今回は一見すると、純利益+313.6%という超好決算に見えます。ただし、その大部分はラクスパートナーズ売却による関係会社株式売却益166.85億円です。したがって本当に見るべきは、営業利益+30.1%と、クラウド事業の成長・利益率改善です。
今回の決算を5段階で評価
まず最初に、今回のラクスの第1四半期決算を私なりに5段階で評価してみました。
| 評価項目 | 星評価 | 私の見方 |
|---|---|---|
| 見かけ上の売上成長 | ★★☆☆☆ | +0.9%だが、IT人材事業売却の影響が大きい |
| 本業の利益成長 | ★★★★★ | 営業利益+30.1%。利益率改善がかなり強い |
| クラウド事業成長 | ★★★★★ | 会社計画ではオーガニック売上+15.3% |
| 楽楽シリーズ | ★★★★★ | 楽楽精算、楽楽明細、楽楽販売など主要サービスが全て成長 |
| 営業利益率 | ★★★★★ | 広告宣伝費配分見直しで大幅改善 |
| 通期業績予想 | ★★★★☆ | 営業利益+18.2%。売上減は事業売却によるもの |
| 財務健全性 | ★★★★★ | 自己資本比率74.6%、現預金204億円 |
| M&A・資本政策 | ★★★★☆ | PAC持分法化など成長投資を強化 |
| 株主還元 | ★★★★☆ | 7円→8円へ増配予想、追加還元も検討 |
| 総合評価 | ★★★★★ | 本業はかなり強い。純利益4倍より営業利益30%増を評価 |
総合評価:★★★★★(4.6 / 5)
今回を一言で表すなら、
「売上0.9%増という表面の数字に惑わされる決算ではなく、IT人材事業を切り離してクラウド専業へ変わった結果、収益性が一段上がった決算」
という評価です。
現時点での売買判断
保有:★★★★★ → 基本は継続保有
新規買い:★★★★☆ → 買い候補。ただし高PERなら株価水準は慎重に見る
売却:★☆☆☆☆ → 今回の決算を理由に売る必要はかなり低い
ラクスが2026年8月14日に2027年3月期第1四半期決算を発表しました。
今回の決算を最初に見ると、
売上高+0.9%。
営業利益+30.1%。
純利益+313.6%。
という、かなり変わった数字になっています。
売上はほぼ横ばいなのに、利益だけ大きく伸びています。
ただ、この理由はかなり明確です。
ラクスは2026年4月に、IT人材事業を行っていたラクスパートナーズを売却しました。
そのため今期から、
実質的にクラウド事業専業会社
へ変わっています。
今回の決算は、その構造変化を理解してから見たほうがいいです。
まず1Qの数字を確認
2027年3月期第1四半期は次の通りです。
| 2027年3月期1Q | 前年同期比 | |
|---|---|---|
| 売上高 | 142.10億円 | +0.9% |
| 営業利益 | 47.56億円 | +30.1% |
| 経常利益 | 48.72億円 | +33.2% |
| 純利益 | 146.31億円 | +313.6% |
| EPS | 41.32円 | 前年9.79円 |
これだけ見ると純利益が約4倍です。
しかし私は、
純利益+313.6%はほぼ評価しません。
見るべきなのは営業利益+30.1%です。
純利益4倍の正体はラクスパートナーズ売却
今回、特別利益として、
関係会社株式売却益166.85億円
を計上しています。
ラクスパートナーズをBREXA Technologyへ売却したためです。
会社自身も、
クラウド事業とのシナジーが薄れてきたこと、
今後はRule of 50を意識してクラウド事業へ経営資源を集中すること、
を理由として説明しています。
つまり、
一時的な資産売却益で純利益が跳ね上がった
だけです。
だから私は今回、
純利益146億円より営業利益47.6億円
を見ます。
本当に強いのは営業利益+30.1%
今回の営業利益は、
36.56億円 → 47.56億円
まで増えました。
約11億円の増益です。
しかも売上はほぼ横ばい。
なぜ利益がこれだけ増えたのかを見ると、
売上原価が、
35.02億円 → 26.19億円
へ減少。
売上総利益は、
105.79億円 → 115.90億円
へ増加。
販管費は、
69.23億円 → 68.34億円
とほぼ横ばいです。
その結果、営業利益が30%増えました。
これはかなり良いです。
営業利益率は約33.5%
1Q売上142.10億円に対して、営業利益47.56億円。
営業利益率は、
約33.5%
です。
前年同期は、
36.56億円 ÷ 140.81億円 ≒ 26.0%
でした。
つまり営業利益率が、
約26% → 約33.5%
まで改善しています。
これはかなり大きな変化です。
会社も、事業環境を踏まえて広告宣伝費の配分を見直したことなどにより、営業利益率が改善したと説明しています。
私は今回の決算でここを一番評価しています。
売上+0.9%をそのまま「成長停止」と考えない
今回の売上成長率は+0.9%です。
成長株として見れば、一見かなり悪いです。
ただし前年1Qには、
IT人材事業売上20.16億円
が含まれていました。
今期はゼロです。
つまり売却した事業分が20億円消えたのに、
全社売上は、
140.81億円 → 142.10億円。
むしろ残ったクラウド事業はかなり伸びています。
会社自身も通期ベースで、
クラウド事業のみのオーガニック売上成長+15.3%
を計画しています。
したがって、
「ラクスの成長率が1%まで落ちた」
と見るのは間違いです。
楽楽精算は+10.6%
主要サービス別に見ると、かなり分かりやすいです。
楽楽精算は、
49.28億円 → 54.49億円
約+10.6%。
楽楽明細は、
29.79億円 → 36.77億円
約+23.4%。
楽楽販売は、
16.54億円 → 20.24億円
約+22.4%。
楽楽勤怠は、
4.32億円 → 6.13億円
約+41.9%です。
ほぼ全部伸びています。
特に私は、
楽楽明細
楽楽販売
楽楽勤怠
の成長率を評価しています。
楽楽精算一本足ではなくなっています。
楽楽精算の成長が10%程度まで落ちたのは少し注意
一方で、主力の楽楽精算は約10.6%成長です。
以前ほどの高成長ではありません。
会社自身も、一部事業領域では市場成熟化が進み、未導入層が慎重な顧客へ移行していることや、類似サービス増加で競争が厳しくなっていると認識しています。
ここは今後のリスクです。
楽楽精算が成熟してくる以上、
第二、第三の楽楽シリーズを育てる必要があります。
今回を見る限り、その役割を楽楽明細や楽楽販売、楽楽勤怠が担い始めています。
クラウド専業になった意味は大きい
今回ラクスは、IT人材事業を売却しました。
私はこれはかなり重要な転換だと思います。
IT人材事業も悪い事業ではありませんでした。
しかしクラウドSaaSとは、
収益構造、
利益率、
成長性、
必要な経営資源、
が違います。
ラクスは今後、
クラウド事業へ経営資源を集中する
方針です。
売上規模を追うのではなく、
高成長+高利益率
を目指す会社へ変わります。
今回の売上横ばい・営業利益30%増は、その象徴的な数字だと思います。
「Rule of 50」を目指す
会社は2027年3月期から2029年3月期の中期経営計画で、
Rule of 50
を目標にしています。
一般的なSaaS企業では、
売上成長率+営業利益率が40%を超える、
Rule of 40
が一つの目安とされます。
ラクスはそれを上回る50%を目指しています。
さらに、
クラウド事業売上CAGR15%以上。
2029年3月期に正社員1人当たり売上3,000万円以上。
一過性要因を除いたROE30%以上。
毎期増配。
という目標です。
私はこの方向性はかなり好きです。
成長率だけではなく「質」を上げる
以前のラクスは、
売上成長率をかなり重視するSaaS企業
というイメージでした。
これからは、
売上成長率+利益率+生産性
を同時に高めようとしています。
会社自身が使っている、
「クオリティグロース」
という言葉がかなり分かりやすいです。
成長するだけではなく、
質の高い成長
へ変わる。
私は今回の決算を見ると、その方向へ実際に進んでいるように見えます。
通期営業利益+18.2%
2027年3月期会社予想は、
| 通期予想 | 前期比 | |
|---|---|---|
| 売上高 | 597億円 | ▲1.0% |
| 営業利益 | 205億円 | +18.2% |
| 経常利益 | 205億円 | +17.5% |
| 純利益 | 252億円 | +89.6% |
| EPS | 71.16円 | ― |
です。
これも表面だけ見ると、
売上▲1%なのに利益+18%
です。
理由は同じで、
IT人材事業がなくなるためです。
クラウド事業だけなら、
売上+15.3%
セグメント利益+27.9%
を計画しています。
私はこちらを見ます。
1Q営業利益進捗率
通期営業利益205億円に対して、
1Q営業利益47.56億円。
進捗率は、
約23.2%
です。
ほぼ順調です。
クラウド事業の場合、広告宣伝費や採用費の使い方で四半期利益が動くため、単純に25%なければ悪いとは考えません。
しかも会社は1Qで業績予想を変更していません。
現時点では、
計画線上
と見るのが妥当です。
純利益252億円もそのまま評価しない
通期純利益は、
252億円
+89.6%
です。
これも派手です。
しかしここには、
ラクスパートナーズ売却益166.85億円
が含まれています。
つまり来年は同じ利益はありません。
このためPERを考えるときも、
2027年3月期の純利益だけで割安・割高を判断しないほうがいい
と思います。
一時利益を除いた通常収益力で見る必要があります。
財務はかなり強い
自己資本比率は、
71.2% → 74.6%
まで上昇しました。
現金及び預金は、
138.94億円 → 204.87億円
まで増えています。
さらに投資有価証券も、
49.04億円 → 135.47億円
まで増加しました。
これは事業売却や投資の影響が大きいです。
借金依存もほとんどありません。
成長投資・M&Aを行う余力はかなりあります。
プラスアルファ・コンサルティングへ231億円投資
そして今回かなり大きな後発事象があります。
ラクスは、
プラスアルファ・コンサルティング(PAC)株式を追加取得
します。
取得価額は、
231億円。
取得後の議決権比率は、
22.21%
となり、持分法適用関連会社になる予定です。
かなり大きな投資です。
PACとの提携はかなり面白い
PACは、
タレントパレット
で有名なHR系SaaS企業です。
ラクスは中小企業を中心にバックオフィスDX。
PACはエンタープライズ向けHRソリューション。
顧客層が少し違います。
両社はすでに、
「楽楽人事労務」
で協業しています。
今回さらに資本関係を深めることで、
サービス販売、
開発、
顧客基盤、
を組み合わせる狙いです。
これは中長期ではかなり面白いと思います。
ただし231億円は軽くない
一方で、
231億円
はかなり大きいです。
1Q末現金204億円より大きな金額です。
もちろん会社全体の財務力を考えれば対応可能でしょうが、
投資した以上、
PACとのシナジーで企業価値を増やす必要があります。
「人気SaaS株を買いました」で終わってはいけません。
今後、
持分法利益、
共同販売、
新サービス、
などが数字に出てくるかを見たいです。
ROBOT PAYMENTとの資本業務提携もある
会社はさらに、
ROBOT PAYMENTとの資本業務提携
も進めています。
この影響については現在精査中で、必要に応じて今後開示するとしています。
つまりラクスは、
自社サービスだけで成長する会社
から、
周辺SaaS企業への出資・提携も使ってエコシステムを作る会社
へ変わりつつあります。
ここは今後かなり注目したいです。
配当は7円から8円へ
2027年3月期配当は、
年間8円
を予定しています。
前期は7円でした。
金額は小さいです。
ラクスを配当目的で買う人はほとんどいないと思います。
ただ会社は中期計画で、
毎期増配継続
総還元性向20%以上
を掲げています。
さらに追加株主還元も検討中です。
これは以前より株主還元を意識する会社になったという意味で評価できます。
今回の決算で一番重要なのは「楽楽シリーズの伸び」
今回の決算では、
純利益+313%、
ラクスパートナーズ売却、
PACへの231億円投資、
など派手な話が多いです。
でも私は、
一番重要なのは楽楽シリーズがまだ伸びていること
だと思います。
楽楽精算+約11%。
楽楽明細+約23%。
楽楽販売+約22%。
楽楽勤怠+約42%。
これが本業です。
ここが伸びなくなったら、どれだけM&Aをしても評価しません。
逆にここが15%前後成長を維持しながら、利益率が30%台になってくれば、かなり強い会社になります。
では、株はどうするか
今回の決算を見て私が保有していたなら、
基本はそのまま保有
です。
営業利益+30%。
主要クラウドサービスはすべて増収。
利益率大幅改善。
クラウド専業へ集中。
財務も非常に強い。
今回売る理由はかなり少ないと思います。
新規買いもかなり前向き
新規買いについても、
決算内容だけならかなり前向き
です。
ただしラクスには一つ大きな問題があります。
株価評価が高くなりやすい
ことです。
SaaS株は将来成長をかなり早く株価へ織り込むことがあります。
そのため、
良い決算だからいくらでも買う
というのは危険です。
私は今回、
会社評価★★★★★、
新規買い★★★★☆、
と分けます。
株価が過熱していれば押し目を待ちます。
今回は「売上+0.9%」で売られるならむしろ興味が出る
市場がもし、
「売上+0.9%しかない」
という表面的な数字だけを見て株価を下げるのであれば、私は逆に興味を持ちます。
IT人材事業が20億円消えた状態でも全社売上は増えています。
クラウド事業自体は15%前後成長。
営業利益は30%増。
つまり事業の質はむしろ上がっています。
ただし、
一時利益込みの純利益+313%を見て急騰する
場合は追いません。
どちらも表面だけの数字だからです。
今後一番見るのはクラウド売上成長率
次の決算で一番見るのは、
クラウド事業のオーガニック成長率
です。
会社目標は通期+15.3%。
ここが維持できるか。
次に、
営業利益率
です。
今回33%台まで上がりました。
これを維持しながら15%成長できれば、Rule of 50が現実味を帯びてきます。
そして3つ目に、
楽楽精算以外の成長
を見ます。
特に、
楽楽明細、
楽楽販売、
楽楽勤怠、
です。
PAC投資の成果も見る
今後は、
プラスアルファ・コンサルティングへの231億円投資
も大きなチェックポイントです。
単なる株式投資なのか。
実際に販売シナジーが出るのか。
共同サービスが生まれるのか。
持分法利益が増えるのか。
ここが成功すれば、ラクスの成長余地はかなり広がります。
逆に成果が乏しいなら、231億円を別の用途へ使ったほうがよかったという評価になります。
私が売却を考える条件
私が今後売却を考えるのは、
クラウド売上成長率が10%を明確に下回る
楽楽精算の成長鈍化を他サービスで補えなくなる
営業利益率改善が止まる
Rule of 50達成が現実的でなくなる
PACなどへの大型投資が利益に結びつかない
といった状態になった場合です。
特に、
売上15%成長+高利益率
という現在のストーリーが崩れるかどうかを見ます。
今回の私の結論
ラクスの2027年3月期第1四半期決算は、
かなり良い決算
だったと思います。
表面的には、
売上高+0.9%。
営業利益+30.1%。
純利益+313.6%。
ですが、
私はこの数字をそのまま評価しません。
IT人材事業を売却したため、売上比較が歪んでいます。
純利益も166.85億円の売却益で大きく押し上げられています。
本当に見るべきなのは、
営業利益+30.1%
と、
クラウド事業の成長
です。
主要サービスを見ると、
楽楽精算+約11%。
楽楽明細+約23%。
楽楽販売+約22%。
楽楽勤怠+約42%。
さらに営業利益率は約33.5%まで上昇しました。
会社は今後、
クラウド売上CAGR15%以上
Rule of 50
ROE30%以上
毎期増配
を目指しています。
そのため今回の総合評価は、
★★★★★(4.6 / 5)
としました。
5.0にしなかった理由は、
主力楽楽精算の成長率が以前より鈍化していること
市場成熟化・競争激化を会社自身も認識していること
PACへの231億円投資の成果はまだ分からないこと
です。
現時点での私の方針は、
保有分 → 継続保有
新規買い → 買い候補。ただし高値追いはしない
売上+0.9%を嫌気して過度に下落 → むしろ買いを検討
純利益+313%だけで急騰 → 追いかけない
全売却 → 今回の決算では考えない
です。
今回のラクスは、
「売上を伸ばす会社」から「高い成長率と高い利益率を同時に狙う会社」へ変わった
と見るのが一番しっくりきます。
これから重要なのは、
純利益が何倍になったかではありません。
クラウド事業を15%前後で伸ばしながら、営業利益率30%台を維持できるのか。
私はそこを一番見ていきたいと思います。
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