鉱業の今後を予想|資源高・エネルギー安全保障で再評価される?有望株は?

目次

鉱業は今後どうなる?

鉱業というと、原油や天然ガス、石灰石、金属鉱石などを地中から採掘する、昔ながらの資源産業というイメージがあります。

また世界的に脱炭素化が進めば、石油や天然ガスを扱う企業は長期的に衰退するようにも見えます。

しかし実際には、それほど単純ではありません。

AIデータセンターによる電力需要増加、地政学リスク、資源ナショナリズム、EV、再生可能エネルギー、送電網増強などによって、エネルギーと鉱物資源を安定的に確保する重要性は以前より高まっています。

私は、今後5〜10年を見ると、鉱業は「やや強気」で見ています。

特に、

天然ガス・LNG+銅・重要鉱物+エネルギー安全保障

という3つのテーマを持つ企業には注目したいと考えています。

脱炭素でも天然ガスはすぐになくならない

世界では太陽光、風力、蓄電池などへの投資が増えています。

しかし再生可能エネルギーだけで、24時間安定して電力を供給することは簡単ではありません。

特にAIデータセンターや半導体工場では、大量の電力を安定して確保する必要があります。

そのため今後も、

・天然ガス
・LNG
・原子力
・再生可能エネルギー
・蓄電池

などを組み合わせる必要があります。

石炭や石油と比べてCO2排出量が少ない天然ガスは、再生可能エネルギーへ移行する過程でも重要なエネルギーとして利用される可能性があります。

日本にとっては、LNGを安定して確保すること自体がエネルギー安全保障になります。

INPEXはLNGをさらに拡大

日本の鉱業を考えるうえで中心になるのがINPEXです。

主力であるオーストラリアのイクシスLNGに加えて、今後はインドネシアのアバディLNGやイクシスの増設を進めようとしています。

アバディLNGは2030年代初頭の生産開始、イクシスLNGについても2030年代前半の生産能力拡大を目指しています。

つまりINPEXは、

原油中心

原油+天然ガス

LNG+低炭素エネルギー

へ事業構造を変えようとしています。

AIによる世界的な電力需要増加が続けば、天然ガス需要も一定程度支えられる可能性があります。

エネルギー安全保障が鉱業の価値を高める

近年は、単純に「最も安い国から資源を買えばよい」という考え方が難しくなっています。

戦争、輸出規制、経済制裁、海上輸送の混乱などによって、エネルギー供給が突然不安定になる可能性があるためです。

そのため各国では、

資源をどれだけ安く買えるか

だけではなく、

どこから安定して確保できるか

が重要になっています。

日本企業が海外の油田、ガス田、鉱山に権益を持つこと自体が大きな価値になります。

鉱業は今後、単純な資源価格連動産業というより、経済安全保障産業としての意味が強まると考えています。

AI・EV・送電網で銅需要が増える

金属資源の中で特に注目したいのが銅です。

銅は電気を通しやすいため、

・送電線
・変圧器
・データセンター
・EV
・モーター
・再生可能エネルギー設備
・工場設備

など、電化が進むほど使用量が増えます。

AIデータセンターが増えれば、サーバーそのものだけでなく、それを支える発電設備や送電網も増強する必要があります。

さらにEVは従来のガソリン車より多くの銅を使います。

世界的な電化が続けば、銅は今後10年以上にわたり需要増加が期待できる重要資源の一つだと考えています。

銅鉱山は簡単には増やせない

銅需要が増えても、新しい銅鉱山をすぐに作ることはできません。

鉱山の場合、

鉱床発見

資源量調査

環境調査

政府許認可

鉱山開発

生産開始

まで非常に長い時間がかかります。

さらに鉱石品位の低下、水不足、環境規制、建設費上昇などもあります。

そのため需要が増えても供給がすぐに増えなければ、銅価格が高い状態が続く可能性があります。

この点では、すでに鉱山権益や開発案件を持っている企業が有利になります。

日鉄鉱業は銅を成長事業へ

日鉄鉱業は国内の石灰石事業だけでなく、チリで銅鉱山を運営しています。

現在のアタカマ銅鉱山に加えて、新しいアルケロス銅鉱山の開発を進めています。

長期的には銅量換算で年間5万トン以上の生産体制を目指しています。

さらに2026年には米国での銅鉱山開発案件へ参入するための現地法人も設立しました。

つまり同社は、

国内石灰石会社から総合資源会社へ

事業を広げようとしています。

世界的な銅需要増加が続けば、中長期的な成長材料になります。

ただし鉱山開発には遅延リスクがある

鉱山会社を見るうえで非常に重要なのが、開発スケジュールです。

鉱山は莫大な資金を投入しても、

・天候
・水不足
・環境問題
・設備トラブル
・許認可

などによって、生産開始が遅れることがあります。

実際、日鉄鉱業は2026年9月4日、アルケロス鉱山開発プロジェクトについて生産開始見込みの遅延を発表しました。

その日の株価も大きく下落しています。

長期的な銅需要は魅力ですが、鉱山開発企業ではプロジェクトの進捗確認が非常に重要になります。

重要鉱物は国家戦略になる

今後の鉱業では、原油や天然ガスだけでなく重要鉱物にも注目したいところです。

例えば、

・銅
・リチウム
・ニッケル
・コバルト
・レアアース
・グラファイト

などです。

これらは、

EV
蓄電池
半導体
AI
風力発電
防衛装備

などに使用されます。

問題は、生産国や精錬国が特定の国に集中していることです。

そのため米国、日本、欧州などでは、重要鉱物の調達先を分散させること自体が国家戦略になっています。

今後は鉱山会社の企業価値も、

「どれだけ資源を持っているか」

だけでなく、

「どの国に、どの資源を持っているか」

によって評価されるようになると考えています。

ヨウ素という珍しい国産資源

日本の鉱業で面白い存在がヨウ素です。

日本は資源が少ない国ですが、ヨウ素については世界有数の生産国です。

その多くが千葉県の地下に存在します。

ヨウ素は、

・医薬品
・造影剤
・消毒剤
・電子材料
・偏光フィルム

などに使われます。

K&Oエナジーグループは、世界のヨウ素生産量の約5%を生産しています。

つまり非常に珍しい、

世界へ輸出できる日本産資源

を持っている会社です。

医療需要がヨウ素を支える

ヨウ素で特に重要なのが医療分野です。

CT検査などで使用される造影剤にはヨウ素が使われます。

世界人口の増加や新興国の医療水準向上、高齢化などを考えると、医療向けヨウ素需要には長期的な成長余地があります。

K&Oエナジーグループは2030年に、ヨウ化カリウムを含むヨウ素販売量2,000トンを目標としています。

天然ガスだけでなく、希少な国産資源であるヨウ素を持つことが同社の大きな特徴です。

CCUSも鉱業会社の新しい事業になる

石油・天然ガス開発会社が持つ技術は、脱炭素時代にも利用できます。

例えばCCUSです。

CCUSでは、工場などから排出されたCO2を回収し、地下深くへ貯留します。

これには、

・地下構造調査
・掘削
・地下圧力管理
・地質解析

など、石油・天然ガス開発で培った技術をそのまま利用できます。

そのためINPEXや石油資源開発などでは、

石油・天然ガス

CCUS

低炭素エネルギー

という新しい事業展開を進めています。

脱炭素化が進むことで、逆に鉱業会社の地下開発技術が必要になるという点は面白いところです。

石油資源開発は2035年へ大きな投資を計画

石油資源開発は2026年に新しい長期経営計画を発表しました。

2026年度から2035年度までの10年間で、

1兆5,000億円

の成長投資を計画しています。

重点分野は海外の石油・天然ガス開発とCCUSです。

2035年度には、

・生産量18万boe/日
・当期純利益1,000億円
・ROE12%以上

を目標としています。

現在の利益規模から考えると、かなり大きな成長計画です。

計画通り資産を積み上げられれば、現在とは収益規模の違う企業になる可能性があります。

今後成長が期待できる分野

鉱業で今後特に成長を期待したいのは、

・LNG
・海外天然ガス開発
・銅鉱山
・重要鉱物
・ヨウ素
・CCUS
・地熱発電
・資源リサイクル

などです。

私は特に、

LNG+銅+重要鉱物

に注目しています。

AI時代には大量の電力が必要になり、その電力を供給する天然ガスと、送電網や設備に使う銅の両方が必要になるからです。

今後低迷が予想される分野

高コストの原油開発

原油価格は長期的に大きく変動します。

採掘コストの高い油田では、原油価格が下落すると急速に採算が悪化する可能性があります。

今後は低コストで長期間生産できる資産を持つ会社との差が大きくなるでしょう。

国内需要だけに依存する石灰石・骨材

石灰石や砕石は社会インフラに不可欠ですが、人口減少によって国内の住宅・一般建築需要が大幅に増えるとは考えにくい状況です。

国土強靱化やインフラ更新による需要はありますが、数量成長だけで高成長する分野ではないと考えています。

開発案件だけ多く生産実績が少ない企業

鉱山や油田は、開発計画があるだけでは利益になりません。

数千億円を投資しても、生産開始が遅れれば投資回収も遅れます。

そのため鉱業株を見る際には、「資源量が大きい」というニュースだけでなく、実際の生産開始時期や投資回収を見る必要があります。

資源価格だけに依存する企業

原油、天然ガス、銅などの価格が上昇すれば利益は増えます。

しかし資源価格が下落すると利益も急減します。

今後は低コスト資産、複数資源、地域分散、株主還元などを持つ企業の方が安定しやすいと考えています。

今後有望な銘柄

① INPEX(1605)

鉱業で本命として最も注目したいのがINPEXです。

最大の魅力は、日本企業では圧倒的な規模の海外資源権益を持っていることです。

主力のイクシスLNGに加えて、

・アバディLNG
・イクシスLNG拡張
・アブダビ油田・ガス田
・CCS
・新規ガス田開発

などを進めています。

今後の世界的な電力需要増加とエネルギー安全保障を考えると、LNGを大量に供給できる能力は大きな価値があります。

2026年8月には業績予想を上方修正し、2026年12月期の親会社帰属利益を5,100億円へ引き上げました。

年間配当予想も112円まで増額しています。

2026年9月4日の終値は3,780円。

予想PER8.62倍、PBR0.86倍、予想配当利回り2.96%です。

年初来高値4,955円からは一定の調整が入っています。

成長性:★★★★★
テーマ性:★★★★★
収益力:★★★★★
割安度:★★★★★
株主還元:★★★★★

総合投資判断:★★★★★

LNG、原油、CCS、エネルギー安全保障という複数の長期テーマを持ちながら、PER1桁、PBR1倍割れという株価水準です。

鉱業セクターの中では、成長性、割安感、株主還元を総合して最も評価したい銘柄です。

② 石油資源開発(1662)

2番目に注目したいのが石油資源開発です。

INPEXより企業規模はかなり小さいですが、その分今後の成長投資によって会社そのものが大きく変わる可能性があります。

2026年に策定した「JAPEX経営計画2026-2035」では、

2026〜2035年度の成長投資
1兆5,000億円

2035年度の当期純利益
1,000億円

2035年度ROE
12%以上

を目標としています。

2026〜2030年度は海外E&PとCCUSを中心に資産を構築し、2031年度以降に本格的な利益貢献を狙います。

2026年9月4日の終値は1,875円。

予想PER7.38倍、PBR0.81倍、予想配当利回り2.40%です。

年初来高値2,819円からは大きく調整しています。

成長性:★★★★★
テーマ性:★★★★★
収益力:★★★★☆
割安度:★★★★★
株主還元:★★★☆☆

総合投資判断:★★★★★

足元の業績には資源価格や販売量の影響がありますが、PER7倍台、PBR0.8倍前後という現在の評価で2035年までの成長計画が実現すれば、株価の見直し余地は大きいと考えています。

③ 日鉄鉱業(1515)

銅という長期テーマから注目したいのが日鉄鉱業です。

同社は国内で石灰石を生産する一方、チリで銅鉱山を開発・運営しています。

長期的には銅量換算で年間5万トン以上の生産を目指しています。

世界的に、

・EV
・再生可能エネルギー
・送電網
・AIデータセンター

が増えるほど銅需要が増えるため、中長期的な事業環境は魅力があります。

2026年9月4日の終値は3,360円。

予想PER21.86倍、PBR1.65倍、予想配当利回り1.85%です。

一方、同日にアルケロス銅鉱山の生産開始見込みの遅延を発表しており、株価も前日比5%超下落しました。

成長性:★★★★★
テーマ性:★★★★★
収益力:★★★★☆
割安度:★★☆☆☆
株主還元:★★★★☆

総合投資判断:★★★★☆

銅需要という長期テーマは非常に強い一方、現在は鉱山開発の進捗リスクと株価水準を確認したい局面です。

アルケロス鉱山のスケジュールが明確になり、実際の生産開始が見えてくれば評価を上げやすい銘柄だと考えています。

④ K&Oエナジーグループ(1663)

K&Oエナジーグループは今回の4社では少し特殊な企業です。

千葉県産の天然ガスを生産するだけでなく、ヨウ素という世界的にも希少な資源を持っています。

同社グループは世界のヨウ素生産量の約5%を生産しています。

ヨウ素は、

・医薬品
・造影剤
・消毒剤
・電子材料

など幅広い用途があります。

2030年にはヨウ化カリウムを含むヨウ素販売量2,000トンを目標としており、需要増加に合わせて生産能力を拡大していく方針です。

さらに国産天然ガスや地熱などにも取り組んでいます。

2026年9月4日の終値は1,977円。

予想PER15.53倍、PBR0.96倍、予想配当利回り2.23%です。

年初来高値2,845円からは約3割下落しています。

成長性:★★★★☆
テーマ性:★★★★★
収益力:★★★★☆
割安度:★★★★☆
株主還元:★★★☆☆

総合投資判断:★★★★☆

企業規模は小さいものの、「国産天然ガス+世界シェアを持つヨウ素」という他社にはない特徴があります。

原油価格だけに左右されにくい鉱業株として面白い存在だと考えています。

まとめ

鉱業は、以前なら「石油や石炭を掘る古い産業」というイメージを持たれやすい業界でした。

しかし今後は少し意味が変わってきます。

AI、EV、再生可能エネルギー、防衛、半導体などが成長するほど、

・電力
・天然ガス
・銅
・レアメタル
・重要鉱物

が必要になります。

さらに世界的な地政学リスクによって、

「資源を持つことそのものが国家の競争力」

という考え方も強くなっています。

一方、鉱業には資源価格変動、巨額の開発投資、鉱山開発の遅延など特有のリスクがあります。

そのため、鉱業の将来性を5段階で評価するなら「4」です。

今後5〜10年は比較的有望ですが、すべての鉱山会社が伸びるわけではありません。

特に、

低コスト資源+海外権益+成長資源+株主還元

を持つ企業を選ぶことが重要になると考えています。

今回取り上げた4銘柄を、今後の成長性と株価上昇余地を重視して順位付けするなら、1位 INPEX(1605)、2位 石油資源開発(1662)、3位 日鉄鉱業(1515)、4位 K&Oエナジーグループ(1663)と考えています。

本命はINPEXです。

イクシスLNGという大型収益源を持ちながら、アバディLNG、イクシス拡張、アブダビなど次の成長案件もあります。

さらに2026年12月期の利益予想を5,100億円へ上方修正し、年間配当も112円へ増額している一方、株価はPER8倍台、PBR1倍割れです。

成長性だけでなく、現在の株価評価まで含めると今回の4社で最もバランスが良いと考えています。

対抗は石油資源開発です。

2035年度に当期純利益1,000億円、ROE12%以上というかなり大きな成長目標を掲げています。

PER7倍台、PBR0.8倍前後という現在の株価から、海外E&PとCCUSへの1兆5,000億円の投資が成果を出せば、企業価値が大きく変わる可能性があります。

日鉄鉱業は銅という資源そのものの将来性では非常に魅力があります。ただしアルケロス鉱山の生産開始遅延が発表されたばかりなので、現時点では3位としました。プロジェクトが正常化すれば順位を上げてもよい銘柄です。

K&Oエナジーグループは、日本では珍しいヨウ素という世界的資源を持っています。企業規模は小さいものの、医療向け需要の成長と国産天然ガスという独自性があります。

鉱業は今後、「地下から石油や鉱石を掘る産業」から、「AI・電化社会に必要なエネルギーと戦略資源を確保する経済安全保障産業」へ重要性が高まっていくと考えています。

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