ガラス・土石製品業界は今後どうなる?
ガラス・土石製品という業種には、かなり幅広い企業が含まれています。
例えば、
・建築用ガラス
・自動車用ガラス
・電子用ガラス
・セメント
・耐火物
・セラミックス
・碍子
・衛生陶器
・半導体製造装置用部品
などです。
そのため、業界全体を一つの市場として考えると実態が分かりにくくなります。
国内の住宅や建設に依存するガラス・セメントなどは人口減少の影響を受けますが、半導体、データセンター、EV、医療などに使われる高機能ガラスやセラミックスは今後の成長が期待できます。
私は、今後5〜10年を見ると、ガラス・土石製品業界は「中立からやや強気」で見ています。
重要なのは、
「ガラスやセラミックスを何に使っている会社なのか」
です。
一般的な建築材料を大量に生産する企業よりも、半導体やAIなど成長産業向けの高機能材料を持つ企業の方が有望だと考えています。
AI・半導体向けセラミックスが大きな成長分野
今後のガラス・土石製品業界で、特に注目したいのが半導体です。
半導体製造装置では、
・高温
・真空
・プラズマ
・腐食性ガス
など、非常に厳しい環境で部品を使用します。
そのため通常の金属ではなく、
高純度・高耐熱のファインセラミックス
が多く使われています。
AI半導体の性能が高くなるほど製造工程も複雑になり、装置に使用されるセラミックス部品にも高い精度が求められます。
この分野で強いのがNGKや日本特殊陶業などです。
つまりAI半導体が増えると、
AI需要増加
↓
半導体需要増加
↓
半導体工場・製造装置投資増加
↓
高機能セラミックス需要増加
という流れになります。
NGKはデータセンターまで成長市場に位置付ける
旧日本ガイシのNGKは、2026年に発表した長期経営計画で事業構造を大きく変える方針を示しました。
2035年度の売上高目標は1.3兆円で、2025年度の約6,700億円からほぼ2倍を目指します。
特に成長事業として位置付けているのが、
デジタルソサエティ領域
です。
具体的には、
・半導体
・データセンター
・電子デバイス
などです。
半導体製造装置用セラミックスなどを中心に、2035年度にはデジタルソサエティ事業の売上高を2025年度比で約3倍にする方針です。
「ガラス・土石製品」という業種名からは想像しにくいですが、実際にはAI・データセンター関連企業として成長する会社もあります。
半導体パッケージでもガラスの用途が増える
セラミックスだけでなく、特殊ガラスにも半導体需要の恩恵があります。
日本電気硝子では、半導体製造に使われる「サポートガラス」を展開しています。
これは半導体パッケージの製造工程などで、チップを支える高精度なガラス基板です。
半導体の高性能化によって先端パッケージ技術が重要になる中、サポートガラスの需要は拡大しています。
生成AIではGPUとHBMなど複数の半導体を高密度に組み合わせるため、
「半導体そのもの」だけでなく「半導体を組み立てるための材料」
にも新しい市場が生まれています。
電子用ガラスは従来のディスプレイから用途が広がる
以前の電子用ガラスは、テレビや液晶ディスプレイ向けというイメージが強かったと思います。
しかし今後は、
・半導体
・イメージセンサー
・AR・VR
・光通信
・データセンター
・車載ディスプレイ
などへ用途が広がります。
特にAI・データセンターでは大量のデータを高速で送る必要があるため、光通信関連材料にも成長余地があります。
日本電気硝子も中期経営計画で、
半導体
情報通信
自動車
医療
エネルギー
などを、自社のガラス技術を生かせる市場として位置付けています。
自動車用ガラスも高機能化する
自動車用ガラスは、単なる窓ではなくなっています。
今後の自動車では、
・ヘッドアップディスプレイ
・センサー
・カメラ
・電波透過
・遮熱
・調光
・大型ディスプレイ
などとの融合が進みます。
EVや自動運転が普及すると、自動車のガラス面積や機能そのものが変わる可能性があります。
AGCは自動車関連でも、Low-Eガラスや調光ガラスなどCASE時代に対応した高付加価値製品を強化しています。
つまり自動車販売台数だけでなく、
1台当たりのガラスの付加価値をどれだけ高められるか
が重要になります。
AGCは半導体材料企業としても見る必要がある
AGCというと建築用ガラスや自動車用ガラスの印象が強い企業です。
しかし現在は、
・EUVマスクブランクス
・半導体関連材料
・高機能化学品
・ライフサイエンス
なども重要な成長事業になっています。
中期経営計画では、エレクトロニクスを戦略事業として位置付け、EUVマスクブランクスなど高付加価値製品を拡大しています。
さらに2030年には営業利益3,000億円以上、ROE10%以上を目標としています。
そのためAGCも単純な「ガラス会社」として見るより、
ガラス+化学+半導体材料
を持つ総合素材企業として見た方がよいと思います。
セラミックスは自動車から新産業へ
日本特殊陶業も大きな事業転換を進めています。
現在の主力はスパークプラグや排気センサーなど、自動車の内燃機関関連です。
しかしEVが普及すれば、長期的にはスパークプラグ市場は縮小します。
そこで同社は2030年へ向け、
・モビリティ
・半導体
・環境・エネルギー
の3分野へ経営資源を集中しています。
2030年3月期には売上収益1兆円、EBITDA2,850億円を目標としています。
特に半導体では、
・半導体製造装置用部品
・セラミックパッケージ
・大型プローブカード用基板
などを展開しています。
今後は「自動車部品会社」から「セラミック技術会社」へ変われるかどうかが重要になります。
セメントは大きな成長市場にはなりにくい
ガラス・土石製品にはセメント企業も含まれます。
ただし国内セメント市場については、大幅な数量成長は期待しにくいと考えています。
2026年度の国内需要は約3,000万トンと予想されており、前年比では減少する見通しです。
人口減少によって住宅や一般建築の需要が伸びにくいことが背景にあります。
一方で、
・国土強靱化
・道路・橋梁更新
・防衛施設
・災害復旧
・データセンター
・半導体工場
などの建設需要があります。
そのため急激に需要が消える業界ではありませんが、数量増加による高成長を期待する分野でもないと考えています。
インフラ老朽化は一定の需要を支える
日本では道路、橋梁、トンネル、上下水道など、高度経済成長期に整備されたインフラの老朽化が進んでいます。
今後数十年にわたり、
・補修
・更新
・耐震化
・防災工事
が必要になります。
これはセメントやコンクリート、耐火材などに一定の需要を生みます。
ただし建設人材不足や資材価格上昇もあるため、
需要がある=販売数量が大きく増える
とは限りません。
GXでガラス・セメント製造も変わる
ガラスやセメントは製造時に大量の熱を必要とするため、CO2排出量が多い産業でもあります。
今後は、
・電気溶融
・水素燃料
・再生燃料
・CO2回収
・リサイクル原料
などへの転換が必要になります。
日本電気硝子では、電気でガラスを溶融する「全電気溶融技術」を強みとしています。
GX対応には大きな設備投資が必要ですが、低CO2製品を高い付加価値で販売できる企業にとっては、新しい競争力になる可能性があります。
今後成長が期待できる分野
ガラス・土石製品業界の中で今後特に成長を期待したいのは、
・半導体製造装置用セラミックス
・AI半導体向け材料
・半導体パッケージ用ガラス
・電子部品用セラミックス
・EUV関連材料
・データセンター関連材料
・光通信
・高機能自動車ガラス
・環境・エネルギー関連セラミックス
などです。
特に私は、
半導体+データセンター+高機能セラミックス
の組み合わせに注目しています。
ガラス・土石製品という成熟産業のイメージとは異なり、ここにはかなり高い成長市場があります。
今後低迷が予想される分野
国内の一般建築用ガラス
人口減少によって住宅や一般建築の数量が大幅に増える可能性は低くなっています。
断熱ガラスなど高機能化による単価上昇は期待できますが、数量成長には限界があります。
汎用的なガラス製品
瓶や一般的な板ガラスなど、技術的な差別化が小さい製品では価格競争になりやすくなります。
エネルギー価格の影響も大きいため、高付加価値化できない企業には厳しい環境が続くでしょう。
国内セメントの数量成長
国土強靱化やインフラ更新による需要はありますが、日本全体の人口や住宅需要を考えると国内セメント需要が長期的に大きく増える可能性は低いと考えています。
海外展開、値上げ、コスト削減などによって利益を確保できる企業との差が広がりそうです。
今後有望な銘柄
① NGK(5333)
今回最も注目したいのが、旧日本ガイシのNGKです。
理由は、今後10年間の成長戦略が非常に明確だからです。
同社は2035年度に、
売上高1.3兆円
を目標としており、2025年度の約6,700億円からほぼ2倍を目指しています。
成長の中心は半導体やデータセンターなどのデジタルソサエティ事業です。
特に半導体製造装置用セラミックスを「成長牽引」事業として位置付けています。
2035年度にはデジタルソサエティ事業を2025年度比で約3倍まで拡大する計画です。
2027年3月期についても、売上高7,100億円、営業利益1,070億円を予想しています。
2026年9月4日の終値は5,244円。
予想PER18.19倍、PBR1.82倍、予想配当利回り2.02%です。
年初来高値7,894円からはかなり調整しています。
成長性:★★★★★
テーマ性:★★★★★
収益力:★★★★★
割安度:★★★★☆
株主還元:★★★★☆
総合投資判断:★★★★★
AI・半導体・データセンターという成長市場を、セラミックスという日本企業が強い材料技術から取り込める点を高く評価しています。
今回の4社では、今後5〜10年の成長ストーリーが最も明確です。
② 日本特殊陶業(5334)
日本特殊陶業も注目したい企業です。
現在はスパークプラグや排気センサーなど内燃機関向け事業で大きな利益を稼いでいます。
しかし今後は、そのキャッシュを使って、
・モビリティ
・半導体
・環境・エネルギー
へ事業を広げます。
2030年3月期には売上収益1兆円、EBITDA2,850億円を目指しています。
半導体では製造装置用部品やセラミックパッケージ、プローブカード用基板など、複数の成長製品を持っています。
2026年9月4日の終値は7,852円。
予想PER14.61倍、PBR1.81倍、予想配当利回り2.67%です。
7月には年初来高値11,265円まで上昇していましたが、その後かなり調整しています。
成長性:★★★★★
テーマ性:★★★★★
収益力:★★★★★
割安度:★★★★☆
株主還元:★★★★★
総合投資判断:★★★★★
現在の内燃機関事業が非常に高収益であるうちに、半導体や新エネルギーへ転換できるかが最大のポイントです。
利益水準と株主還元まで考えると、NGKと並んで業界の中心銘柄だと考えています。
③ AGC(5201)
AGCは今回の4社では最も事業分散が進んだ企業です。
建築用ガラス、自動車用ガラスだけでなく、
・半導体材料
・EUVマスクブランクス
・高機能化学品
・ライフサイエンス
などを展開しています。
長期戦略では2030年に営業利益3,000億円以上、ROE10%以上を目指しています。
特にエレクトロニクス分野では、EUVマスクブランクスなど高付加価値半導体材料の拡大を進めています。
2026年12月期上期は売上高が前年同期比10.6%増、営業利益が19.7%増となりました。
2026年9月4日の終値は5,591円。
予想PER15.40倍、PBR0.78倍、予想配当利回り3.76%です。
年初来高値8,315円から大きく調整しており、PBRも1倍を下回っています。
成長性:★★★★☆
テーマ性:★★★★★
収益力:★★★★☆
割安度:★★★★★
株主還元:★★★★★
総合投資判断:★★★★☆
成長率ではNGKや日本特殊陶業を下に見ますが、半導体材料という成長テーマを持ちながらPBR0.8倍前後、配当利回り3%台後半という株価水準は魅力です。
割安修正まで含めて見る銘柄だと考えています。
④ 日本電気硝子(5214)
日本電気硝子は特殊ガラス専業企業です。
注目したいのは、従来のディスプレイ用ガラスだけではなく、
・半導体用サポートガラス
・低誘電ガラスファイバ
・イメージセンサー用ガラス
・医療用ガラス
・エネルギー関連製品
などへ展開していることです。
中期経営計画では、高付加価値製品への転換と成長分野への積極投資を進めています。
特に半導体パッケージ向けサポートガラスについては、需要拡大が期待されています。
2026年9月4日の終値は4,736円。
予想PER23.5倍、PBR0.70倍、予想配当利回り3.38%です。
年初来高値8,377円からは大幅に調整しています。
成長性:★★★★☆
テーマ性:★★★★★
収益力:★★★☆☆
割安度:★★★★★
株主還元:★★★★☆
総合投資判断:★★★★☆
現在の利益成長にはやや不安定さがありますが、PBR0.7倍という株価水準と半導体用特殊ガラスの成長を考えると、今後の業績改善局面では評価修正を期待できる銘柄です。
まとめ
ガラス・土石製品業界は、業種名だけを見るとかなり成熟した産業に見えます。
実際、国内の建築用ガラスやセメントなどについては人口減少の影響を受けるため、大きな数量成長は期待しにくいでしょう。
しかしガラス・セラミックスという材料そのものは、
・AI半導体
・半導体製造装置
・先端パッケージ
・データセンター
・光通信
・EV
・医療
・環境・エネルギー
など、多くの成長産業で重要性が増しています。
そのため、ガラス・土石製品業界の将来性を5段階で評価するなら「4」です。
業界全体が成長するという意味ではありません。
今後5〜10年は、建設・汎用品に依存する企業と、半導体・データセンター向け高機能材料を持つ企業との成長格差が非常に大きくなると考えています。
今回取り上げた4銘柄を、今後の成長性と株価上昇余地を重視して順位付けするなら、1位 NGK(5333)、2位 日本特殊陶業(5334)、3位 AGC(5201)、4位 日本電気硝子(5214)と考えています。
本命はNGKです。
半導体製造装置用セラミックスを中心に、データセンターまで含むデジタルソサエティ事業を2035年度までに約3倍へ拡大する計画を持っています。
会社全体でも売上高を現在の約6,700億円から1.3兆円へほぼ倍増させる目標を掲げており、今回の4社では最も明確な成長戦略があります。
対抗は日本特殊陶業です。
現在の高収益な自動車関連事業から得られるキャッシュを、半導体、モビリティ、環境・エネルギーへ振り向けています。
2030年に売上収益1兆円を目指していることに加え、株主還元もしっかりしているため、成長と還元のバランスでは非常に魅力があります。
AGCはPBR0.8倍前後、予想配当利回り3%台後半という株価水準が魅力です。半導体関連事業の利益成長が進めば、業績改善と低PBR修正の両方を狙える可能性があります。
日本電気硝子は現在の業績には不安定さがありますが、PBR0.7倍という低い評価と、AI半導体の先端パッケージで需要が増えるサポートガラスという成長材料があります。
ガラス・土石製品業界は今後、「建物や自動車に使うガラス・セメントを作る産業」から、「AI・半導体・データセンターに不可欠な高機能ガラス・セラミックスを作る産業」へ成長分野の中心が移っていくと考えています。
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