非鉄金属業界の今後はどうなる?
非鉄金属業界について、私は今後3~5年を「強気」と見ています。
非鉄金属というと、
銅
金
亜鉛
ニッケル
アルミニウム
などの商品市況に左右される景気敏感業界というイメージがあります。
もちろん現在でもその面は残っています。
しかし日本の非鉄金属企業を見ると、実際にはかなり事業内容が変わっています。
光ファイバー
データセンター配線
海底ケーブル
高圧電力ケーブル
車載ワイヤーハーネス
半導体材料
電子材料
リサイクル
など、AI・電力・半導体・自動車に深く関わる企業が多くなっています。
そのため私は現在の非鉄金属業界を、
「銅価格に賭ける業界」ではなく「電化社会のインフラを供給する業界」
として見ています。
銅はAI時代でも重要な資源
今後の非鉄金属業界で中心になるのは銅です。
銅は電気を流すため、
送電網
データセンター
EV
モーター
再生可能エネルギー
蓄電池
工場
など幅広い分野で使用されます。
IEAの2026年版「Global Critical Minerals Outlook」では、銅需要は2040年までに約700万トン増える見通しです。
一方、現在計画されている鉱山開発だけでは2035年に必要な銅供給量に対して約25%不足する可能性があるとしています。
つまり銅は短期的には価格変動があっても、中長期的には供給不足になりやすい資源です。
私はここを非鉄金属株の長期的な下支え材料と考えています。
データセンターで「電線」と「光」が同時に伸びる
AIデータセンターでは大量の電力が必要です。
IEAは世界のデータセンター電力消費量について、2030年には約945TWhと、現在から2倍以上へ増えると予測しています。
データセンターには、
大量の電力を運ぶ電線
サーバー間をつなぐ光ファイバー
高速通信部品
冷却設備
が必要です。
つまりAI投資が増えるほど、
銅線+光通信
の両方に需要が発生します。
ここで非常に有利なのが、
住友電気工業
フジクラ
古河電気工業
です。
この3社は非鉄金属に分類されていますが、実際にはAIインフラ企業としての性格がかなり強くなっています。
フジクラは「電線会社」からAI光通信企業へ
その象徴がフジクラです。
現在のフジクラの利益を牽引しているのは、昔ながらの電線ではなく情報通信事業です。
AIデータセンターではGPU同士、サーバー同士を大量の高速光通信で接続する必要があります。
データ量が増えるほど、
光ファイバー
光ケーブル
高密度光配線
の需要が増えます。
2027年3月期第1四半期のフジクラは、
売上高 4,020億円 50.1%増
営業利益 1,048億円 155.1%増
経常利益 1,115億円 166.8%増
純利益 804億円 156.8%増
となりました。
営業利益が前年の2.5倍以上です。
非鉄金属株というより、現在は完全にAIインフラ成長株として評価されています。
電力網更新も長期テーマ
もう一つ大きいのが電力網です。
AIデータセンターだけではありません。
再生可能エネルギー
EV
蓄電池
半導体工場
などが増えるほど、電気を運ぶ送配電設備が必要になります。
そのため、
高圧電力ケーブル
海底ケーブル
変電設備
への需要も増えます。
住友電工は電力ケーブルに加えて、
車載ワイヤーハーネス
光通信
電子部品
産業素材
まで事業を持っています。
AIだけ、EVだけ、銅価格だけに依存しない点が強みです。
EV・HVでも銅使用量は増える
EVの普及スピードについては以前より慎重な見方も増えています。
しかし私は、EV販売台数だけで銅需要を考える必要はないと思います。
ハイブリッド車でも、
モーター
インバーター
高電圧配線
バッテリー
が必要です。
さらに普通の自動車でもADAS、自動運転、車載コンピューターが増えています。
つまり、
ガソリン車
HV
PHEV
EV
のどれが伸びても、自動車の電装化は進みます。
この点でも車載ワイヤーハーネス世界大手の住友電工には追い風があります。
半導体材料ではJX金属が面白い
非鉄金属業界でもう一つ大きな成長分野が半導体材料です。
JX金属は銅製錬会社というイメージがありますが、現在は高機能材料企業への転換を進めています。
半導体用スパッタリングターゲット
高純度金属
圧延銅箔
各種電子材料
などを展開しています。
2026年7月には韓国で半導体用スパッタリングターゲットの加工能力増強を発表。
さらにAIデータセンター市場拡大を受け、漏水検知システムの生産能力増強も進めています。
つまりJX金属は、
銅+半導体+AIデータセンター
という複数の成長テーマを持っています。
リサイクルも非鉄金属の重要テーマ
銅などの資源が不足するほど、リサイクルの重要性も高まります。
鉱山を新しく開発するには長い時間が必要です。
一方、
廃家電
自動車
電子基板
産業廃棄物
などから金属を回収できれば、国内で資源を循環できます。
ここで強いのがDOWAホールディングスです。
DOWAは、
製錬
金属加工
電子材料
環境・リサイクル
を持っています。
特に環境・リサイクル事業は単なる補助事業ではなく、利益を生む重要事業へ成長しています。
銅・金などの価格上昇と資源循環の両方を取れる点を評価しています。
最大のリスクは金属市況
一方、非鉄金属業界には明確なリスクがあります。
それが商品価格です。
銅
金
銀
亜鉛
などの価格が上昇すれば利益が増える会社が多い一方、価格が急落すれば利益も落ちます。
さらにIEAは2026年の銅市場について、鉱石不足によって製錬加工賃が歴史的低水準まで下落していると指摘しています。
2026年の年間TC/RCベンチマークは1トン当たり0ドルとなりました。
つまり、
「銅価格が上がれば製錬会社は全部儲かる」
という単純な構造ではありません。
私は今後の非鉄金属株では、鉱山・製錬だけに依存する企業より、
高付加価値製品へ加工して販売できる企業
を高く評価します。
非鉄金属株を見るための投資判断軸
今回は、
「成長性」
「AI・データセンター恩恵」
「電力・EV・半導体対応」
「株価水準」
「収益力・株主還元」
の5項目で評価します。
特に今回はキャピタルゲインを重視するため、将来性だけでなく、現在のPER・PBRにすでにどこまで期待が織り込まれているかを重視します。
有望銘柄① 住友電気工業(5802)
今回の本命は住友電気工業です。
私は現在の非鉄金属株で最もバランスが良いと考えています。
事業は非常に幅広く、
ワイヤーハーネス
光ファイバー
電力ケーブル
電子部品
半導体関連
産業素材
などを持っています。
つまり、
AIデータセンター
電力網
EV・HV
自動運転
通信インフラ
の複数テーマへ同時に乗れます。
2027年3月期第1四半期は、
売上高 1兆3,306億円 15.9%増
営業利益 971億円 61.0%増
経常利益 1,030億円 66.6%増
純利益 664億円 89.1%増
となりました。
しかも会社は第1四半期発表時に通期予想を上方修正。
営業利益予想を4,250億円から4,500億円へ、経常利益を4,320億円から4,600億円へ引き上げています。
売上高15.9%増に対して営業利益61%増。
利益率改善が非常に強い決算です。
投資判断軸
成長性:★★★★★
AI・データセンター恩恵:★★★★★
電力・EV・半導体対応:★★★★★
株価水準:★★★★★
収益力・株主還元:★★★★★
総合投資判断:強気
2026年9月4日の終値は2,133円。
予想PER19.57倍、PBR2.35倍です。
年初来高値3,712円からは約43%下にあります。
PER20倍弱なので昔の電線株としては高く見えます。
しかし現在の住友電工は、
AI通信
電力インフラ
車載
電子材料
を持ち、第1四半期営業利益が61%増えています。
フジクラやJX金属よりPBRも低いため、現在価格からのキャピタルゲインでは最もバランスが良いと考え1位にします。
有望銘柄② JX金属(5016)
2位はJX金属です。
今回、長期的な成長力ではかなり高く評価しています。
JX金属は2025年に上場した企業なので、まだ「ENEOSグループの銅会社」というイメージも強いかもしれません。
しかし今後の成長の中心は電子材料です。
特に、
半導体用スパッタリングターゲット
高純度金属
銅箔
先端材料
などがあります。
AI半導体の高性能化が進むほど、材料の純度や加工精度も重要になります。
そして2027年3月期第1四半期の業績が非常に強いです。
売上高 2,606億円 36.2%増
営業利益 814億円 175.5%増
税引前利益 796億円 179.9%増
純利益 531億円 181.3%増
となりました。
営業利益が前年の約2.8倍です。
会社は同時に通期業績予想も修正しています。
投資判断軸
成長性:★★★★★
AI・データセンター恩恵:★★★★★
電力・EV・半導体対応:★★★★★
株価水準:★★★☆☆
収益力・株主還元:★★★★☆
総合投資判断:強気
2026年9月4日の終値は3,619円。
予想PER23.98倍、PBR5.36倍です。
年初来高値5,828円からは約38%下落しています。
株価はかなり調整しました。
ただしPBR5倍超なので、住友電工より成長期待はかなり株価へ織り込まれています。
そのため1位にはしませんでした。
一方、半導体材料企業として利益成長が続けば、将来的には「非鉄金属企業」ではなく「半導体材料企業」のバリュエーションで評価される可能性があります。
私はJX金属を、
「銅株ではなく、半導体材料成長株」
として2位にします。
有望銘柄③ フジクラ(5803)
3位はフジクラです。
企業の成長率だけなら今回1位です。
AIデータセンター関連では、日本株でも代表的な銘柄になりました。
2027年3月期第1四半期は、
売上高 4,020億円 50.1%増
営業利益 1,048億円 155.1%増
経常利益 1,115億円 166.8%増
純利益 804億円 156.8%増
です。
営業利益率は約26%。
もはや普通の電線メーカーの利益率ではありません。
AIデータセンター向け光配線の高付加価値化が利益を大きく押し上げています。
投資判断軸
成長性:★★★★★
AI・データセンター恩恵:★★★★★
電力・EV・半導体対応:★★★★☆
株価水準:★★☆☆☆
収益力・株主還元:★★★★★
総合投資判断:やや強気~強気
2026年9月4日の終値は5,053円。
予想PER25.67倍、PBRは13.75倍です。
年初来高値7,933円からは約36%調整しています。
高値から3割以上下がったので以前よりかなり買いやすくなりました。
しかしPBR13倍台は、今回の候補では圧倒的に高い水準です。
つまり市場は、
AIデータセンター向け光通信需要が長期間伸び続ける
ことをかなり織り込んでいます。
業績が期待を上回り続ければ再び高値を狙えると思います。
一方、成長率が少し鈍化しただけでもPER・PBRが下がる可能性があります。
そのため企業成長力は★★★★★ですが、現在の株価水準を考慮して3位にします。
有望銘柄④ DOWAホールディングス(5714)
4位はDOWAホールディングスです。
今回の4社では最も「非鉄金属らしい」企業です。
事業は、
製錬
金属加工
電子材料
熱処理
環境・リサイクル
などです。
最大の魅力は現在の株価水準です。
2027年3月期第1四半期は、
売上高 2,534億円 58.2%増
営業利益 247億円 281.0%増
経常利益 325億円 277.5%増
純利益 235億円 266.4%増
となりました。
前年同期が低かった反動も大きいため、この成長率が年間で続くとは考えていません。
ただし金属価格上昇に加え、環境・リサイクル事業という長期テーマがあります。
投資判断軸
成長性:★★★★☆
AI・データセンター恩恵:★★★☆☆
電力・EV・半導体対応:★★★★☆
株価水準:★★★★★
収益力・株主還元:★★★★★
総合投資判断:やや強気~強気
2026年9月4日の終値は9,254円。
予想PER9.60倍、PBR1.19倍、予想配当利回り3.65%です。
年初来高値12,380円から約25%下です。
今回の候補で最も株価は安いです。
PER10倍以下
PBR1倍台
配当利回り3%台
という条件は魅力があります。
ただしフジクラやJX金属のようなAI成長株ではありません。
金属市況の影響が大きいため、
「成長株」というより「割安+資源循環株」
として4位にします。
参考銘柄 古河電気工業(5801)
古河電気工業もかなり強いです。
むしろ直近業績だけなら上位4社へ入れてもおかしくありません。
2027年3月期第1四半期は、
売上高 3,652億円 24.3%増
営業利益 255億円 約3.1倍
経常利益 310億円 約4倍
純利益 222億円 約4.4倍
となりました。
さらに通期経常利益予想を、
1,000億円
↓
1,430億円
へ43%上方修正。
前期比88.5%増となる過去最高益予想です。
内容は非常に強いです。
光ファイバーや光ケーブルについても2026年8月に追加の生産設備投資を発表しています。
ただし株価評価も高くなりました。
2026年9月4日の終値は3,844円。
予想PER25.76倍、PBR6.19倍。
1月9日の年初来安値965円からはすでに約4倍です。
年初来高値6,241円からは約38%下がっていますが、企業価値自体が大きく再評価された後です。
今後さらに利益予想が上方修正されれば上位候補ですが、現時点では参考銘柄とします。
非鉄金属業界の有望銘柄ランキング
1位 住友電気工業(5802)
AI通信+電力ケーブル+車載。1Q営業利益61%増、PER19倍台・PBR2倍台で総合力が高い。
2位 JX金属(5016)
半導体材料+銅+AI。1Q営業利益175%増。高成長だがPBR5倍台を考慮。
3位 フジクラ(5803)
AIデータセンター向け光通信の本命。1Q営業利益155%増。ただしPBR13倍台と期待も大きい。
4位 DOWAホールディングス(5714)
金属+リサイクル。1Q営業利益約3.8倍、PER9倍台・PBR1倍台・高配当。
参考 古河電気工業(5801)
光通信需要で業績急拡大。通期経常利益を43%上方修正したが、株価も大きく再評価済み。
今回かなり悩むのは、フジクラを1位にしないことです。
成長率だけならフジクラが最も強いです。
しかし現在の株価を見ると、
住友電工
PER19.6倍・PBR2.35倍
JX金属
PER24.0倍・PBR5.36倍
フジクラ
PER25.7倍・PBR13.75倍
です。
フジクラにはすでに非常に高い成長期待が入っています。
一方、住友電工も第1四半期営業利益61%増なのに、PBRは2倍台です。
しかも、
AI
電力
自動車
通信
へ事業が分散しています。
そのため**「会社として一番伸びる可能性」ではフジクラ、「現在株価からのリスクと上昇余地のバランス」では住友電工**と判断しました。
またJX金属もかなり重要です。
今後、半導体材料事業の利益比率が上がれば、銅会社としての評価ではなく半導体材料企業としてPER・PBRがさらに上昇する可能性があります。
まとめ
非鉄金属業界の将来性を5段階で評価するなら「5」です。
理由は、今後の世界経済で必要になるもののほとんどが電気を使うからです。
AIデータセンター
送電網
再生可能エネルギー
EV・HV
蓄電池
半導体工場
ロボット
には銅や高機能非鉄材料が必要です。
IEAも銅について、2040年までに約700万トンの需要増を見込み、2035年には現在計画されている供給量が必要量を約25%下回る可能性を示しています。
ただし私は、銅価格だけを予想して非鉄金属株を買うつもりはありません。
これから重視したいのは、
「銅を高付加価値製品へ変えられる」「AIデータセンターへ売れる」「電力網へ売れる」「半導体材料を持つ」「EV・HVのどちらでも使われる」「リサイクル事業を持つ」「利益成長に対して株価が高すぎない」
という企業です。
その意味では、現在の非鉄金属業界は昔の資源株とはかなり違います。
私は今後、
「鉱山・製錬企業」より「銅・金属をAI・電力・半導体向けの高付加価値製品へ変えられる企業」
の方が大きな企業価値成長を狙いやすいと考えています。
現時点の本命は住友電気工業(5802)。
半導体材料成長を狙うならJX金属(5016)。
AIデータセンターの成長率を最優先するならフジクラ(5803)。
割安・高配当・資源循環まで含めて狙うならDOWAホールディングス(5714)です。
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