金属製品業界は今後どうなる?
金属製品という業種には、かなり性格の異なる企業が含まれています。
例えば、
・シャッター、ドア
・橋梁、鉄骨
・住宅設備
・アルミサッシ
・金属容器
・ばね
・ねじ
・表面処理
・半導体製造装置向け部品
などです。
そのため、金属製品業界全体が同じ方向へ成長するとは考えにくいでしょう。
住宅の新築需要など人口減少の影響を受ける分野がある一方、物流施設、データセンター、インフラ更新、半導体製造装置、省エネリフォームなどでは今後も需要拡大が期待できます。
私は、今後5〜10年を見ると、金属製品業界は「中立からやや強気」で見ています。
重要なのは、
「金属製品を何に使っている会社なのか」
です。
単純な建築金物や汎用品だけでは大きな成長を期待しにくい一方、半導体やデータセンター、インフラ更新など成長市場と結び付いている企業には大きな差が出てくると考えています。
半導体向け表面処理が成長分野になる
金属製品業界の中でも、今後特に注目したいのが半導体関連です。
半導体製造装置では、
・高温
・プラズマ
・腐食性ガス
・真空
など、非常に厳しい環境で部品が使用されます。
そのため装置部品の表面に特殊な皮膜を形成し、
・耐摩耗性
・耐食性
・耐プラズマ性
・耐熱性
などを高める必要があります。
この分野で強いのがトーカロです。
同社の2026年3月期では、半導体・FPD製造装置分野が連結売上高の42.4%を占めています。生成AIやデータセンター拡大を背景に、半導体分野を今後の主要な成長ドライバーと位置付けています。
つまり、
AI需要増加
↓
半導体需要増加
↓
半導体製造装置需要増加
↓
高性能な部品・表面処理需要増加
という流れです。
金属製品という業種分類であっても、実質的にはAI・半導体関連企業として成長できる会社があります。
データセンターや物流施設も金属製品需要を生む
AIデータセンターや大型物流施設が増えると、建物そのものにもさまざまな金属製品が必要になります。
例えば、
・重量シャッター
・防火シャッター
・防火ドア
・間仕切り
・産業用ドア
・ドックレベラー
などです。
大型物流施設ではトラックが大量に出入りするため、産業用ドアや搬出入口設備も重要になります。
データセンターでは防火性やセキュリティも重視されるため、高機能な建築金物の需要が生まれます。
この分野で国内最大手なのが三和ホールディングスです。
三和ホールディングスは世界市場へ拡大
三和ホールディングスは国内シャッター大手というイメージがありますが、現在では日本だけでなく北米、欧州にも大きな事業基盤を持っています。
同社の中期経営計画2027では、
売上高7,500億円、営業利益1,000億円
を目標としています。
さらに、
・防災・環境対応製品
・スマート化製品
・サービス事業
・M&A
などを成長分野として位置付けています。
つまり「シャッターを売って終わり」ではなく、
設置
↓
点検
↓
修理
↓
交換
↓
IoT・自動化
という継続的な収益モデルへ広げています。
建物がある限りメンテナンス需要が発生するため、ストック型事業を増やせることも強みです。
防災需要も長期的な成長テーマ
日本では地震、台風、豪雨などの自然災害が多くあります。
そのため建築物では、
・防火
・防煙
・浸水対策
・耐風
・耐震
などへの要求が高まっています。
シャッターやドアは一見すると成熟した製品ですが、防災性能を高めれば付加価値を上げることができます。
今後は単純な金属製品ではなく、
安全・防災機能を持つ高機能製品
へ需要が移っていくと考えています。
インフラ老朽化は橋梁企業に追い風
もう一つ重要なのがインフラ更新です。
日本では高度経済成長期に整備された、
・道路
・橋梁
・高速道路
・トンネル
などの老朽化が進んでいます。
橋梁についても、今後は新しい橋を大量に建設するより、
既存の橋を補修・更新する市場
が重要になります。
横河ブリッジホールディングスも、第7次中期経営計画で橋梁保全事業を重点分野に位置付けています。
2024年度から2027年度の計画では、橋梁事業の売上高を982億円から1,070億円、システム建築を407億円から640億円、エンジニアリングを155億円から230億円へ拡大する計画です。
橋梁だけでなく物流施設も成長する
横河ブリッジホールディングスで興味深いのが、橋梁以外のシステム建築事業です。
システム建築とは、工場や倉庫などを効率よく建設する仕組みです。
今後、
・物流倉庫
・工場
・データセンター関連施設
・半導体関連工場
などの大型施設が増えれば、システム建築にも需要が生まれます。
同社は第7次中期経営計画で、システム建築をグループの成長を牽引する分野と位置付けています。
つまり横河ブリッジは、
インフラ更新+物流・工場建設
という2つの成長テーマを持っています。
住宅は「新築」から「リフォーム」へ
住宅関連の金属製品については、少し見方を変える必要があります。
日本では人口減少によって、新築住宅市場が長期的に大きく伸びる可能性は低いでしょう。
しかし住宅そのものがなくなるわけではありません。
今後重要になるのは、
新しく建てる市場から、既存住宅を改修する市場への転換
です。
特に注目したいのが窓です。
断熱窓は省エネ・猛暑対策になる
住宅の熱は窓から出入りする割合が大きいため、窓の断熱性能を高めれば冷暖房効率を改善できます。
そのため、
・内窓
・複層ガラス
・高断熱サッシ
・玄関ドア
などのリフォーム需要が増えています。
LIXILでは2026年3月期の国内リフォーム商材売上高が3,976億円となり、前年から5.3%増加しました。国内売上に占めるリフォーム比率も45%から47%へ上昇しています。
新築住宅市場が縮小しても、
既存住宅の省エネ改修
という新しい市場を拡大できる可能性があります。
人手不足によって高付加価値化が進む
金属製品業界では、人手不足も大きな問題になります。
建設現場や工場では熟練作業員の減少が続くため、
・施工しやすい製品
・ユニット化
・プレハブ化
・自動化
・遠隔管理
・IoT
などが重要になります。
例えばシャッターやドアでも、単純な製品販売から自動化・遠隔管理へ移行できます。
橋梁や鉄骨でも、工場でできるだけ製作して現場作業を減らすことで、人手不足に対応できます。
今後は金属そのものの価格ではなく、省人化まで含めた価値を提供できる企業が有利になると考えています。
今後成長が期待できる分野
金属製品業界で今後特に成長を期待したいのは、
・半導体製造装置向け表面処理
・データセンター関連設備
・物流施設向けシャッター・ドア
・防災、防火設備
・橋梁補修・更新
・システム建築
・断熱窓
・住宅リフォーム
・IoT対応建築設備
などです。
特に私は、
半導体+インフラ更新+物流・データセンター
の3分野に注目しています。
人口減少という日本国内の逆風があっても、これらの市場では需要拡大が期待できます。
今後低迷が予想される分野
新築住宅だけに依存する金属建材
人口減少や住宅着工戸数の長期的な減少を考えると、新築住宅向けだけで数量を伸ばすことは難しくなります。
今後はリフォーム、省エネ、防災などへ展開できる企業が有利になるでしょう。
汎用的な金属製品
技術的な差別化が小さい製品では、原材料価格が上昇しても販売価格へ十分に転嫁できない可能性があります。
価格だけで比較される製品よりも、特殊加工、高機能、サービスなどを持つ企業を評価したいところです。
国内需要だけに依存する企業
日本全体の人口が減る以上、長期的な数量成長には限界があります。
海外市場へ展開できる企業や、国内でも半導体、物流、インフラ更新など成長分野を持つ企業との差が広がると考えています。
今後有望な銘柄
① トーカロ(3433)
金属製品業界で、今後の成長性を最も高く評価したいのがトーカロです。
トーカロは金属などの表面に特殊な皮膜を形成する「溶射」を中心とした表面改質技術を持っています。
特に重要なのが半導体製造装置です。
生成AI、データセンター、高性能半導体の拡大によって、半導体製造装置向け需要の成長が期待できます。
新中期経営計画「TOCALO2030」では、2031年3月期に、
売上高900億円、経常利益200億円
を目標としています。
2026年3月期の売上高584億円から、5年間で大きく拡大する計画です。
そのうち半導体・FPD分野だけで450億円を目指しています。
2026年9月4日の終値は2,724円。
予想PER14.92倍、PBR2.43倍、予想配当利回り3.38%です。年初来高値3,460円からは約2割調整しています。
成長性:★★★★★
テーマ性:★★★★★
収益力:★★★★★
割安度:★★★★☆
株主還元:★★★★★
総合投資判断:★★★★★
AI・半導体関連企業として考えると、予想PER15倍前後は極端に高い水準ではありません。
さらに配当性向50%程度、DOE5%以上という株主還元方針もあり、成長と配当の両方を期待できる点を高く評価しています。
② 三和ホールディングス(5929)
三和ホールディングスは、シャッター・ドア関連では国内最大手です。
ただし評価したいのは国内シェアだけではありません。
北米、欧州にも事業を広げており、2026年3月期では売上の半分以上が海外から生まれています。
中期経営計画2027では、
売上高7,500億円
営業利益1,000億円
ROE19%
ROIC18.5%
を目標としています。
さらにDOE8%を目安とした株主還元方針を採用している点も魅力です。
2026年9月4日の終値は3,583円。
予想PER12.52倍、PBR2.21倍、予想配当利回り4.07%です。
成長性:★★★★☆
テーマ性:★★★★☆
収益力:★★★★★
割安度:★★★★★
株主還元:★★★★★
総合投資判断:★★★★★
爆発的な成長企業ではありませんが、物流施設、防災、スマート化、サービス、海外展開という複数の成長材料があります。
PER12倍台、配当利回り4%台という株価水準まで考えると、非常にバランスの良い銘柄だと思います。
③ 横河ブリッジホールディングス(5911)
横河ブリッジホールディングスは、インフラ更新という長期テーマから注目したい企業です。
日本の橋梁は今後、新設よりも補修・更新の重要性が高まります。
同社も橋梁保全を重点分野として経営資源を投入しています。
さらに成長性が高いのがシステム建築です。
第7次中期経営計画では、2024年度407億円だったシステム建築事業の売上高を、2027年度には640億円まで拡大する計画です。
物流施設や工場などの建設需要を取り込めれば、橋梁以外の利益成長にも期待できます。
2026年9月4日の終値は2,987円。
予想PER14.34倍、PBR0.89倍、予想配当利回り4.35%です。
成長性:★★★★☆
テーマ性:★★★★★
収益力:★★★★☆
割安度:★★★★★
株主還元:★★★★★
総合投資判断:★★★★☆
PBR1倍を下回り、配当利回りも4%台あります。
インフラ更新という息の長い需要に加え、物流・工場向けシステム建築が成長すれば、低PBR修正も期待できる銘柄です。
④ LIXIL(5938)
住宅関連からはLIXILを選びます。
日本の新築住宅市場だけを見ると大きな成長を期待しにくい企業ですが、今後重要になるのがリフォームです。
特に、
・断熱窓
・内窓
・水まわり
・省エネ住宅設備
などには長期的な需要があります。
2026年3月期は国内の水まわりや断熱製品を中心にリフォーム売上が拡大し、グループ全体の事業利益も前年比23%増加しました。
2026年9月4日の終値は1,758.5円。
予想PER42.13倍、PBR0.77倍、予想配当利回り5.12%です。
PERが高いのは現在の利益水準がまだ低いためで、PBRでは1倍を下回っています。
成長性:★★★☆☆
テーマ性:★★★★☆
収益力:★★★☆☆
割安度:★★★★☆
株主還元:★★★★★
総合投資判断:★★★★☆
急成長株というより、業績回復と低PBR修正を狙う銘柄です。
新築住宅からリフォームへの事業転換が進み、利益率が回復すれば株価評価も変わる可能性があります。
まとめ
金属製品業界は、業種全体を見ると典型的な高成長産業ではありません。
住宅、一般建築、汎用金属製品などでは、日本の人口減少による需要縮小の影響を受ける可能性があります。
一方で、
・AI・半導体
・データセンター
・物流施設
・インフラ更新
・防災
・省エネリフォーム
・工場自動化
などを見ると、長期間需要が増える分野もあります。
そのため、金属製品業界の将来性を5段階で評価するなら「3」です。
今後5〜10年では業界全体が一斉に伸びるのではなく、成熟した住宅・汎用品に依存する企業と、半導体・インフラ更新・物流など成長市場を持つ企業との差が大きくなると考えています。
今回取り上げた4銘柄を、今後の成長性と株価上昇余地を重視して順位付けするなら、1位 トーカロ(3433)、2位 三和ホールディングス(5929)、3位 横河ブリッジホールディングス(5911)、4位 LIXIL(5938)と考えています。
本命はトーカロです。
生成AIやデータセンターの拡大による半導体需要を直接取り込みやすく、2031年3月期に売上高900億円という明確な成長目標を持っています。
利益率も高く、配当も増やしているため、金属製品セクターの中では最も「成長株」に近い企業だと思います。
対抗は三和ホールディングスです。
シャッター・ドアという一見成熟した製品ですが、防災、物流施設、自動化、サービス、海外展開によって成長を続けています。
予想PER12倍台、配当利回り4%台という現在の株価水準も魅力です。
横河ブリッジホールディングスは、橋梁補修という長期需要に加えて、物流施設などのシステム建築が成長ドライバーになります。PBR1倍割れと4%台の配当利回りも評価できます。
LIXILは新築住宅市場の縮小という逆風がありますが、断熱窓や水まわりを中心としたリフォーム市場へ転換できれば、現在の低PBRから評価が変わる可能性があります。
金属製品業界は今後、「金属を加工して売る産業」から、「AI・半導体・物流・インフラ・省エネという社会課題に高機能な金属製品や技術を提供する産業」へ、成長分野が移っていくと考えています。
コメント