味の素(2802)が2026年8月6日に発表した2027年3月期第1四半期決算を分析します。
売上高は4121億500万円で前年同期比13.2%増、事業利益は601億1600万円で27.3%増、営業利益は558億9500万円で13.2%増、親会社の所有者に帰属する四半期利益は364億5200万円で13.1%増となりました。
今回特に強かったのはヘルスケア等セグメントです。AI、サーバー、ネットワーク向け高性能基板用の電子材料が好調で、同セグメントの事業利益は63.3%増となりました。
さらに会社は第1四半期の段階で通期予想を上方修正しています。
私は今回を、食品会社としての安定成長に加え、ABFなど電子材料が新たな利益成長エンジンとして存在感を強めた好決算と評価します。
今回の決算を5段階で評価
| 評価項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| 売上高 | ★★★★★ | 4121億円、13.2%増 |
| 事業利益 | ★★★★★ | 601億円、27.3%増 |
| 利益率 | ★★★★★ | 事業利益率13.0%→14.6%へ改善 |
| 調味料・食品 | ★★★★★ | 11.9%増収、13.0%増益 |
| 冷凍食品 | ★★☆☆☆ | 5.6%増収も事業利益23.2%減 |
| ヘルスケア等 | ★★★★★ | 22.8%増収、63.3%増益 |
| 電子材料 | ★★★★★ | AI・サーバー向け需要が好調 |
| 通期予想 | ★★★★★ | 売上・事業利益・純利益を上方修正 |
| 進捗率 | ★★★★★ | 通期事業利益の29.8% |
| 特殊要因 | ★★★★★ | 大きな一時利益に依存せず事業利益が増加 |
| CF | ★★★☆☆ | 営業CF減少、FCFは小幅マイナス |
| 財務 | ★★★☆☆ | 有利子負債増加、自己資本比率39.9%へ低下 |
| 株主還元 | ★★★★☆ | 年間48円→50円へ増配 |
| キャピタルゲイン期待 | ★★★★★ | 電子材料成長+上方修正を評価 |
売買判断
保有 ★★★★★
追加買い ★★★★☆
売却 ★☆☆☆☆
私は味の素の保有を継続します。
調味料・食品という安定事業に加え、ヘルスケア等の利益成長が非常に強くなっています。さらに第1四半期で通期予想を上方修正しているため、キャピタルゲインという面でも評価を上げたい決算です。
追加買いも前向きですが、冷凍食品の減益と財務負担の増加は確認したいため、株価が大きく上昇したところを追うより押し目で増やしたいです。
事業利益27.3%増、利益率も改善
売上高は3640億円から4121億円へ13.2%増えました。
事業利益は472億円から601億円へ27.3%増加し、事業利益率は約13.0%から14.6%へ改善しています。
味の素が重視する事業利益は、その他の営業収益・営業費用などを除き、恒常的な事業の収益力を見る指標です。
その事業利益が売上以上に伸びているため、今回の中身はかなり良いです。
一方、営業利益は13.2%増にとどまっています。その他営業収益が減少し、その他営業費用が増えたためです。
私は今回は営業利益より、本業を示す事業利益27.3%増を重視します。
ヘルスケア等が63%増益
最大の注目点はヘルスケア等です。
売上高は970億円で22.8%増、事業利益は251億円で63.3%増となりました。
医薬用・食品用アミノ酸やCDMOも増益ですが、特に強かったのがファンクショナルマテリアルズです。
半導体パッケージ用層間絶縁材料「ABF」など電子材料が、AI、サーバー、ネットワーク向け高性能基板需要を背景に大幅増収・増益となっています。
味の素というと調味料のイメージが強いですが、キャピタルゲインを考えるうえでは今後、食品より電子材料の利益成長率が株価評価を押し上げる可能性があります。
調味料・食品も安定して強い
調味料・食品は売上2387億円で11.9%増、事業利益410億円で13.0%増です。
海外調味料は為替や販売数量増加、日本でもコーヒーやスープなどが伸びています。
食品事業は電子材料のような爆発的な成長ではありませんが、安定して利益を積み上げる土台です。
電子材料が成長し、食品が安定収益を支える現在の事業構成はかなり良いと考えます。
冷凍食品は今回の弱点
一方、冷凍食品は売上725億円で5.6%増でしたが、事業利益は21億円で23.2%減となりました。
売上は為替などで伸びていますが、利益がついてきていません。
通期事業利益121億円に対する進捗率も17.7%と、他事業よりかなり低いです。
今回唯一明確に弱いセグメントです。
今後、増収を利益へ変えられるかは確認する必要があります。
通期予想を早くも上方修正
会社は通期予想を修正しました。
売上高 1兆7320億円
事業利益 2020億円
親会社帰属利益 1235億円
を見込んでいます。
事業利益は従来予想から50億円、純利益は35億円上方修正されました。
上方修正の中心はヘルスケア等です。
第1四半期の進捗率は、
売上高 23.8%
事業利益 29.8%
純利益 29.5%
です。
上方修正後でも利益は約30%進んでいますので、かなり良いスタートです。
特にヘルスケア等は通期事業利益850億円に対して29.6%まで進んでいます。
特殊利益に頼った決算ではない
今回の営業利益は559億円で13.2%増、税引前利益も550億円で14.4%増です。
大規模な資産売却益などで最終利益だけが増えた決算ではありません。
むしろその他営業収益は前年より減り、その他営業費用は増えています。
それでも事業利益が27.3%伸びています。
そのため私は、今回の利益成長の質は高いと評価します。
CFは利益ほど強くない
営業CFは前年304億円から184億円へ減少しました。
棚卸資産が286億円増加し、法人税支払いも167億円あったことが主因です。
投資CFは225億円のマイナスですので、単純計算したFCFは約41億円のマイナスとなります。
一方で財務CFは936億円のプラスです。
コマーシャル・ペーパーを1400億円発行したことが大きく、有利子負債も前期末から1410億円増えて6237億円となりました。
利益成長は強いものの、今回はCFと負債面を少し割り引いて評価します。
自社株買いと増配も継続
年間配当予想は50円で、前期48円から2円増配です。
さらに第1四半期には約194億円の自己株式取得を行っています。
期中平均株式数も前年約9.88億株から約9.56億株へ減少しました。
そのため純利益が13.1%増なのに対してEPSは32.62円から38.11円へ約16.8%増えています。
一株当たり利益を高める株主還元も進んでいます。
私ならどう売買するか
私は味の素を保有継続します。
今回最も評価するのは、事業利益27.3%増とヘルスケア等63.3%増益です。
特にABFなどの電子材料がAI・サーバー需要を背景に伸び、通期予想まで上方修正されたことは株価にとって強い材料です。
一方、冷凍食品の減益と有利子負債増加がありますので、一気に買い増すより押し目で追加します。
次の決算で見るポイント
最重要はヘルスケア等です。
ABFを中心とする電子材料が現在の高成長を維持できるかを確認します。
次に冷凍食品の利益回復、事業利益率14%台の維持、通期事業利益2020億円への進捗を見ます。
また営業CFと有利子負債が改善するかも確認したいです。
売却を考える条件
私が売却を考えるのは、電子材料需要が失速し、ヘルスケア等の利益成長率が大きく低下した場合です。
さらに食品事業まで減益へ転じる、冷凍食品の収益悪化が長期化する、有利子負債増加とCF悪化が続く場合も評価を見直します。
今回の私の結論
今回の味の素の第1四半期決算は、かなり強い好決算です。
売上高13.2%増、事業利益27.3%増、純利益13.1%増。
調味料・食品も13%増益と安定していますが、最大の成長源はヘルスケア等です。電子材料の好調によって事業利益は63.3%増となりました。
さらに会社は第1四半期から通期事業利益を2020億円へ上方修正し、進捗率は29.8%です。
CFと有利子負債には注意しますが、本業の利益成長と上方修正を考え、今回の総合評価は★★★★★とします。
私は保有を継続し、押し目では追加買いを検討します。
キャピタルゲインという視点では、今後の味の素を単なる食品株として見る必要はありません。
AI・サーバー向け電子材料をどこまで利益成長の柱へ育て、食品の安定利益と両輪で成長できるか。
ここが次の焦点です。
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