医薬品業界の今後を予想|がん・認知症・希少疾患で伸びる有望株は?

目次

医薬品業界の今後はどうなる?

医薬品業界について、私は今後5~10年を「強気」と見ています。

ただし、日本国内だけで医薬品を販売する会社と、世界市場で新薬を販売できる会社では大きな差が出ると考えています。

日本では高齢化によって医療需要そのものは増えやすい一方、医療費を抑制するため薬価改定が続きます。

実際、2026年度にも薬価改定が実施されています。

つまり国内では、

患者数が増える

薬が売れる

薬価が下がる

という構造があります。

そのため私は、これからの日本の製薬会社では「国内市場で何%シェアを取るか」以上に「世界で売れる新薬を作れるか」を重視します。

医薬品は成功すれば世界市場を一気に取れる

製薬会社の最大の魅力は、新薬が成功した場合の利益規模です。

自動車なら売上を倍にするには、生産台数や工場も大きく増やす必要があります。

一方、新薬は研究開発に巨額の費用がかかるものの、一度承認されれば世界中へ販売できます。

特に、

がん
認知症
肥満
希少疾患
自己免疫疾患

など患者数が多い、または治療選択肢の少ない領域では、一つの薬が年間数千億円規模の売上になる可能性があります。

その代表が第一三共の「エンハーツ」です。

第一三共は2030年度に売上収益3兆円超、営業利益6,000億円超を目標とし、DXd ADCを中心とするがん領域だけで2.3兆円超の売上を目指しています。

日本企業でも、世界規模の医薬品企業へ変わる余地があるということです。

最大テーマはADC

現在の日本の医薬品株で私が最も注目している技術の一つがADCです。

ADCとはAntibody Drug Conjugate、抗体薬物複合体です。

簡単に言えば、

がん細胞を見つける抗体

がん細胞を攻撃する薬

を組み合わせた薬です。

正常な細胞への影響を抑えながら、がん細胞へ薬を届けることを狙います。

この分野で世界的に存在感を高めているのが第一三共です。

エンハーツに続いて、

Datroway
I-DXd

など複数のDXd ADCを展開しています。

2026~2030年度の5カ年計画では、5つの薬剤で20以上の新しい適応症を追加する計画です。

つまりエンハーツ1本だけの会社ではなく、ADCそのものを創薬プラットフォーム化しようとしています。

私はここをかなり高く評価しています。

中外製薬は「薬を売る」だけでなくロイヤルティでも稼ぐ

中外製薬も非常に特殊な会社です。

ロシュグループとの関係を持ちながら、自社創薬にも強みがあります。

例えば「ヘムライブラ」は中外製薬が創製した薬で、海外販売からロイヤルティ収入を得ています。

さらに2026年上期には、

NEMLUVIO
ヘムライブラ

などのロイヤルティ収入が増加しました。

そして興味深いのが、イーライリリーへ導出した経口GLP-1受容体作動薬「Foundayo(オルホルグリプロン)」です。

2026年第2四半期から中外製薬へのロイヤルティ収入計上が始まりました。

肥満症治療薬市場は世界的に非常に大きくなっています。

もし経口GLP-1市場が拡大すれば、中外製薬は自ら世界中で営業部隊を抱えなくてもロイヤルティを受け取れます。

この「自社創薬→世界企業へ導出→ロイヤルティ」というモデルは非常に利益率が高いと考えています。

認知症治療も巨大市場になる可能性

もう一つ重要なのが認知症です。

世界的な高齢化によってアルツハイマー病患者は増加しています。

日本企業ではエーザイがBiogenと共同開発した「レケンビ」を世界展開しています。

2027年3月期第1四半期のレケンビ売上は293億円で、前年同期比26.7%増。

レンビマ、レケンビ、デエビゴの主要3製品が揃って成長し、会社全体でも売上収益15.6%増、営業利益19.2%増となりました。

認知症薬は投与方法、診断体制、価格など課題もあります。

しかし患者数を考えれば、治療が本格普及した場合の市場規模は非常に大きいと考えています。

希少疾患では小型製薬会社にもチャンス

医薬品では企業規模が大きい会社だけが有利とは限りません。

患者数が少ない希少疾患では、大手企業が入りにくいニッチ市場を中型製薬会社が取れる場合があります。

その代表として今回注目するのが日本新薬です。

日本新薬は、

肺動脈性肺高血圧症
DMD(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)
てんかん
血液がん

などに強みがあります。

2027年3月期第1四半期は売上収益24.1%増、営業利益22.1%増でした。

企業規模が第一三共や中外製薬よりはるかに小さいため、新薬一つの成功による企業価値への影響も大きくなります。

これはキャピタルゲインを狙う場合に重要です。

医薬品株最大のリスクは「特許切れ」

一方、医薬品株には特有のリスクがあります。

それが特許です。

新薬は特許で守られている間は高い利益率を維持できます。

しかし特許が切れると、

後発医薬品
バイオシミラー

が参入します。

年間1,000億円売れていた薬が数年で大きく落ち込むこともあります。

これを「パテントクリフ」と呼びます。

したがって、

「現在の利益が大きい会社」

だけでは不十分です。

重要なのは、

今の主力薬が特許切れになる前に、次の主力薬を出せるか

です。

私は医薬品株ではPER以上にパイプラインを重視しています。

日本政府も創薬力強化へ動いている

日本では以前から、

新薬開発力低下
ドラッグラグ
ドラッグロス

が問題になっています。

そのため政府も創薬力強化を進めています。

2026年7月には政府と製薬会社、VC、大学などによる「創薬力向上のための官民協議会」が開催され、創薬エコシステムの強化が議論されました。

私はこの政策だけを理由に製薬株を買うつもりはありません。

ただ、研究開発・スタートアップ・海外企業との連携環境が改善することは、日本の製薬会社にとって長期的なプラスと考えています。

医薬品株を見るための投資判断軸

今回は、

「成長性」
「新薬・パイプライン」
「海外競争力」
「株価水準」
「財務・株主還元」

の5項目で評価します。

特に医薬品では、

現在の利益より5年後の利益

を見る必要があります。

ただし将来性が高くてもPER50倍、100倍まで買われていればキャピタルゲインは狙いにくくなります。

そのため新薬の将来性と現在の株価を分けて評価します。

有望銘柄① 第一三共(4568)

今回の医薬品株で第一候補にするのは第一三共です。

最大の理由は、

世界的な新薬企業へ変わる途中にあるのに、株価がかなり調整していること

です。

第一三共はエンハーツを中心とするDXd ADCを成長エンジンとしています。

2030年度には、

売上収益3兆円超
営業利益6,000億円超
EPS260円超

を目標としています。

現在の2027年3月期会社予想EPSは137.9円程度なので、中期計画が実現すればEPSは現在から大きく伸びる計算です。

2027年3月期第1四半期は、

売上収益 5,747億円 21.1%増
コア営業利益 1,073億円 6.2%増

となりました。

一方、通常の営業利益は851億円で12.0%減でした。

特殊要因・研究開発投資などの影響もあり、利益面は売上ほど強くありません。

会社は通期売上収益予想を2兆3,400億円へ修正し、営業利益3,200億円を見込んでいます。

投資判断軸

成長性:★★★★★
新薬・パイプライン:★★★★★
海外競争力:★★★★★
株価水準:★★★★★
財務・株主還元:★★★★★

総合投資判断:強気

2026年9月4日の終値は2,794円

予想PER20.26倍、PBR2.99倍、予想配当利回り3.58%です。

年間配当は100円を予定しています。

年初来高値は3,625円。

現在は高値から約23%下です。

数年前の第一三共は、将来期待に対して株価が高すぎると感じる場面もありました。

しかし現在はPER20倍程度まで低下しました。

その一方で、

エンハーツ
Datroway
I-DXd

などADCパイプラインは残っています。

私は、

「成長ストーリーが消えたから安くなった」のではなく、「利益成長への疑念で評価が下がった状態」

と見ています。

ここから新適応症の承認と利益成長が確認されれば、再評価余地は大きいと考え1位にします。

有望銘柄② 中外製薬(4519)

2位は中外製薬です。

企業としての完成度なら第一三共と並んでトップクラスです。

2026年上期は、

Core売上収益 6,633億円 14.7%増
Core営業利益 3,291億円 21.0%増
Core中間利益 2,384億円 23.2%増

となりました。

営業利益率はほぼ50%です。

これは一般的な製造業では考えにくい収益性です。

さらに、

ヘムライブラ
NEMLUVIO
エンスプリング
ポライビー
バビースモ

など既存製品に加え、新薬・導出品からロイヤルティ収入が入ります。

Foundayoのロイヤルティ収入開始も今後の注目材料です。

投資判断軸

成長性:★★★★★
新薬・パイプライン:★★★★★
海外競争力:★★★★★
株価水準:★★★★☆
財務・株主還元:★★★★★

総合投資判断:強気

2026年9月4日の終値は6,795円

PBRは5.51倍

会社がEPS予想を公表していないため通常の会社予想PERはありませんが、アナリスト12カ月予想EPSベースではPER約20.8倍です。

ROEは22.1%、自己資本比率82.1%と財務も非常に強いです。

そして注目したいのが株価です。

2026年2月の年初来高値は10,700円。

現在は6,795円なので、高値から約36%下落しています。

業績は上期営業利益21%増なのに、株価は3分の1以上調整しています。

私はここにかなり投資妙味を感じます。

PBR5倍台は高いですが、高ROE・高利益率企業なのでPBRだけでは判断できません。

現在の成長が続けば1位へ上げてもおかしくない銘柄です。

有望銘柄③ 日本新薬(4516)

3位は日本新薬です。

今回、現在の株価だけなら最も気になる銘柄です。

2027年3月期第1四半期は、

売上収益 491億円 24.1%増
営業利益 123億円 22.1%増
税引前利益 130億円 23.4%増
純利益 101億円 22.5%増

となりました。

薬価改定や後発品の影響があるにもかかわらず、

ウプトラビ
フィンテプラ
ジャイパーカ
アーリーダ

などが伸びています。

2027年3月期通期では、

売上収益2,000億円 17.1%増
営業利益380億円 7.1%増

を計画しています。

第1四半期ほどの利益成長率が年間を通じて続く計画ではない点には注意が必要です。

投資判断軸

成長性:★★★★☆
新薬・パイプライン:★★★★☆
海外競争力:★★★★☆
株価水準:★★★★★
財務・株主還元:★★★★★

総合投資判断:強気

2026年9月4日の終値は3,448円

予想PERはわずか7.66倍

PBR0.79倍

予想配当利回り3.60%です。

さらに年初来高値5,787円から約40%下落しています。

この数字だけを見ると非常に安いです。

ただし安いのには理由があります。

既存主力薬の特許切れや将来の売上減少を、新しいDMD治療薬や希少疾患薬で補えるかという不安があります。日本新薬自身もDMD領域で複数の開発品を進め、グローバル展開拡大を中期戦略に掲げています。

つまり日本新薬は、

「現在の利益はしっかり出ている。しかし市場は将来の利益減少をかなり心配している」

状態です。

ここで次世代パイプラインの承認・上市が進めば、PER7倍・PBR1倍割れから大幅な評価修正が起きる可能性があります。

私はこれを今回の割安反転候補として3位にします。

有望銘柄④ エーザイ(4523)

4位はエーザイです。

最大のテーマはアルツハイマー病治療薬レケンビです。

2027年3月期第1四半期は、

売上収益 2,343億円 15.6%増
営業利益 247億円 19.2%増
純利益 182億円 26.0%増

となりました。

レケンビ売上は293億円で26.7%増。

レンビマ、レケンビ、デエビゴが揃って成長しています。

さらに会社は2027年3月期通期で、

売上収益8,835億円 7.0%増
営業利益700億円 58.6%増
純利益523億円 35.6%増

を計画しています。

利益回復率はかなり高いです。

投資判断軸

成長性:★★★★★
新薬・パイプライン:★★★★★
海外競争力:★★★★★
株価水準:★★★☆☆
財務・株主還元:★★★★☆

総合投資判断:やや強気~強気

2026年9月4日の終値は4,694円

予想PER25.30倍、PBR1.46倍、予想配当利回り3.41%です。

年初来高値5,243円からは約10%下です。

PERは日本新薬や第一三共より高めです。

しかしPBRは1.46倍と製薬成長株としてはそれほど高くありません。

今後の最大ポイントは、やはりレケンビです。

レケンビが世界で普及し、診断・投与体制が整えば、エーザイの利益構造が変わる可能性があります。

一方、認知症治療は市場の立ち上がり速度を予測しにくいため、4位とします。

参考銘柄 大塚ホールディングス(4578)

大塚ホールディングスも非常に良い会社です。

2026年上期は、

売上収益 1兆3,324億円 12.8%増
営業利益 2,785億円 15.0%増
純利益 2,156億円 24.3%増

となりました。

さらに会社は通期予想を大幅に引き上げ、年間配当も140円から200円へ増額しました。

新薬でも、

IgA腎症治療薬VOYXACT
ADHD治療薬SIMTRIYO
がん領域

などが進んでいます。

VOYXACTはPhase3で2年間の腎機能データが良好だったと発表されています。

企業としては非常に強いです。

ただし2026年9月4日の終値は12,030円

予想PER17.86倍、PBR1.95倍。年初来高値12,795円にも比較的近い位置です。

今回の上位4社より「株価がすでにかなり評価されている」と判断し参考銘柄としました。

大きく調整すれば上位へ入れたい企業です。

医薬品業界の有望銘柄ランキング

1位 第一三共(4568)
エンハーツ+DXd ADC。2030年度売上3兆円超・EPS260円超を目指す一方、現在PER20倍・高値から約23%調整。

2位 中外製薬(4519)
ヘムライブラ+NEMLUVIO+経口GLP-1ロイヤルティ。上期Core営業利益21%増なのに高値から約36%下落。

3位 日本新薬(4516)
希少疾患+DMD。1Q営業利益22%増に対してPER7倍台・PBR0.79倍。パイプライン成功なら評価修正が大きい。

4位 エーザイ(4523)
レケンビ+レンビマ+デエビゴ。通期営業利益58.6%増予想。認知症市場拡大を狙う。

参考 大塚ホールディングス(4578)
精神・腎・がん+ニュートラシューティカルズ。業績は強いが、株価も年初来高値圏に近い。

今回、一番面白い比較は第一三共と日本新薬です。

第一三共は、

「世界的な成長企業を以前より安く買う」

銘柄です。

日本新薬は、

「市場が将来を悲観している会社の変化を買う」

銘柄です。

リスクは日本新薬の方が高いと思います。

しかしPER7倍台・PBR1倍割れなので、新薬パイプラインに一つ大きな成功が出た場合、株価の変化率では日本新薬が第一三共を上回る可能性もあります。

一方、中外製薬は非常に完成度が高いです。

ROE22%台、営業利益率約50%で、複数製品とロイヤルティ収入を持っています。

株価が2月高値から3割以上下落した現在は、以前よりかなり注目したい水準になっています。

まとめ

医薬品業界の将来性を5段階で評価するなら「5」です。

国内だけを見ると薬価改定という大きな逆風があります。

したがって国内販売中心の製薬会社については、私はそれほど強気ではありません。

一方、

ADC
認知症
肥満症
希少疾患
遺伝子・細胞治療
抗体医薬

などでは世界市場が大きく成長する可能性があります。

そして日本には、

第一三共のADC
中外製薬の抗体・創薬技術
エーザイの認知症
日本新薬の希少疾患

など、世界で戦える領域を持つ企業があります。

政府も2026年に創薬力向上の官民協議会を開くなど、研究開発環境の強化を進めています。

私はこれからの医薬品株で、

「国内売上が大きい」「昔から有名な製薬会社」

という理由では選びません。

重視するのは、

「世界で売れる新薬を持つ」「主力薬の次のパイプラインがある」「海外売上・ロイヤルティが伸びる」「特許切れを次の薬で補える」「研究開発費を払っても利益を伸ばせる」「将来成長に対して現在のPERが高すぎない」

という企業です。

現時点の本命は第一三共(4568)

高収益・高ROE企業の大幅調整を狙うなら中外製薬(4519)

低PER・低PBRからの評価修正を狙う攻めの候補なら日本新薬(4516)

認知症治療市場の拡大を狙うならエーザイ(4523)と考えています。

医薬品株では、決算の売上高以上に、「次の主力薬が何か」を追い続けることが最も重要だと思います。

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