電気・ガス業界の今後を予想|AI時代の電力需要はどこまで伸びる?有望株は?

目次

電気・ガス業界は今後どうなる?

電気・ガス業界というと、これまでは大きく成長する業界というより、景気に左右されにくい安定したインフラ産業というイメージが強かったと思います。

人口減少や省エネが進む日本では、電力や都市ガスの需要も長期的には減少していくと考えられてきました。

しかし、ここにきて特に電力業界を取り巻く環境が大きく変わり始めています。

AIデータセンター、半導体工場、EV、工場の電化などによって、大量の電力を必要とする分野が増えているためです。

私は、今後5〜10年を見ると、電気・ガス業界は比較的有望な業界だと考えています。

特に電力業界は、これまでの「需要が減っていく成熟産業」から、「増加する電力需要を支える成長インフラ産業」へ変化する可能性があります。

電力需要は減少から増加へ向かう可能性

これまで日本の電力需要は、人口減少や省エネによって長期的に減少すると考えられてきました。

ところが、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が公表している需要想定では、今後はデータセンターや半導体工場などの新増設による需要増加が大きな要因になります。

特に注目したいのがデータセンターです。

生成AIでは大量のGPUを24時間稼働させるため、従来型のデータセンター以上に大量の電力を必要とします。

さらに日本国内では、半導体工場への大型投資も続いています。

今後は、

AIの普及

データセンター増設

電力需要増加

発電能力の増強

送電網・変電所・蓄電池への投資

という流れが長期間続く可能性があります。

これまでAI関連株といえば半導体企業が中心でしたが、今後は電力会社も広い意味でのAIインフラ関連企業として注目される可能性があります。

AI時代は「電力を確保できる場所」が重要になる

AIデータセンターは、単に建物とサーバーを用意すれば設置できるものではありません。

大量かつ安定した電力を確保する必要があります。

そのため今後は、

「土地がある場所にデータセンターを建設する」

という考え方だけでなく、

「大量の電力を確保できる場所にデータセンターを建設する」

という考え方がさらに重要になるでしょう。

この変化は、地域電力会社を見るうえでも重要です。

半導体工場やデータセンターなど、大量の電力を使う施設が集まる地域では、人口が減少していても電力需要が増える可能性があります。

原子力発電の重要性が高まる

電力需要が増えるからといって、火力発電を大量に増やせばよいわけではありません。

日本は脱炭素化も同時に進める必要があります。

第7次エネルギー基本計画では、2040年度の電源構成について、

・再生可能エネルギー 4〜5割程度
・原子力 2割程度
・火力 3〜4割程度

という方向が示されています。

つまり今後の日本では、

再生可能エネルギー+原子力

の両方が重要になります。

特に原子力発電所を保有している電力会社では、原発を安定して稼働できるかどうかが収益力を大きく左右します。

原子力発電を活用できれば、LNGや石炭などの燃料購入を抑えられるため、発電コストを低下させられる可能性があります。

そのため今後は、同じ電力会社でも原子力を有効活用できる会社と、火力への依存度が高い会社で差が広がると考えています。

再生可能エネルギーも長期的な成長分野

再生可能エネルギーへの投資も続きます。

2040年度には、再生可能エネルギーを日本の発電量の4〜5割程度まで増やす方向が示されています。

今後は、

・太陽光発電
・洋上風力発電
・水力発電
・地熱発電
・大型蓄電池

などへの投資がさらに進むと考えられます。

ただし、再生可能エネルギーを増やすだけでは電力問題は解決しません。

発電した電気を必要な場所まで運ばなければならないからです。

送電網への投資も増えていく

今後の電力業界では、発電所と同じくらい重要になる可能性があるのが送配電網です。

例えば北海道や東北、九州などで大量の再生可能エネルギーを発電しても、その電力を需要地まで運べなければ活用できません。

また、大規模なAIデータセンターや半導体工場が新設されれば、その地域の変電所や送電設備そのものを増強する必要があります。

そのため今後は、

・送電線
・変電所
・地域間連系線
・大型蓄電池
・電力需給制御システム

などへの投資も増えていくでしょう。

電力需要増加の恩恵は電力会社だけではありません。

電線、変圧器、電力設備、蓄電池などの関連企業にも広がる可能性があります。

ガス業界は総合エネルギー企業へ

一方、ガス業界については、電力ほど大きな需要増加は期待しにくいと考えています。

人口減少、省エネ住宅、オール電化などを考えると、家庭向け都市ガスの使用量が大きく増える可能性は低いでしょう。

そのため大手ガス会社は、従来の都市ガス事業だけでなく、

・電力
・LNG
・海外エネルギー
・再生可能エネルギー
・水素
・e-メタン

などへ事業を広げています。

今後のガス会社では、国内でガスを販売するだけではなく、総合エネルギー企業へ転換できるかどうかが成長を左右すると考えています。

今後成長が期待できる分野

電気・ガス業界の中でも、今後特に伸びる可能性があるのは、AIデータセンター向け電力、半導体工場向け電力、原子力発電、再生可能エネルギー、送配電網、大型蓄電池などです。

中でも私は、AI・半導体による電力需要増加と原子力発電の組み合わせに注目しています。

電力需要が増えても、発電コストが高ければ利益は増えにくくなります。

逆に需要が増える地域で低コスト電源を保有している会社は、電力販売量と収益性の両方を改善できる可能性があります。

今後低迷が予想される分野

家庭向け都市ガスへの依存度が高い事業

人口減少、省エネ住宅、オール電化などを考えると、家庭向け都市ガスだけで大きく成長するのは難しいと考えています。

電力やLNG、海外事業、再生可能エネルギーなどへ収益源を広げられる企業との差が広がる可能性があります。

老朽火力発電への依存度が高い事業

LNGや石炭を使用する火力発電は、燃料価格と為替の影響を受けやすいという弱点があります。

さらに脱炭素化に対応するための設備投資も必要になります。

原子力、水力、再生可能エネルギーなど、燃料価格の影響を受けにくい電源を持つ企業の方が長期的には有利になるでしょう。

電力需要の伸びが期待しにくい地域

これからの電力会社を見る際は、人口だけを見ても十分ではありません。

重要なのは、

「大量の電力を使う産業がその地域に集まるか」

です。

データセンターや半導体工場、大型工場などの進出が少ない地域では、電力需要増加の恩恵を受けにくい可能性があります。

今後有望な銘柄

① 九州電力(9508)

電気・ガス業界で私が最も注目したいのが九州電力です。

九州では半導体関連投資が活発化しており、今後はAIデータセンターによる電力需要増加も期待できます。

2026年7月には、九州電力、薩摩川内市、鹿児島大学、ソニーネットワークコミュニケーションズが、AIデータセンター集積を見据えた地域共創連携協定を締結しました。

さらに九州電力には原子力発電という強みがあります。

半導体工場やデータセンターによって電力需要が増える中、原子力を活用して発電コストを抑えることができれば、収益拡大につながる可能性があります。

2026年9月4日の終値は2,158.5円で、予想PERは7.85倍、PBRは0.82倍です。株価は上昇しているものの、バリュエーションにはまだ割安感があります。

なお、九州電力は2026年9月29日に上場廃止となり、10月1日に完全親会社となるキューデンホールディングス(642A)が上場する予定です。

成長性:★★★★★
テーマ性:★★★★★
収益力:★★★★☆
割安度:★★★★★
株主還元:★★★☆☆

総合投資判断:★★★★★

半導体、AIデータセンター、原子力という今後の電力業界を代表するテーマが重なっています。

キャピタルゲインを狙うという点では、今回の候補の中で最も注目したい銘柄です。

② 関西電力(9503)

関西電力の最大の強みも原子力発電です。

原発を安定的に稼働できれば、LNGなどの燃料購入を抑えられるため、電力需要増加を利益成長につなげやすくなります。

関西圏は人口や産業が集中しているうえ、データセンター需要も期待できる地域です。

株主還元も改善しています。

関西電力は連結配当性向25〜35%を目安として、配当の維持または増配に努める方針を示しており、2026年度は1株80円の年間配当を予定しています。

2026年9月4日の終値は2,947円、予想PER10.59倍、PBR0.92倍です。

一方で9月3日には年初来高値3,053円を付けており、株価はかなり上昇しています。

成長性:★★★★★
テーマ性:★★★★★
収益力:★★★★★
割安度:★★★☆☆
株主還元:★★★★☆

総合投資判断:★★★★★

原子力を生かした収益力では非常に魅力があります。

ただし株価水準を考えると、現時点では九州電力の方が上昇余地を期待しやすいと考えています。

③ J-POWER(9513)

J-POWERは一般的な地域電力会社とは少し違います。

全国に発電設備を持ち、水力、火力、風力など複数の電源を保有しています。

特定地域の需要だけに依存しないため、日本全体で電力需要が増加することが追い風になります。

J-POWERは2026年度の稼働資産ROIC3.5%、経常利益900億円を目標とし、2030年代にはROE8%以上を目指しています。

また、2026年度は1株105円への増配を予定しています。

2026年9月4日の終値は4,071円、予想PER8.85倍、PBR0.50倍です。

特にPBR0.5倍という株価評価は低く、今後ROEや資本効率が改善すれば、業績成長とは別に低PBR修正による株価上昇も期待できます。

成長性:★★★★☆
テーマ性:★★★★☆
収益力:★★★★☆
割安度:★★★★★
株主還元:★★★★☆

総合投資判断:★★★★☆

急成長株というタイプではありませんが、電力需要増加と低PBR修正の両方を狙える点が魅力です。

④ 大阪ガス(9532)

ガス会社からは大阪ガスを選びます。

大阪ガスはすでに単純な都市ガス会社ではなく、LNG、電力、海外エネルギー、再生可能エネルギーなど幅広い事業を展開しています。

今後、国内の家庭向け都市ガス需要が伸びなくても、総合エネルギー企業として利益を拡大できる可能性があります。

2026年9月4日の終値は5,719円、予想PER15.07倍、PBR1.19倍、予想年間配当は130円です。

今回取り上げた電力3社と比較すると株価の割安感は小さいものの、事業の分散と安定性では評価できます。

成長性:★★★★☆
テーマ性:★★★★☆
収益力:★★★★☆
割安度:★★★☆☆
株主還元:★★★★☆

総合投資判断:★★★★☆

AIによる電力需要増加という点では電力会社ほど直接的な恩恵はありませんが、長期的に総合エネルギー企業として成長できる銘柄だと考えています。

まとめ

電気・ガス業界は、これまで典型的な成熟産業、ディフェンシブ業種と考えられてきました。

しかしAIデータセンターや半導体工場の増加によって、特に電力業界は大きな転換期を迎えています。

これまでの、

「人口減少=電力需要減少」

という考え方から、

「AI・半導体の拡大=電力需要増加」

という新しい流れが生まれています。

さらに原子力発電、再生可能エネルギー、送電網、大型蓄電池などへの投資も今後長期間続くでしょう。

一方、ガス業界については家庭向け都市ガスだけで大きく成長することは難しく、電力、LNG、海外事業、再生可能エネルギーなどへ事業を広げられる企業が有利になると考えています。

電気・ガス業界の将来性を5段階で評価するなら「4」です。

今後5〜10年という期間で考えると、特に電力業界は成熟産業から成長インフラ産業へ評価が変わる可能性があります。

今回取り上げた4銘柄を、今後の成長性と株価上昇余地を重視して順位付けするなら、1位 九州電力(9508)、2位 関西電力(9503)、3位 J-POWER(9513)、4位 大阪ガス(9532)と考えています。

本命は九州電力です。

九州で進む半導体関連投資、今後期待されるAIデータセンター需要、そして原子力発電という3つの材料が重なっています。現在の9508は2026年9月29日に上場廃止となるため、その後は10月1日に上場予定のキューデンホールディングス(642A)を見ていくことになります。

対抗は関西電力です。

原子力を活用できる強みが大きく、電力需要増加を利益につなげる力では非常に高く評価できます。ただし、株価が年初来高値圏まで上昇しているため、現在の株価水準では九州電力を上位としました。

J-POWERはPBR0.5倍という割安さが魅力で、資本効率改善による評価見直しまで考えると面白い存在です。

大阪ガスは爆発的な株価上昇を狙う銘柄というより、都市ガスから総合エネルギー企業へ変化することで中長期的な成長を狙える銘柄だと考えています。

電気・ガス業界は今後、単なる「安定配当の公益株」ではなく、AI・半導体・GX社会を支える成長インフラ産業として注目する価値が高まっていきそうです。

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