今回はかなり分かりやすく、「売上成長はそこそこだが、黒字転換の意味が大きい決算」です。前回のエクサウィザーズほどの高成長ではありませんが、赤字企業から利益を出せる会社へ変わり始めている点を評価したいです。
今回の決算を5段階で評価
まず最初に、今回のスパイダープラスの中間決算を私なりに5段階で評価してみました。
| 評価項目 | 星評価 | 私の見方 |
|---|---|---|
| 売上成長 | ★★★☆☆ | +12.0%。悪くないが成長株としてはもう少し欲しい |
| 利益改善 | ★★★★★ | 営業赤字から黒字へ転換。今回最大の評価ポイント |
| 営業キャッシュフロー | ★★★★☆ | ▲1,303万円から+9,720万円へ改善 |
| ストック型事業 | ★★★★☆ | 主力SPIDER+のストック売上が増加 |
| 成長投資 | ★★★★☆ | 新アプリなどへの投資を継続。ただし投資CFは拡大 |
| 財務健全性 | ★★★★★ | 自己資本比率66.5%、現金約22.6億円 |
| 通期予想 | ★★★☆☆ | 売上+20.5%を目指すため、下期の加速が必要 |
| 株主還元 | ★★☆☆☆ | 今期も無配予定 |
| 総合評価 | ★★★★☆ | 黒字転換を高く評価。ただし売上成長の加速は必要 |
総合評価:★★★★☆(4.0 / 5)
今回の決算を一言で表すなら、
「派手な増収決算ではない。しかし、赤字だった会社が本業で利益を出せるようになったことに意味がある」
という印象です。
現時点での売買判断
保有:★★★★☆ → 継続保有
新規買い:★★★★☆ → 黒字定着を狙うなら買い候補
売却:★★☆☆☆ → 今回の決算だけを理由に売る必要は低い
スパイダープラス(4192)が2026年8月12日に、2026年12月期第2四半期の決算を発表しました。
今回の決算を見て私が最初に気になったのは、売上高ではありませんでした。
一番気になったのは、
営業利益が黒字になったこと
です。
スパイダープラスはこれまで、建設DXという成長市場にいる一方で、利益面では赤字が続いていました。
その会社が今回、中間期ベースで営業黒字になっています。
私はここを今回の決算で一番評価しています。
売上+12%、そして営業黒字転換
まず中間期の数字です。
| 2026年12月期中間期 | 前年同期 | |
|---|---|---|
| 売上高 | 26.42億円 | +12.0% |
| 営業利益 | 0.89億円 | ▲0.29億円 |
| 経常利益 | 0.89億円 | ▲0.33億円 |
| 純利益 | 0.41億円 | ▲0.38億円 |
売上高は前年同期の23.60億円から26.42億円へ増えました。
増収率は12.0%です。
正直に言えば、
売上成長だけなら「すごく良い」とまでは思いません。
SaaS・DX関連の成長企業として見るなら、もう少し20%前後の成長が欲しいところです。
しかし営業利益を見ると評価が変わります。
前年同期は2,901万円の営業赤字。
今回は、
8,966万円の営業黒字
です。
経常利益も赤字から8,919万円の黒字。
純利益についても3,890万円の赤字から4,142万円の黒字へ転換しました。
つまり、
売上を12%伸ばしながら、赤字体質を脱し始めた
という決算です。
私はこの変化をかなり重要だと思っています。
売上総利益も増えている
損益計算書を見ると、
売上高は、
23.60億円 → 26.42億円
売上総利益は、
17.23億円 → 19.34億円
へ増加しています。
一方で販管費は、
17.52億円 → 18.45億円
です。
売上総利益が約2.1億円増えたのに対して、販管費の増加は約0.9億円。
つまり、
売上が増えた分が以前より利益として残るようになった
ということです。
成長企業を見るとき、私は単純な増収率よりもこの変化を評価します。
売上を増やしても同じだけ人件費や広告費が増えてしまえば、いつまでたっても利益は出ません。
スパイダープラスは少なくとも今回、
事業規模の拡大が利益につながり始めた
と見ることができます。
主力SPIDER+のストック売上が増加
会社によると今回、
主力の施工管理サービス「SPIDER+」のストック売上高が増加しました。
さらに、
「S+BPO」
「プロフェッショナルサービス」
といったスポット売上も増えています。
ここも私は評価しています。
SPIDER+は月額課金型のクラウドサービスです。
つまり顧客が増えれば、その後も継続的に売上が発生するストック型ビジネスです。
このストック収益を土台にしながら、
SPIDER+導入顧客へBPOやコンサルティングを追加販売する
という形ができれば、顧客1社当たりの売上を増やすことができます。
単純にSPIDER+の契約数だけを増やす会社ではなく、
建設会社のDX全体から売上を取る会社
へ変わろうとしているように見えます。
建設DXという市場環境はまだ悪くない
スパイダープラスの強みは、建設業界という明確な市場を対象にしていることです。
建設業界では、
人手不足、
高齢化、
資材価格上昇、
法規制への対応、
といった問題が続いています。
その結果、現場の生産性向上はかなり重要な課題になっています。
会社自身も、建設DXニーズが高度化・多様化しながら拡大していると説明しています。
私はこの市場環境はスパイダープラスにとって追い風だと思います。
AI銘柄のように市場が一気に何倍にもなるテーマではありませんが、
建設業界の人手不足という簡単には解決しない問題
を対象にしています。
そのため需要が急になくなる可能性は比較的小さいと見ています。
ただし、減損損失は少し気になる
今回の決算で一つ注意したいのが、
3,878万円の減損損失
です。
会社は、業務効率化を目的として開発していたプロジェクトについて取り組み範囲を見直しました。
さらにSPIDER+の新しいモバイル版アプリのリリースを見据え、一部の開発中機能について将来の使用見込みが低下したため、ソフトウェア仮勘定の一部を減損しています。
金額自体は会社全体を揺るがすほどではありません。
ただ、
開発したソフトウェアが予定どおり活用されない
ということなので、良い話ではありません。
特にソフトウェア企業は開発投資が重要です。
今後も同じような減損が何度も出るようなら、開発投資の効率性を疑う必要があります。
今回は一時的なものとして見ていますが、次回以降も確認します。
営業キャッシュフローも黒字化
利益だけでなくキャッシュフローも改善しています。
営業活動によるキャッシュフローは、
前年同期の、
▲1,303万円
から、
+9,720万円
へ改善しました。
私はこの数字も重要だと思います。
会計上の営業利益だけが黒字でも、現金が出ていく一方では安心できません。
今回は、
営業利益黒字
+営業キャッシュフロー黒字
となっています。
まだ金額は大きくありませんが、赤字企業から黒字企業へ変わっていく途中としては良い方向です。
一方で投資キャッシュフローはかなり増えた
ただし現金そのものは減っています。
投資活動によるキャッシュフローは、
前年同期▲1,661万円から、
▲2億4,692万円
まで拡大しました。
大部分は無形固定資産の取得による支出です。
要するに、
新しいサービスやソフトウェアの開発へかなりお金を使っている
ということです。
成長企業なので投資そのものは悪くありません。
むしろ何も投資しないほうが心配です。
ただし今回減損も出ています。
そのため私は、
開発投資が将来きちんと売上・利益として回収できるか
を今後見ていきます。
現金はまだ十分ある
中間期末の現金及び預金は、
約22.58億円
です。
前年末は約24.77億円だったので約2.2億円減っています。
一方、自己資本比率は、
64.0% → 66.5%
へ上昇しました。
短期借入金は5億円、長期借入金は約1.04億円。
財務面について私はそれほど心配していません。
少なくとも現時点で、
赤字を補填するために増資を繰り返さなければならない会社
という状況ではありません。
今回の黒字転換が定着するなら、財務はさらに安定してくると思います。
欠損填補で利益剰余金がプラスに
今回少し変わった動きとして、資本金を大きく減らしています。
資本金は約25.1億円から、
約1,347万円
まで減少しています。
ただしこれは業績悪化で資本金が消えたわけではありません。
資本金・資本準備金を減額し、その他資本剰余金へ振り替え、その後これを繰越利益剰余金に振り替えて欠損填補を行っています。
その結果、利益剰余金は、
▲26.35億円 → +5,199万円
となりました。
これは会計上の整理です。
会社から現金が大量に出ていったわけではありません。
むしろ過去の累積赤字を整理して、今後の資本政策をやりやすくする意味があります。
私は今回の決算評価を下げる材料とは考えていません。
通期予想は売上59億円、営業利益5,000万円
会社の通期予想は、
売上高59億円
前年比+20.5%
営業利益5,000万円
です。
ここで少し面白いことがあります。
中間期ですでに営業利益は、
8,966万円
出ています。
つまり、
中間期の段階で通期営業利益予想5,000万円を上回っています。
これはかなり目立ちます。
もちろん下期に費用が増える計画なら、単純な「上方修正確実」とは言えません。
会社も今回、通期予想を据え置いています。
それでも、
営業利益については会社計画より良いペース
なのは間違いありません。
今後上方修正があるのか、私はかなり注目しています。
逆に売上は下期の加速が必要
一方で売上高は少し違います。
上期売上高は26.42億円。
通期計画は59億円です。
進捗率は、
約44.8%
です。
半分の期間を終えて50%未満。
通期で前年比20.5%増を達成するためには、
下期に約32.6億円の売上が必要です。
つまり上期26.4億円から、
下期は約23%売上を増やす必要があります。
ここは簡単ではありません。
だから私は今回、
利益についてはかなり評価する一方、
売上成長については★★★☆☆にしています。
今後のスパイダープラスで見るべきは、
黒字になったかどうか
だけではありません。
次の段階では、
黒字を維持しながら20%前後の成長率を取り戻せるか
が重要になります。
では、株はどうするか
今回の決算を見て、私が保有していたなら、
基本は継続保有
です。
今回売る理由はあまりありません。
むしろ、
営業黒字化
経常黒字化
純利益黒字化
営業CF黒字化
と、今まで期待されていた「利益を出せる会社への変化」が数字に表れ始めています。
この段階で手放すのは少し早いと思います。
ただし★★★★★の安心保有ではなく、
次は売上成長を確認するための保有
という感覚です。
新規買いも検討できる決算
新規買いについても、私は今回の決算なら候補に入れます。
FFRIセキュリティのように減益決算ではありません。
また、まだ成熟企業でもありません。
これまで赤字だった企業が、
黒字化の初期段階に入った
というタイミングです。
株式市場では、この段階で評価が大きく変わるケースがあります。
赤字企業はPERでは評価できませんが、黒字が定着するとPERなどの利益基準で評価できるようになります。
さらに今後、
売上成長
+利益成長
が両立できれば、企業価値の評価が一段変わる可能性があります。
その意味で私は、
「これから面白くなる可能性がある決算」
だと思います。
ただし、売上12%成長では物足りない
ここはかなり重要です。
黒字になったことだけで満足してはいけません。
スパイダープラスはまだ成長企業です。
売上成長率が今後も10%前後にとどまるのであれば、私は評価を大きく上げません。
会社自身が通期で+20.5%を予想している以上、
下期に20%前後の成長へ戻せるか
を見ます。
もし下期も10%程度の増収で終わるようなら、
「利益は出るようになったけれど、成長率が鈍化している」
という評価になります。
逆に下期に20%以上の増収へ加速しながら営業黒字を維持できれば、かなり評価を上げたいです。
私が売却を考える条件
私が今後売却を考えるのは、
SPIDER+のストック売上の成長が止まる
売上成長率が一桁へ低下する
再び営業赤字へ戻る
開発投資の減損が繰り返される
といった状態になったときです。
特に重要なのは、
ストック売上の成長
です。
SPIDER+の契約顧客から毎月継続的に収益を得られることが、この会社の強みです。
ここが伸びている限り、私は中長期の成長シナリオを簡単には否定しません。
今回の私の結論
スパイダープラスの2026年12月期中間決算は、
良い決算
だったと私は評価します。
売上高は+12%とやや物足りません。
しかし、
営業利益 ▲2,901万円 → +8,966万円
経常利益 ▲3,345万円 → +8,919万円
純利益 ▲3,890万円 → +4,142万円
と、すべて黒字へ転換しました。
さらに営業キャッシュフローも黒字です。
今回の総合評価は、
★★★★☆(4.0 / 5)
としました。
★★★★★にしなかった理由は、
売上成長率が12%にとどまっていること
通期売上59億円達成には下期加速が必要なこと
ソフトウェア開発に減損損失が出たこと
です。
一方で通期営業利益予想5,000万円に対して、中間期ですでに約8,966万円の営業利益を出しています。
そのため今後は、
売上が会社計画どおり伸びるなら、利益予想の上方修正があるのか
にも注目したいと思います。
現時点での私の方針は、
保有分 → 継続保有
新規買い → 買い候補
売却 → 今回の決算を理由に売る必要は低い
です。
これまでのスパイダープラスは、
「建設DX市場が伸びれば、いつか利益も出るかもしれない会社」
という見方もできました。
今回の決算で、その「いつか」が少し見えてきました。
ここから重要なのは、
黒字になったことを喜ぶ段階から、黒字を維持しながら成長できるかを確認する段階へ進むこと。
私は次の決算では、営業利益よりむしろ、
売上成長率が再び20%近くまで上がってくるのか
を一番注目して見たいと思います。
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