今回の決算は、売上収益が前年同期比+0.3%とほぼ横ばいだった一方、営業利益は+11.2%、親会社の所有者に帰属する四半期利益は+22.2%となりました。売上成長だけを見ると物足りませんが、粗利益率と営業利益率が改善しており、「売上を大きく増やさなくても利益を伸ばせるようになってきた」という意味では評価できる内容です。
私の第一印象は、「派手な成長決算ではないが、収益性改善がしっかり数字に出た良い1Q」です。ただし、通期会社予想は営業利益+2.7%とかなり慎重で、売上成長もまだ弱いため、★★★★★を付けるほどではないと考えます。
今回の決算を5段階で評価
| 評価項目 | 星評価 | 私の見方 |
|---|---|---|
| 売上成長 | ★★☆☆☆ | +0.3%。ほぼ横ばいで物足りない |
| 営業利益成長 | ★★★★☆ | +11.2%。売上横ばいで二桁増益は評価 |
| 利益率改善 | ★★★★★ | 営業利益率が約7.9%→8.8%へ改善 |
| CRM事業 | ★★★★☆ | 売上+0.4%、税引前利益+11.1% |
| AI戦略 | ★★★★☆ | AI自動化・AIエージェントへ積極投資 |
| 通期進捗 | ★★★★☆ | 営業利益進捗約24.7%でほぼ計画線 |
| キャッシュフロー | ★★★★★ | 営業CF61.9億円と安定 |
| 財務健全性 | ★★★☆☆ | 自己資本比率43.9%、のれん約947億円は注意 |
| 株主還元 | ★★★★☆ | 年間60円配当を維持 |
| 総合評価 | ★★★★☆ | 収益性改善を評価できる決算 |
総合評価:★★★★☆(4.1 / 5)
現時点での売買判断
保有:★★★★☆ → 継続保有
新規買い:★★★☆☆ → 買い急がず、株価と2Qの売上成長を確認
売却:★★☆☆☆ → 今回の決算を理由に売る必要は低い
私なら保有している場合はそのまま持ちます。ただし、新規で積極的に追いかけるかというと少し違います。利益改善はかなり良いものの、通期売上成長率は+4.2%、営業利益は+2.7%予想です。現時点では高成長株というより、「安定収益+利益率改善+配当」を見る銘柄だと思います。
売上+0.3%なのに営業利益+11.2%
まず第1四半期の数字を確認します。
| 2027年2月期1Q | 前年同期比 | |
|---|---|---|
| 売上収益 | 367.01億円 | +0.3% |
| 営業利益 | 32.13億円 | +11.2% |
| 税引前利益 | 30.90億円 | +10.9% |
| 四半期利益 | 23.18億円 | +24.6% |
| 親会社帰属利益 | 22.68億円 | +22.2% |
| EPS | 30.51円 | 前年25.12円 |
売上収益は366.05億円から367.01億円へ増えただけなので、ほぼ横ばいです。それでも営業利益は28.89億円から32.13億円へ増えました。
私は今回、「売上+0.3%」より「営業利益+11.2%」を評価します。成長企業として売上横ばいは褒められる数字ではありませんが、成熟度の高いコンタクトセンター事業で、売上をほとんど増やさず利益を二桁伸ばしている点には意味があります。
営業利益率は約7.9%から8.8%へ改善
今回の決算で特に良いのが利益率です。売上総利益は前年同期の67.05億円から69.24億円へ増加しました。一方、販売費及び一般管理費は38.69億円から37.48億円へ減少しています。その結果、営業利益は28.89億円から32.13億円まで増えました。
営業利益率を計算すると、前年同期の約7.9%から今回は約8.8%へ改善しています。約0.9ポイントの上昇です。
会社自身も、CRM事業について「継続的に取り組んできた収益改善施策の効果」が表れたと説明しています。CRM事業の売上収益は366.75億円で+0.4%にとどまりましたが、税引前利益は30.81億円で+11.1%となりました。
つまり今回の増益は、特別利益によって数字だけ膨らんだものではなく、本業の採算改善が大きいと見てよさそうです。
最終利益+22.2%は少し割り引いて見る
親会社帰属利益は+22.2%と営業利益以上に伸びていますが、ここは少し割り引いて見ます。
税引前利益は27.87億円から30.90億円へ10.9%増えた一方、法人所得税費用は9.27億円から7.72億円へ減少しました。そのため、最終利益の伸び率が営業利益以上に大きくなっています。
本業の実力を見るなら、今回最も重視したいのは営業利益+11.2%です。それでも十分良い数字だと思います。
ベルシステム24は「コールセンター会社」のままなのか
今回の決算で私が一番興味を持ったのはAIへの取り組みです。
ベルシステム24の主力はコンタクトセンターです。生成AIやAIエージェントの普及を考えると、「将来的にオペレーターが減り、コールセンター会社には逆風になるのではないか」という見方もできます。
一方、会社はAIを単純な脅威として見るのではなく、「ヒトとAIの好循環」を作る方向へ舵を切っています。中期経営計画では「データ活用の拡張」「ヒトの価値最大化」「パートナー資本の深化」を3つの重点施策としています。
私は、この転換に成功できるかどうかが今後のベルシステム24の株価評価を大きく左右すると考えています。
AIが問い合わせ対応から学習する仕組み
会社が開発している「Hybrid Operation Loop」では、コンタクトセンターで蓄積したデータをAIに活用する仕組みを作っています。
2026年8月からは音声基盤サービス「BellCloud+」「BellCloud+CX」に、通話録音データから高品質なナレッジを自動生成する「Knowledge Generator」を連携します。さらに、AIが利用者の意図を自律的に診断し回答を導き出すAIチャットナビゲーター「Sherpy」の提供も開始します。
ベルシステム24には長年のコンタクトセンター運営で蓄積された大量の問い合わせデータや対応ノウハウがあります。これをAIで活用できれば、「人を大量に配置して対応する会社」から、「AIと人を組み合わせて顧客対応全体を高度化する会社」へ変わる可能性があります。
AVILENとの合弁会社も営業開始
さらに、AI企業AVILENとの合弁会社「BA Intelligence」が2026年4月から営業を開始しています。
AVILENの「開発」とベルシステム24の「運用」を組み合わせ、企業の実務に合わせたAI活用支援や、AIエージェントの実装型BPOサービスを開発する方針です。
私はここを中長期ではかなり注目しています。単純なコールセンター受託は価格競争になりやすいですが、顧客企業の業務を理解し、AI導入から実際の運用まで担当できれば、サービス単価や利益率を上げられる可能性があります。
ただし、今回の決算資料にはAI関連サービスが具体的にいくら売上・利益を生み出したのかという数字はありません。現時点では「期待材料」であり、AIという言葉だけで企業価値を高く評価しすぎるのはまだ早いと思います。
約2,000人に平均8%超の賃上げ
一方でコスト面ではかなり大きな動きがあります。ベルシステム24は2026年3月1日から、正社員など約2,000人を対象に平均8%超の賃上げを実施しました。給与水準の改定、評価・昇格による昇給、新卒初任給の増額などを行っています。
人が中心のビジネスなので、平均8%超の賃上げは決して軽い負担ではありません。それでも今回営業利益が11.2%増えたということは、収益改善や生産性向上によって人件費増加をある程度吸収できている可能性があります。
これはかなり評価したい部分です。
通期予想はかなり控えめ
2027年2月期の会社予想は、売上収益1,520億円で+4.2%、営業利益130億円で+2.7%、税引前利益126億円で+2.5%、親会社帰属利益85億円で+3.9%です。今回、会社は業績予想を変更していません。
1Q営業利益32.13億円の通期計画130億円に対する進捗率は約24.7%です。売上進捗率も約24.1%、税引前利益も約24.5%なので、ほぼ4分の1まで進んでいます。
つまり、前年同期比の伸び率は良いものの、通期計画に対する金額ベースでは「ほぼ計画通り」です。現時点で上方修正を強く期待する段階ではないと思います。
キャッシュフローはかなり安定
営業活動によるキャッシュフローは前年同期60.67億円に対して、今回は61.93億円のプラスでした。投資CFは▲7.58億円、財務CFは▲44.20億円で、1Q末の現金及び現金同等物は82.16億円です。
財務CFでは配当金22.30億円、長期借入金返済13.50億円、リース負債返済16.34億円などの支出があります。それでも本業から60億円以上のキャッシュを生み出しているので、キャッシュ創出力については安心感があります。
財務は悪くないが、のれん約947億円は注意
自己資本比率は前期末43.5%から43.9%へ改善し、負債合計も950.39億円から937.70億円へ減少しました。
ただし貸借対照表を見ると、のれんが946.79億円あります。総資産1,686.97億円に対して約56%を占める非常に大きな金額です。
さらに短期借入金181億円、長期借入金300.89億円があり、合計すると約482億円です。
現時点で財務が危険というわけではありませんが、CRM事業の収益性が大きく悪化するような場合には、この大きなのれんも意識する必要があります。
配当は年間60円を維持
2027年2月期は中間30円、期末30円で年間60円を予定しています。前期も60円で、今回配当予想の変更はありません。
ベルシステム24は、半年で株価が何倍にもなるような高成長株というより、配当を受け取りながらAIによる利益率改善と事業変革を待つ銘柄に近いと私は考えています。
今回の決算で良かったところ
今回最も評価したいのは、売上が+0.3%しか伸びていない状況でも営業利益を+11.2%伸ばしたことです。
しかも、約2,000人を対象に平均8%超の賃上げを行ったうえでの増益です。売上総利益率、営業利益率ともに改善しているため、単純な人件費削減で作った利益ではありません。
「売上を増やす」だけではなく、「同じ売上からより多くの利益を残せる会社」へ変わっているのであれば、中長期ではかなり意味があります。
最大の弱点は売上成長
ただし今回の最大の弱点も明確です。
売上+0.3%では、キャピタルゲインを狙う成長株としては物足りません。
利益率改善だけで営業利益を何年も二桁成長させ続けるには限界があります。最終的には売上そのものを増やす必要があります。
AIエージェント、AI-BPO、高付加価値CRMなどが新たな売上を作り、現在ほぼ横ばいの売上成長率を3%、5%、さらにその先へ引き上げられるか。私はここが株価の上値を大きく左右すると考えます。
私ならどう売買するか
すでに保有しているなら、今回の決算では継続保有です。売上は弱いものの、本業の利益率が改善し、営業CFも強く、年間60円配当も維持されています。今回売る理由はあまりありません。
一方、新規買いなら少し慎重にします。営業利益+11.2%は魅力的ですが、会社自身の通期予想は営業利益+2.7%にとどまります。決算後にAI期待などで大きく上昇したところを追いかけるほどではありません。
反対に、今回の利益改善を株価があまり評価せず、押したところがあれば買い候補として見たいです。
次の決算で一番見るのは「売上」
今回、利益率改善はかなり確認できました。次に必要なのは売上成長です。
CRM事業の売上+0.4%が、2Q以降に3%、5%と加速してくるのか。特にAI関連サービスが「期待」ではなく、実際の売上として数字に表れてくるかを確認したいです。
同時に営業利益率8%台後半を維持できるなら、かなり良い形です。売上成長と利益率改善の両方が揃えば、ベルシステム24への評価を一段上げられます。
私が売却を考える条件
私が今後売却を考えるのは、CRM事業が減収へ転じる、営業利益率が継続的に悪化する、AI投資や賃上げの負担だけが増える、通期営業利益130億円を下方修正するといった状態になった場合です。
特に警戒するのは、「売上が伸びないうえに利益率改善まで止まる」ことです。
逆に売上成長率が3~5%程度まで上がり、営業利益率9%前後を維持できるようになれば、現在の会社予想以上の利益成長が見えてくると思います。
今回の私の結論
ベルシステム24HDの2027年2月期第1四半期決算は、良い決算だったと思います。
売上収益は+0.3%とほぼ横ばいでしたが、営業利益は+11.2%、税引前利益は+10.9%、親会社帰属利益は+22.2%。主力CRM事業も売上+0.4%に対して税引前利益+11.1%となり、収益改善施策の効果が数字に表れています。
さらに、AIによるコンタクトセンター自動化、AIチャット、AVILENとのAIエージェント型BPOなど、従来型コールセンターから高付加価値サービスへ変わろうとしている点も評価できます。
一方で、売上成長がほぼゼロであること、通期営業利益予想が+2.7%にとどまること、約947億円ののれんを抱えていることは注意点です。
総合評価は、
★★★★☆(4.1 / 5)
としました。
現時点での私の方針は、「保有分は継続保有」「新規買いは株価次第」「決算後の急騰は追わない」です。
ベルシステム24で今後重要なのは、AIによって単純に人を減らすことではありません。AIを使って一人当たりの生産性とサービス単価を上げ、さらにAI-BPOという新しい売上まで作れるかが重要です。
今回の1Qでは「利益率改善」が確認できました。次の2Qでは、その次の段階となる「売上成長の加速」が確認できるかを一番注目したいと思います。
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