ソフトウェア(業界特化)の今後を予想|Vertical SaaSとAIで伸びる有望株は?

目次

業界特化型ソフトウェアの今後はどうなる?

ソフトウェア(業界特化)について、私は今後5~10年を「強気」と見ています。

業界特化型ソフトウェアは「Vertical SaaS」とも呼ばれます。

例えば、

訪問看護
病院・診療所
証券・保険
飲食店・小売店
建設現場

など、特定業界だけで使用するソフトウェアです。

一見すると、どんな企業でも使える会計、人事、チャット、営業管理などの汎用SaaSより市場は狭く見えます。

しかし私は、生成AI時代になるほど業界特化型ソフトウェアの価値はむしろ高くなると考えています。

理由は単純です。

業界特化型ソフトウェアには、その業界の、

商習慣
法規制
専門用語
帳票
請求方法
業務フロー
顧客データ

が組み込まれているからです。

ChatGPTのような汎用AIが高性能になっても、「訪問看護ステーションのレセプト請求」や「証券口座の基幹システム」「建設現場の図面管理」を簡単に置き換えられるわけではありません。

私はここが業界特化型ソフトウェア最大の強みだと考えています。

汎用SaaSより「解約されにくい」

Vertical SaaSで特に重要なのがスイッチングコストです。

例えば社内チャットなら、競合サービスへ変更することは比較的容易です。

しかし病院の電子カルテや金融機関の基幹システムを変更するとなると話が違います。

過去データの移行
社員教育
他システムとの接続
監査
法規制への対応

など大量の作業が必要になります。

業務の中心に入り込めば入り込むほど、別サービスへ変更するコストが高くなります。

つまり、

新規顧客を獲得するのは難しいが、一度獲得すると長期間利用してもらいやすい

という特徴があります。

SaaS企業にとって非常に魅力的な構造です。

AIとの相性は汎用ソフト以上に良い

私は今後、Vertical SaaSで最も大きなテーマになるのがAIだと考えています。

AIそのものは多くの企業が利用できます。

しかし本当に価値があるのは、

「AI+業界データ」

です。

例えば訪問看護なら、

患者情報
訪問記録
看護記録
訪問予定
移動時間

などをAIへ組み合わせることで、

訪問ルート作成
記録作成
予定作成
請求業務

を自動化できます。

eWeLLは訪問看護向け電子カルテ「iBow」で蓄積した大量のデータを活用し、2026年7月から「AI訪問予定・ルート」を有償提供しています。同社は約1億件の高純度な訪問看護データをAIサービスへ活用しています。

これは非常に重要です。

AIモデルそのものはOpenAIやGoogleなどから購入できます。

しかし長年蓄積した業界固有データは簡単にはコピーできません。

私は今後のソフトウェア企業では、「独自AIを持っているか」より「AIへ食わせられる独自業界データを持っているか」を重視したいと思います。

人手不足もVertical SaaSの追い風

日本の多くの業界では人手不足が深刻です。

特に、

医療・介護
建設
小売
物流
金融

などでは、単純に人を増やして仕事量へ対応することが難しくなっています。

そこでソフトウェアによって、

入力を自動化する
予定を自動作成する
請求を自動化する
現場情報を共有する
AIで文章を作成する

必要性が高まります。

以前の業務ソフトは、

「導入すれば便利」

という存在でした。

これからは、

「人が採用できないので導入しなければ業務が回らない」

という存在へ変わっていく可能性があります。

ここは長期的な追い風です。

業界特化型は価格も上げやすい

Vertical SaaSのもう一つの強みが価格決定力です。

ソフトウェアによって、

社員1人分の仕事を減らせる
売上を増やせる
請求ミスを減らせる
残業時間を減らせる

のであれば、月額数千円から数万円の値上げでも顧客側にメリットがあります。

特に人件費が上昇するほど、

「ソフトウェアを導入するコスト」

より、

「人を採用するコスト」

の方が高くなります。

そのためVertical SaaS企業では、

顧客数増加
単価上昇
追加機能販売

という3つの成長を狙えます。

ただし市場規模には限界がある

一方、Vertical SaaSにも弱点があります。

最大の問題は市場規模です。

例えば日本の訪問看護ステーションだけを対象にすれば、顧客数には当然上限があります。

そのため成長企業は、

周辺業界へ進出する
追加サービスを販売する
決済や金融へ入る
AI機能を追加する
海外へ進出する

必要があります。

私はVertical SaaS株を見るとき、

「最初の業界で何社獲得できるか」ではなく、「その顧客へ次に何を売れるか」

を見ることが重要だと考えています。

ソフトウェア(業界特化)株を見るための投資判断軸

今回は「成長性」「業界特化・解約されにくさ」「AI・データ競争力」「収益性」「株価水準」の5項目で評価します。

Vertical SaaSでは、配当よりもARR、営業利益率、顧客単価、解約率などを重視します。

そしてキャピタルゲインを狙うため、成長率に対してPER・PSRが高すぎない企業を上位にします。

有望銘柄① eWeLL(5038)

今回の第一候補はeWeLLです。

訪問看護に特化したVertical SaaS企業です。

主力サービスは訪問看護専用電子カルテ「iBow」。

非常に狭い市場に見えます。

しかし私は、こういう企業こそVertical SaaSの典型だと考えています。

訪問看護では、

患者情報
看護記録
予定管理
レセプト
請求
帳票

など非常に特殊な業務があります。

一度iBowへ業務を集約すると、別システムへ切り替えるのは簡単ではありません。

さらにeWeLLは単なる電子カルテ会社から、在宅医療のAIプラットフォーム企業へ変わろうとしています。

2026年には蓄積データを活用した「AI訪問予定・ルート」などを開始しています。

業績も非常に強いです。

2026年12月期上期は、

売上高19億91百万円 24.2%増
営業利益9億46百万円 20.1%増
経常利益9億53百万円 20.4%増
純利益6億63百万円 21.1%増

となりました。

売上高20億円弱に対して営業利益約9.5億円。

営業利益率は約47%です。

ソフトウェア企業の中でも非常に高い収益性です。

投資判断軸

成長性:★★★★★
業界特化・解約されにくさ:★★★★★
AI・データ競争力:★★★★★
収益性:★★★★★
株価水準:★★★★☆

総合投資判断:強気

2026年9月4日の終値は2,108円

予想PER24.06倍、PBR9.02倍、予想配当利回り1.00%です。

PBRは高いですが、これは高ROE・高利益率企業なのである程度は当然です。

むしろ営業利益率約47%、売上・利益20%成長が続いている企業としてPER24倍は極端に高いとは考えていません。

年初来高値2,940円から約28%調整している点も評価しています。

現時点ではVertical SaaSの本命をeWeLLとします。

有望銘柄② スマレジ(4431)

2位はスマレジです。

飲食店、小売店などの店舗向けクラウドPOSを提供しています。

単なるレジアプリではありません。

現在は、

POS
決済
勤怠
在庫管理
EC連携
顧客管理

など店舗運営全体をプラットフォーム化しています。

特に面白いのが、「スマレジ・アプリマーケット」です。

予約管理、CRM、EC、在庫など外部サービスと連携し、業種・業態ごとの細かいニーズへ対応できます。

つまり顧客店舗にとって、

「レジを変更する」

というより、

「店舗運営システムそのものを変更する」

状態へ近づいています。

これによってスイッチングコストも高まります。

業績は非常に強いです。

2026年4月期は、

売上高133億45百万円 20.6%増
営業利益32億16百万円 35.2%増
純利益22億28百万円 35.5%増

となりました。

2027年4月期も会社は、

売上高153億87百万円 15.3%増
営業利益40億04百万円 24.5%増
純利益27億81百万円 24.8%増

を予想しています。

営業利益率は約26%まで上昇する計画です。

投資判断軸

成長性:★★★★★
業界特化・解約されにくさ:★★★★★
AI・データ競争力:★★★★☆
収益性:★★★★★
株価水準:★★★☆☆

総合投資判断:強気

2026年9月4日の終値は3,540円

予想PER24.52倍、PBR7.09倍、ROEは25%台です。

業績成長率を考えればPER24倍台は許容範囲と考えています。

一方、8月31日に3,825円の年初来高値を付けており、現在も比較的高値圏です。

そのため企業評価はeWeLLと同等クラスですが、現在の株価からの値幅を考えて2位とします。

大きく調整した場合には1位候補です。

有望銘柄③ Finatextホールディングス(4419)

3位はFinatextホールディングスです。

金融業界に特化したソフトウェア・インフラ企業です。

証券向けの「BaaS」、保険向けの「Inspire」などを展開しています。

金融機関の基幹システムは、Vertical SaaSの中でも特に参入障壁が高い分野です。

セキュリティ
法律
本人確認
顧客資産管理
監査

など大量の規制へ対応する必要があるからです。

Finatextは証券・保険の基幹システムをクラウド化し、金融機関や一般企業が新しい金融サービスを短期間で立ち上げられる仕組みを提供しています。

私は今後の「Embedded Finance(組込型金融)」拡大も追い風になると考えています。

例えば小売企業や航空会社などが、自社サービスへ保険・証券・融資を組み込むようになれば、その裏側の金融インフラ需要が増えます。

2027年3月期第1四半期は、

売上高28億43百万円 35.1%増
営業利益1億88百万円 15.8%減

となりました。

売上は強い一方、先行人員投資によって営業減益となっています。

ただし会社の通期予想は、

売上高155億円 40.2%増
営業利益33億38百万円 75.6%増

を据え置いています。

ここが今後の最大の確認ポイントです。

投資判断軸

成長性:★★★★★
業界特化・解約されにくさ:★★★★★
AI・データ競争力:★★★★★
収益性:★★★★☆
株価水準:★★★☆☆

総合投資判断:やや強気~強気

2026年9月4日の終値は1,406円

予想PER31.43倍、PBR6.58倍です。

年初来高値1,748円からは約20%下にあります。

通期営業利益75%増を達成できるならPER30倍前後は十分吸収できる可能性があります。

逆に第2四半期でも営業利益成長が戻らなければ、会社計画への疑問が出ます。

そのため現在はeWeLLやスマレジより一段リスクを取る「攻め枠」として3位とします。

有望銘柄④ スパイダープラス(4192)

4位はスパイダープラスです。

建設業界に特化したVertical SaaS企業です。

建設現場向け「SPIDERPLUS」を提供し、

図面
写真
検査
現場情報

などをタブレット上で一元管理します。

建設業界は、

人手不足
高齢化
長時間労働
紙図面

などDX余地が非常に大きい業界です。

そのため市場テーマとしてはかなり魅力があります。

そして2026年は重要な変化が出ています。

2026年12月期上期は、

売上高26億42百万円 12.0%増
営業利益89百万円 黒字転換
経常利益89百万円 黒字転換

となりました。

2025年12月期まで営業赤字だったため、今回の黒字化はかなり重要です。

ARRも2026年第2四半期時点で52億05百万円、前年同期比8%増、契約企業数は2,297社まで増えています。

投資判断軸

成長性:★★★★☆
業界特化・解約されにくさ:★★★★★
AI・データ競争力:★★★★☆
収益性:★★★☆☆
株価水準:★★★★★

総合投資判断:やや強気

2026年9月4日の終値は286円

PBRは3.75倍です。まだ利益水準が小さいため、PERで評価する段階ではありません。

年初来高値371円から約23%下にあります。

スパイダープラスで最も重要なのは、

「売上成長株」から「利益成長株」へ変われるか

です。

ARRが再加速しながら営業黒字を維持できれば、株価評価は大きく変わる可能性があります。

一方、まだ利益額は小さいので4社中では最もリスクも大きい銘柄です。

値幅狙いの小型成長株として4位にします。

参考銘柄 メドレー(4480)

医療特化ソフトウェアという意味ではメドレーも有力です。

医療機関向け「CLINICS」や電子カルテ「MALL」などを展開しています。

2026年にはCLINICSへ医療文書を生成する「AI文書アシスト」を実装し、2027年以降にはAIネイティブのクラウド電子カルテ「MALLクラウド」を順次提供する計画です。

2026年12月期上期も、

売上高226億83百万円 22.8%増
営業利益24億46百万円 67.4%増

と業績は非常に強いです。

ただしメドレーには医療人材サービス「ジョブメドレー」などもあり、純粋な業界特化ソフトウェア企業ではありません。

さらに2026年9月4日の終値2,553円に対し、予想PER42.95倍、PBR5.16倍です。

そのため今回は参考銘柄とします。

企業成長力自体は高く評価しています。

ソフトウェア(業界特化)の有望銘柄ランキング

1位 eWeLL(5038)
訪問看護+電子カルテ+AI。営業利益率約47%、20%成長に対してPER24倍。年初来高値からも大きく調整。

2位 スマレジ(4431)
小売・飲食+POS+決済+EC。利益成長とストック収益の両立。ただし株価は比較的高値圏。

3位 Finatextホールディングス(4419)
金融基幹システム+Embedded Finance。通期営業利益75%増計画を達成できれば値幅大。

4位 スパイダープラス(4192)
建設DX+Vertical SaaS。営業黒字転換で企業ステージが変わる可能性。

参考 メドレー(4480)
医療DX+AI電子カルテ。成長力は高いが事業構成と株価評価から今回は参考。

今回、企業として特に完成度が高いのはeWeLLとスマレジです。

共通しているのは、

「ソフトウェアを販売している」のではなく「顧客の業務そのものを握っている」

ことです。

eWeLLなら訪問看護。

スマレジなら店舗運営。

一度導入されれば、顧客の日常業務がそのサービスを中心に回ります。

ここが単純なアプリとの大きな違いです。

さらにAIが加わることで、

入力するソフトウェア

仕事を自動化するソフトウェア

へ変化します。

私はこの変化がVertical SaaSの次の成長ステージになると考えています。

まとめ

ソフトウェア(業界特化)の将来性を5段階で評価するなら「5」です。

生成AIが普及すると、

「普通のソフトウェア会社はAIに仕事を奪われるのではないか」

という見方もあります。

私はむしろ、Vertical SaaSについては逆だと考えています。

AIモデルそのものは誰でも利用できるようになります。

そのとき価値が高くなるのは、

「その業界の仕事を理解していて、その業界のデータを持っている会社」

です。

訪問看護の1億件のデータ。

店舗の販売・在庫データ。

金融取引データ。

建設現場の図面・検査データ。

こうしたデータとAIを組み合わせれば、単なる業務管理ソフトから「仕事そのものを自動化するAI」へ進化できます。

私が今後このテーマで重視したいのは、「業務の中心に入り込んでいる」「解約されにくい」「独自データを持つ」「AIを追加販売できる」「売上だけでなく利益率も上がる」「成長率に対してPERが高すぎない」という企業です。

現時点でキャピタルゲインを狙う本命はeWeLL(5038)

収益性と長期成長のバランスならスマレジ(4431)

より大きな成長率を狙う攻めの候補としてFinatextホールディングス(4419)

黒字転換から企業評価が変わる可能性を狙うならスパイダープラス(4192)に注目します。

私は業界特化型ソフトウェアを、AIに奪われる業界ではなく、むしろ「AIによって顧客1社あたりから得られる利益を増やせる業界」として見ています。

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