日本製鉄(5401)2027年3月期第1四半期決算を分析|事業利益58%増、純利益黒字転換も中身を精査、今後の業績と売買判断

日本製鉄(5401)が2026年8月4日に発表した2027年3月期第1四半期決算を分析します。

売上収益は2兆8211億9600万円で前年同期比40.4%増、事業利益は1455億1100万円で58.1%増となりました。前年同期は事業再編損2315億8300万円を計上したため営業損失1395億5900万円、親会社帰属純損失1958億3300万円でしたが、今期は営業利益1455億1100万円、親会社帰属四半期利益752億9900万円まで回復しています。

ただし今回の事業利益58%増も、そのすべてを通常の本業改善と見るのは少し注意が必要です。「その他収益」が185億円から407億円へ増え、「その他費用」が457億円から188億円へ減っており、この差し引き改善が事業利益を大きく押し上げています。今回の決算は好決算ですが、表面数字ほど単純ではありません。

目次

今回の決算を5段階で評価

評価項目評価コメント
売上収益★★★★★2.82兆円、40.4%増
事業利益★★★★★1455億円、58.1%増
利益率★★★★☆事業利益率約5.2%、前年約4.6%から改善
製鉄事業★★★★★事業利益1443億円、約69%増
システムソリューション★★★★☆事業利益95.9億円、約9.7%増
ケミカル&マテリアル★★★★★事業利益92.2億円、約2.9倍
エンジニアリング★★☆☆☆事業利益42.0億円、約23%減
通期予想★★★★☆事業利益6300億円、22.5%増予想
進捗率★★★★☆通期事業利益の23.1%、上期計画の56.0%
特殊要因★★★☆☆前年の巨額再編損反動に加え、その他損益改善も大きい
財務★★★☆☆資本は増加したが有利子負債も増加
CF★★★☆☆第1四半期CF計算書は未作成
株主還元★★★★☆年間24円を維持
キャピタルゲイン期待★★★★☆黒字回復は強いが、利益の質を次回確認したい

数値は今回の決算短信に基づいています。

売買判断

保有 ★★★★☆

追加買い ★★★☆☆

売却 ★☆☆☆☆

私は日本製鉄の保有を継続します。

前年の巨額事業再編損から黒字へ戻っただけでなく、事業利益自体も58.1%増えていますので、今回の内容で売却する理由はありません。

ただし追加買いは★★★☆☆です。事業利益1455億円のうち、その他収益増加とその他費用減少の寄与がかなり大きいため、第2四半期で基礎的な製鉄収益がどこまで伸びるかを確認してから増やしたいです。

本業は改善しているが、58%増すべてが実力ではない

売上総利益は2987億円から3889億円へ約30%増えました。一方、販管費も2069億円から2845億円へ増加しています。

売上総利益から販管費を差し引き、持分法投資利益を加えた段階では、前年約1192億円に対して今期約1235億円です。

一方で、その他収益とその他費用のネット損益は前年約272億円のマイナスから、今期約220億円のプラスへ改善しました。差し引き約492億円の改善です。

つまり事業利益58%増にはこの影響がかなり入っています。

そのため私は今回を、

「本業も改善しているが、事業利益58%増という数字ほど基礎収益が急伸したわけではない」

と評価します。

製鉄事業は事業利益69%増

セグメント別では、製鉄事業の売上収益が2兆6129億円、事業利益が1442億6900万円となりました。

前年同期の事業利益852億4500万円から約69%増加しています。全社事業利益1455億円の大部分を製鉄事業が稼いでいます。

ケミカル&マテリアルも31億8500万円から92億1600万円へ大幅増益、システムソリューションも87億4300万円から95億8900万円へ増益です。

一方、エンジニアリングは54億5000万円から42億200万円へ減益でした。

製鉄を中心に3事業が増益している点は評価できます。

純利益の黒字転換は前年の特殊損失反動が大きい

前年同期は事業再編損2315億8300万円を計上していました。

このため前年は、事業利益920億円を出していたにもかかわらず、営業損失1395億円、親会社帰属純損失1958億円となっていました。

今期は事業再編損がなく、営業利益1455億円、純利益753億円へ戻っています。

したがって、

「純利益がマイナス1958億円からプラス753億円へ急改善した」

という部分は、そのまま通常の利益成長として評価してはいけません。

今回私は最終利益より、事業利益と製鉄事業の利益を重視します。

通期事業利益6300億円へ進捗23.1%

会社は今回、通期業績予想を修正し、売上収益11兆2000億円、事業利益6300億円、親会社帰属利益2900億円を予想しています。

第1四半期の進捗率は、

売上収益 約25.2%
事業利益 約23.1%
親会社帰属利益 約26.0%

です。

一方、上期事業利益予想2600億円に対しては、すでに約56.0%まで進んでいます。

通期進捗だけなら特別高いわけではありませんが、上期計画に対しては順調です。

第2四半期でも製鉄事業の利益が高水準なら、年間6300億円達成への安心感が高まります。

財務は資本増加と同時に負債も増加

総資産は14兆6606億円から15兆1761億円へ増加し、親会社所有者帰属持分も5兆5304億円から5兆6361億円へ増えました。

一方、親会社所有者帰属持分比率は37.7%から37.1%へやや低下しています。

社債・借入金・リース負債は約5兆1743億円から約5兆5157億円へ増加しました。現預金は4897億円です。

財務が危険という水準ではありませんが、利益回復と同時に有利子負債も増えているため、ここは今後も確認したいです。

棚卸資産も2兆7760億円から2兆9154億円へ増加しています。

CFは今回確認できない

第1四半期のキャッシュ・フロー計算書は作成されていません。

そのため営業CF、投資CF、フリーCFを今回の資料だけから評価することはできません。減価償却費・償却費は前年966億円から1673億円へ増えています。

利益だけでなくキャッシュ創出がどう変化しているかは、中間決算で確認したいです。

配当は年間24円を維持

2027年3月期は中間12円、期末12円、年間24円の配当予想です。

前期も株式分割後ベースでは年間24円相当ですので、今回は据え置きです。

利益予想を修正した一方で配当は据え置きですので、株主還元という意味では少し物足りません。

今後利益が上振れした場合、増配につながるかも見たいところです。

私ならどう売買するか

私は日本製鉄の保有を継続します。

製鉄事業の事業利益69%増、全社事業利益58%増という数字は十分強いです。

ただし今回は前年の特殊損失反動に加えて、その他損益の大幅改善もあります。

そのため私は、この決算だけを見て一気に買い増すことはしません。

第2四半期で製鉄事業の利益水準が維持され、その他損益に頼らなくても事業利益を伸ばせていることを確認できれば追加買いを検討します。

次の決算で見るポイント

最優先は製鉄事業の事業利益です。今回1443億円まで増えましたので、この水準を維持できるかを見ます。

次に、その他収益・その他費用を除いた基礎収益、通期事業利益6300億円への進捗、有利子負債、棚卸資産を確認します。

また中間決算ではCFが開示されるため、利益回復が営業CFにもつながっているかを必ず見たいです。

売却を考える条件

私が売却を考えるのは、製鉄事業が再び大幅減益へ転じ、事業利益6300億円の達成が難しくなった場合です。

また、有利子負債や在庫が増え続ける一方で営業CFが悪化する場合、利益回復にもかかわらず株主還元が後退する場合も評価を下げます。

逆に製鉄事業の増益と財務改善が両立するなら、私は保有を継続します。

今回の私の結論

今回の日本製鉄の第1四半期決算は、好決算ではありますが、表面的な数字だけで★★★★★とするには少し注意が必要です。

売上収益40.4%増、事業利益58.1%増。前年の巨額事業再編損がなくなったことで、最終利益も大幅な赤字から753億円の黒字へ転換しました。

製鉄事業の事業利益も約69%増えています。

一方、事業利益58%増の中には「その他収益増加+その他費用減少」という約490億円規模の改善が含まれています。

そのため今回の総合評価は★★★★☆とします。

私は保有を継続しますが、追加買いは第2四半期の利益の質を確認してからです。

キャピタルゲインを考えるうえで重要なのは、赤字から黒字へ転換したことそのものではありません。

特殊要因が薄れた後でも、製鉄事業を中心に6300億円の事業利益を安定して稼げるか。

ここが次の焦点です。

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