稲畑産業(8098)が2026年8月5日に発表した2027年3月期第1四半期決算を分析します。
売上高は2436億5500万円で前年同期比19.4%増、営業利益98億3500万円で48.8%増、経常利益101億6700万円で38.0%増、親会社株主に帰属する四半期純利益は63億7600万円で5.6%増となりました。
営業利益の伸びが非常に強く、営業利益率も前年同期の約3.2%から約4.0%へ改善しています。情報電子、化学品、生活産業、合成樹脂の主要4事業がすべて増収増益となった点も評価できます。
一方、中東情勢悪化による原材料価格上昇や顧客の在庫確保が第1四半期の売上を押し上げた面があり、会社自身も第2四半期以降の反動を警戒しています。
私は今回を、非常に強い決算ではあるものの、第1四半期の増益率をそのまま通期へ当てはめるべきではない決算と評価します。
今回の決算を5段階で評価
| 評価項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| 売上高 | ★★★★★ | 2436.55億円、19.4%増 |
| 営業利益 | ★★★★★ | 98.35億円、48.8%増 |
| 利益率 | ★★★★★ | 営業利益率3.2%→4.0%へ改善 |
| 情報電子 | ★★★★☆ | 9.5%増収、11.5%増益 |
| 化学品 | ★★★★★ | 21.4%増収、76.1%増益 |
| 生活産業 | ★★★★★ | 16.0%増収、49.1%増益 |
| 合成樹脂 | ★★★★★ | 25.3%増収、65.1%増益 |
| 通期予想 | ★★★★☆ | 営業利益275億円、5.1%増を据え置き |
| 進捗率 | ★★★★★ | 上期営業利益計画の75.7%を1Qで達成 |
| 特殊要因 | ★★★☆☆ | 中東情勢と在庫確保による一時的押し上げに注意 |
| 財務 | ★★★★☆ | 自己資本比率45.7%、運転資金増加を確認 |
| CF | ★★★☆☆ | 第1四半期CF計算書は未作成 |
| 株主還元 | ★★★★★ | 年間128円→143円へ増配予定 |
| キャピタルゲイン期待 | ★★★★★ | AI半導体+高進捗が株価材料 |
売買判断
保有 ★★★★★
追加買い ★★★★☆
売却 ★☆☆☆☆
私は稲畑産業の保有を継続します。
営業利益48.8%増に加えて主要4事業がすべて増益となり、上期営業利益計画の75%以上を第1四半期だけで稼ぎました。キャピタルゲインという面でもかなり強い内容です。
ただし中東情勢による価格上昇や在庫確保の前倒し需要もあるため、決算後の急騰を追って一気に買い増すより、押し目で追加したいです。
営業利益48.8%増、利益率も改善
売上高は2041億900万円から2436億5500万円へ19.4%増え、営業利益は66億800万円から98億3500万円へ48.8%増加しました。
売上総利益も202億5800万円から250億5100万円へ約24%増加しています。
営業利益率は約3.2%から約4.0%へ改善しました。商社ですので利益率そのものは製造業ほど高くありませんが、売上の伸びを大幅に上回って営業利益が増えている点は非常に良いです。
合成樹脂が利益成長を牽引
最大事業の合成樹脂は売上1245億2300万円で25.3%増、営業利益54億2700万円で65.1%増となりました。
中東情勢悪化による原材料価格上昇に加え、一部顧客が在庫を確保する動きもあり、販売数量・価格がともに上昇しました。
自動車関連もグローバルで増加し、特にインドで大きく伸びています。炭素繊維などの新規ビジネスやリサイクル原料も拡大しています。
全社営業利益98億円のうち54億円を合成樹脂が稼いでおり、今回最大の増益ドライバーです。
AI・半導体関連も注目
情報電子事業は売上659億2300万円で9.5%増、営業利益21億8000万円で11.5%増でした。
特に注目したいのが半導体関連です。
AI市場の活況を背景に先端半導体向け材料の販売が大幅に増加し、新規材料の販売も始まっています。フォトマスク関連も半導体・FPD向けともに増加しました。
リチウムイオン電池関連はEV販売鈍化で横ばいですが、データセンター需要を背景に定置用蓄電池向けへ取り組みを強化しています。
キャピタルゲインを考えるうえでは、AI・先端半導体・データセンターという成長市場への露出が拡大していることを評価したいです。
化学品と生活産業も大幅増益
化学品は売上21.4%増、営業利益76.1%増となりました。原材料価格上昇や代替原材料需要に加え、ウレタン材料、放熱材、塗料・インキ・接着剤などが伸びています。
生活産業も売上16.0%増、営業利益49.1%増です。
医薬品原料や再生医療関連に加え、食品では抹茶製品の輸出や水産品販売が好調でした。
特定の1事業だけではなく、主要4事業すべてが増益という点は今回の決算の強さです。
純利益5.6%増が小さく見える理由
営業利益48.8%増に対して純利益は5.6%増にとどまりました。
前年同期には投資有価証券売却益11億4100万円がありましたが、今期はありません。逆に今期は投資有価証券評価損4億2700万円を計上しています。
それでも純利益は増えています。
つまり特殊要因を除いて見ると、今回の本業は表面上の純利益5.6%増よりかなり強いです。
私は純利益より営業利益48.8%増と経常利益38.0%増を重視します。
上期営業利益の75.7%を1Qで達成
通期予想は据え置かれています。
売上高 8900億円
営業利益 275億円
経常利益 275億円
純利益 210億円
です。
第1四半期の通期進捗率は営業利益約35.8%、経常利益約37.0%、純利益約30.4%です。
さらに上期営業利益予想130億円に対しては、すでに約75.7%まで進んでいます。
第2四半期に必要な営業利益は約31億6500万円しかありません。
かなり高い進捗ですが、会社は業績予想を据え置いています。中東情勢による価格上昇や顧客の在庫確保について、第2四半期以降の反動を見ているためだと考えられます。
財務は運転資金の増加を確認
総資産は4981億円から5279億円へ増加し、自己資本比率は47.3%から45.7%へ低下しました。
売掛金は約198億円増、商品及び製品も約119億円増えています。その一方、現預金は約89億円減少し、短期借入金は約104億円増加しました。
業績悪化による借入増というより、売上拡大に伴う運転資金増加の色が強いですが、中間決算ではCFを確認したいです。
第1四半期のキャッシュ・フロー計算書は作成されていません。
年間配当は143円へ増配
今期の年間配当予想は中間70円、期末73円の143円です。
前期128円から15円増配となります。
営業利益成長だけでなく増配も続いており、株価上昇を待ちながら保有しやすい銘柄です。
私ならどう売買するか
私は稲畑産業を保有継続します。
営業利益48.8%増、主要4事業すべて増益、上期進捗75.7%という数字なら売却する理由はありません。
特に合成樹脂だけでなく、AI・先端半導体、再生医療、インド自動車市場など複数の成長材料を持っている点を評価します。
ただし第1四半期には在庫確保による前倒し需要も含まれているため、私は急騰時に追わず、押し目で追加します。
次の決算で見るポイント
最重要は、第1四半期の高成長がどこまで残るかです。
特に合成樹脂で在庫確保の反動が出るか、AI・先端半導体材料が引き続き伸びるかを確認します。
また上期営業利益130億円をどこまで上回るか、通期275億円の上方修正につながるかにも注目します。
売却を考える条件
私が売却を考えるのは、在庫確保の反動で合成樹脂の利益が急減し、情報電子など他事業でも補えなくなった場合です。
また、売掛金や在庫、借入金だけが増え続けてCFが悪化する場合、通期業績が下方修正される場合も評価を見直します。
今回の私の結論
今回の稲畑産業の第1四半期決算は、かなり強い好決算です。
売上高19.4%増、営業利益48.8%増、経常利益38.0%増。主要4事業すべてが増益となりました。
特に合成樹脂は65.1%増益、化学品76.1%増益、生活産業49.1%増益です。情報電子でもAI・先端半導体向け材料が伸びています。
一方、中東情勢による価格上昇や顧客の在庫確保という一時的な追い風もあり、第2四半期以降の反動には注意が必要です。
そのため今回の総合評価は★★★★☆とします。
私は保有を継続し、押し目では追加買いを検討します。
次の焦点は、第1四半期の前倒し要因が剥落しても営業利益の高成長を維持し、通期営業利益275億円の上方修正まで持っていけるかです。
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