化学業界の今後を予想|半導体・電池・高機能材料が成長を牽引?有望株は?

目次

化学業界は今後どうなる?

化学業界は非常に範囲が広い業界です。

プラスチックや合成樹脂などの基礎化学品から、

・半導体材料
・電子材料
・電池材料
・高機能樹脂
・シリコーン
・産業ガス
・医療材料
・農業化学品

まで幅広い製品があります。

そのため「化学業界が成長するか」という見方だけでは、この業界の将来性を判断しにくくなっています。

私は、今後5〜10年を見ると、化学業界は比較的有望な業界だと考えています。

ただし、どの企業でも成長できるわけではありません。

今後は特に、

汎用化学品から高付加価値材料へ転換できるか

によって企業間の差が大きくなると考えています。

経済産業省も日本の化学産業について、国際的な過剰供給、ナフサクラッカーの稼働率、事業ポートフォリオの見直し、GX、経済安全保障などへの対応が必要としており、コンビナート再編などを含めた産業構造転換を進めています。

汎用化学品は厳しい時代が続く

日本の化学業界にとって大きな問題になっているのが、石油化学製品の供給過剰です。

特に中国を中心としたアジアで大型設備が増えたことで、エチレンや樹脂などの汎用品は価格競争が激しくなっています。

日本国内でも人口減少によって需要が大きく伸びるとは考えにくいため、従来の設備をそのまま維持することが難しくなっています。

実際、2026年に入っても国内のエチレン生産や内需には弱い数字が見られます。

三菱ケミカルグループも、西日本でのエチレン製造設備統合や石油化学事業の分社化検討など、構造改革を進めています。

今後の化学業界では、

大量生産

価格競争

というモデルから、

少量でも高い利益を得られる高機能材料

へ経営資源を移すことが重要になります。

AI・半導体材料が最大級の成長分野になる

今後の化学業界で特に注目したいのが半導体材料です。

半導体を製造するためには、シリコンウエハーだけではなく、

・フォトレジスト
・封止材料
・高純度ガス
・研磨材料
・接着材料
・絶縁材料
・高機能樹脂

など、非常に多くの化学材料が必要になります。

生成AIの普及によって、高性能GPUやHBMなどへの需要が増えているため、半導体材料メーカーにも恩恵が広がります。

WSTSも2026年の半導体市場について、AIインフラやHBM、アクセラレーテッドコンピューティングが主要な成長要因になるとしています。

つまり、

AI需要増加

高性能半導体需要増加

半導体工場投資

製造装置需要増加

半導体材料需要増加

という流れです。

日本企業は半導体そのものの世界シェアでは以前より低下していますが、半導体を作るための材料では依然として強い企業が多いのが特徴です。

半導体は前工程だけでなく後工程も重要になる

AI半導体では、単純に半導体回路を微細化するだけでは性能向上が難しくなっています。

そこで重要になっているのが、複数のチップやメモリーを組み合わせる先端パッケージ技術です。

この分野で注目したいのがレゾナックです。

レゾナックは2026年4月、次世代半導体パッケージ向けの研究開発拠点を開設しました。

生成AIや自動運転などで高性能半導体需要が拡大する中、先端パッケージ技術を重点分野としています。

さらにAI半導体パッケージ用封止材などでも技術を持っています。

今後は、

半導体メーカーだけでなく、その周辺材料を押さえている化学会社

にも大きな成長機会があると考えています。

電池材料も長期的な成長市場

もう一つの成長分野が蓄電池です。

EVだけでなく、

・AIデータセンター
・再生可能エネルギー
・家庭用蓄電池
・産業用蓄電池
・防災設備

などでも蓄電池需要が増える可能性があります。

経済産業省は2026年6月、「蓄電池産業戦略」を「蓄電池・電源産業戦略」へ改訂しました。

2030年から2030年代半ばに国内製造基盤150GWh/年を確立し、日本企業の世界での蓄電池関連売上高を2025年から2035年までに3倍にする目標を掲げています。

化学会社にとって重要なのは電池本体だけではありません。

電池には、

・正極材
・負極材
・電解液
・セパレーター
・バインダー
・シリコン系負極材料

など、多数の化学材料が使用されます。

ただし中国企業との価格競争も激しいため、一般的な電池材料より、次世代電池や高性能材料で技術優位を持つ企業を見たいところです。

産業ガスもAI・半導体時代の重要分野

意外と注目したいのが産業ガスです。

半導体製造では、

窒素
アルゴン
水素
ヘリウム
特殊材料ガス

など、さまざまな高純度ガスが必要になります。

日本酸素ホールディングスは、2030年3月期までの中期経営計画「Next Innovation 2030」で、

「エレクトロニクス事業の拡大」

を3つの重点戦略の一つとしています。

半導体向けガス供給ソリューションの世界展開や先端材料への重点投資を進める方針です。

半導体工場は一度稼働すると継続的にガスを必要とします。

そのため半導体設備そのものと比べると、比較的安定した継続収益につながりやすいところも魅力です。

GXで化学産業そのものが変わる

化学産業は石油を原料とする製品が多いため、脱炭素化への対応も避けられません。

今後は、

・バイオ原料
・ケミカルリサイクル
・CO2利用
・再生プラスチック
・低炭素製造
・水素利用

などへの転換が進むと考えられます。

これは短期的には設備投資負担になります。

しかし、環境負荷の低い素材に付加価値を付けて販売できるようになれば、新しい利益源になる可能性があります。

特に日本国内の大型石油化学設備については、単独企業だけで維持するのではなく、企業間連携や設備統合がさらに進む可能性があります。

三菱ケミカルグループも、石油化学事業について他社との連携や合弁会社設立を含めた再編を検討しています。

化学会社は「何を作っているか」が最も重要になる

今後の化学株を見る場合、売上高や会社規模だけでは判断しにくいと思います。

特に確認したいのは、

利益を稼いでいる製品が何か

です。

例えば売上高の多くが石油化学製品であれば、原油価格、中国企業との競争、国内需要減少などの影響を受けます。

逆に、

・半導体材料
・高機能樹脂
・電子材料
・医療材料
・特殊ガス

などで高いシェアを持っていれば、数量成長と高い利益率の両方を狙える可能性があります。

同じ「化学」という業種でも、企業ごとの中身を見ることが非常に重要です。

今後成長が期待できる分野

化学業界で今後特に成長を期待したいのは、

・半導体シリコン
・フォトレジスト
・半導体パッケージ材料
・高純度半導体ガス
・高機能樹脂
・電池材料
・全固体電池関連材料
・医療材料
・GX・リサイクル材料

などです。

中でも今後5〜10年で最も注目したいのは、AI・半導体関連材料です。

日本の化学企業は材料分野に世界的な競争力を持つ企業が多いため、AI投資拡大の恩恵を比較的受けやすいと考えています。

今後低迷が予想される分野

汎用石油化学品

最も厳しいのはエチレンや一般的な樹脂など、大量生産型の石油化学製品です。

海外での供給能力増加と国内需要の縮小が同時に進むため、日本国内の既存設備をすべて維持することは難しくなっています。

今後も設備統合、停止、事業再編が続く可能性があります。

中国企業と価格だけで競争する製品

技術的な差別化が難しい化学製品は、価格競争に巻き込まれやすくなります。

中国企業などが大規模設備を使って低価格で供給すれば、日本企業はコスト面で不利になります。

高い世界シェアや独自技術を持たない汎用品は注意したいところです。

低収益事業を多く抱える総合化学会社

総合化学会社は幅広い事業を持つことが強みである一方、不採算事業まで抱えてしまう問題があります。

今後は、

「何でも作る総合化学会社」から「勝てる分野へ集中する化学会社」

への転換が必要になると考えています。

今後有望な銘柄

① 信越化学工業(4063)

化学業界で本命として最も注目したいのが信越化学工業です。

信越化学の強みは、世界的な競争力を持つ製品を複数保有していることです。

主な製品には、

・半導体シリコン
・フォトレジスト
・フォトマスクブランクス
・半導体封止材料
・シリコーン
・塩化ビニル樹脂
・レアアース磁石

などがあります。

特に注目したいのが半導体材料です。

半導体シリコンだけでなく、先端半導体製造に使用されるEUV対応フォトレジストまで展開しています。

会社側も2025年度について、インフラ材料事業には強い逆風があった一方、電子材料事業では成長を続けたとしています。

2026年9月4日の終値は5,786円、予想PER20.48倍、PBR2.36倍、予想配当利回り2.00%です。

年初来高値7,930円からはかなり調整しています。

成長性:★★★★★
テーマ性:★★★★★
収益力:★★★★★
割安度:★★★☆☆
株主還元:★★★★☆

総合投資判断:★★★★★

極端な割安株ではありません。

しかし半導体材料を中心とする技術力、収益力、財務力を総合すると、化学業界では最も安心して長期成長を期待しやすい企業だと考えています。

② レゾナック・ホールディングス(4004)

成長性だけなら、信越化学以上に注目したい部分があるのがレゾナックです。

特に強いのが半導体の後工程材料です。

AI半導体では複数のチップやHBMを組み合わせる先端パッケージが重要になっており、レゾナックはこの分野を重点的に強化しています。

2026年4月には次世代半導体パッケージの研究開発拠点を開設し、生成AIや自動運転などによる需要拡大を取り込もうとしています。

さらに半導体用高純度フッ化水素ガスの生産体制強化なども進めています。

2026年9月4日の終値は15,530円、予想PER25.04倍、PBR3.74倍、予想配当利回り0.42%です。

2026年1月の年初来安値6,635円からはすでに大きく上昇しており、現在の株価では割安感はかなり小さくなっています。

成長性:★★★★★
テーマ性:★★★★★
収益力:★★★★★
割安度:★★☆☆☆
株主還元:★★☆☆☆

総合投資判断:★★★★★

AI半導体材料というテーマ性では今回の4社で最も強い銘柄です。

ただし株価もすでに大きく評価されているため、「企業として有望」と「今すぐ株を買いやすい」は分けて考えたいところです。

③ 日本酸素ホールディングス(4091)

日本酸素ホールディングスも化学業界では注目したい企業です。

主力は産業ガスですが、今後重要になるのが半導体向けのエレクトロニクス事業です。

2026年に始まった中期経営計画「Next Innovation 2030」では、

・産業ガス事業の収益力強化
・エレクトロニクス事業の拡大
・将来の成長ドライバー創出

を重点戦略にしています。

特に半導体向けでは、高純度ガスや特殊材料ガスだけでなく、設備やエンジニアリングを含めた供給体制を世界で拡大する方針です。

産業ガスは一度顧客工場へ供給設備が入れば継続的な取引になりやすいため、半導体関連の中でも比較的安定したビジネスです。

2026年9月4日の終値は5,471円、予想PER18.08倍、PBR1.87倍、予想配当利回り1.21%です。

成長性:★★★★☆
テーマ性:★★★★★
収益力:★★★★★
割安度:★★★☆☆
株主還元:★★★☆☆

総合投資判断:★★★★☆

派手な半導体株ではありませんが、AI・半導体工場の増加を継続的なガス需要として取り込める点が魅力です。

長期的に利益を積み上げるタイプの化学株として評価しています。

④ 三菱ケミカルグループ(4188)

三菱ケミカルグループは、今回の4社では最も「変化」に期待する銘柄です。

これまでの問題は、石油化学を含む幅広い事業を抱え、企業規模の大きさを十分な収益力につなげられていなかったことです。

現在は事業ポートフォリオを大きく見直しています。

2026年度以降は「守り」から「攻め」へ転換し、生成AI、データセンター、モビリティなどを成長機会として、次世代・成長事業へ経営資源を重点配分する方針です。

2026年度のスペシャリティマテリアルズでは、半導体を含む情報電子事業などが利益成長を牽引し、コア営業利益900億円を見込んでいます。

一方、石油化学については分社化や他社との連携まで含めた構造改革を進めています。

2026年9月4日の終値は1,237.5円、予想PER13.24倍、PBR0.92倍、予想配当利回り2.59%です。

成長性:★★★★☆
テーマ性:★★★★★
収益力:★★★☆☆
割安度:★★★★★
株主還元:★★★★☆

総合投資判断:★★★★☆

信越化学のような完成度の高い企業ではありません。

ただしPBR1倍を下回る株価で構造改革が成功すれば、利益改善と株価評価の見直しを同時に狙える可能性があります。

今回の4社では最も「ターンアラウンド型」の銘柄です。

まとめ

化学業界は、今後すべての企業が同じ方向へ成長する業界ではありません。

汎用石油化学品については、国内需要の縮小と海外の供給過剰によって厳しい競争が続く可能性があります。

そのためナフサクラッカーを中心とする国内石油化学設備では、今後も統合や再編が進んでいくでしょう。

一方、日本の化学会社が世界的な競争力を持つ、

・半導体材料
・電子材料
・先端パッケージ材料
・産業ガス
・高機能樹脂
・電池材料
・医療材料

などには大きな成長余地があります。

特に生成AIの拡大によって半導体性能がさらに向上すれば、それに必要な材料の高度化も続きます。

私は、化学業界の将来性を5段階で評価するなら「4」と考えています。

今後5〜10年では「化学業界全体が伸びる」というより、汎用品を減らし、半導体・電子材料など高付加価値事業へ移行できる企業が大きく伸びる業界になると考えています。

今回取り上げた4銘柄を、今後の成長性と株価上昇余地を総合して順位付けするなら、1位 信越化学工業(4063)、2位 レゾナック・ホールディングス(4004)、3位 日本酸素ホールディングス(4091)、4位 三菱ケミカルグループ(4188)と考えています。

本命は信越化学工業です。

半導体シリコン、フォトレジスト、シリコーンなど複数の世界競争力の高い製品を持ち、AI・半導体市場の成長を長期間取り込める可能性があります。

年初来高値から株価が調整していることもあり、企業の質と現在の株価水準を合わせて考えると最も評価しやすい銘柄です。

対抗はレゾナック・ホールディングスです。

AI半導体の先端パッケージ材料という、今後数年間で特に伸びる可能性のある分野を持っています。

ただし2026年に株価が大きく上昇しているため、現在は信越化学より買い場を慎重に見たいと考えています。

日本酸素ホールディングスは、半導体需要増加を高純度ガスという継続収益につなげられる点が魅力です。

三菱ケミカルグループは、今回の4社では最も割安感があります。石油化学の構造改革とスペシャリティ材料への転換が進めば、PBR1倍割れからの評価修正も期待できます。

化学業界は今後、「石油から大量に化学製品を作る産業」から、「AI・半導体・電池・医療などに不可欠な高機能材料を作る産業」へと、中心となる収益源がさらに変化していくと考えています。

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