AI業界の今後はどうなる?
AI業界について、私は今後5~10年を「強気」と見ています。
国内の生成AI需要は2023年の1,188億円から2030年には1兆7,774億円へ拡大し、年平均成長率47.2%が予想されています。
ただし、2026年時点ではAI市場の中身が変わり始めています。
これまでの生成AIは、
文章を書く
画像を作る
質問に答える
要約する
といった「人から指示されて答えるAI」が中心でした。
これから本格化するのは、AIが自ら複数の作業を判断して実行する「AIエージェント」です。
例えば、
メールを確認する
必要な情報を社内データから探す
資料を作る
担当者へ連絡する
結果をシステムへ登録する
といった一連の仕事をAIが処理するようになります。
私はここからがAI市場の本格的な成長段階だと考えています。
日本企業のAI導入はまだ始まったばかり
AIブームが長く続いているため、「もう企業には十分普及したのではないか」と感じるかもしれません。
しかし実態は違います。
IPAの「DX動向2026」では、日本企業へのAI導入は着実に広がっている一方、現在の活用目的は業務効率化・迅速化が中心で、新しい価値創出やビジネスモデル変革まで進んでいる企業はまだ限定的とされています。
つまり多くの企業は、
「社員がChatGPTのようなAIを使う」
という第一段階にいるだけです。
今後は、
「会社のシステムそのものにAIを入れる」
第二段階へ進みます。
企業の基幹システム、金融、製造、コールセンター、営業、商品開発、行政などへAIが組み込まれれば、市場規模は現在よりかなり大きくなると考えています。
国もAIを本格利用する段階へ
政府需要もAI市場の追い風になります。
デジタル庁は2026年度、全府省庁の約18万人の政府職員を対象として生成AIを利用する大規模実証を進めています。2027年度以降の本格導入につなげる計画です。
また日本政府は初の「人工知能基本計画」を策定し、日本がAIの開発・投資で出遅れていることを認めたうえで、AI活用と産業競争力強化を進めています。
AIは民間企業だけのテーマではなく、行政・安全保障・研究開発を含む国策テーマになってきました。
AI市場は「基盤モデル」から「実装」へ
私は日本株を見る場合、OpenAIやAnthropicと同じ土俵で巨大な基盤モデルを作ろうとする会社だけを狙う必要はないと考えています。
むしろ重要なのは、
「海外の優秀なAIも利用しながら、日本企業の仕事へ組み込める会社」
です。
AIの価値はモデルそのものだけではなく、
金融
製造
小売
自治体
医療
コールセンター
など、実際の業務へ導入して初めて生まれます。
2026年になるとこの流れはかなり鮮明になっています。
NECはAnthropicと提携し、Claudeを金融・製造・自治体向けへ展開しています。約3万人規模のAIネイティブエンジニア体制も構築しています。
富士通も独自LLM「Takane」と複数のAIエージェントを組み合わせ、金融機関などの業務へAIを導入するプラットフォームを展開しています。
私は今後、日本株では「最強のAIモデルを作る会社」より「AIを日本企業へ導入する会社」の方が利益を予測しやすいと考えています。
AIエージェントが最大の成長テーマ
今後3~5年で特に注目したいのがAIエージェントです。
生成AIが人間の質問へ回答するだけなら、人間が常に操作しなければなりません。
AIエージェントは、
情報収集
判断
資料作成
システム操作
顧客対応
などを連続して実行します。
これが実用化されれば、一人の社員がAIを使うというより、「一人の社員が何人ものAI部下を持つ」ような働き方へ近づきます。
人手不足が続く日本では非常に相性の良い技術です。
そのため私は今後のAI株では、「生成AI」という言葉よりも「AIエージェントから実際に売上を作れているか」を重視したいと思います。
AI業界にも淘汰は起きる
AI市場そのものは強気ですが、AI関連企業なら何でも伸びるとは考えていません。
むしろ淘汰はかなり激しくなる可能性があります。
特に注意したいのは、
・ChatGPTなど既存AIを組み込んだだけ
・独自技術や顧客基盤がない
・PoCばかりで本番導入が増えない
・売上は増えても赤字が続く
・AI関連というだけでPERが極端に高い
・特定の基盤モデルに依存しすぎている
という企業です。
AIモデル自体の性能差は急速に縮小する可能性があります。
そのため今後は「どのAIを持っているか」以上に、
「顧客の業務データを持っているか」
「AIを実際の業務へ入れられるか」
「継続課金できるか」
が重要になると考えています。
AI関連株を見るための投資判断軸
AI関連株では「成長性」「AI事業への直接性」「実装・収益化力」「株価水準」「財務・株主還元」の5項目で評価します。
AIは期待が大きいテーマなので、特に株価水準を重視します。
企業のAI技術が★★★★★でも、利益に対してPER100倍なら投資判断は下げます。
逆にAI関連事業が成長しているにもかかわらずPER20倍以下なら、キャピタルゲイン候補として積極的に評価します。
有望銘柄① 富士通(6702)
AI関連で現在第一候補にするのは富士通です。
富士通は単なるシステム開発会社ではなく、独自LLM「Takane」、AIエージェント、AIプラットフォーム、クラウド、企業システムをまとめて提供できます。
2026年には複数のAIエージェントがチームとして仕事をし、業務結果や人間のフィードバックから継続的に学習する「自己進化型マルチAIエージェント技術」も開発しています。
さらに金融機関向けには、TakaneやAIエージェントを利用した専有型AIプラットフォームを開発しています。金融のように高い安全性が要求される分野へAIを導入できることは大きな強みです。
業績も改善しています。
2027年3月期第1四半期は売上収益7,794億円で前年同期比3.9%増、営業利益525億円で56.9%増となりました。前年の特殊要因を除いて見ると、本業の収益力改善がかなり鮮明です。
投資判断軸
成長性:★★★★★
AI事業への直接性:★★★★★
実装・収益化力:★★★★★
株価水準:★★★★★
財務・株主還元:★★★★★
総合投資判断:強気
2026年9月3日の終値は3,795円。9月2日時点ではPER約15倍、PBR約3.25倍でした。
AI関連株としてPER15倍前後という水準はかなり魅力的です。
もちろん富士通全体の売上がすべてAIというわけではありません。
しかし逆に、AIが期待ほど伸びなかった場合でも既存の企業IT・クラウド・システム事業が残ります。
「AI成長+現在の利益+株価水準」というバランスでは、今回最も評価しています。
有望銘柄② NEC(6701)
2位はNECです。
AIへの取り組みの積極性だけなら富士通以上に注目しています。
NECは2026年4月にAnthropicと戦略的協業を開始し、日本企業として初のAnthropicグローバルパートナーとなりました。
Claudeを金融・製造・自治体などの企業システムへ組み込み、NECグループでも約3万人規模のAIネイティブエンジニア体制を構築しています。
さらにNECは、AIを中核とする「BluStellar」について2030年度までに売上収益1兆3,000億円、調整後営業利益率25%を目標としています。
これはかなり大きな数字です。
AIを単独サービスとして販売するのではなく、NECが持つ金融、自治体、通信、セキュリティなどの既存顧客へ導入できることを評価しています。
2027年3月期第1四半期は売上収益8,198億円で前年同期比14.5%増、営業利益588億円で66.1%増、純利益497億円で157.4%増となりました。
投資判断軸
成長性:★★★★★
AI事業への直接性:★★★★★
実装・収益化力:★★★★★
株価水準:★★★★☆
財務・株主還元:★★★★☆
総合投資判断:強気
2026年9月3日の終値は4,729円、PBRは約2.8倍です。市場予想ベースではPER20倍前後の水準です。
1月の年初来高値6,036円からはかなり調整しています。
AIだけでなく、防衛、宇宙、通信、サイバーセキュリティという成長分野を複数持っている点も魅力です。
富士通より株価評価がやや高いため2位としましたが、AIの社会実装という意味では日本株の本命級だと考えています。
有望銘柄③ PKSHA Technology(3993)
3位はPKSHA Technologyです。
今回の4社では、AI専業企業としての純度が最も高い銘柄の一つです。
自然言語処理、音声認識、AI SaaS、AIエージェントなどを企業へ提供しています。
2026年には「PKSHA ChatAgent」「PKSHA VoiceAgent」「PKSHA FAQ」が、チャットボット、ボイスボット、FAQナレッジ管理の3部門で市場シェア1位となりました。
音声認識エンジンも2,000社以上で利用されており、APIとして外部企業への販売も開始しています。
つまり「AIを研究している会社」ではなく、すでに企業へAIを販売している会社です。
2026年9月期第3四半期累計の売上収益は283億円で前年同期比84.1%増となりました。
ただし注意点があります。
売上高は大幅に増えていますが、営業利益は前年同期比でほぼ横ばいです。新たに加わったAI Powered Worker事業などの影響で利益率が低下しています。
今後は「売上成長」だけでなく「利益率を再び上げられるか」が重要です。
投資判断軸
成長性:★★★★★
AI事業への直接性:★★★★★
実装・収益化力:★★★★☆
株価水準:★★★★☆
財務・株主還元:★★★★☆
総合投資判断:やや強気~強気
2026年9月3日の終値は3,090円、予想PER33.65倍、PBR2.67倍でした。
AI専業株として考えればPER30倍台は極端な高値とは感じません。
一方、現在の利益成長が売上成長に追いついていないため、富士通やNECより順位を下げています。
利益率が再び上昇し始めれば、株価の値幅という点では今回の大型2社以上に面白くなる可能性があります。
有望銘柄④ Appier Group(4180)
4位はAppier Groupです。
台湾出身のAI企業ですが東京証券取引所プライム市場に上場しています。
AIを使って企業の広告、マーケティング、顧客分析、意思決定などを支援しており、現在は「Agentic AI-as-a-Service」を掲げています。世界17拠点、2,200社を超える顧客を持っています。
2026年第2四半期は売上収益129億円で前年同期比24.6%増、営業利益15億円で82.8%増となりました。
売上総利益率も初めて60%を超え、60.1%まで上昇しています。コア・フリーキャッシュフローも前年同期比243.6%増となりました。
売上成長だけではなく利益率も改善している点を高く評価しています。
特に米国・EMEA売上が前年同期比59%増となっており、日本市場だけに依存していないことも魅力です。
投資判断軸
成長性:★★★★★
AI事業への直接性:★★★★★
実装・収益化力:★★★★★
株価水準:★★☆☆☆
財務・株主還元:★★★★☆
総合投資判断:やや強気
2026年9月3日の終値は1,418円、PER56.4倍、PBR3.92倍でした。
企業の成長内容はかなり良いと思います。
しかしPER50倍を超えているため、好業績が続くことをかなり株価に織り込んでいます。
成長性だけならPKSHAより上位に置いてもよい企業ですが、「今から買ってキャピタルゲインを狙う」という基準では4位としました。
大きな調整が起きた場合にはかなり注目したい銘柄です。
AI関連の有望銘柄ランキング
1位 富士通(6702)
独自AI+AIエージェント+企業システム。営業利益56.9%増に対してPER15倍前後の株価水準を評価。
2位 NEC(6701)
Anthropic+BluStellar+3万人AIエンジニア。AI実装力では日本株トップクラス。
3位 PKSHA Technology(3993)
国内AI SaaS・AIエージェントの本命候補。AI純度は高いが利益率改善を確認したい。
4位 Appier Group(4180)
世界展開するAI SaaS。利益成長は非常に強いがPER50倍超を考慮。
今回のAI銘柄は、単純な「AI関連度ランキング」ではありません。
AIへの純度だけならPKSHAやAppierを1位、2位にすることもできます。
しかし株式投資では、テーマへの純度が高いほど市場から高いPERを付けられやすくなります。
そのため私は現在、AIによる利益成長を取り込みながら株価評価が比較的低い富士通を1位、NECを2位としました。
特に富士通のPER15倍前後は、「AI関連株」という視点ではかなり面白い水準だと考えています。
まとめ
AI業界については、今後低迷する業界とは考えていません。
生成AI市場の国内需要は2030年に1兆7,774億円まで拡大すると予想され、日本政府もAI利用を本格的に進めています。
ただし2026年以降は「AI関連」というだけでは株価が上がり続ける時代ではなくなると考えています。
AIモデル自体は急速に進化し、価格競争も進みます。
その中で価値を持つのは、「企業の業務データへアクセスできる」「AIを実際の業務へ組み込める」「AIエージェントとして仕事を自動化できる」「継続課金できる」「AIによって自社の利益率も改善できる」という企業です。
AI業界の将来性を5段階で評価するなら「5」。
私はAI市場の次の主役を、単なる生成AIではなく「AIエージェント」だと考えています。
これからは「人がAIに質問する時代」から、「AIへ仕事を任せ、AIが自ら作業する時代」へ進む可能性があります。
その変化を企業の現場へ実装できる会社が、日本のAI関連株でも本当の勝ち組になると考えています。
現時点では本命を富士通(6702)、AI社会実装力を重視した対抗をNEC(6701)、値幅を狙う成長枠をPKSHA Technology(3993)とします。
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