いよぎんホールディングス(5830)が2026年8月7日に発表した2027年3月期第1四半期決算を分析します。
経常収益は808億3200万円で前年同期比1.4%増、経常利益344億1600万円で21.0%減、純利益243億5000万円で21.0%減となりました。
表面上は大幅減益です。
ただし、主因は国内金利上昇を踏まえて債券売却損を計上したことです。
一方、伊予銀行単体のコア業務純益は186億9300万円で23.8%増、資金利益も299億2300万円へ増加しています。
さらに年間配当は60円から80円へ増配予定で、最大150億円の自己株買いも発表しました。
私は今回を、債券ポートフォリオの入れ替えで最終利益は減ったものの、本業の利ざや改善は非常に強く、株主還元と愛媛銀行との経営統合まで含めると中長期ではかなり評価できる決算と見ます。
今回の決算を5段階で評価
| 評価項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| 経常収益 | ★★★★☆ | 808.32億円、1.4%増 |
| 経常利益 | ★★☆☆☆ | 344.16億円、21.0%減 |
| 純利益 | ★★☆☆☆ | 243.50億円、21.0%減 |
| コア業務純益 | ★★★★★ | 伊予銀行単体186.93億円、23.8%増 |
| 資金利益 | ★★★★★ | 伊予銀行単体299.23億円、約12.9%増 |
| 総資金利鞘 | ★★★★★ | 0.47%→0.57%へ改善 |
| 国内総資金利鞘 | ★★★★★ | 0.11%→0.22%へ倍増 |
| 貸出金 | ★★★★★ | 前年6月末比約2600億円増 |
| 預り資産 | ★★★★★ | 1兆832億円、3月末比749億円増 |
| 債券損益 | ★★☆☆☆ | 国債等債券損益▲57.45億円 |
| 不良債権 | ★★★★☆ | 比率1.58%、引き続き低水準 |
| 通期予想 | ★★★★☆ | 純利益770億円、3.7%増 |
| 自社株買い | ★★★★★ | 最大150億円・600万株 |
| 株主還元 | ★★★★★ | 年60円→80円へ33%増配 |
| キャピタルゲイン期待 | ★★★★★ | 本業改善+還元+経営統合を評価 |
売買判断
保有 ★★★★★
追加買い ★★★★☆
売却 ★☆☆☆☆
私はいよぎんHDを保有継続します。
経常利益・純利益が21%減っているため、一見すると弱い決算です。
しかし私は今回、最終利益よりもコア業務純益23.8%増と利ざや改善を重視します。
さらに150億円の自己株買いと80円への増配、愛媛銀行との経営統合という大きな資本政策もあります。
そのため押し目では追加買いを検討します。
純利益21%減の主因は債券売却損
今回の減益を理解するうえで最も重要なのが債券損益です。
伊予銀行単体の国債等債券損益は、
前年 +39億2300万円
今回 ▲57億4500万円
となりました。
前年差は約96億6800万円の悪化です。
国内金利の上昇を踏まえて債券を売却したことが大きく影響しています。
その結果、実質業務純益は31.9%減、経常利益も22.0%減となりました。
つまり今回の21%減益は、貸出業務が悪化したことによる減益ではなく、将来の金利環境を考慮して債券ポートフォリオを入れ替えた影響が大きいと見ています。
コア業務純益は23.8%増
債券損益を除いて見ると状況は大きく変わります。
伊予銀行単体のコア業務純益は、
前年 150億9800万円
今回 186億9300万円
となり、35億9500万円、23.8%増加しました。
投資信託解約損益を除いても182億7800万円で22.7%増です。
さらに国債等債券損益を除いた業務粗利益も13.9%増えています。
私は銀行株を見る場合、今回のような債券売却損がある局面では最終利益以上にコア業務純益を重視します。
本業はかなり強いです。
資金利益は約13%増
伊予銀行単体の資金利益は、
265億700万円 → 299億2300万円
となり、34億1600万円増加しました。
連結の貸出金利息も226億6100万円から258億円へ増加しています。
一方、預金利息は51億1700万円から71億4300万円へ増えました。
預金金利上昇によるコスト負担は増えています。
それでも貸出を中心とした運用収益の増加が上回っており、資金利益はしっかり伸びています。
総資金利鞘0.47%から0.57%へ
今回かなり評価したい数字です。
伊予銀行単体の総資金利鞘は、
0.47% → 0.57%
へ0.10ポイント改善しました。
貸出金利回りは1.54%から1.68%へ上昇しています。
さらに国内業務部門だけを見ると、
資金運用利回 1.12%→1.38%
貸出金利回 1.15%→1.40%
総資金利鞘 0.11%→0.22%
です。
国内総資金利鞘は実質的に倍増しました。
日銀の金利正常化が伊予銀行の本業収益へ明確にプラスになっています。
貸出残高も前年同期比で大幅増
伊予銀行単体の貸出金残高は6兆1675億円です。
3月末比では31億円増にとどまりますが、前年6月末の5兆9073億円と比較すると約2602億円増えています。
伸び率は約4.4%です。
個人向け貸出も1兆2296億円、住宅ローンも9322億円まで増加しています。
つまり、
貸出金利上昇+貸出残高増加
が同時に進んでいます。
銀行株としてかなり良い状態です。
預り資産は1兆832億円へ
預り資産も大きく伸びています。
伊予銀行と四国アライアンス証券を合わせた預り資産残高は1兆832億円となりました。
3月末から749億円増加しています。
内訳を見ると、
投資信託 1218億円
保険 2286億円
国債 912億円
金融商品仲介 1202億円
四国アライアンス証券 5213億円
です。
金利収益だけでなく、資産運用・証券関連の手数料ビジネスまで拡大している点を評価します。
有価証券評価益3498億円
いよぎんHDの特徴の一つが厚い有価証券含み益です。
2026年6月末の有価証券評価損益は3498億円のプラスとなっています。
会社資料でも「地銀トップクラスの水準」と説明しています。
債券売却損を計上した一方で、株式などを含めた有価証券ポートフォリオ全体には大きな含み益があります。
今後、政策保有株式削減を進めれば、
売却益の実現+資本効率改善+株主還元原資
という形につながる余地があります。
信用コストは増えている
注意したい点もあります。
伊予銀行単体の貸倒償却引当費用は、
前年 ▲6億2600万円
今回 21億500万円
となりました。
前年は引当金戻入益があったため、前年差では約27億円悪化しています。
個別貸倒引当金純繰入額も15億5900万円発生しています。
ただし金融再生法開示不良債権比率は1.58%です。
前期末も1.58%、前年同期1.57%でしたので、大きく悪化しているわけではありません。
現時点では信用不安というほどではありませんが、次回も与信費用を確認します。
上期予想への進捗は55%超
修正後の上期予想は、
経常収益 1475億円
経常利益 620億円
純利益 430億円
です。
第1四半期の進捗率は、
経常収益 54.8%
経常利益 55.5%
純利益 56.6%
となっています。
第1四半期終了時点で半分を超えており、順調です。
会社は今回、上期業績予想を修正しました。
一方、通期予想は、
経常収益 2700億円
経常利益 1110億円
純利益 770億円
です。
第1四半期の通期進捗率は、
経常利益 約31.0%
純利益 約31.6%
となります。
債券売却損を計上したうえでこの進捗ですので、私は悪くないと見ています。
年間配当60円から80円へ
2027年3月期の年間配当予想は80円です。
前期60円から20円増、約33%の増配となります。
中間40円、期末40円を予定しています。
本業利益の拡大を株主還元へ反映している点は高く評価できます。
最大150億円の自己株買い
さらに決算発表と同時に自己株買いを発表しました。
取得上限は、
600万株
150億円
です。
取得期間は2026年8月10日から10月16日までです。
80円への増配だけでなく150億円規模の自己株買いまで実施するため、今回の株主還元はかなり強いです。
PBR改善を意識した資本政策としても評価できます。
愛媛銀行との経営統合も大きな材料
もう一つ重要なのが愛媛銀行との経営統合です。
いよぎんHDと愛媛銀行は2026年7月24日に経営統合へ向けた基本合意を締結しました。
予定では2027年4月1日に、いよぎんHDを完全親会社、愛媛銀行を完全子会社とする株式交換を行います。
統合後も伊予銀行と愛媛銀行のブランドを残す「シングルプラットフォーム・マルチブランド」体制を予定しています。
2026年3月末時点で、
伊予銀行貸出金 約6.16兆円
愛媛銀行貸出金 約2.02兆円
です。
単純合算すれば8兆円を超える貸出規模となります。
統合によってシステム・本部コストを効率化しながら営業基盤を強化できれば、今後の利益成長余地はかなり大きくなります。
一方、株式交換比率はまだ決まっていません。
ここは今後の株価に影響する重要ポイントです。
私ならどう売買するか
私は現在の保有分を維持します。
今回のマイナス材料は、
経常利益21.0%減
純利益21.0%減
国債等債券損益▲57.45億円
信用コスト増加
です。
一方で、
コア業務純益23.8%増
資金利益約13%増
総資金利鞘0.47%→0.57%
国内総資金利鞘0.11%→0.22%
貸出金前年同期比約2600億円増
有価証券評価益3498億円
年間配当60円→80円
最大150億円の自己株買い
愛媛銀行との経営統合
があります。
私は表面上の21%減益より、こちらを重視します。
今回の私の結論
今回のいよぎんHDの第1四半期決算は、表面上は減益ですが、中身はかなり強い決算です。
経常利益・純利益はともに21%減少しました。
しかし最大の原因は、国内金利上昇を踏まえて国債等の売却損を計上したことです。
本業を見ると、伊予銀行のコア業務純益は23.8%増、資金利益も増加し、総資金利鞘は0.47%から0.57%へ改善しました。
国内業務部門では総資金利鞘が0.11%から0.22%へ倍増しています。
さらに年間配当を60円から80円へ増配し、最大150億円の自己株買いも発表しました。
愛媛銀行との経営統合も2027年4月を目標に進んでいます。
そのため今回の総合評価は★★★★☆とします。
減益だけを見るなら★★程度ですが、コア業務純益・利ざや・株主還元・経営統合まで含めれば★★★★☆以上の内容と判断します。
私は保有を継続し、銀行株全体の調整局面では追加買いを検討します。
キャピタルゲインという視点では、
金利上昇による利ざや改善を継続し、債券ポートフォリオ再構築後の利益を伸ばしながら、愛媛銀行との統合シナジーと強化された株主還元をPBR上昇へつなげられるか。
ここが次の焦点です。
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