ソフトバンクグループ(9984)が2026年8月6日に発表した2027年3月期第1四半期決算を分析します。
売上高は2兆195億9100万円で前年同期比10.9%増となりました。一方、税引前利益は5891億5000万円で14.6%減、親会社の所有者に帰属する四半期利益は3473億3000万円で17.7%減です。
今回の決算はかなり特徴的です。投資利益は1兆8594億円まで膨らみましたが、販管費、財務費用、為替差損、デリバティブ関連損失が大きく増え、最終的には減益となりました。
特にIntel株式だけで1兆3329億円の投資利益を計上しています。つまり、巨額の投資利益を出している一方、それ以上にAI投資拡大に伴うコストと資金調達負担も大きくなっている決算です。
今回の決算を5段階で評価
| 評価項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| 売上高 | ★★★★☆ | 2.02兆円、10.9%増 |
| 税引前利益 | ★★★☆☆ | 5892億円、14.6%減 |
| 純利益 | ★★★☆☆ | 3473億円、17.7%減 |
| 利益率 | ★★★☆☆ | 投資損益の影響が大きく通常の利益率比較は難しい |
| 投資事業 | ★★★★★ | 投資利益1.86兆円、Intelだけで1.33兆円 |
| SVF | ★★★★☆ | 投資利益4601億円。ByteDanceが大きく寄与 |
| ソフトバンク事業 | ★★★★★ | 9.4%増収、セグメント利益5.0%増 |
| AIコンピューティング | ★★★☆☆ | 30.2%増収だが2008億円の赤字 |
| OpenAI | ★★★★★ | AI戦略の中核。ただし投資・借入規模も巨大 |
| 通期予想 | ★★★☆☆ | 連結業績予想は非開示 |
| 進捗率 | ★★★☆☆ | 通期予想非開示のため算定不能 |
| 特殊要因 | ★★☆☆☆ | 株価・評価益・デリバティブで利益変動が非常に大きい |
| CF | ★★☆☆☆ | 営業CF・投資CFとも大幅なマイナス |
| 財務 | ★★★☆☆ | 資本増加の一方、有利子負債も大幅増 |
| 株主還元 | ★★★☆☆ | 年11円予定、前期分割調整後と同水準 |
| キャピタルゲイン期待 | ★★★★☆ | OpenAI・Armの成長余地は大きいが値動きも大きい |
売買判断
保有 ★★★★☆
新規買い ★★★☆☆
売却 ★★☆☆☆
私はソフトバンクグループの保有を継続します。
今回の純利益17.7%減だけなら弱く見えますが、ソフトバンク事業は増収増益、Armを中心とするAIコンピューティング事業も30%増収しています。
一方で、現在はOpenAI、半導体、AIデータセンターなどへ巨額投資を行う局面です。有利子負債と金利負担も増えているため、私は決算を見て一気に買い増すより、押し目で段階的に考えます。
投資利益1.86兆円でも最終利益は減益
今回最大のポイントです。
投資損益は前年4869億円から1兆8594億円へ急増しました。
持株会社投資事業ではIntel株式の株価上昇によって1兆3329億円もの投資利益を計上しています。SVF事業でも4601億円の投資利益を出し、特にByteDanceの公正価値上昇が寄与しました。
ところが税引前利益は14.6%減です。
販管費が前年7582億円から1兆2869億円へ69.7%増、財務費用は1653億円から3287億円へ約2倍になりました。
さらに前年1433億円の為替差益だったものが1461億円の為替差損へ転換し、デリバティブ関連も前年2288億円の利益から3916億円の損失へ悪化しました。
私は今回、1兆8594億円という投資利益より、巨額の利益を出しても最終利益が減ったコスト構造の方を重視します。
ソフトバンク事業は安定して強い
国内通信などのソフトバンク事業は売上高1兆8139億円で9.4%増、セグメント利益2925億円で5.0%増となりました。
ファイナンス事業ではPayPayやPayPayカードが成長し、エンタープライズ事業でもAI計算基盤を中心にクラウド・AI関連が伸びています。
一方、コンシューマ事業は増収減益でした。
投資会社としてのソフトバンクグループは利益変動が非常に激しいですが、国内ソフトバンク事業が安定したキャッシュ創出基盤になっていることは大きな強みです。
Armは30%増収、しかしAI事業は2008億円赤字
AIコンピューティング事業は売上高1753億円で30.2%増となりました。米ドルベースでも17.8%増です。
ArmではクラウドAI、エッジAI、フィジカルAIのすべてでロイヤルティー収入が増加しています。特にデータセンター向けArmベースサーバーチップの拡大は注目材料です。
ただしセグメント損益は前年324億円の赤字から2008億円の赤字へ大幅に悪化しました。
次世代技術の研究開発を拡大しているためです。
つまり現在は、
Armの売上成長は非常に強いが、その利益をAI開発へさらに大きく再投資している状態
です。
キャピタルゲインを考えるなら、ここが将来の最大の上振れ材料であると同時に、現在の利益を圧迫する要因でもあります。
OpenAIへの投資はさらに巨大化
第1四半期にはOpenAIへ100億ドルを追加出資しました。
第1四半期末時点で累計投資額は446億ドル、公正価値896億ドル、累計投資利益は450億ドルです。なお、今四半期はOpenAIの評価額に変動がなく、OpenAIによる新たな投資損益は計上されていません。
さらに7月に100億ドルを追加出資し、10月にも100億ドルを出資する予定です。
予定どおり完了すれば累計出資額は646億ドル、持分比率は約13%となる見込みです。
これは非常に大きな成長材料ですが、同時に非常に大きな集中投資でもあります。
今後のソフトバンクグループの株価は、以前にも増してOpenAIの企業価値に左右される会社になっていくと考えます。
財務負担はかなり大きくなっている
連結有利子負債・リース負債は前期末25兆6636億円から27兆7907億円へ約2.13兆円増えました。
一方、現金及び現金同等物は5兆3622億円から3兆9271億円へ1兆4351億円減少しています。
親会社所有者帰属持分は17兆6218億円から18兆4215億円へ増えましたが、親会社所有者帰属持分比率は29.0%から28.3%へ低下しました。
さらに財務費用は3287億円へほぼ倍増しています。
OpenAIへの追加投資を目的とするブリッジローンなどの借入増加が大きな理由です。
AI資産の価値上昇が続けば問題になりにくいですが、投資先の評価額が下落すると財務レバレッジが逆方向に効く点には注意が必要です。
CFは完全に大型投資モード
営業CFは4399億円のマイナス、投資CFは2兆5422億円のマイナスです。
SVFによる投資取得で1兆6268億円を支出し、その中心がOpenAIへの100億ドル追加投資でした。
さらに米国の発電・データセンター関連資産取得に9689億円を支出しています。
これを資金調達で支えており、財務CFは1兆5159億円のプラスです。
つまり現在は、
手元資金+大型借入によってAI・データセンター・OpenAIへ一気に資金を投入している段階
です。
これは攻めの経営としては非常に分かりやすい一方、投資成果が出なかった場合のリスクも以前より高くなっています。
通期予想は非開示
ソフトバンクグループは、未確定な要素が多く連結業績を見通すことが難しいとして、2027年3月期の連結業績予想を公表していません。
そのため通常の銘柄のように「通期純利益に対する進捗率30%」といった評価はできません。
ソフトバンクグループの場合は、通期予想よりも、
OpenAIの評価額
Armの成長率
SVFの投資損益
保有上場株式の株価
有利子負債と金利負担
を見る方が重要です。
配当は年間11円
今期の年間配当予想は中間5.50円、期末5.50円の11円です。
前期も株式分割を調整すると年間11円ですので、実質据え置きです。
ソフトバンクグループは配当を目的に保有する銘柄ではなく、OpenAIやArmなどの保有資産価値上昇によるキャピタルゲインを狙う銘柄と考えています。
私ならどう売買するか
私は保有を継続します。
今回の純利益17.7%減だけを理由に売却はしません。ソフトバンク事業は増益し、Armも30%増収、投資利益も非常に大きいからです。
ただし積極的な追加買いにもまだ一段慎重です。
OpenAIへの出資、AI半導体、データセンター投資を借入も使いながら急拡大しており、財務費用はすでに約2倍になっています。
私は株価が大きく押した場面で追加を検討します。
次の決算で見るポイント
最重要はOpenAIです。評価額が上昇すればソフトバンクグループのNAVやSVF利益に大きな影響を与える可能性があります。
次にArmです。売上30%増を維持しながら、AIコンピューティング事業の2008億円赤字をどこまで縮小できるかを見ます。
さらに有利子負債、財務費用、営業CF、データセンター投資額も確認します。
売却を考える条件
私が売却を考えるのは、OpenAIやArmなど主要AI資産の企業価値が大幅に低下し、その一方で有利子負債と金利負担だけが増え続ける場合です。
また、AIコンピューティング事業の赤字が拡大し続ける、ソフトバンク事業まで減益へ転じる、投資先の評価損によって資本が大きく減少する場合も保有比率を見直します。
今回の私の結論
今回のソフトバンクグループの第1四半期決算は、良い・悪いを純利益だけでは判断できない決算です。
投資利益は1兆8594億円まで増え、Intelだけで1兆3329億円の利益を計上しました。ソフトバンク事業も増収増益、Armを中心とするAIコンピューティング事業も30.2%増収です。
一方、販管費、財務費用、為替差損、デリバティブ損失が大きく増え、純利益は17.7%減となりました。
さらにAIコンピューティング事業は2008億円の赤字、営業CFは4399億円のマイナス、有利子負債も約2.13兆円増えています。
そのため今回の総合評価は**★★★☆☆**とします。
私は保有を継続しますが、追加買いは押し目で慎重に行います。
キャピタルゲインという視点では、これからのソフトバンクグループで最も重要なのは四半期純利益ではありません。
OpenAIとArmの企業価値上昇が、急増する投資額・借入金・金利負担を上回るリターンを生み出せるか。
ここが今後の株価を大きく左右すると考えます。
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