建っている住宅には修繕が必要です。
例えば、
- 屋根や外壁の補修
- 水回りの交換
- 床や壁の張り替え
- 手すりの設置
- 断熱対策
- 庭や外構の整備
などです。
住宅が古くなるほど、こうした需要は発生します。
そのためホームセンターには、家具や日用品を販売するだけでなく、既存住宅を長く使うための資材やサービスを提供する役割が期待できます。
リフォームは商品販売より大きな収益機会になる
住宅リフォームでは、材料を販売するだけで終わるとは限りません。
例えば浴室を改修する場合、
浴室設備を選ぶ
↓
工事内容を相談する
↓
施工業者を手配する
↓
設置・工事を行う
という一連のサービスが必要です。
ホームセンターが商品選びから工事まで対応できれば、商品販売に加えて施工サービスからも収益を得られます。
消費者にとっても、設備の購入先と工事の相談先が同じであれば便利です。
今後は、**「資材を売る店」から「住まいの困りごとを解決する店」**へ転換できる企業に成長機会があると考えています。
建築職人向けの「プロ市場」が重要になる
ホームセンター業界で特に注目したいのがプロ向け商品です。
建築・設備・電気工事などの職人は、
- 電動工具
- 配管資材
- 電設資材
- 塗料
- 金物
- 作業衣料
などを日常的に購入します。
一般消費者は工具を数年に一度しか買わないかもしれません。しかし職人は仕事が続く限り、消耗品や資材を繰り返し購入します。
そのためプロ向け店舗では、継続的な購買需要を持つ顧客を獲得できることが強みです。
さらに専門商品には、一般の量販店やドラッグストアでは対応しにくい品ぞろえが求められます。
価格だけでなく、必要な資材を確実に入手できることが競争力になります。
コーナンPROはプロ市場を取り込む
この分野へ積極的に展開しているのがコーナン商事です。
同社は一般向けホームセンターに加え、「コーナンPRO」や「建デポ」などのプロ向け店舗を展開しています。
2026年2月期のプロ向け業態の売上高は約1,477億円となり、グループ売上高の約3割を占めるまで成長しました。
中期経営計画では、2028年2月期のプロ向け業態売上高1,900億円を目標としています。
一般消費者向けホームセンターだけでは市場全体の成長を期待しにくい中、専門性の高いプロ市場を拡大できる点は大きな強みです。
地方では農業・園芸用品が重要になる
ホームセンターの役割は、都市部と地方で異なります。
都市部では住宅リフォームやプロ向け建築資材が重要ですが、地方では、
- 農業資材
- 肥料・農薬
- 園芸用品
- 草刈り機
- 除雪用品
など、地域の暮らしや仕事に直結する商品が必要です。
この分野で独自の店舗網を持つのがコメリです。
コメリは大型の「パワー」、プロ向けの「PRO」、地域密着型の「ハード&グリーン」を組み合わせています。
特にハード&グリーンは、都市部の大型店とは異なり、地域に必要な商品を比較的小規模な店舗で提供できることが特徴です。
地方の人口が減少しても、農業や住宅維持に必要な資材の需要がすぐになくなるわけではありません。
コメリは農業関連の販売網を広げる
コメリでは、農業協同組合との協業も進めています。
農業者が必要とする資材を店舗で取り扱うことで、既存の店舗網を農業資材の供給拠点として活用できます。
2027年3月期には、パワー8店舗、PRO8店舗、ハード&グリーン26店舗の計42店舗を新たに出店する計画を示しています。
ホームセンター市場全体は成熟していますが、農業やプロ向けの需要を取り込みながら、地域に合った店舗を増やせるかがコメリの成長を左右すると考えています。
防災用品は今後も継続的な需要がある
ホームセンターが地域で果たす役割として、防災も重要です。
日本では地震、台風、豪雨などへの備えが欠かせません。
防災用品には、
- 飲料水・保存食
- 簡易トイレ
- 懐中電灯
- 蓄電池
- ブルーシート
- 土のう袋
- 発電機
などがあります。
防災用品は災害が発生した直後だけでなく、平常時から備蓄・更新する必要があります。
特に企業や自治体では、家庭とは異なる規模の備蓄需要もあります。
ホームセンターが防災商品の販売だけでなく、地域への物資供給拠点として機能できれば、社会インフラとしての重要性も高まるでしょう。
ペット用品は継続購入が期待できる
ペット関連もホームセンターの重要な商品カテゴリーです。
例えば、
- ペットフード
- トイレ用品
- 衛生用品
- 飼育用品
などには継続的な購入需要があります。
家具や大型工具とは異なり、フードや消耗品は定期的に買い替える必要があります。
さらにペット用品を購入するために来店した顧客が、日用品や園芸用品などを一緒に購入する可能性もあります。
ただしペット用品は専門店やネット通販との競争もあるため、幅広い品ぞろえや専門サービスによる差別化が必要です。
プライベートブランドが利益率を左右する
ホームセンターでは、メーカーの商品を仕入れて販売するだけでは価格競争になりやすくなります。
そこで重要になるのがプライベートブランド(PB)です。
PBでは自社で商品を企画し、価格・品質・機能を設計できます。
例えば、
- 収納用品
- 作業衣料
- 工具
- 園芸用品
- カー用品
などです。
他社と完全に同じ商品ではないため、単純な価格比較を避けやすくなります。
また、自社の店舗で販売する商品をグループ全体でまとめて調達できれば、原価低減にもつながります。
今後は売上高だけでなく、PB構成比や売上総利益率を高められるかが重要になると考えています。
DCMは規模と商品開発力を生かす
DCMホールディングスは、ホームセンターの大手グループです。
2026年2月期の売上高は約5,331億円でした。
2026~2028年度の中期経営計画では、2029年2月期に、
売上高6,500億円
営業利益423億円
営業利益率6.5%
ROE8.0%
を目標としています。
商品戦略、店舗改革、リフォーム、DXなどを組み合わせ、事業領域を広げる計画です。
ホームセンターは薄利になりやすい事業ですが、仕入れ規模を生かしたPB開発や店舗運営の効率化が進めば、売上高の伸び以上に営業利益を増やせる可能性があります。
業界再編は今後も重要なテーマ
国内ホームセンター市場は成熟しており、多数の企業が価格や出店場所を競っています。
一方、商品の調達、物流、店舗システム、ECなどには投資が必要です。
そのため企業が統合・提携することで、
- 共同仕入れ
- PBの共同開発
- 物流拠点の共有
- システム投資の効率化
- 店舗網の補完
などを進める余地があります。
2026年にはコーナン商事がアレンザホールディングスへの出資を進め、バローホールディングスとの連携も強化しました。
今後は単独出店だけでなく、M&Aや企業間連携によって収益性を高める動きにも注目したいところです。
大型店には専門性という強みがある
ネット通販では買いやすい日用品が増えていますが、すべての商品がECに向いているわけではありません。
例えば、
- 長い木材
- 大型建築資材
- 重量のある園芸用品
- 実物を確認したい工具
- 大量の工事用資材
などは、店舗で確認して購入したい需要もあります。
大型店舗で幅広い商品を実際に見られることは、ネット通販だけでは代替しにくい強みです。
この方向を追求するのが、スーパービバホームやホームセンタームサシを展開するアークランズです。
アークランズは専門店を集めた大型店舗を展開
アークランズは、広い売場と豊富な品ぞろえを生かした大型ホームセンターを展開しています。
同社は2030年度に、
売上高5,000億円
経常利益400億円
を目指す長期ビジョンを掲げています。
さらにペット関連の専門性強化や会員サービス、店舗運営の効率化にも取り組んでいます。
アークランズの特徴はホームセンターだけではありません。
「かつや」などを展開する外食事業も持っています。
そのため、ホームセンターの収益改善に加えて外食事業の成長も企業価値を左右します。
ただしホームセンター株として評価する場合には、住関連事業そのものの利益率が改善しているかを確認する必要があります。
ECと実店舗の連携が重要になる
ホームセンターでは、商品数が非常に多いため、すべての店舗で必要な商品をそろえることは難しくなります。
例えば顧客が、
ネットで商品を探す
↓
近隣店舗の在庫を確認する
↓
店舗で受け取る
という購入方法を利用できれば便利です。
逆に店舗に商品がない場合でも、ECで注文して自宅へ配送できれば、販売機会を逃しにくくなります。
今後は、ネット通販と店舗を競合させるのではなく、店舗網をECの強みに変えられる企業が有利になると考えています。
今後成長が期待できる分野
ホームセンター業界で今後特に成長を期待したいのは、
- 住宅修繕・リフォーム
- プロ向け建築資材
- 電設・配管・工具
- 農業・園芸資材
- 防災用品
- ペット関連商品
- 高付加価値PB
- ECと店舗の連携
- 施工・設置サービス
- M&Aによる物流・調達効率化
などです。
特に私は、プロ需要+住宅リフォーム+PB・店舗効率化の3分野に注目しています。
国内市場全体が大きく伸びなくても、これらの分野を強化できれば、既存店舗の売上高や利益率を高められると考えています。
今後低迷が予想される分野
日用品の安売りだけに依存する店舗
日用品はドラッグストア、スーパー、ディスカウント店、ネット通販でも購入できます。
価格以外に特徴がない店舗は、来店客を維持することが難しくなるでしょう。
人口減少地域での無計画な出店
地域の需要を超えて店舗を増やせば、店舗同士で顧客を奪い合うことになります。
新規出店数よりも、既存店舗の収益性を重視する必要があります。
専門商品が不足する大型店
売場が広くても、建築職人や農業者が必要とする商品を十分にそろえられなければ、専門店との差別化はできません。
大型店ほど、地域に合った商品構成が重要になります。
人件費・物流費の上昇に対応できない企業
ホームセンターでは大型商品や重量物を数多く扱うため、物流費の影響を受けやすくなります。
店舗運営と物流の効率化を進められない企業は、販売価格を引き上げても利益が残りにくくなる可能性があります。
今後有望な銘柄
① コーナン商事(7516)
コーナン商事で特に注目したいのが、プロ向け業態の成長です。
同社は一般向けホームセンターに加え、コーナンPROや建デポを展開しています。
2026年2月期のプロ向け業態売上高は約1,477億円となり、2028年2月期には1,900億円を目指しています。
さらに企業間連携を進め、事業規模と調達・物流面の強化を図っています。
2027年2月期第1四半期は、
営業収益1,462億円
営業利益101億円
となり、前年同期から増収増益となりました。
2026年9月18日の終値は4,600円。
予想PER10.37倍、PBR0.73倍、予想配当利回り3.04%です。
成長性:★★★★★
テーマ性:★★★★★
収益力:★★★★☆
割安度:★★★★★
株主還元:★★★★☆
総合投資判断:★★★★★
プロ向け業態の拡大と企業間連携による収益改善が進めば、業界全体の成長率を上回る利益成長を期待できます。
一方、9月18日には年初来高値4,650円を付けており、株価はすでに上昇しています。今後はプロ向け業態の成長が、実際に全社の利益率改善へつながるかが注目点になります。
② DCMホールディングス(3050)
DCMホールディングスの強みは、ホームセンター大手としての事業規模です。
2026年2月期の売上高は約5,331億円でした。
2029年2月期には、
売上高6,500億円
営業利益423億円
営業利益率6.5%
ROE8.0%
を目指しています。
成長戦略には、店舗改革、PB、リフォーム、DXなどが含まれます。
2026年9月18日の終値は1,600円。
予想PER12.63倍、PBR0.77倍、予想配当利回り3.00%です。
成長性:★★★★☆
テーマ性:★★★★☆
収益力:★★★★☆
割安度:★★★★★
株主還元:★★★★☆
総合投資判断:★★★★★
DCMは急速な市場拡大を狙う企業というより、既存店舗の改善と規模の経済によって利益率を高める企業として注目しています。
営業利益率が計画どおり改善すれば、売上成長以上の利益増加が期待できます。
PBRは1倍を下回っており、ROE改善が株価評価の見直しにつながるかが重要です。
③ コメリ(8218)
コメリは地方の暮らし、農業、園芸、住宅修繕などに強みを持つ企業です。
「パワー」「PRO」「ハード&グリーン」を組み合わせ、地域の需要に合わせた店舗を展開しています。
2027年3月期は、
営業収益4,008億円
営業利益240億円
を予想しています。
また、新規出店は計42店舗を計画しており、農業協同組合との協業も進めています。
2026年9月18日の終値は3,920円。
予想PER12.27倍、PBR0.70倍、予想配当利回り1.48%です。
成長性:★★★★☆
テーマ性:★★★★☆
収益力:★★★★☆
割安度:★★★★★
株主還元:★★★☆☆
総合投資判断:★★★★☆
地方人口の減少は逆風ですが、地域の農業者や住宅修繕需要を取り込める独自の店舗網には強みがあります。
PBR0.7倍という株価水準から、既存店売上と資本効率が改善すれば、企業評価が変わる可能性があります。
一方、配当利回りは他の大手3社より低く、株価上昇には利益成長や資本政策の進展がより重要になると考えています。
④ アークランズ(9842)
アークランズは、「スーパービバホーム」「ホームセンタームサシ」などの大型店を展開しています。
専門性の高い品ぞろえに加え、ペット関連事業、会員サービス、店舗運営の効率化にも取り組んでいます。
2030年度には、
売上高5,000億円
経常利益400億円
を目指す長期ビジョンを掲げています。
さらに外食事業も持っているため、ホームセンター以外からの利益成長も期待できる企業です。
2026年9月18日の終値は1,898円。
予想PER11.92倍、PBR0.93倍、予想配当利回り2.11%です。
成長性:★★★★☆
テーマ性:★★★★☆
収益力:★★★☆☆
割安度:★★★★☆
株主還元:★★★☆☆
総合投資判断:★★★★☆
大型ホームセンターの専門性と、外食事業を持つ独特の事業構成が特徴です。
一方、今後の株価上昇を考えるうえでは、ホームセンターの店舗改革がどこまで収益改善につながるかを確認したいところです。
まとめ
ホームセンター業界は、国内人口の減少によって市場全体が急速に拡大する産業ではありません。
しかし、住宅が古くなれば修繕が必要になり、建築職人や農業者には継続的な資材需要があります。
また、
- 住宅リフォーム
- プロ向け建築資材
- 農業・園芸用品
- 防災用品
- PB
- 店舗とECの連携
などを強化すれば、市場全体の伸びが小さくても個々の企業は成長できます。
そのため、ホームセンター業界の将来性を5段階で評価するなら「3」です。
今後5〜10年では、店舗数を増やすことだけを成長戦略とする企業より、プロ向け商品や施工サービスを増やし、既存店舗の売上・利益率を高められる企業が注目されると考えています。
今回取り上げた4銘柄を、今後の成長性と現在の株価からの上昇余地を重視して順位付けするなら、1位 コーナン商事(7516)、2位 DCMホールディングス(3050)、3位 コメリ(8218)、4位 アークランズ(9842)と考えています。
本命はコーナン商事です。
プロ向け業態がすでに大きな売上規模となっており、今後も拡大を計画しています。企業間連携による調達・物流面の改善も期待でき、PER10倍台、PBR0.7倍台という株価水準です。
ただし株価は9月18日に年初来高値を更新しているため、今後の利益成長が現在の株価評価に見合うかを確認する必要があります。
対抗はDCMホールディングスです。
2029年2月期に営業利益423億円、ROE8%を目指しています。既存店改革やPB強化などで収益性が改善すれば、PBR1倍割れの評価が見直される可能性があります。
コメリは農業・園芸・住宅修繕という地方ならではの需要を持ち、アークランズは大型店の専門性と外食事業を組み合わせています。どちらも、店舗数や売上高の増加だけでなく、利益率の改善が株価上昇の重要な条件になるでしょう。
ホームセンター業界は今後、「日用品や工具を販売する産業」から、「住宅の維持・修繕、建築・農業の仕事、防災まで支える生活インフラ産業」へ変化していくと考えています。
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