証券・商品先物取引業界は今後どうなる?
証券・商品先物取引業には、
・総合証券
・ネット証券
・投資銀行
・資産運用
・商品先物
・FX
・株価指数先物・オプション
・CFD
などを扱う企業が含まれます。
以前は、
株式市場が上昇する
↓
売買が増える
↓
証券会社が儲かる
という非常に分かりやすい市況産業でした。
しかし現在では株式売買手数料の無料化が進み、単純に「何回売買してもらうか」だけでは利益を伸ばしにくくなっています。
その代わりに重要になっているのが、
・預かり資産
・投資信託
・ウェルスマネジメント
・M&A
・海外投資銀行
・銀行
・商品・デリバティブ
などです。
私は、今後5〜10年を見ると、証券・商品先物取引業界は比較的有望な業界だと考えています。
特に、
資産形成+富裕層ビジネス+デリバティブ
という3つの市場に注目しています。
新NISAが証券業界の顧客層を広げる
証券業界最大の長期テーマは、やはり新NISAです。
以前の日本では、
給料
↓
銀行預金
↓
定期預金
という資産形成が一般的でした。
しかし現在では、
給料
↓
NISA
↓
投資信託
↓
日本株・米国株
という資金の流れが広がっています。
証券会社にとって特に重要なのは、新しく投資を始める20代、30代の顧客です。
一度口座を開設すれば、その後30年、40年と投資を続ける可能性があります。
つまり新NISAは短期的な株式売買増加ではなく、
証券会社の顧客基盤そのものを長期的に拡大する制度
だと考えています。
売買手数料無料化でも証券会社は成長できる
一見すると株式売買手数料の無料化は、証券会社にとって大きなマイナスです。
しかし大手ネット証券では考え方が変わっています。
株式取引
↓
口座獲得
↓
投資信託
↓
信用取引
↓
FX
↓
銀行
↓
保険
と利用してもらえば、株式売買手数料を無料にしてもグループ全体では利益を得られます。
つまり証券口座そのものが、
金融サービスへの入口
になっています。
このモデルで特に強いのがSBIホールディングスです。
SBI証券は1,600万口座を突破
SBIグループの証券総合口座数は、2026年5月に1,600万口座を突破しました。
2025年11月に1,500万口座へ到達してから、わずか約5カ月でさらに100万口座増えています。
この巨大な顧客基盤を、
・SBI証券
・SBI新生銀行
・保険
・資産運用
・暗号資産
などへつなげることができます。
一人の顧客から証券手数料を取るのではなく、
顧客一人当たりの金融取引全体を増やす
ことがSBIの成長戦略になります。
富裕層ビジネスが証券会社を安定させる
対面型の大手証券会社では、ウェルスマネジメントが重要になっています。
富裕層には、
・株式
・債券
・投資信託
・不動産
・相続
・事業承継
・M&A
など多くの金融ニーズがあります。
例えば企業経営者が会社を売却して10億円を手にした場合、その10億円を証券会社が長期間運用できれば、大きな継続収益になります。
そのため今後は、
株を何回売買してもらったか
ではなく、
顧客からいくら金融資産を預かっているか
が重要になります。
野村はストック型収益を大きく増やす
この方向へ大きく変化しているのが野村ホールディングスです。
2026年3月期は、
税前利益5,398億円
ROE10.1%
となりました。
ウェルスマネジメントではストック型ビジネスが拡大し、投資銀行やグローバルマーケッツも好調でした。
さらに2026年5月には2030年目標を引き上げ、
ROE10〜12%以上
税前利益7,500億円超
を目指すことを発表しています。
従来の野村よりも、市況変動に左右されにくい利益構造へ変わりつつあると考えています。
日本企業のM&A増加も追い風
証券会社の成長分野として重要なのがM&Aです。
日本では、
・経営者の高齢化
・事業承継
・親子上場解消
・非公開化
・事業売却
・海外企業買収
などが増えています。
企業がM&Aを行えば、証券会社や投資銀行にはアドバイザリー手数料が入ります。
大型案件では非常に大きな収益になります。
さらに東証による資本効率改善の要請から、
・不採算事業売却
・政策保有株式縮減
・自社株買い
・企業再編
なども増えています。
今後日本企業の再編が進むほど、野村や大和証券などには大きなビジネス機会があります。
大和証券もストック収益を増やす
大和証券グループも、相場依存型の収益構造からの転換を進めています。
2026年度の目標は、
経常利益2,400億円以上
ROE10%程度
ベース利益1,500億円
です。
ここで注目したいのが「ベース利益」です。
ウェルスマネジメントやアセットマネジメントなどから得られる、比較的安定した利益を意味します。
相場が良い時だけ大きく儲けるのではなく、
毎年ある程度の利益を積み上げられる証券会社
へ変わろうとしています。
商品先物には証券とは違う成長材料がある
「証券・商品先物取引業」という業種を見る場合、商品先物にも注目する必要があります。
対象になる商品には、
・金
・銀
・プラチナ
・原油
・ゴム
・農産物
などがあります。
商品先物には、
価格上昇を予想して買う
だけでなく、
価格下落を予想して売る
取引もあります。
そのため株式市場とは違った投資需要があります。
金価格上昇は商品先物市場の大きなテーマ
2020年代後半に特に注目したい商品が金です。
金には、
・インフレ
・地政学リスク
・通貨価値低下
・中央銀行の金購入
などを背景に資金が流入しやすい特徴があります。
株式市場が不安定になると、
株式
↓
債券
↓
金
と資産を分散する投資家も増えます。
金価格の変動が大きくなるほど、
・金先物
・金CFD
・金地金
などの取引が活発になる可能性があります。
商品先物会社にとっては大きな収益機会になります。
原油・天然ガスも地政学で大きく動く
商品先物ではエネルギー価格も重要です。
例えば、
・中東情勢
・OPECの生産政策
・ロシア情勢
・世界景気
などによって原油価格は大きく動きます。
企業側でも、
燃料価格が上昇すると困る
↓
先物で価格を固定する
というリスクヘッジ需要があります。
商品先物は投機だけではなく、
企業が原材料価格を安定させるための市場
でもあります。
商品先物市場は巨大化より「必要性」が高まる
一方、日本の商品先物市場が株式市場のように急拡大するとは考えていません。
個人投資家向け商品としては、
・株式
・FX
・暗号資産
など競合する商品が非常に多いからです。
そのため商品先物会社については、
取引高そのものの長期成長より、金や原油などの商品価格が大きく動く局面で利益が増える企業
として見た方がよいと思います。
豊トラスティ証券は商品先物の代表的な上場企業
商品先物分野で注目したいのが豊トラスティ証券です。
同社では、
・金
・白金
・原油などの商品先物
・くりっく365
・くりっく株365
などを扱っています。
2026年3月期は商品市場の活発化などもあり、
営業収益129.9億円
経常利益63.7億円
純利益44.2億円
と大幅な増益となりました。
一方、2027年3月期第1四半期は営業収益17億円、経常利益4.37億円と前年同期から減少しています。
つまり非常に分かりやすく、
商品・金融市場の活況によって利益が大きく変わる会社
だと言えます。
デリバティブは機関投資家にも不可欠
先物・オプションは個人投資家だけが利用するものではありません。
機関投資家は、
株式を1兆円保有
↓
相場急落リスクを抑えたい
↓
TOPIX先物を売る
といったリスク管理を行います。
企業も、
ドル高が困る
↓
為替をヘッジする
原油高が困る
↓
商品先物を利用する
という取引を行います。
つまり金融市場が高度化するほど、
先物・オプション市場そのものの重要性は高まる
と考えています。
AIは証券・先物取引をさらに変える
証券業界とAIの相性は非常に良いと考えています。
AIを使えば、
・企業分析
・市場分析
・資産配分
・顧客提案
・不正取引検知
・リスク管理
・カスタマーサポート
などを自動化できます。
例えば富裕層向け営業でも、
顧客資産
+
年齢
+
投資履歴
+
相場環境
からAIが投資提案の候補を作れるようになります。
大手証券会社は人件費が大きいため、AIによる生産性改善がROE上昇につながる可能性があります。
ネット証券では規模の差がさらに広がる
ネット証券は店舗を大量に持つ必要がありません。
システムを構築すれば、
100万口座
↓
500万口座
↓
1,000万口座
と顧客が増えても、店舗数を同じように増やす必要はありません。
そのため規模が大きくなるほど1口座当たりのコストを抑えやすくなります。
今後は、
大手ネット証券への顧客集中
がさらに進む可能性があります。
金利正常化で債券ビジネスも復活する
日本では長期間、超低金利が続いていました。
そのため国債や社債を個人へ販売しても利回りが低く、魅力を出しにくい状態でした。
しかし金利が正常化すれば、
・国債
・社債
・外債
・債券ファンド
などの商品を提案しやすくなります。
証券会社にとって、
株式だけ
↓
株式+債券+投資信託
と商品構成を広げられることはプラスです。
今後成長が期待できる分野
証券・商品先物取引業界で今後特に成長を期待したいのは、
・新NISA
・ウェルスマネジメント
・アセットマネジメント
・M&A
・投資銀行
・米国株・海外投資
・ネット証券
・金・商品デリバティブ
・AI金融サービス
・FX、CFD
などです。
特に私は、
資産運用+富裕層+デリバティブ
の3分野に注目しています。
単純な株式売買手数料に依存せず、顧客資産と金融市場全体から利益を得られる会社が強くなると考えています。
今後低迷が予想される分野
株式売買手数料だけに依存する証券会社
ネット証券の手数料無料化によって、単純な株式売買手数料の価値は低下しています。
投資信託、信用、銀行、資産運用など別の利益源が必要になります。
国内株だけに依存する証券会社
日本株市場が低迷すると利益も急減します。
海外、M&A、資産運用など複数の収益源を持つ企業との差が広がるでしょう。
コストの高い店舗型営業
対面営業そのものが不要になるわけではありません。
しかし単純な株式注文を店舗で受けるだけではネット証券に勝てません。
今後は富裕層向けの高度なコンサルティングへ変える必要があります。
商品先物一本足の企業
金や原油価格が大きく動けば利益を伸ばせますが、市場が落ち着けば取引量も減少します。
商品先物だけでは利益変動が大きいため、FXや証券などへ収益源を広げられる企業が有利になります。
今後有望な銘柄
① SBIホールディングス(8473)
今回の本命はSBIホールディングスです。
最大の魅力は、
1,600万口座を超える証券顧客を金融サービス全体へ広げられること
です。
SBI証券だけでなく、
・銀行
・保険
・資産運用
・暗号資産
などを持っています。
さらに三井住友フィナンシャルグループとの連携によって、銀行・カード利用者から証券利用者を増やすこともできます。
2027年3月期については中間配当30円を予定し、年間では前期実績換算の95円以上を目指す方針を示しています。
2026年9月4日の終値は3,390円。
PBRは1.17倍です。
会社予想PERは開示されていません。
年初来高値3,866円からは約12%下の水準です。
成長性:★★★★★
テーマ性:★★★★★
収益力:★★★★★
割安度:★★★★★
株主還元:★★★★★
総合投資判断:★★★★★
証券会社単体ではなく、巨大な金融プラットフォームとして成長できる点を最も高く評価しています。
PBRも1倍台前半にとどまっており、顧客基盤の拡大がグループ全体の利益へつながれば、現在より高い評価を受ける可能性があります。
② 野村ホールディングス(8604)
2番目は野村ホールディングスです。
業績の強さでは今回の4社でトップクラスです。
2026年3月期は、
税前利益5,398億円
純利益3,621億円
ROE10.1%
となりました。
さらに2030年目標を、
ROE10〜12%以上
税前利益7,500億円超
へ引き上げています。
ウェルスマネジメント、資産運用、M&A、海外投資銀行という複数の成長エンジンを持っています。
2026年9月4日の終値は1,669円。
PBRは1.27倍です。
同日には1,678.5円まで上昇し、年初来高値を更新しました。
2026年3月期の年間配当は51円でした。
成長性:★★★★★
テーマ性:★★★★★
収益力:★★★★★
割安度:★★★★☆
株主還元:★★★★☆
総合投資判断:★★★★★
現在の利益成長だけなら1位としてもよい企業です。
ただし株価が年初来高値圏にあるため、現在からの上昇余地を重視してSBIを上位としました。
調整局面ではかなり注目したい銘柄です。
③ 大和証券グループ本社(8601)
3番目は大和証券グループ本社です。
大和証券の魅力は、
収益の安定化を重視していること
です。
2026年度に、
経常利益2,400億円以上
ROE10%程度
ベース利益1,500億円
を目標としています。
ウェルスマネジメントやアセットマネジメントを拡大することで、株式市場の売買高だけに左右されない利益構造を作っています。
2026年9月4日の終値は1,867円。
PBR1.44倍、予想配当44円、予想配当利回り2.36%です。
同日には1,898円を付け、年初来高値を更新しました。
成長性:★★★★☆
テーマ性:★★★★★
収益力:★★★★★
割安度:★★★☆☆
株主還元:★★★★★
総合投資判断:★★★★☆
野村ほど大きな利益成長を期待する銘柄ではありませんが、ストック収益の増加によってROE10%を安定的に達成できれば、企業価値はさらに高まる可能性があります。
長期保有では安定感のある証券株だと考えています。
④ 豊トラスティ証券(8747)
4番目は商品先物関連から豊トラスティ証券を選びます。
今回の業種が「証券・商品先物取引業」であるため、商品先物市場そのものの成長を狙える銘柄として注目しています。
同社では、
・金
・白金
・原油などの商品先物
・くりっく365
・くりっく株365
などを取り扱っています。
2026年3月期は非常に好調で、
営業収益129.9億円
経常利益63.7億円
純利益44.2億円
となりました。
一方、2027年3月期第1四半期は経常利益4.37億円と前年同期から約半減しています。
商品相場の活況度によって利益が大きく変わる点には注意が必要です。
2026年9月4日の終値は2,200円。
PBRは0.73倍。
年初来高値3,445円からは約36%下落しています。
成長性:★★★☆☆
テーマ性:★★★★★
収益力:★★★★☆
割安度:★★★★★
株主還元:★★★☆☆
総合投資判断:★★★★☆
企業規模が小さく、株式の流動性も大手証券会社とは大きく異なります。
しかし金や原油などの商品相場が再び大きく動けば、業績と株価が急変する可能性があります。
大手3社とは性格が違う、商品高・インフレ局面で注目したい小型株として4位に入れました。
まとめ
証券・商品先物取引業界は、以前のような「株式売買手数料を稼ぐ業界」から大きく変化しています。
現在の成長テーマは、
・新NISA
・資産形成
・ウェルスマネジメント
・アセットマネジメント
・M&A
・海外投資銀行
・金・原油などの商品先物
・FX、デリバティブ
・AI
などです。
特に日本では現預金として保有されている個人金融資産が大きいため、「貯蓄から投資」が長期間続けば証券会社には構造的な追い風になります。
一方、金・原油などの商品市場では、インフレや地政学リスクが高まるほどデリバティブを利用する需要も生まれます。
そのため、証券・商品先物取引業界の将来性を5段階で評価するなら「4」です。
今後5〜10年では比較的有望な業界だと考えています。
ただし大きく差がつくのは、
「取引手数料を取るだけの会社」と「顧客資産・銀行・M&A・商品取引まで含めて総合的に収益化できる会社」
の間だと思います。
今回取り上げた4銘柄を、今後の成長性と現在の株価からの上昇余地を重視して順位付けするなら、1位 SBIホールディングス(8473)、2位 野村ホールディングス(8604)、3位 大和証券グループ本社(8601)、4位 豊トラスティ証券(8747)と考えています。
本命はSBIホールディングスです。
1,600万口座という圧倒的な顧客基盤を、証券だけでなく銀行、保険、資産運用へ広げられることが最大の強みです。
PBR1倍台前半という現在の評価を考えると、金融経済圏全体の利益がさらに拡大すれば、株価上昇余地も大きいと考えています。
対抗は野村ホールディングスです。
2030年の税前利益目標を7,500億円超まで引き上げ、ROEも10〜12%以上を目指しています。
現在の業績そのものは非常に強く、株価が調整する局面ではSBI以上に魅力的になる可能性があります。
大和証券グループは、ウェルスマネジメントやアセットマネジメントを中心に安定した利益を増やしています。高成長よりもROE向上と株主還元を狙う銘柄として評価しています。
豊トラスティ証券は大手3社とはまったく違い、金などの商品市場の活況を直接取り込める銘柄です。業績変動は大きいものの、PBR0.7倍台まで株価が調整しているため、商品相場が再び活発になる局面では大きく動く可能性があります。
証券・商品先物取引業界は今後、「株を売買するための仲介産業」から、「個人・企業の資産運用、M&A、銀行、デリバティブまで扱う総合的な資本市場サービス産業」へ変化していくと考えています。
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