スーパー業界の今後はどうなる?
スーパー業界について、私は今後3~5年を「やや強気」と見ています。
ただし、AIや防衛、データセンターのように市場そのものが大きく拡大する業界ではありません。
日本では人口減少が続くため、長期的に食品を購入する人数そのものは減少します。
さらにスーパー業界では、
人件費上昇
電気代上昇
物流費上昇
仕入価格上昇
というコスト増加も続いています。
実際、2026年6月のスーパー既存店売上高は前年同月比0.3%減となり、40カ月ぶりに前年割れしました。7月も既存店売上高は前年同月比100.0%と横ばいでした。
これまで食品値上げによる客単価上昇でスーパー各社の売上高は比較的簡単に増えていました。
しかし私は、2026年以降はその局面が変わってきたと考えています。
これからは、
「値上げで売上を増やすスーパー」から「客数と利益を増やせるスーパー」
への選別が始まります。
スーパー市場が伸びなくても勝ち組企業は伸びる
スーパー株を考えるうえで重要なのは、
「日本の食品スーパー市場が伸びるか」
と、
「個別企業の売上高が伸びるか」
は別だということです。
人口減少によって市場全体が縮小しても、弱い地方スーパーが撤退・売却されれば、その売上高を強いチェーンが取り込めます。
私は今後10年間のスーパー業界では、
市場規模は横ばい~縮小する一方、上位スーパーの売上高は増える
という現象が起こる可能性が高いと考えています。
すでにその動きは始まっています。
ヤオコーを中心とするブルーゾーンホールディングスはM&Aによってグループを拡大。
そしてトライアルホールディングスは西友を買収し、一気に売上高1兆円を超える小売グループになりました。
今後のスーパー株では、既存店売上高だけでなく業界再編の買い手になれる会社かどうかも重要になります。
PBがスーパーの利益率を左右する
スーパーで今後さらに重要になるのがPB、プライベートブランドです。
ナショナルブランド商品だけなら、同じ商品を他店でも購入できます。
そのため価格競争になりやすくなります。
しかしPBなら、
商品企画
原材料
容量
価格
を自社で設計できます。
利益率を確保しながら、「この商品を買いたいからこのスーパーへ行く」という来店理由も作れます。
ブルーゾーンHDでは2026年3月期時点でPB商品を1,377SKU展開しています。ヤオコーは37期連続増収増益を達成し、グループの売上高経常利益率も4.6%と業界トップクラスです。
スーパー株を見るうえでは、単純な店舗数以上に「そこでしか買えない商品」をどれだけ持っているかを見る必要があります。
惣菜はスーパー最大の武器になる
PBと並んで重要なのが惣菜です。
食品メーカーが製造する飲料や菓子なら、どのスーパーでも同じ商品を並べられます。
しかし、
弁当
寿司
揚げ物
サラダ
ベーカリー
店内調理商品
などはスーパーごとの差が大きくなります。
しかも共働き、単身世帯、高齢者世帯が増えるほど「材料を買って料理する」需要より「すぐ食べられる」需要が増えます。
2025年のスーパー年間統計でも惣菜売上高は前年比5.0%増、既存店でも3.5%増と食品カテゴリーの中で比較的強い伸びを示しました。
私は今後、
生鮮+惣菜+PB
を強く持つスーパーほど、単純な安売り競争から抜け出しやすいと考えています。
スーパー業界最大のテーマはDX・省人化
一方、スーパーの利益を圧迫する最大の問題が人件費です。
食品スーパーは営業利益率が数%程度しかない企業が多いため、人件費が上昇すると利益への影響が非常に大きくなります。
そこで重要になるのが、
セルフレジ
AI発注
電子棚札
自動値引き
物流自動化
加工センター
AIカメラ
などです。
このテーマでスーパー業界の中でも特殊な存在がトライアルホールディングスです。
トライアルは小売企業でありながら、Skip Cartなど店舗DXを自社グループで開発しています。
2026年6月期時点でSkip Cart導入店舗数は258店舗まで増えています。
つまりトライアルは、
「スーパーを運営する会社」+「スーパーを効率化するテクノロジー会社」
という側面を持っています。
西友にこの仕組みを展開できれば、今回の買収の意味は単なる店舗数増加ではなくなります。
西友買収でトライアルがスーパー再編の中心へ
2025年7月、トライアルは西友を完全子会社化しました。
これはスーパー業界にとって非常に大きな出来事です。
西友を取り込んだことで、九州を中心としていたトライアルに首都圏・中部・関西の店舗網が加わりました。
統合後は「既存店強化」「出店」「収益性改善」「リテールメディア」を中心にPMIを進め、EC連携も開始しています。会社は2026年7月時点で、これらの施策が順調に進捗していると説明しています。
私はここが今後のスーパー業界で最も注目すべき企業戦略の一つだと考えています。
重要なのは、
「トライアルが西友を買ったこと」ではありません。
本当の投資ポイントは、
「トライアル方式を西友へ導入して、西友の利益率をどこまで上げられるか」
です。
これが成功すれば、トライアルの利益成長は数年間続く可能性があります。
スーパー株を見るための投資判断軸
今回はスーパー株を「成長性」「PB・惣菜・商品力」「店舗・物流・DX効率」「株価水準」「株主還元」の5項目で評価します。
特に今回はキャピタルゲインを重視するため、企業として成長力が高くてもPERが極端に高い銘柄は順位を下げます。
逆に利益成長が続いているにもかかわらずPER10倍前後、PBR1倍前後の銘柄は高く評価します。
有望銘柄① バローホールディングス(9956)
今回のスーパー関連株で1位にするのはバローホールディングスです。
中部地方を中心に食品スーパー「バロー」を展開しています。
さらに、
ドラッグストア
ホームセンター
スポーツクラブ
なども持つため、地域住民の生活需要を幅広く取り込めます。
2027年3月期第1四半期は営業収益2,434億円で前年同期比9.9%増、営業利益73億98百万円で5.0%増、経常利益78億38百万円で8.6%増となりました。純利益は64.3%増の63億65百万円です。
前期2026年3月期も営業収益8.2%増、営業利益19.0%増、純利益20.7%増と、すでに利益成長が続いています。
投資判断軸
成長性:★★★★☆
PB・惣菜・商品力:★★★★☆
店舗・物流・DX効率:★★★★★
株価水準:★★★★★
株主還元:★★★★☆
総合投資判断:強気
2026年9月4日の終値は3,260円。
予想PER約10.4倍、PBR約0.91倍、予想配当利回り約2.45%、年間配当予想80円です。
私が今回1位にする最大の理由は、このバリュエーションです。
増収増益を続けているにもかかわらずPBR1倍を下回っています。
トライアルほど派手な成長ストーリーはありません。
しかし投資では、
「一番成長する会社」より「成長に対して株価が安い会社」
の方が大きなキャピタルゲインにつながることがあります。
現在のスーパー株では最もリスクと上昇余地のバランスが良いと考えています。
有望銘柄② ブルーゾーンホールディングス(417A)
2位はブルーゾーンホールディングスです。
旧ヤオコーグループです。
2025年10月に持株会社体制へ移行し、現在はヤオコーのほか、エイヴイ、せんどう、フーコット、文化堂、クックマートなどをグループ化しています。
2026年3月末時点でグループ店舗数は276店舗。
長期的には500店舗・売上高1兆円を視野に入れています。
何より評価したいのがヤオコーの実績です。
37期連続増収増益。
スーパー業界ではかなり異例です。
2027年3月期第1四半期は営業収益2,230億79百万円、営業利益116億35百万円、経常利益113億75百万円、純利益77億34百万円となりました。通期営業収益は9,030億円を見込んでいます。
投資判断軸
成長性:★★★★★
PB・惣菜・商品力:★★★★★
店舗・物流・DX効率:★★★★★
株価水準:★★★☆☆
株主還元:★★★★☆
総合投資判断:強気
2026年9月4日の終値は1,906.5円。
予想PER16.24倍、PBR1.90倍です。
バローより割安感はありません。
しかし37期連続増収増益という実績とM&Aによる成長余地を考えると、PER16倍程度は極端に高いとは考えていません。
PBは1,377SKUあり、生鮮・惣菜の商品力にも強みがあります。
さらに株主優待もあります。
企業そのものの質なら今回1位です。
長期的にスーパー業界の勝ち組へ投資するならブルーゾーンHD、現在の割安度まで考えるならバローHDという評価です。
有望銘柄③ トライアルホールディングス(141A)
3位はトライアルホールディングスです。
今回の改訂で最も重要な追加銘柄です。
成長性だけなら今回1位でもおかしくありません。
2026年6月期は西友の連結によって売上高が1兆3,471億円へ拡大し、前年同期比67.6%増となりました。
営業利益も303億71百万円で43.9%増です。
さらに2027年6月期会社予想は、
売上高1兆4,582億円
営業利益390億円
経常利益286億円
純利益107億円
です。
営業利益28.4%増、経常利益41.7%増、純利益は203.8%増を見込みます。
既存店も強いです。
2026年7月のトライアル既存店は、
売上高104.0%
客数102.0%
客単価101.9%
となっています。
ここはかなり評価できます。
食品価格上昇で客単価だけが増えているスーパーが多い中、客数も2%増えているからです。
トライアルの本当の成長材料はリテールAI
私はトライアルを普通のディスカウントスーパーとして見ていません。
最大の強みは、
Skip Cart
AIカメラ
スマートストア
リテールメディア
購買データ
などを店舗運営へ組み込んでいることです。
トライアル単体だけなら、これらの投資効果には限界がありました。
しかし西友という全国規模の店舗網を取得したことで、DX投資を展開できる母数が一気に増えました。
もし西友の店舗へトライアル型の仕入れ、物流、価格設定、DXを導入し、営業利益率を改善できれば、売上高以上に利益が伸びる可能性があります。
投資判断軸
成長性:★★★★★
PB・惣菜・商品力:★★★★☆
店舗・物流・DX効率:★★★★★
株価水準:★☆☆☆☆
株主還元:★☆☆☆☆
総合投資判断:やや強気
ここで最大の問題が株価です。
2026年9月4日の終値は4,155円。
予想PER47.68倍、PBR3.90倍です。
スーパー株としてはかなり高い評価です。
バローはPER約10倍。
ブルーゾーンHDは約16倍。
ハローズも約10倍。
それに対してトライアルは約48倍です。
つまり市場はすでに、
「西友統合が成功して、今後利益が大きく伸びる」
ことをかなり織り込んでいます。
さらに西友買収によって財務構造も大きく変化しました。
2026年6月期末にはのれん約2,920億円、短期借入金3,674億円を計上し、自己資本比率は前年の42.0%から**16.2%**まで低下しています。
このため私はトライアルについて、
企業成長力:★★★★★
現在の投資妙味:★★★☆☆
と分けて考えています。
株価が大きく調整するか、西友の利益率改善によってEPSが想定以上に伸びれば、一気に1位候補になる銘柄です。
有望銘柄④ ハローズ(2742)
4位はハローズです。
岡山県を中心に中国・四国地方で食品スーパーを展開しています。
特徴は地域ドミナント戦略と24時間営業です。
地方スーパーですが、継続的に店舗を増やしていることを評価しています。
2027年2月期第1四半期は営業収益578億76百万円で前年同期比7.2%増。
一方、営業利益は27億28百万円で10.5%減となりました。
人件費や新店関連コストが利益を圧迫しています。
ただし売上成長自体は続いています。
2026年7月は全店売上高が前年同月比106.1%、客数104.8%。
既存店も売上高101.4%で、客数は100.0%を維持しました。
投資判断軸
成長性:★★★★★
PB・惣菜・商品力:★★★★☆
店舗・物流・DX効率:★★★★☆
株価水準:★★★★★
株主還元:★★★★☆
総合投資判断:やや強気~強気
2026年9月4日の終値は4,060円。
予想PER約10倍、PBR約1.10倍です。
第1四半期が減益なので、現在は業績だけを見れば積極的に買い上がる局面ではありません。
しかし会社は2027年2月期通期で営業収益2,456億円、営業利益125億90百万円を計画しています。
新店投資による費用増加が一巡し、営業利益が再び増益へ戻れば、PER10倍前後からの再評価余地があります。
その意味で「利益回復待ちの割安成長株」として4位にします。
参考銘柄 ライフコーポレーション(8194)
前回4位だったライフコーポレーションは、今回トライアルを入れるため参考銘柄へ移します。
企業評価を下げたわけではありません。
首都圏・近畿圏という人口集積地域に強く、生鮮・惣菜・PBの商品力にも強みがあります。
2026年9月4日の終値は2,782円、PER約12.8倍、PBR約1.6倍、実績配当利回り約2.35%です。
一方、2027年2月期第1四半期では出店や人件費負担などから利益が減少しています。
安定成長・増配銘柄としては魅力がありますが、キャピタルゲインの値幅ではトライアルやハローズを優先します。
スーパー業界の有望銘柄ランキング
1位 バローホールディングス(9956)
増収増益+PER10倍台+PBR1倍割れ。成長に対して株価評価が低く、現在の投資妙味を最も評価。
2位 ブルーゾーンホールディングス(417A)
旧ヤオコー。37期連続増収増益+PB+惣菜+M&A。企業としての完成度は今回トップ。
3位 トライアルホールディングス(141A)
西友+リテールAI+全国展開。成長力は1位候補だが、PER約48倍と財務負担を考慮。
4位 ハローズ(2742)
継続出店+地方ドミナント。足元減益だがPER10倍前後で利益回復時の値幅余地。
参考 ライフコーポレーション(8194)
首都圏・近畿+惣菜+安定成長。優良企業だが、今回は値幅期待で上位4社を優先。
今回一番判断が難しいのはトライアルです。
企業の成長率だけでランキングすれば、
1位トライアル
でもよいと思います。
売上高1兆円超の企業が営業利益28%増を計画し、西友の収益改善余地まであります。
しかし株価はPER約48倍です。
仮に西友統合が想定どおり進んでも「それは期待どおり」と判断される可能性があります。
逆に西友の利益率が予想以上に改善し、
営業利益390億円
↓
500億円
↓
600億円
という方向へ進めば、現在の株価でも大きな上昇余地が生まれます。
したがってトライアルは、今回のスーパー株の中で最も上にも下にも振れやすい銘柄と見ています。
一方、バローは逆です。
成長率はトライアルより低いですが、PER10倍、PBR1倍割れなので市場から期待されていません。
私はキャピタルゲインでは、
「期待されている高成長株」より「利益を出しているのに期待されていない会社」
を買う方が面白い局面があると考えています。
そのため現時点ではバローを1位にしました。
まとめ
スーパー業界について、将来性を5段階で評価するなら「4」です。
市場そのものは高成長ではありません。
実際、2026年6月には既存店売上高が40カ月ぶりに前年割れし、7月も横ばいでした。
しかし私は、この低成長こそ業界再編を加速させると考えています。
今後は、
PB・惣菜が強い
大量仕入れができる
物流を効率化できる
DXで店舗人員を減らせる
M&Aで店舗を増やせる
大手チェーンへ売上が集約される可能性があります。
その象徴がブルーゾーンHDとトライアルHDです。
ブルーゾーンはヤオコーを核にM&Aを進めて500店舗・売上高1兆円を目指しています。
トライアルは西友を取得してすでに売上高1兆3,000億円を超え、今後は西友の収益性改善へ進みます。
つまりスーパー業界では今後、
「人口減少で市場全体は伸びない。しかし勝ち組スーパーはM&Aによって大きくなる」
という構造が進むと考えています。
現在の株価まで含めた本命はバローホールディングス(9956)。
長期的な企業力ではブルーゾーンホールディングス(417A)。
そして最も大きな成長ストーリーを持つ攻めの銘柄がトライアルホールディングス(141A)です。
トライアルについては今後、売上高よりも「西友の営業利益率がどこまで上がるか」を追うことが最も重要だと考えています。
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