三菱電機(6503)が2026年7月31日に発表した2027年3月期第1四半期決算を分析します。
売上高は1兆4971億900万円で前年同期比14.0%増、営業利益1395億100万円で24.6%増、調整後営業利益1443億1800万円で53.8%増、純利益1098億1700万円で20.8%増となりました。
特に強かったのがインダストリー・モビリティです。
FAシステム、自動車機器の両方が大幅増益となり、セグメント全体の調整後営業利益は前年同期の約2.3倍となりました。
セミコンダクター・デバイスも15%増収、調整後営業利益82%増と高成長です。
第1四半期の好調を受け、会社は通期売上高を6兆1700億円から6兆2700億円、調整後営業利益を5900億円から6200億円へ上方修正しました。
私は今回を、FA・自動車・半導体・空調など幅広い事業で収益性が改善し、通期上方修正までつながった非常に強い決算と評価します。
今回の決算を5段階で評価
| 評価項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| 売上高 | ★★★★★ | 1兆4971.09億円、14.0%増 |
| 営業利益 | ★★★★★ | 1395.01億円、24.6%増 |
| 調整後営業利益 | ★★★★★ | 1443.18億円、53.8%増 |
| 調整後営業利益率 | ★★★★★ | 約7.1%→9.6%へ改善 |
| 純利益 | ★★★★★ | 1098.17億円、20.8%増 |
| インフラ | ★★★★☆ | 12%増収、18%増益 |
| インダストリー・モビリティ | ★★★★★ | 18%増収、調整後利益約2.3倍 |
| ライフ | ★★★★★ | 11%増収、32%増益 |
| デジタルイノベーション | ★★☆☆☆ | 8%増収、調整後利益約31%減 |
| セミコンダクター・デバイス | ★★★★★ | 15%増収、82%増益 |
| 受注 | ★★★★★ | FA42%増、半導体53%増、エネルギー80%増 |
| 通期予想 | ★★★★★ | 調整後営業利益5900億円→6200億円へ上方修正 |
| CF | ★★★★★ | 営業CF3886.71億円、FCF3015.12億円 |
| 財務 | ★★★★★ | 親会社株主持分比率60.9%→63.1% |
| 株主還元 | ★★★★☆ | 年55円→60円へ増配予定 |
| キャピタルゲイン期待 | ★★★★★ | 利益率改善+複数事業の高成長を評価 |
売買判断
保有 ★★★★★
追加買い ★★★★☆
売却 ★☆☆☆☆
私は三菱電機を保有継続します。
今回特に評価するのは売上14%増よりも、調整後営業利益が53.8%増えたことです。
FA、自動車、半導体、空調など複数事業で利益率が改善しており、特定の1事業だけに依存した増益ではありません。
さらに通期予想も上方修正しました。
追加買いも前向きですが、第1四半期がかなり強いため、決算後の急騰を追うより株価調整局面で増やしたいです。
調整後営業利益は53.8%増
三菱電機は今期から、セグメントを見る際に「調整後営業利益」を重視しています。
調整後営業利益とは、営業利益から事業・資産売却損益、減損損失などの一時的な「その他の損益」を除いたものです。
第1四半期は、
前年 938億5100万円
今回 1443億1800万円
となりました。
増加額は約505億円、53.8%増です。
調整後営業利益率も、
約7.1% → 約9.6%
まで改善しています。
売上高14%増に対して調整後営業利益54%増ですので、今回の決算は利益率改善を伴ったかなり強い増収増益です。
ただし減価償却方法変更で約90億円の利益押し上げ
今回の利益を見るうえで、一つ重要な注意点があります。
三菱電機は今期から、有形固定資産の減価償却方法を主に定率法から定額法へ変更しました。
これによって第1四半期は、
売上原価 66億7000万円減少
販管費 23億8000万円減少
となり、営業利益と税引前利益がそれぞれ90億5000万円押し上げられています。
したがって営業利益24.6%増、調整後営業利益53.8%増には会計変更の効果も含まれています。
ただし私の計算では、この90億5000万円を除いても調整後営業利益は約1353億円となり、前年同期比で約44%増です。
会計変更だけで良く見えている決算ではありません。
本業の収益改善自体がかなり強いです。
インダストリー・モビリティの利益が約2.3倍
今回最大の利益成長源がインダストリー・モビリティです。
売上高は、
3836億円 → 4509億円
となり約17.5%増。
調整後営業利益は、
249億円 → 571億円
となり約129%増、約2.3倍です。
調整後営業利益率も、
約6.5% → 約12.7%
まで上昇しました。
売上規模が大きい事業でこれだけ利益率が上がったことは非常に大きいです。
FAシステムは利益約2.3倍
FAシステムは、
売上高
1800億円 → 2342億円
調整後営業利益
162億円 → 374億円
となりました。
売上は約30%増、利益は約131%増です。
利益率も、
約9.0% → 約16.0%
まで改善しています。
さらに受注高も、
2026億円 → 2870億円
となり、前年同期比42%増です。
売上だけでなく先行指標となる受注も強いため、FAについては第2四半期以降にも期待できます。
自動車機器も利益約2.3倍
自動車機器も非常に強いです。
売上高は2035億円から2167億円へ約6.5%増。
調整後営業利益は、
86億円 → 196億円
となり約128%増です。
利益率は、
約4.2% → 約9.0%
まで改善しました。
売上成長率自体はそれほど高くありません。
それでも利益が倍以上になっているため、価格改善やコスト削減、製品構成改善などによる収益力向上が進んでいると見ます。
半導体事業は82%増益
セミコンダクター・デバイスも好調です。
売上高は、
684億円 → 788億円
となり約15%増。
調整後営業利益は、
89億円 → 162億円
となり約82%増です。
利益率は、
約13.0% → 約20.6%
まで上昇しました。
さらに受注高は、
540億円 → 826億円
となり53%増です。
三菱電機はパワー半導体を重要な成長事業として持っています。
第1四半期の数字を見る限り、売上・利益・受注の3つが揃って強い状態です。
ライフ事業は32%増益
ライフ事業は売上6372億円で11%増、調整後営業利益608億円で32%増となりました。
中でも空調・家電が好調です。
空調・家電は、
売上高
4184億円 → 4705億円
調整後営業利益
338億円 → 471億円
となりました。
売上約12%増に対して利益は約39%増です。
利益率も約8.1%から10.0%へ改善しています。
ビルシステムも8%増収、12%増益となりました。
ライフ事業は全社最大規模のセグメントですので、ここで利益率が改善していることも全社利益に大きく効いています。
インフラは防衛・エネルギーが好調
インフラ事業は売上2985億円で12%増、調整後営業利益224億円で18%増です。
中身を見るとかなり差があります。
社会システムは売上3%減、利益68%減となりました。
一方、エネルギーシステムは13%増収、64%増益です。
防衛・宇宙システムは、
売上高
620億円 → 848億円
調整後営業利益
4億円 → 86億円
まで拡大しました。
前年の利益水準が極めて低かったため増益率そのものにはあまり意味がありませんが、利益率が大きく改善しています。
防衛・宇宙は売上成長という意味でも今後注目したい分野です。
インフラ受注は31%増
インフラ全体の受注高は、
3778億円 → 4961億円
となり31%増です。
内訳は、
社会システム 37%増
エネルギーシステム 80%増
防衛・宇宙システム 10%減
です。
防衛・宇宙は前年の受注水準が高かった反動がありますが、エネルギーシステムの80%増はかなり強いです。
電力・社会インフラ関連も今後の業績を支える可能性があります。
デジタルイノベーションだけは弱い
一方、デジタルイノベーション事業は少し弱いです。
売上高は315億円から341億円へ8%増えました。
しかし調整後営業利益は、
12億円 → 8億円
となり約31%減少しています。
受注高は23%増なので将来売上には期待できますが、現時点では利益率が低いです。
三菱電機は「循環型 デジタル・エンジニアリング」やSerendieを今後の事業モデル変革の中心に据えています。
そのため私は、デジタルイノベーションが売上成長だけでなく利益成長へ転換できるかを今後確認します。
海外売上比率56.8%へ上昇
地域別では海外売上も伸びています。
海外売上高は、
7183億円 → 8506億円
となりました。
海外売上比率は、
54.7% → 56.8%
へ上昇しています。
地域別では、
日本 約9%増
北米 約8%増
アジア 約26%増
欧州 約19%増
です。
特にアジアが強く、中国向け売上も前年同期比で約34%増えています。
国内だけでなく海外でも成長している点は評価できます。
円安で売上を約850億円押し上げ
今回の売上高14%増には円安も寄与しています。
第1四半期の平均為替レートは、
米ドル 144円 → 161円
ユーロ 165円 → 186円
人民元 19.9円 → 23.6円
となりました。
会社資料では、為替変動による連結売上高への影響額を約850億円のプラスとしています。
内訳は、
米ドル 約260億円増
ユーロ 約250億円増
人民元 約190億円増
などです。
そのため売上14%増のすべてを実力成長とは見ません。
ただし利益率改善や受注増加も同時に起きているため、今回の好決算を円安だけで説明することもできません。
通期調整後営業利益を6200億円へ上方修正
会社は通期業績予想を上方修正しました。
売上高は、
6兆1700億円 → 6兆2700億円
調整後営業利益は、
5900億円 → 6200億円
税引前利益は、
6500億円 → 6700億円
純利益は、
4800億円 → 4950億円
へ引き上げました。
通期では、
売上高 6.4%増
調整後営業利益 23.7%増
税引前利益 27.4%増
純利益 21.4%増
を見込みます。
第1四半期終了時点で上方修正したことはかなり強い材料です。
通期調整後営業利益への進捗23.3%
上方修正後の通期予想に対する進捗率は、
売上高 約23.9%
調整後営業利益 約23.3%
税引前利益 約23.4%
純利益 約22.2%
です。
25%を少し下回っています。
ただし三菱電機は四半期ごとの売上・利益に季節性がありますので、第1四半期だけの進捗率を単純に4倍する必要はありません。
会社自身が第1四半期終了時点で通期予想を上方修正していますので、現時点では計画に対して順調と判断します。
営業CFは3887億円
キャッシュ・フローも非常に強いです。
営業活動によるCFは、
前年 1935億3900万円
今回 3886億7100万円
となり、約1951億円増加しました。
投資CFは871億5900万円のマイナスです。
その結果、フリーCFは、
3015億1200万円のプラス
となりました。
前年の1740億8900万円から約1274億円増えています。
第1四半期だけで3000億円を超えるフリーCFを生み出していることは高く評価できます。
現金は9291億円
現金及び現金同等物は、
7316億900万円 → 9291億4800万円
まで増加しました。
一方、社債・借入金・リース負債残高は3379億8300万円です。
現金の方が大きく上回っています。
負債総額も前期末から約1980億円減少しました。
親会社株主持分比率は、
60.9% → 63.1%
へ改善しています。
財務は非常に強い状態です。
棚卸資産は増加
一方、棚卸資産は、
1兆2621億3100万円 → 1兆3244億5000万円
へ約623億円増加しました。
売上が14%増えている中での増加ですので、現時点で過剰在庫とまでは判断しません。
ただし景気敏感度の高いFAや半導体も含む会社です。
今後、需要が急減した場合には在庫調整が利益へ影響する可能性があるため、次回も確認します。
研究開発費は568億円
第1四半期の研究開発費は568億円となりました。
前年556億円から約2%増です。
通期では2500億円を計画しています。
売上高比では3.8%です。
現在の利益成長を取りながら、FA、半導体、デジタル、エネルギーなど次の成長分野への開発投資も継続しています。
年間配当60円へ増配
2027年3月期の年間配当予想は60円です。
前期55円から5円増、約9%の増配です。
中間30円、期末30円を予定しています。
通期純利益も21.4%増を計画しており、利益成長に合わせて株主還元も強化しています。
大幅増配というほどではありませんが、増益・増配が同時に進んでいることは評価できます。
私ならどう売買するか
私は現在の保有分を維持します。
今回評価しているのは、
売上高14.0%増
調整後営業利益53.8%増
調整後営業利益率約7.1%→9.6%
インダストリー・モビリティ利益約2.3倍
FA利益約2.3倍・受注42%増
自動車機器利益約2.3倍
半導体利益82%増・受注53%増
ライフ事業32%増益
通期調整後営業利益5900億円→6200億円
FCF3015億円
です。
一方で、
減価償却方法変更による約90億円の利益押し上げ
デジタルイノベーション減益
円安による約850億円の売上押し上げ
は冷静に見ます。
それでも会計変更の効果を除いても本業利益は大幅に伸びています。
そのため私は強気で保有します。
今回の私の結論
今回の三菱電機の第1四半期決算は、非常に強い好決算です。
売上高14.0%増、営業利益24.6%増、調整後営業利益53.8%増となりました。
特にFA、自動車機器、セミコンダクター・デバイス、空調・家電の利益成長が強く、インダストリー・モビリティ全体では調整後営業利益が約2.3倍となっています。
受注についてもFA42%増、半導体53%増、エネルギーシステム80%増と強いです。
一方、今期から減価償却方法を変更したことで営業利益が90億5000万円押し上げられている点と、円安によって売上が約850億円押し上げられている点は考慮する必要があります。
それを差し引いても利益成長は十分に強く、会社は通期調整後営業利益を5900億円から6200億円へ上方修正しました。
さらにフリーCFは3015億円、親会社株主持分比率も63.1%へ改善しています。
そのため今回の総合評価は★★★★★とします。
私は保有を継続し、株価調整局面では追加買いを検討します。
キャピタルゲインという視点では、
FA・自動車・半導体・空調の利益率改善を継続し、会計変更や円安を除いても調整後営業利益を二桁成長させ、利益率10%台を定着させられるか。
ここが次の焦点です。
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