全国保証が2026年8月5日に発表した2027年3月期第1四半期決算を見ていきます。今回の決算は、営業収益が前年同期比2.5%増、営業利益が0.1%増と本業はほぼ横ばいだった一方、経常利益は7.9%増、親会社株主に帰属する四半期純利益は9.4%増となりました。
一見すると「最終利益9.4%増で好決算」に見えますが、内容を分解すると少し違った姿が見えます。本業の営業利益はほぼ伸びておらず、経常利益以下の増益には資産運用利回りの向上や持分法投資利益などが寄与しています。
したがって今回は、数字そのものは悪くないものの、キャピタルゲインを狙う立場では「利益成長がさらに加速する決算」とまでは評価しにくい内容です。
今回の決算を5段階で評価
| 評価項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| 営業収益 | ★★★☆☆ | 117億7200万円、前年同期比2.5%増 |
| 営業利益 | ★★★☆☆ | 77億2400万円、0.1%増でほぼ横ばい |
| 利益率 | ★★★★☆ | 営業利益率約65.6%と非常に高水準だが前年から低下 |
| 主要事業 | ★★★★☆ | 保証債務残高は堅調に推移 |
| 経常利益 | ★★★★☆ | 7.9%増。運用利回り改善などが寄与 |
| 通期予想 | ★★★☆☆ | 増収増益予想を据え置き。ただし利益成長率は低い |
| 進捗率 | ★★★☆☆ | 営業利益約18.4%。第1四半期だけでは判断しにくい |
| 財務 | ★★★★★ | 自己資本比率49.2%、財務基盤は引き続き強固 |
| CF | ★★★☆☆ | 第1四半期CF計算書は作成されておらず詳細評価不可 |
| 株主還元 | ★★★★☆ | 年間123円予想、前期120円から増配予定 |
| 成長性 | ★★★☆☆ | 安定成長型だが、現時点で大幅な利益加速は見えにくい |
売買判断
保有 ★★★★☆
新規買い ★★★☆☆
売却 ★★☆☆☆
今回の決算だけで売却を急ぐ必要はないと考えます。全国保証らしい安定した収益力と高い利益率、強固な財務は維持されています。
ただし、キャピタルゲインを重視する場合、新規買いは★★★☆☆です。
営業利益が前年同期比0.1%増にとどまっているため、今回の決算をきっかけに業績成長期待が大幅に高まる内容ではありません。配当や安定性を重視する投資では魅力がありますが、大きな値上がりを狙う場合は、今後の営業利益の伸びや通期予想の上方修正が欲しいところです。
第1四半期は増収増益だが、本業はほぼ横ばい
2027年3月期第1四半期の営業収益は117億7200万円で、前年同期の114億8100万円から2.5%増加しました。
営業利益は77億2400万円で、前年同期の77億1200万円から0.1%増です。
経常利益は93億3500万円で7.9%増、親会社株主に帰属する四半期純利益は65億6200万円で9.4%増となりました。
ここで最も重要なのは、営業収益が2.5%増えているのに対して営業利益は0.1%しか増えていないことです。
単純計算した営業利益率は約65.6%です。
前年同期は約67.2%でしたので、利益率は約1.6ポイント低下しています。
もちろん営業利益率65%超という水準自体は非常に高いのですが、今回の決算を見る場合、「利益率がさらに改善した」という内容ではありません。
したがって、今回の決算を評価するときには純利益9.4%増だけを見て「かなり強い決算」と判断しない方がよいと思います。
なぜ営業利益が伸びなかったのか
会社は営業収益について、保証債務残高が堅調に推移したことによって2.5%増収になったと説明しています。
一方、営業利益については営業費用が増加したため、0.1%増とほぼ横ばいになりました。
損益計算書を見ると、営業費用は前年同期の37億6800万円から40億4800万円へ増加しています。
その中でも債務保証損失引当金繰入額が10億5600万円から13億2100万円へ増加しました。
給与手当及び賞与も5億8300万円から6億2300万円へ、その他の営業費用も21億8400万円から23億5800万円へ増えています。
営業収益の増加額が約2億9100万円だったのに対し、営業費用も約2億8000万円増えています。
その結果、増収効果がほぼ費用増で相殺され、営業利益が横ばいになった形です。
キャピタルゲインという視点では、ここが今回の決算で最も気になる部分です。
売上に相当する営業収益が増えても、その増加分が利益に落ちてこなければ利益成長率は上がりません。
それでも経常利益は7.9%増
一方で、経常利益は営業利益とは違ってしっかり増えています。
営業利益77億2400万円に対し、経常利益は93億3500万円です。
営業外収益は前年同期の11億6600万円から18億5000万円へ増加しました。
受取利息は10億6600万円から14億500万円へ増加し、受取配当金も8200万円から1億1100万円へ増加しています。
さらに今期は持分法による投資利益2億6900万円も計上されています。
会社自身も、経常利益7.9%増の理由として「資産運用利回りが向上したほか、持分法による投資利益の計上等」を挙げています。
全国保証は豊富な金融資産を運用していますので、こうした運用収益も会社の収益力の一部です。
ただし、営業利益ではなく営業外利益によって増益率が上がっているという点は認識しておく必要があります。
一時的な利益を除くとどうなのか
今回の特別利益として投資有価証券売却益1億6000万円が計上されています。
税金等調整前四半期純利益は94億9500万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は65億6200万円でした。
この1億6000万円を除いて考えても、全体の利益規模から見れば影響は大きくありません。
したがって今回の純利益9.4%増が、巨額の特別利益だけによって作られた決算というわけではありません。
ただし、本業を最も純粋に見るなら営業利益0.1%増という数字を重視すべきでしょう。
今回の増益には、営業外での受取利息増加や持分法投資利益などがかなり寄与しています。
なお、決算短信には2027年3月期第1四半期から、純投資目的の投資有価証券売却損益について、売買が経常的に発生することとなったため「営業外損益」で純額表示する方法へ変更したとの記載があります。
このため今後は、営業利益と経常利益の差を見る際に、資産運用関連の損益も意識して見る必要があります。
全国保証は単一の信用保証事業
全国保証グループは「信用保証事業」を単一の報告セグメントとしており、その他の事業は量的重要性が乏しいため、セグメント情報は開示されていません。
したがってサイバーエージェントのように、複数の事業のどこが伸びているかを見る会社ではありません。
全国保証を見るうえでは、
住宅ローン保証を中心とする保証債務残高が伸びているか、保証料収入が増えているか、信用コストに相当する債務保証損失引当金がどう動いているか、そして豊富な金融資産から得られる運用収益がどう推移するか、
このあたりが重要になります。
今回の第1四半期では保証債務残高は堅調に推移していますので、事業基盤そのものが崩れているわけではありません。
高い利益率は依然として全国保証の強み
営業利益率は約65.6%です。
前年同期の約67.2%からは低下しましたが、一般的な事業会社と比較すれば極めて高い利益率です。
全国保証の大きな特徴は、全国の金融機関と提携し住宅ローン保証を行い、保証料収入を積み上げるビジネスモデルです。
保証債務残高を積み上げれば、長期間にわたって収益が積み上がる構造を持っています。
今回も営業収益117億7200万円に対して営業利益77億2400万円を確保しています。
短期間で売上と利益が数十%成長するタイプの会社ではありませんが、利益率の高さと安定性という点では依然として強い企業です。
通期予想は据え置き
2027年3月期の通期予想は変更されていません。
営業収益606億円、営業利益420億円、経常利益472億円、親会社株主に帰属する当期純利益327億円を見込んでいます。
前年比では営業収益3.2%増、営業利益1.5%増、経常利益1.3%増、純利益0.5%増です。
ここはキャピタルゲインを考えるうえで少し物足りない部分です。
増収増益予想ではありますが、利益成長率は1%前後しかありません。
つまり今期は会社側も大幅な利益成長を計画しているわけではありません。
今回の第1四半期純利益は9.4%増となっていますが、会社は通期予想を上方修正していません。
今後、第2四半期、第3四半期でも経常利益や純利益が高い伸びを続けるのであれば、上方修正期待が出てくる可能性があります。
逆に営業利益が横ばいの状態が続けば、株価を大きく押し上げる業績材料は弱くなります。
第1四半期の進捗率
通期予想に対する単純な進捗率を計算すると、
営業収益は約19.4%、営業利益は約18.4%、経常利益は約19.8%、純利益は約20.1%です。
単純な四半期25%基準ではやや低く見えます。
ただし、第1四半期だけを見て通期未達と判断することはできません。
今回の資料には過去の四半期ごとの季節性を判断できる情報までは掲載されていないため、「進捗率18%だから悪い」と単純評価するのは適切ではありません。
現時点では★★★☆☆程度の評価として、次の第2四半期まで確認したいと思います。
財務は非常に強い
第1四半期末の総資産は4937億1000万円で、前期末の5008億3100万円から1.4%減少しました。
純資産は2429億7000万円で、前期末の2451億4800万円から0.9%減少しています。
一方、自己資本比率は48.9%から49.2%へ上昇しました。
全国保証の財務は依然として強固です。
貸借対照表を見ると現金及び預金は692億9300万円、有価証券391億800万円、投資有価証券3190億2500万円となっています。
投資有価証券は前期末の3091億4500万円から約99億円増加しています。
全国保証ではこうした金融資産の運用が利益にも影響します。
今回、資産運用利回り改善によって経常利益が押し上げられていることからも、貸借対照表の運用資産を見る意味は大きいです。
長期前受収益の大きさにも注目
負債では長期前受収益が1842億6900万円あります。
前期末は1839億8500万円でしたので、若干増加しています。
長期借入金は300億円です。
全国保証の場合、負債の大部分を単純な借入金と同じように見るべきではありません。
特に前受収益は、保証料を受け取り、それを保証期間にわたって収益化していく事業構造に関わる項目です。
そのため一般的な製造業などと同じ感覚で「負債2507億円だから財務が重い」と判断するのは適切ではありません。
自己資本比率49.2%という数字から見ても、財務安全性は高いと評価します。
求償債権と引当金は今後も確認したい
今回、求償債権は前期末の198億8000万円から214億6500万円へ増加しました。
一方、貸倒引当金は99億500万円から109億7100万円へ増加しています。
また、債務保証損失引当金は91億8100万円から91億5400万円となっています。
全国保証では住宅ローン利用者が返済不能になった場合に金融機関へ代位弁済を行い、その後利用者に対して回収を行います。
そのため求償債権や引当金の動きは、信用コストを見るうえで重要です。
今回の四半期では債務保証損失引当金繰入額が前年同期から増えているため、次の決算でもこの項目は確認したいところです。
営業利益の伸びが鈍い原因が継続するのか、それとも一時的なものなのかを見る必要があります。
CFは今回の資料では評価できない
第1四半期についてはキャッシュ・フロー計算書が作成されていません。
したがって営業CF、投資CF、財務CF、フリーCFについては今回の資料だけでは確認できません。
このためCFの評価は★★★☆☆としています。
これはCFが悪いという意味ではなく、判断材料がないため中立としたものです。
なお減価償却費は前年同期2億4700万円に対し、今期は2億3400万円となっています。
配当は年間123円予想
2026年3月期の年間配当は120円でした。
2027年3月期は中間50円、期末73円の合計123円を予定しています。
現時点で配当予想の修正はありません。
3円の増配予想です。
全国保証は急成長株というより、安定した利益と株主還元を評価して保有するタイプの銘柄です。
今回も利益成長率は大きくありませんが、増配基調を維持している点は評価できます。
ただしキャピタルゲインを最優先する場合は、「配当が増えるから買う」だけでは少し弱く、今後の業績上方修正や利益成長率の加速も欲しいところです。
今回の決算で評価したいポイント
まず、営業収益が2.5%増加しており、会社がその要因として保証債務残高の堅調な推移を挙げていることです。
全国保証の事業基盤自体は安定しています。
次に、経常利益が7.9%増加している点です。
受取利息の増加や持分法投資利益などを含むとはいえ、豊富な金融資産を活用して利益を積み増せている点は全国保証の強みです。
さらに自己資本比率49.2%と財務が強く、年間配当も120円から123円へ増配予定です。
「業績が崩れたから売る」という決算ではありません。
一方で気になるポイント
最大の懸念は営業利益が0.1%しか増えていないことです。
営業収益は増えていますが、債務保証損失引当金繰入額を中心に営業費用も増加しています。
さらに通期営業利益予想も前年比1.5%増にとどまります。
キャピタルゲインを狙う場合、利益が毎年数%程度しか伸びない会社は、PERなどの株価評価が大幅に切り上がらない限り、株価上昇スピードも限定されやすくなります。
今回の決算は「悪くない」という評価ですが、「利益成長局面が始まった」と判断するにはまだ材料不足です。
キャピタルゲインという視点ではどう見るか
全国保証は、急成長株とは性格がかなり違います。
高い営業利益率、強い財務、安定した保証事業、増配という組み合わせは、長期保有には非常に相性の良い特徴です。
しかし短中期で大きな値幅を狙う場合は、もう一段の材料が必要です。
例えば今後、
営業利益が計画を大きく上回る、経常利益の高い伸びが継続する、通期予想が上方修正される、来期の利益成長率が大きく上がる、
といった変化が出れば評価は変わります。
現段階では「守りが非常に強い優良企業」ではありますが、「業績加速で株価が大きく上がりそうな局面」とまでは言いにくいです。
私ならどう売買するか
すでに保有しているのであれば、私は今回の決算で売却はしません。
営業利益は横ばいですが、営業収益は増加しており、経常利益・純利益も増えています。
財務も非常に強く、増配予想も維持されています。
そのため保有継続が基本です。
ただしキャピタルゲイン目的で新規に買うなら、私は急いで買いません。
営業利益が0.1%増という状況で株価が決算を好感して大きく上昇した場合は、追いかけずに押し目を待ちます。
逆に決算後に売られて株価水準が魅力的になった場合は、安定成長株として分割買いを検討します。
つまり今回の全国保証は、「決算を見てすぐ買いたい銘柄」というより、「価格が下がれば買いたい優良銘柄」という評価です。
次の決算で見るポイント
次の第2四半期で最優先して確認するのは営業利益です。
第1四半期は0.1%増にとどまりました。
営業収益の増加が営業利益の増加につながる状態へ戻るかを確認します。
次に債務保証損失引当金繰入額です。
今回13億2100万円まで増加しているため、この費用増が継続するのかを見る必要があります。
三つ目は経常利益です。
今回の7.9%増が資産運用利回り改善などによって継続するのであれば、通期予想の上方修正期待が徐々に高まります。
四つ目は求償債権や貸倒引当金です。
住宅ローン関連の信用コストが悪化していないかを確認します。
そして最終的には、営業利益420億円、経常利益472億円という通期計画に対する進捗がどの程度高まるかが重要です。
売却を考える条件
私が全国保証の売却を考えるのは、保証債務残高の伸びが明確に鈍化し、営業収益が減収に転じた場合です。
また、債務保証損失引当金や貸倒関連費用が継続的に増加し、営業利益率が大きく低下する場合も注意します。
さらに、求償債権が急増するなど信用コスト悪化が明確になった場合も見直します。
逆に今回のように営業利益が横ばい程度であれば、すぐ売る必要はないと思います。
全国保証は利益率、財務、株主還元が強いため、1四半期の成長鈍化だけで判断する銘柄ではありません。
今回の私の結論
今回の全国保証の第1四半期決算は、悪くはないものの、キャピタルゲインの観点ではやや物足りない決算です。
営業収益は2.5%増、経常利益7.9%増、純利益9.4%増となりました。
しかし本業を見る営業利益は0.1%増にとどまっています。
経常利益が大きく伸びた背景には、資産運用利回りの向上、受取利息の増加、持分法投資利益などがあります。
全国保証という会社全体の収益力としては評価できますが、本業そのものが急成長しているわけではありません。
一方で自己資本比率49.2%という強固な財務、高い営業利益率、堅調な保証債務残高、年間123円への増配予想など、長期保有を否定する材料はほとんどありません。
したがって私は、
保有なら継続。
新規買いなら株価を追いかけず押し目待ち。
売却を急ぐ決算ではない。
という判断です。
今回の総合評価は★★★☆☆から★★★★☆の中間程度です。安定性と財務力なら★★★★★に近い一方、キャピタルゲインを狙うには本業の利益成長率がもう少し欲しいというのが今回の結論です。
コメント