東京海上HD(8766)2027年3月期1Q決算を分析|最終利益は増益でも修正純利益は減益、今後の業績と売買判断

今回は、表面上の利益は増えている一方で、会社が重視する修正純利益は減益です。なので、「良い決算ではあるが、見た目ほど強くない」という評価にします。特に海外は強いですが、国内損保が弱いです。

目次

今回の決算を5段階で評価

まず最初に、今回の東京海上HDの第1四半期決算を私なりに5段階で評価してみました。

評価項目星評価私の見方
保険収益★★★★★+12.3%。規模の大きい会社としてかなり強い
IFRS最終利益★★★★☆親会社利益+3.3%で増益
修正純利益★★★☆☆▲3.6%。実力ベースではやや弱い
国内損保★★☆☆☆修正純利益が減少
国内生保★★★★☆修正純利益は増加
海外保険★★★★★保険収益・修正純利益とも大きく伸長
投資運用★★★★★投資損益が大幅増
通期業績予想★★★★★修正純利益+7.8%、最終利益+56.2%予想
財務健全性★★★★★資本8.3兆円、自己資本比率24.3%
株主還元★★★★★年間245円へ増配予想
総合評価★★★★☆海外は非常に強いが、国内損保と修正純利益減益を無視できない

総合評価:★★★★☆(4.2 / 5)

今回を一言で表すなら、

「東京海上全体では悪くない。ただし、最終利益+3.3%より修正純利益▲3.6%を重視したい決算」

という評価です。

現時点での売買判断

保有:★★★★★ → 基本は継続保有

新規買い:★★★★☆ → 長期なら買い候補。ただし急騰は追わない

売却:★☆☆☆☆ → 今回の1Qだけを理由に売る必要はかなり低い


東京海上ホールディングスが2026年8月12日に、2027年3月期第1四半期決算を発表しました。

今回の数字を表面だけ見ると、まずまず良いです。

保険収益は、

+12.3%

税引前利益は、

+11.5%

親会社株主に帰属する四半期利益は、

+3.3%

となりました。

ただし、東京海上を見るときは、この最終利益だけを見ないほうがいいです。

会社が実力ベースの利益指標として重視している、

修正純利益

を見る必要があります。

今回の修正純利益は、

2,613億円

前年同期の2,711億円から、

▲3.6%

でした。

ここが今回のポイントです。

まず1Qの数字を確認

2027年3月期第1四半期は次の通りです。

2027年3月期1Q前年同期比
保険収益2兆471億円+12.3%
税引前利益3,781億円+11.5%
親会社利益2,643億円+3.3%
修正純利益2,613億円▲3.6%
修正EPS137円前年141円

この表を見るとかなり分かりやすいです。

会計上の利益は増えている。

でも修正利益は減っている。

私は今回、

親会社利益+3.3%より、修正純利益▲3.6%

のほうを重視します。

なぜ修正純利益を見るのか

東京海上は、通常の最終利益から、

キャピタル損益、

ALM・ヘッジ関連損益、

事業投資関連損益、

などを除いたものを、

修正純利益

として開示しています。

保険会社は株式や債券など大量の金融資産を持っています。

そのため市場環境によって、

売却益、

評価損益、

為替、

ヘッジ、

などで会計上の利益が大きく動きます。

それらをある程度ならして、

保険事業そのものの実力を見る

ために修正利益を使っています。

私は東京海上ではこちらを中心に見たほうがいいと思っています。

保険サービス損益はしっかり増えた

全社の保険サービス損益は、

前年の、

3,152億円

から、

今回、

3,516億円

へ増えました。

約363億円の改善です。

これはかなり良いです。

つまり、

保険を引き受けて稼ぐ本業部分は改善している

ということです。

一方で修正純利益が減った理由は、国内損保の減益などが影響しています。

国内保険事業は少し弱い

国内保険事業の保険収益は、

8,327億円

で前年同期から233億円増えました。

しかし修正純利益は、

988億円

で、

前年同期から、

173億円減少

しています。

売上にあたる保険収益は増えている。

でも利益は減った。

ここは少し気になります。

特に国内損保が弱い

国内損害保険だけを見ると、

保険収益は、

7,676億円

で、

前年同期から240億円増。

一方、修正純利益は、

772億円

で、

203億円減

です。

今回の決算で一番弱いところはここです。

東京海上というと国内損保最大手クラスなので、

この部分の利益が落ちると全体にもかなり影響します。

保険収益は増えているので需要が弱いわけではありません。

問題は、

引受採算や自然災害、事故率、コスト

の部分です。

今回の短信だけでは詳細理由は十分書かれていないので、ここは次回の決算でも確認したいです。

国内生保は逆に良い

一方、国内生命保険は良いです。

修正純利益は、

215億円

で、

前年同期から、

30億円増

となりました。

国内損保が弱かった分を、一部補っています。

国内保険全体をひとまとめに見るより、

損保と生保でかなり差がある

と考えたほうがいいです。

一番強いのは海外保険

今回、最も評価したいのが海外です。

海外保険事業の保険収益は、

1兆2,258億円

前年同期から、

1,945億円増

です。

修正純利益は、

1,643億円

で、

138億円増

となりました。

かなり強いです。

もう東京海上は、

日本の損保会社

というより、

グローバル保険グループ

として見たほうがいい会社です。

海外が利益の中心になっている

修正純利益を見ると、

国内保険が988億円。

海外保険が1,643億円。

つまり、

海外のほうが大きい

です。

これはかなり重要です。

日本は人口減少市場です。

保険契約数が長期的に大きく増える市場ではありません。

一方、海外にはまだ成長余地があります。

特に東京海上は、

スペシャルティ保険、

企業向け保険、

医療関連保険、

など比較的専門性の高い分野を持っています。

私はここが東京海上の最大の強みだと思っています。

海外比率が高いことは為替リスクでもある

もちろん良いことばかりではありません。

海外利益が大きいということは、

為替の影響も大きくなる

ということです。

円高になると、海外利益を円換算した数字が小さくなります。

一方、円安なら押し上げ要因になります。

そのため東京海上を見る場合、

海外事業成長と為替はセットで考えます。

ただ、事業そのものが海外で成長しているのであれば、中長期ではプラスです。

投資損益もかなり増えている

今回の投資損益は、

前年、

3,005億円

から、

今回、

4,217億円

へ増加しました。

約1,200億円の増加です。

その結果、金融損益も、

1,221億円 → 1,540億円

へ増えています。

これが税引前利益+11.5%を支えています。

ただし投資損益は市場環境で動きます。

だから私は、

投資利益が増えたから★★★★★

とはしません。

保険会社の場合、

本当に見るべきは保険引受と修正利益だと思っています。

政策保有株売却も今後重要

東京海上を長期で見るとき、政策保有株式の削減もかなり重要です。

保有株を売却すると、

一時的に売却益が出ます。

しかし本当の意味は、

資本効率を上げて、その資金を成長投資や株主還元へ回せること

です。

今回の短信では具体的な売却計画までは細かく載っていませんが、東京海上の資本政策を見るうえでは今後も重要なポイントです。

通期最終利益は+56.2%予想

2027年3月期通期会社予想は、

親会社利益、

8,300億円
+56.2%

です。

かなり派手です。

一方、修正純利益は、

9,500億円
+7.8%

を予想しています。

私はやはり後者を見ます。

+56%増益という数字だけを見ると超高成長に見えます。

でも実力ベースでは、

+7.8%

です。

それでも十分良いです。

1Q修正純利益の進捗率

通期修正純利益9,500億円に対して、

1Qは2,613億円。

進捗率は、

約27.5%

です。

これはかなり順調です。

1Qで4分の1を上回っています。

しかも会社は業績予想を据え置いています。

現時点では、

通期計画に対して悪くないスタート

と見てよいと思います。

通期最終利益進捗は31.8%

親会社利益8,300億円予想に対して、

1Qは2,643億円。

進捗率は、

約31.8%

です。

こちらはかなり高いです。

ただしキャピタル損益などが入るため、

私はこれだけで上方修正期待までは持ちません。

重要なのは修正利益です。

年間配当245円へ増配

そして株主としてかなり大きいのが配当です。

前期年間配当は、

218円

でした。

今期予想は、

245円

です。

27円増配です。

これはかなり良いです。

東京海上は高成長株というより、

利益成長+増配+自己株買い

で株主価値を伸ばしてきた会社です。

今回もその流れは続いています。

東京海上は「配当成長株」として見やすい

私は東京海上について、

単純な高配当株とは少し違うと思っています。

重要なのは、

今の配当利回り

より、

配当そのものが増え続けるか

です。

218円から245円。

約12%増配です。

もし利益成長と資本政策によって今後も増配が続けば、

買値に対する実質利回りは年々高くなります。

長期保有ではかなり大きいです。

自己株式は減少

自己株式数は、

前期末、

約5,548万株

から、

今回、

約3,401万株

まで減っています。

自己株式が減っているため、過去に取得した自己株の処理などが反映されています。

東京海上は自己株買いも積極的な会社なので、

今後も配当だけでなく、

1株価値を高める資本政策

に注目したいです。

財務はかなり強い

資産合計は、

33兆6,769億円

資本合計は、

8兆3,231億円

です。

親会社所有者帰属持分比率は、

24.3%

です。

一般企業と比べると自己資本比率24%は低く見えます。

ただし保険会社は保険契約負債を大量に抱えるビジネスなので、単純比較はできません。

資本そのものが8兆円以上あります。

財務基盤はかなり強いです。

現金も約2.8兆円

現金及び現金同等物は、

約2兆7,909億円

あります。

投資有価証券は、

約21兆2,172億円

です。

ものすごい規模です。

保険会社なので当然ですが、

東京海上は、

保険会社+巨大運用会社

という面も持っています。

そのため金利や株式市場の動きが利益に影響します。

金利上昇は必ずしも悪くない

銀行と同じように、保険会社も金利環境の影響を受けます。

一般的には金利が高くなると、

債券運用で得られる利回りが上がるため、

中長期では運用収益の改善につながる可能性があります。

一方で保有債券の評価額が下がるなどの影響もあります。

したがって、

金利上昇=単純なプラス

ではありません。

ただ、超低金利時代よりは収益機会が増える面もあります。

今回の最大のマイナスは国内損保

今回の決算で私が一番警戒するのは、

国内損保の修正利益▲203億円

です。

海外がかなり補っています。

でも国内損保が何四半期も減益を続けるなら話は変わります。

東京海上のブランド力や契約基盤は国内でも非常に強いので、

ここが一時的な減益なのか、

構造的な採算悪化なのか、

次回確認したいです。

自然災害リスクは常にある

保険会社なので避けられないリスクが、

自然災害

です。

台風。

洪水。

地震。

山火事。

ハリケーン。

大規模災害が起きると、短期間に保険金支払いが膨らみます。

東京海上は地域分散・再保険などでリスクをコントロールしていますが、

完全には消せません。

このため四半期利益が多少振れること自体は、ある程度受け入れて保有する銘柄だと思います。

海外分散がむしろ強みになる

逆に言えば、

国内だけでなく、

北米、

欧州、

その他海外、

へ事業を広げていることがリスク分散になります。

一つの地域で災害があっても、別の地域で利益を出せる。

今回も、

国内損保減益を海外増益がかなり補っています。

私はこの利益構造を高く評価しています。

では、株はどうするか

今回の決算を見て私が保有していたなら、

そのまま保有

です。

修正純利益▲3.6%だけを見ると弱いです。

しかし、

保険収益+12.3%。

保険サービス損益改善。

海外修正純利益+138億円。

通期修正純利益+7.8%予想。

年間245円へ増配。

これを考えると、

今回売る理由はかなり少ないです。

新規買いも候補

新規買いについても、

長期ならかなり候補

です。

ただし東京海上は大型優良株としてかなり評価されやすい銘柄です。

そのため、

良い会社だから何円でも買う、

という判断はしません。

特に決算後に大きく上昇した場合は押し目を待ちます。

東京海上は短期より長期向き

今回まで見てきた成長株とは少しタイプが違います。

東京海上で半年で2倍を狙うような投資ではありません。

私なら、

利益成長
+増配
+自己株買い

を何年も積み上げることを期待して持つ銘柄として考えます。

その意味では、短期の1Q修正減益だけで売買する必要はあまりないと思います。

新規なら修正EPSで見る

会社予想の修正EPSは、

514円

です。

東京海上の株価を見るときは、

会計上のEPS441.83円より、

この修正EPS514円を一つの基準として見たほうが実態に近いと思います。

例えば株価が5,000円なら修正PERは約9.7倍。

6,000円なら約11.7倍。

7,000円なら約13.6倍。

という見方ができます。

具体的な買い水準は現在株価と市場評価を合わせて判断したいです。

私が次の決算で一番見る数字

次の決算で私が一番確認したいのは、

国内損保の修正純利益

です。

今回772億円まで減りました。

ここが戻るか。

次に、

海外保険の修正純利益

です。

1,643億円という高い水準を維持できるか。

そして3つ目に、

全社修正純利益

を見ます。

通期9,500億円への進捗が今後も25%前後を維持できるなら安心です。

私が売却を考える条件

私が今後売却を考えるのは、

国内損保の採算悪化が長期化する

海外保険まで減益へ転じる

修正純利益9,500億円を下方修正する

増配方針が崩れる

大規模な自然災害損失などで資本余力が大きく悪化する

といった状態になった場合です。

特に、

海外で稼ぎ、株主還元を増やす

という現在の東京海上の強みが崩れるかどうかを見ます。

今回の私の結論

東京海上ホールディングスの2027年3月期第1四半期決算は、

良い決算ではあるものの、見た目ほど強くはない

と評価します。

保険収益は、

+12.3%

税引前利益は、

+11.5%

親会社利益は、

+3.3%。

しかし会社が重視する修正純利益は、

▲3.6%

でした。

ここは無視できません。

特に国内損保の修正純利益が前年同期から203億円減ったことは注意点です。

一方で海外保険は、

修正純利益1,643億円

まで増加。

前年同期比で138億円増えています。

さらに通期では、

修正純利益9,500億円
+7.8%

を予想。

年間配当も、

218円 → 245円

へ増配予定です。

そのため総合評価は、

★★★★☆(4.2 / 5)

としました。

現時点での私の方針は、

保有分 → 継続保有

新規買い → 長期なら買い候補。急騰は追わない

多少の決算失望売り → 国内損保以外が崩れていなければ買い場を検討

全売却 → 今回の1Qでは考えない

です。

東京海上について私は、

「日本の損保最大手クラスだから安心」

という見方だけでは少し足りないと思っています。

今の強みはむしろ、

海外で大きく稼ぎ、その利益と政策保有株削減などで生まれた資本を、増配や自己株買いへ回せること。

今回、国内損保は弱かったです。

でも海外は強い。

この分散力こそ東京海上の強みだと思います。

次の決算では、

国内損保の利益回復と、海外保険の高成長が同時に確認できるか。

そこを一番見たいと思います。

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